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コルク&スクリューキャップでの20年熟成比較
コルクとスクリューキャップによる熟成の違い。ワインラバーなら一度は抱く疑問に対する問いを検証する 「コルク&スクリューキャップでの20年熟成比較:オーストラリア5生産者全15ワイン試飲セミナー」 が、開催された。 主催はインポーターの ヴィレッジ・セラーズ...

水上 彩
2023年12月8日


ヴィニュロンの一年 <2023年11月>
収穫の終わったブドウ畑は静まり返っている。 あの収穫前の熱気や、興奮が渦巻いていた空気感は一切なく、紅葉したブドウ達が何事もなかったかの様に、ただ風に揺られ佇み、落葉が地面を覆っている。 収穫を終えた数日後、久し振りに畑を訪れて後片付けをし、それから暫く畑には行かなかった。 昨年もそうであったが、なぜか少し距離を取りたくなってしまう。 しかし、 2024年シーズンは既に始まっている 。 葉の紅葉や落葉の状態、枝の登熟具合を確認しながら、今シーズンの栽培を振り返り、来年へ向けて見直しを考えていかなければならない。 【紅葉】 周りの山々草木が美しく色鮮やかに紅葉している。ブドウ畑も同様に葉の色が変わり、黄色や赤など一面を彩っている。 「紅葉」とは、気温の低下に伴って光合成効率の下がった葉の、葉内クロロフィル分解による老化反応であり、且つ落葉および再利用物質の回収準備でもある。

ソン ユガン
2023年11月28日


チリの至宝 Emiliana
チリの Emiliana をご存知だろうか? 日本では、Concha y Toro、Cono Sur、Montes、Lapostolleといった(低価格〜高価格レンジまで幅広く手がける)中〜大規模ワイナリーが特に良く知られており、AlmavivaやClos...

梁 世柱
2023年11月9日


ヴィニュロンの一年 <2023年10月> 特別無料公開
10月1~2日の2日間で今年の収穫を行った。 昨年が10月15~16日だったので、約2週間早い収穫となったが、周りにも、例年より1週間から2週間早い収穫の決断をした生産者が多くいたようだ。 異常な暑さが続いた2023年、長く雨量の多かった梅雨、猛暑、病害虫、9月の雨と、私に...

ソン ユガン
2023年11月1日


Vouette et Sorbée 後編 ~シャンパーニュのその先へ~
後編となる本編では、 シャンパーニュ地方の未来が様々な角度から見え隠れする内容 となる。 決して良いことばかりではない が、それでもシャンパーニュ地方は 先へ先へと進んでいる のだ。 コトー・シャンプノワ かつては 珍品の類 であり、 価格もギリギリ相応と言える ものだった コトー・シャンプノワ (シャンパーニュ地方で造られる非発泡性ワインで、品種は主にピノ・ノワールとシャルドネ)が 大きな転換期 を迎えている。 ここにも 温暖化の影がちらつく が、コトー・シャンプノワをリリースするシャンパーニュ・ハウスが かなり増えた のは間違いない。 流石の技術力もあってか、 品質的にはなかなか優れたものが多い が、その高価格は(少なくとも個人的には)許容できる範囲を超えている。 理由は明確だ。 シャンパーニュはそもそも無敵の存在であるが、コトー・シャンプノワは違う。 スパークリング・ワインというカテゴリーにおいて、世界各国の技術水準が大幅に上昇したにもかかわらず、極上のシャンパーニュに並び立つワインは、このカテゴリー内には、いまだに存在していない。つまり、

梁 世柱
2023年10月26日


Vouette et Sorbée 前編 ~父から娘へ~
私が ベルトラン・ゴトロー と出会ったのは、遡ること11年前のこと。 飲料ディレクターを務めていたNYのレストランに、初渡米を果たしたベルトランがやってきた日のことは、今でも鮮明に覚えている。 歯に布を着せる、などという言葉とは無縁の、無慈悲なNYerたちの洗礼を浴びたのだろうか、6時間という微妙な時差がじわじわと効いていたのか、少し疲れた顔をしていたのも良く覚えている。 私もまた、日々の激務で疲れ果てていたタイミングだったが、ベルトランと話し、彼のワインを飲んだ瞬間、完全に目が覚めた。 ベルトランのワインを飲むと、不思議と元気が出る 。 細胞の隅々にまで染み渡る彼の魔法は、今も健在だ。 ベルトラン・ゴトローは、1993年に葡萄農家を継いだが、アンセロム・セロス(ジャック・セロス)の元で学びつつ、自身の畑から残留肥料と農薬が抜け、ビオディナミ農法の認証を得た2001年まで、シャンパーニュをリリースすることはなかった。 理想を実現するためなら、いかなる苦境にも真正面から立ち向かう。 ベルトランの高潔な精神、奥深い思慮、鋭い観察眼、豊かな感受性、そし

梁 世柱
2023年10月24日


ヴィニュロンの一年 <2023年9月>
9月に入っても30度を超える真夏日が続いた長野市。 雨が非常に少なく、晴れ間の多い日が続いていたが、9月中旬から徐々に気温が下がり、雨の日が増え始め、天気が崩れ始めている。 ベト病やさび病、黒とう病 などが発生してしまっていたが、晴天少雨の天候にどうにか救われた状態だ。しかし、果実への被害は変わらずに発生している。 ブドウトリバの幼虫による食害被害 は未だ収まらず(ピークは過ぎた模様)、 鳥による食害、収穫前の降雨による裂果、裂果からの灰色カビ病 、更に 晩腐病 と、収穫が近づくにつれて厳しい状況に追いやられている。 昨年は9月の降雨量が非常に多かった為に、裂果が多く発生し、それによる病気の多発や水分過多による品質低下(糖度やPhに影響)などがあり苦労した。 今年は9月中旬まで雨が少なかったが、ここ数日の降雨で昨年に近い状況になってきてしまっている。収穫まで天候は一体どうなるのだろうか? 10月の 「収穫日」 を決定しなければならないが、果実の成熟具合を確認し(食味および糖度測定)、地元収穫ボランティア方達の都合を考慮した日時、および委託醸造先の

ソン ユガン
2023年9月28日


ヴィニュロンの一年 <2023年8月>
雨、雨、雨の 厳しい梅雨 が終わった途端、一転して 雨がほとんど降らない真夏日、猛暑日 が8月中旬まで続いた長野県。 7月末に発生した台風6号が発達しながら北上し、8月初旬に沖縄と九州に上陸し被害をもたらした。台風は進路を変えて北上した為に甲信越には影響がほとんどなかったが、被災された地および人たちの、一日も早い復旧復興を願うばかりである。 台風6号が通過した後も真夏日が続き、 日中気温が35度近くまで上がる日 も多く、地元の方達は 「昔の長野は30度になることもめったになかった。35度は異常だ。」 と話している。 気温35度の中で行う農作業は、想像以上にきつい。照りつける強烈な日差しと、猛烈な暑さの中で農作業を行っていると、徐々に息苦さを感じ呼吸が乱れ、体が悲鳴をあげる。無理をして作業を行えば「熱中症」になってしまう可能性がある為、なるべく直射日光を避ける服装や、こまめな水分補給などを心がけ対処している。 8月中旬以降も真夏日/猛暑日が続いているが、 雷雨やゲリラ豪雨も定期的に発生 しており、今後天候不順にならぬことを祈るばかりである。 【熱中

ソン ユガン
2023年8月29日


樽とワイン <後編>
後編となる本稿では、 David Ramey氏 が語った 「樽を使う本当の意味」 に、焦点を当てていく。 なお、今回の話は一人の醸造家による「意見」であるため、別の見解も当然存在していることはご理解いただきたい。 樽とはワインを入れるための容器である 私がDavidに対して最初に投げかけた質問は、 「なぜ樽を使うのか?」 というシンプルなものだった。 この質問を最初にもってきたのも、ちゃんとした意図があってのこと。 1980~2000年代をトップワインメーカーとして駆け抜けてきたDavidは、当時強大な影響力をもっていた米国のワイン評論家、ロバート・パーカーJr.の嗜好を、ワイン産業及びワイン市場が、部分的に「湾曲解釈」したことによって生まれた 「パーカリゼーション」時代 の当事者だ。 「More is More」 とでも言わんばかりの、濃厚で芳醇で、極端に凝縮したワインがもてはやされた時代を走ってきたDavidにとって、現代の 「Less is More」 な風潮はどう見えているのだろうか。 新樽100%が正義とされていた過去と、新樽比率が低い

梁 世柱
2023年8月5日


樽とワイン <前編>
2023年7月29日。 オンラインワインスクール 「Vinoteras」 にて筆者が開催したセミナーは、海外のワインメーカーをゲストに招き、特定にテーマに基づいてディスカッションを行なっていくシリーズの第二弾だった。 サシ・ムーアマンをゲストに招いた、第一弾の ビオディナミ編 に続いてテーマとしたのは、 「樽」 。 今回のゲストは、アメリカ・カリフォルニア州のトップワインメーカー、 Ramey Wine CellarsのDavid Ramey氏 だ。 Davidは樽に関する数多くの研究を行なってきたことでも知られ、セミナーでは 「目から鱗」 の内容も多々含まれていた。 本レポートの前編では、ワイン樽に関する一般論について、一度整理しておく。 ワイン樽の歴史 樽とワインが関連した最初の記述が登場するのは、 紀元前2,500年頃 に関するもの。 「ヤシの木」 から造られた樽で、アルメニア産ワインがバビロンへと運ばれていたという記録が残っている。(記述したのは、紀元前5世紀に活躍した古代ギリシアの歴史家ヘーロドトス。)

梁 世柱
2023年7月30日


ヴィニュロンの一年 <2023年7月>
6月8日に始まった長い長い 梅雨 が、ようやく明けた。 気象庁は7月22日、長野県を含む関東甲信地方が梅雨明けしたとみられると発表、 平年より3日遅く去年より1日早い梅雨明けで、 梅雨明け前90日間の合計降水量は393.5mm(平年比131%) であった。 6月末から7月に発生した日本各地の豪雨により、多くの方が被災された。 ブドウにとっても厳しい天候が続き、特に開花前後の降雨による果実への影響、高湿度による病気の発生が多く発生し、雨の恐ろしさを再認識する年となった。 10月の収穫までまだ3か月近く残っており、今後の晴天を祈るばかりである。 【開花】 6月中旬から開花を始めたブドウ達。

ソン ユガン
2023年7月27日


ヴィニュロンの一年 <2023年6月>
注:本記事には「虫」の画像が多く含まれます。お苦手な方は、ご注意ください。 6月8日に梅雨入りした長野県(平年より1日遅く、去年より2日遅い梅雨入り)だが、先月に続いて気候が安定せず、雨、曇り、晴れを繰り返している。 雨は決して多くはないが、雨、雨、曇り、晴れのような天気が多く、 高湿度の為に病気のリスクが非常に高い状態 だ。 天気予報とにらめっこし、ブドウの状態を把握しながら防除のタイミングを間違わないよう(遅れないよう)注意し、適期を見定め消毒を行っている。 開花期の雨は病気を誘発する為に好天を願っていたが、今年は雨に当たる回数が多い為に、落花以降の管理が非常に重要かと思われる。 雨だけでなく、 害虫による食害も多く発生 し、自然の中で農業を行う難しさを痛感しながら、収穫までの長い道のりを乗り越えていかなければならない。 ブドウ園に存在する病害虫たち (「害虫」という言葉は好きではないが、「農業」を行っている以上、ブドウに害を与える虫や病気はそう呼ばざるを得ない) 【害虫①ツマグロアオカスミカメ】 カメムシ目カスムカメムシ科(Apolygus

ソン ユガン
2023年6月30日


アメリカ西海岸の最前線 -Sashi Moorman-
『レトロなワインであり、昔のスタイルのワイン。』 アメリカ西海岸の最前線に立つ サシ・ムーアマン は、自身のワインをそう表現した。 カリフォルニアでは、 Domaine de la Côte、Sandhi、Piedrasassi 、そしてオレゴンでは Evening Land のワインメーカーとして活躍するサシは、筆者とも懇意にしている造り手だが、私はあえて彼のワインをこう表現しようと思う。 『現代の知見で精巧に再現された、アンティーク調のワイン。』 そう、確かにレトロで昔風だが、サシのワインは、 「今」の先頭を駆け抜けている のだ。 ワインにおけるスタイル上の世界的なトレンドは、常に 「揺り戻し」 を繰り返しながら前進してきた。 1990〜2010年代初頭 にかけての 約20年間 は、広義でいうと 「技術の時代」 と考えて差し支えないと思うが、今の最先端は、 1960~1980年代と第二次世界大戦以前のアプローチを混ぜ合わせた 上で、 最新の知見を随所に取り入れたスタイル が主流となりつつある。 そして、その最先端スタイルの根幹を成しているもの

梁 世柱
2023年6月5日


ヴィニュロンの一年 <2023年5月>
5月に入っても気候の安定しない長野市。例年ならGW明けから急激に暖かくなり、完全な春の訪れを感じるのだが、 日毎の寒暖差が激しく 、最高気温が 30 ℃近い日もあれば、 15 ℃という日もある。雨も多く降っており、さらに先日、ゲリラ豪雨とともに「雹(ひょう)」が降った。 霰と雹の間くらいの小粒で短時間だった為に、農園被害は無かったが、「もし粒がもっと大きく長時間降っていたら。」と考えると非常に恐怖を感じた。 ブドウ達は萌芽後すくすくと生長し、長い新梢で40cmを超えている。 雨が多ければブドウも育つが雑草も育つ。さらに病害虫リスクも高まるため、必要な作業をしっかりとこなし、観察し、対処していかなければならない。 【定植(品種)】 いよいよ栽培する品種が決定し、植え替えの定植を行った。 植樹から5年目、ようやく昨年に初収穫を迎えたブドウ樹を切り、新しい苗を植えるという行為をなかなか理解してくれない方も多いが、私は未来へ向けて進んでいきたい。 今年200本、来年250本、再来年は様子を見て追加の定植を行う予定でいる。

ソン ユガン
2023年5月28日


躍動するブリット・フィズ -Gusbourneの挑戦-
イングランドは、オールド・ワールドか、ニュー・ワールドか。 もし一般的な「 大航海時代より前に 」という法則を当てはめるなら、 11世紀 には南イングランドでワイン造りが行われていた記録が残っている(*1)ため、れっきとした オールド・ワールドに該当 する。しかし、...

梁 世柱
2023年5月12日


ヴィニュロンの一年 <2023年4月>
4月に入りすっかり春を感じる長野市。気温の上下はまだ激しいが、20度を越す暖かい日も多くなってきている。 春を告げる野花たちが顔を出し、自然の山々は新緑が初々しく、梅や桃、桜の花が咲き誇り、ちょうど今、林檎の花が満開である。畑では様々な虫たちが活動を開始し、冬の静けさから一変、生命が活発に動き出しているのを感じる。 長野地方気象台にあるソメイヨシノの標本木の開花は、なんと3月28日。例年より2週間ほど早く、統計開始以来、最も早い開花だそうだ。地元の方達も「長野で3月に桜が見れるなんて。」と驚いている。 圃場のブドウ達も例年より早く芽吹く予感がする。 ブドウが萌芽する前に、出来るだけの準備を急いで行わなければならない。 【休眠期防除】 ブドウの病害防除は、萌芽後の生育期に行うのが一般的だが、 萌芽前の休眠期に一度行う事で、その効果をより一層高める事ができると言われている 。 休眠期防除によって越冬病原菌の第一感染源となる分生子(胞子)の形成量を抑えて、伝染源密度を低下させ、生育初期の発病抑制および生育期防除の効果を高めることが出来る。

ソン ユガン
2023年4月28日


New York Wineレポート Part.2
Part.1 に続いて、本編はNY州産ワイン(Finger Lakes)のレヴューパートとなる。 今回の生産者来日では、 Long Island、Hudson River、Lake Erie からもワインが出展されていたが、 産地ごとの特徴を掴むには数が少なかった...

梁 世柱
2023年4月22日


ナチュラル・ワインとお茶
注:本記事は、茶摘み&製茶体験というワークショップを通じた、 完全な筆者の主観 によって執筆されております。 本記事の内容と関連したインタビュー等は一切行っておりません ので、記事の内容そのものはワークショップ先の茶園とは関連性がございません。あらかじめ、ご了承くださいませ。以下、本文となります。 きっかけは、私が過去に、とある製茶メーカーとお仕事をご一緒させていただいたことだった。 私が何気なく発した「 オーガニック 」という言葉に、担当者の顔が一気に険しくなった。 お茶の世界では、この言葉は禁句に近い のだとすぐに察したが、今に至るまで続く違和感をもち続けることにもなった。 その後も、お茶を専門とする知人たちからは、「 オーガニック栽培では、美味しいお茶を造るのがかなり難しい。 」とは度々聞いたし、そういうお茶を探し出して、特に何も言わずに専門家に飲んでもらっても、高い評価を得たことがほとんどなかった。 実態を一目でも見てみようと、茶園を見学しに行ったこともあったが、茶畑の様子に唖然としたのを良く覚えている。

梁 世柱
2023年4月19日


New York Wineレポート Part.1
SommeTimesでは、たびたび NY州 のワインを取り上げてきた。 筆者がNYで長年ワイン修行をしていた縁、ではなく、単純にこの産地が 面白く、そして素晴らしい可能性を秘めている からだ。 現在NY州には、以下の 11つのAVA (American...

梁 世柱
2023年4月7日


ヴィニュロンの一年 <2023年3月>
3月中旬で既に春を感じる長野市。 標高630mの圃場に雪は無く、 オオイヌノフグリ の花が既に美しく咲き乱れている。森の木々も芽吹き、 檀香梅 (クロモジ属)は満開を迎えている。植物達は例年よりも早い春の訪れを感じ、それを私たちに知らせてくれているようである。ちなみにオオイヌノフグリの花言葉は「 春の喜び 」。 冬の厳しい寒さが長く続く長野県。この地に住む身として、春の訪れはとても嬉しく喜び溢れる季節でもある。気温の上昇とともに、自然界に住む生き物達が活動を開始し、そこから大きなエネルギーが発するのを感じることができる。寒さ厳しい地だからこそ、より一層春の到来に喜びを感じるのだろう。 1月下旬に開始した剪定作業がようやく終わり、ここからは 4月の萌芽に向けて準備 を進めていかなければならない。

ソン ユガン
2023年3月25日
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