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驚愕のビール+αペアリング
私はあまり、外食の時にペアリングを頼まない。 ペアリングになると、どうしても「オン」になってしまい、せっかくのプライヴェート時間まで仕事モードになってしまうのが一番の理由だ。 誰かと食卓を共にしているのに、ペアリングの分析に夢中になってしまい、ついつい会話を疎かにしてしまうのは、私の悪癖である。

梁 世柱
5月25日


アクアパッツァには地中海のワイン
食の都 ナポリ が誇る名物料理は多々あるが、 アクアパッツァ (ペシェ・アッラックア・パッツァ)は、カジュアルイタリアンとして広く親しまれている逸品だ。 魚介類をトマト、オリーヴオイルと共に煮込む、というシンプル極まりない料理なだけに、素材の質と、シェフの腕が極めて重要となる。 いや、重要どころか、一切のごまかしが効かない、とすら言えるだろう。 残酷だが、半端な店でアクアパッツァを頼んでも、満足度はそれほど高くならないのだ。 特に、既製のブイヨンを用いない伝統的なレシピの場合、そもそもカジュアルな料理として成立させるのが難しくなってしまう側面すらある。

梁 世柱
5月19日


生肉のカルパッチョを攻略
肉料理、特に赤身肉を使った料理には、赤ワインが定番。 ワインペアリングの常識は概ね正しい。 特に 噛みごたえのある赤身肉 と合わせるには、赤ワインの タンニンが必要 になるからだ。 しかし、その法則は、 「逆」の可能性 も示している。 噛むことを僅かしか必要としない赤身肉料理なのであれば、タンニンもまた不必要となる のでは無いのか、と。

梁 世柱
5月10日


甲殻類の正解ペアリング
数多い海や川の幸の中でも、甲殻類は(本マグロなど特殊なものを除いて)別格と言えるほど価値が高い。 上海蟹、松葉蟹、伊勢海老、オマール海老など、甲殻類はまさに花形的存在だ。 そして、日本人の食文化とも、甲殻類は深く結びついている。 懐石料理の中でも、甲殻類を献立の主軸とした店は、頭一つ抜けて価格が高い。 今回はそんな甲殻類に対して、最高のペアリングアイデアを紹介していこう。

梁 世柱
4月25日


魔法の料理 サルシッチャとペアリング
今思えば、イタリアンレストランと私の縁は、かなり古い。 高校生の時のアルバイトで、イタリアンレストランに入ったことがあったのだが、レストランの中で飛び交う聞き慣れない横文字の連呼にすぐさま挫折してしまい、長くは続かなかった。でも、歓楽街の大衆的なお好み焼き店でのバイトが長かった私にとっては、全くの異世界に触れたようなものだったので、なぜか強く記憶に残っている。 それから、日本酒バー、割烹、高級日本料理、高級フレンチ、高級中国料理など、さまざまな料理店で経験を積んで行ったが、最後にフルタイムで現場に入ったのは、イタリアンだった。 10代の頃とは違い、経験を積んできた私にとって、クリエイティヴなイタリアンでの仕事は楽しかった。 それまではワインの教科書で、名前だけ知っていて実際には食べたことはなかった料理に、数多く触れることもできた。

梁 世柱
4月19日


ユッケの正解は、赤ワインなのか?
1996年に、食材の中で死滅していなかったO-157などの大腸菌によって、大規模な食中毒が起こったことを機に、食品衛生への懸念が高まっていた中、2011年に焼肉チェーン店が起こした、ユッケ集団食中毒事件は、181人の顧客に腸管出血性大腸菌O-111を感染させ、5人の死者と24名の重症者を出すという、日本の飲食史上最悪とも言える大惨事に繋がった。 この事件を受けて、生食用牛肉の処理に関する基準がさらに厳格化。生肉としての提供自体が完全に禁止されたのは牛レバーのみ(2012年以降)だが、生肉提供のために必要な検査や処理の煩雑さ、所要時間、高いコストなどから、実質的には全ての牛生肉提供が禁止に限りなく等しい状況となった。 しかし、店舗が自治体からの許可を取得した上で、規定を満たした生肉処理を行なった肉卸業者から購入すれば、今でも牛レバー以外は提供することはできる。 そう、正しいお店選びをすれば、「本物の」ユッケを、安全に食べることができるのだ。

梁 世柱
4月12日


鰻重を活かす赤ワインとは
一昔前まで、鰻は日本人の食卓には欠かせない食材のはずだったが、20年前と比べると2倍以上に膨れ上がった価格が、鰻をすっかりハレの日の楽しみへと変えてしまった。 鰻の価格が跳ね上がった理由には、もちろん需要と供給の関係という市場原理が働いている側面もあるが、別の問題として、鰻養殖の難しさがある。 鰻の養殖は、実は現状その大部分を、天然のシラスウナギ(鰻の稚魚)の漁獲に頼っている。 近年は、そのシラスウナギの漁獲量が減少の一途を辿っているため、輸入への依存度が高くなり、さらに飼料の高騰などの要因も重なって、価格上昇に歯止めが効かなくなった。 2024年の朝日新聞の記事によると、日本の水産省は1990年代からシラスウナギそのものを養殖する技術開発に取り組み、2002年には世界で初めて成功。現在では、年間4~5万匹ほどのシラスウナギ生産が可能になったようだが、日本国内における鰻の年間消費量は約1億匹とされているため、全てを賄うには到底足りない。 2050年までには、国内の全ての鰻養殖業者に、養殖シラスウナギを行き渡らせる計画を立てているそうだが、それほど

梁 世柱
4月5日


フレンチトーストで朝ワイン
日本の一般的な洋食系朝食メニューの中でも、 フレンチトースト と パンケーキ は、王者争いをしているのではないだろうか。 パン生地そのものに味を染み込ませるフレンチトースト、上に乗せる食材で様々に表情を変えるパンケーキ。 近年の流行を鑑みると、勝負はややパンケーキが優勢に思えるが、私は頑なにフレンチトースト派だ。 フレンチトーストの起源は、 古代ローマ時代 にまで遡れるほど古いと考えられている。

梁 世柱
3月29日


牡蠣グラタンのストライクペアリング
誰にでも、幼少期からの大好物、という食べ物があるだろうか。 私の場合は、なんといってもグラタンだ。 ベシャメル、チーズ、マカロニのゴールデントリオが奏でるハーモニーは、何ものに変え難い落ち着きを与えてくれる。 肉、海鮮などの追加食材によって、また味わいの性質が微妙に変わっていくところも、グラタンの面白いところだ。 今回ペアリング研究室の題材として取り上げたいのは、牡蠣グラタン。 牡蠣のエキスが絶妙に染み込んだ奥深い味わいのベシャメルと、シンプルにグリルした牡蠣が、グラタンを三重奏から五重奏へと重厚に変化させる。

梁 世柱
3月22日


洋食のスター ハンバーグとペアリング
日本における「洋食」の文化は、独自の発展を遂げてきた。 とんかつ、ナポリタン、カレーライスなど「原型」から大きく変化し、オリジナルとすら呼べるようなものへと成った料理もあるし、南蛮漬けなど、もはや日本料理の一部と化しているものもある。 そのような日本の洋食文化の中で、最もオリジナルと呼ぶに相応しいのは、 「ハンバーグ」 だろうか。 ハンバーグの起源には諸説あるが、「ハンブルク」からきている通り、 ドイツのハンブルク が有力と考えられている。ハンブルグの名物料理である 「タルタル・ステーキ」 が元となり、ひき肉にパン粉を混ぜて焼くハンバーグが誕生したのだ。この小型のハンバーグは、ドイツでは 「フリカデレ」 と呼ばれている。

梁 世柱
3月15日


町中華の逸品とワイン
大衆料理といっても様々なものがあるが、私は町中華が特に好きだ。 炒飯、エビチリ、麻婆豆腐、小籠包。まさに大好物のオンパレード。 多種多様な麺類にも強く心惹かれる。 町中華での飲み物といえば、ビール、サワー、そして紹興酒が定番だと思うが、私はあまり紹興酒が好きではないため、大体サワーで済ませてしまう。

梁 世柱
3月8日


トリッパのトマト煮込みにベストのサンジョヴェーゼとは?
イタリアを、そしてトスカーナ州を代表する郷土料理の一つである Trippa alla Fiorentina (トリッパのトマト煮込み フィレンツェ風)は、ホルモンやモツを食べる習慣がある日本人にとって、随分と馴染みやすいものかもしれない。 トリッパは、表面に開いた多数の大きな穴から日本語では「ハチノス」とも呼ばれる、牛の第二胃袋。 トリッパを、ソフリットと呼ばれるイタリア料理の香味ベース(オリーヴオイル、玉ねぎ、ニンニクをベースに多種多様な追加香味)、トマト、ハーブと共に煮込んだ非常にシンプルな料理だけに、素材の質と調理の巧みさが最終的な味わいに大きな影響を及ぼす。 トスカーナ州においては、Trippa alla Fiorentinaを食べれば、そのお店の実力が測れる、とすら言えるだろう。 そんなTrippa alla Fiorentinaに合わせられるローカルワインと言えば、当然の如く、サンジョヴェーゼである。

梁 世柱
3月1日


苦味と渋味、ローカルペアリングの極致
毎年2月の恒例となった、 イタリア・トスカーナ訪問に来ている。 今回はプラスアルファの時間を、他州での取材活動には当てず、あえて キアンティ・クラシコ へと向かった。 クラシコというワインの研究は毎年深度を増しながら取り組んできたが、どうしても行ってみたかった場所があったのだ。 初日の訪問先は Greve 。

梁 世柱
2月12日


小籠包は、ワインのお供
筆者が 小籠包 の魅力に目覚めたのは、NYでのソムリエ修行時代だ。 チャイナタウンの名店「Joe’s Shanghai」(日本のも出店)の本店で、名物の蟹小籠包がたっぷりと入った蒸篭を、数人の友人達と共に次々に空にし、高く高く積み上げていったことは、食体験の記憶として今でも鮮明に残っている。 今思えば、小籠包を一人30~40個も平らげるような食べ方には、なかなか若気の至りを感じるが、抗いがたい強力な魔法によって、あっという間に胃袋へと吸い込まれていったのだ。 さて、小籠包といえば、おおかた ビールか紹興酒 が定番のペアリングとはなるが、ワインで合わせるのもまた楽しい。 いや、むしろ 小籠包は、コツさえわかれば、ワインにとって最高のお供になり得る のだ。

梁 世柱
2月2日


奥深き紅茶ペアリングの世界 Part.2
Part.1で解説したように、 ティーペアリングの魅力は、ワインペアリングとは大きく異なる作用にある 。 例えば、生魚との相性において、ワインが日本酒を超えることが極めて難しいように、ティーペアリングにも 「不可侵」と呼べるような領域が存在 しているのだ。 その上で、 ワイン側の土俵にティーペアリングが入り込んだ時 、どのような 面白さ が生まれるのか、今回はまた視点を変えて検証してみよう。 お題としたのは、 「湘南みやじ豚 和風ロースト」 。 非常に滑らかなテクスチャーの脂身は甘味が強く、身もしっとりと柔らかい。タレは、醤油ベースの甘塩っぱい味わいだ。 どうしても 長い 咀嚼 時間 を必要とする肉料理は、 アルコール分と強いタンニンで持続性を増強 できるワインの方が、圧倒的に合わせやすい。

梁 世柱
1月31日


奥深き紅茶ペアリングの世界 Part.1
先日、 紅茶と日本料理をペアリングする会 、というものに参加してきた。 ペアリングを探究するものとして、非常に強い興味をもって参加したのだが、 収穫は予想と期待を遥かに超えるもの であった。 まず先に、ワインペアリングとティーペアリングそれぞれの利点不利点を整理しておこう。 ワインは、その味わいを構成する要素が非常に複雑であることから、ペアリングの際には 料理と多数の接点を作ることができる ため、必然的にペアリングもより 複雑 なものとなる。

梁 世柱
1月25日


ニョッキとワインの複雑な関係
私はパスタには目がないのだが、中でも好きなものの一つが、少し変わり種のパスタである、 ニョッキ だ。 ジャガイモと小麦粉を合わせて練り、ぷるんとした独特の柔らかい食感と、ソースにしっかりと絡みつく濃厚な味わいが特徴だ。 他にも、カボチャ、パン、ほうれん草、リコッタチーズなど、様々なヴァリエーションが存在するのも、ニョッキの奥深い魅力の一つ。 パスタマシンなどがなくても、自宅で簡単に手作り点は、さらなるプラス要素と言えるだろう。 そんなニョッキとのワインペアリングだが、 「粉物の法則」 がここでも適用される。

梁 世柱
1月24日


年越し蕎麦と合わせるワイン
激動の2024年が終わろうとする中、年の瀬といえば、と誰が決めたのかもよくわからないまま、例年通りに 年越し蕎麦 を食した。 少し濃いめの出汁に仕立て、海老がたくさん入ったかき揚げと共に仕上げた蕎麦は、寒気が強まる日々に、ぬくもり溢れるひとときを演出してくれた。 さて、蕎麦と言えば、やはり最高のお供は日本酒。特に少し熟成した純米酒に燗をつけると最高なのだが、ワインと楽しむのもまた良き。 しかし、 ワイン選びはなかなか難しい 。

梁 世柱
1月10日


家庭用カジュアルペアリング術
SommeTimesでは、ペアリング基礎理論に基づいて、高度なペアリング術について言及することが多かったが、今回は 古典的な色合わせの法則 に、 プラスアルファの要素 を加えて、家庭やカジュアルなシチュエーションでは十分に有効となるアイデアを紹介していこう。 色合わせの法則 は非常に簡単で、 料理の中心となる色調に、ワインの色調をできるだけ近付ける という方法だ。

梁 世柱
2024年12月14日


当たり前、の丁度良さ
郷土料理と同じ地のワインをペアリング する。 クラシックな手法として知られるが、その 本質 とは何なのだろうか、と時々考える。 と言うのも、 美食的な観点から、究極のペアリングを追い求めると、郷土ペアリングが正解とは思えないことが、実際に多々ある からだ。 その主たる理由として、 郷土料理の進化、もしくは郷土ワインの変化 が挙げられる。 例えば、フランス・ブルゴーニュ地方の郷土料理として名高い エスカルゴ・ア・ラ・ブルギニョン は、シャブリとの相性が抜群だったが、現在のアルコール濃度が上昇し、フルーツの熟度が高まり、酸が少し緩くなったシャブリと優れた相性を維持できているか、と問われると大きな疑問が残る。

梁 世柱
2024年11月29日
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