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出会い <67> キャリアチェンジへの憧れ
Domaine Chahut et Prodiges, Les Gros Locaux 2022. ¥3,800 「いつか自分でもワインを造るのか。」 知人、顧客、生徒たちから頻繁に受ける質問だが、 答えはNo 。 自分でモノづくりをしてしまうと、ジャーナリスト、教育者としての 徹底した公平性を保てなくなる 。 それが建前だが、本音は少し異なる。 大阪市内で生まれ育ち、NYで学び、東京で働く私は、生粋のシティ・ボーイ(ボーイというほどの年齢でも無いが)で、運転免許すらも取得していない。 取材などで国内外の田舎に赴くことは多々あるし、 ゆったりと流れる時間の心地良さ は十分に理解しているが、それでも自分がそのような場所で生きていくイメージはどうにも沸かない。

梁 世柱
2024年9月8日


SommeTimes’ Académie <67>(フランス・北ローヌ地方:Côte-Rotie)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回は フランス・北ローヌ地方 について学んでいきます。 フランスの銘醸地産ワインが高騰するなか、かねてから評価の高かったローヌ地方のワインも、一部のワインは非現実的な価格となりつつあります。 ローヌ地方は、黒葡萄のシラー、白葡萄のヴィオニエ、マルサンヌ、ルーサンヌを主体とした 北ローヌ地方 、黒葡萄のグルナッシュ、ムールヴェドルを主体とした 南ローヌ地方 に分かれます。 ローヌ地方全体で見ると、 北ローヌ地方の生産量は僅か5%程度 です。 気候、テロワール、栽培品種、生産量など、様々な面において 両産地は大きく異なります ので、混同しないように、各々の特徴をしっかりと把握しておきましょう。 まずは、北ローヌ地方の重要産地から、ローヌ地方シリーズをスタート致します。 北ローヌ地方第1回は、 「Côte-Rôtie」 を学んでいきます。 Côte-Rôtie Côte-Rôtie

梁 世柱
2024年9月4日


出会い <66> 聖地のニュースター
Daniel Jaunegg, Sauvignon Blanc “Muri” 2021. 近年の日本における学校教育の実態を聞いて、私は開いた口が塞がらなくなった。 どうやら子供達に、 徹底的に「競争」を避けさせている 学校が数多くあるらしいのだ。 勝者と敗者を同時に生む競争の弊害 に関しては、理解できる部分ももちろんある。しかし、運動会の徒競走で順位を決めないなどは、正直あまりにも極端に思えてならない。 切磋琢磨 、という言葉はもはや死語なのだろうか。 そういう私自身も、旧時代の遺物として揶揄されることになるのかも知れないが、私は 純然たる事実 をここに書き記そう。 今の私は、絶え間ない競争の果てに在る 、と。

梁 世柱
2024年8月25日


SommeTimes’ Académie <66>(フランス・ロワール地方:Anjou & Saumur地区)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回は フランス・ロワール地方 について学んでいきます。 フランスの銘醸地産ワインが高騰するなか、日常に寄り添うフランチ・ワインの産地として、ロワール地方の価値は一層高まっています。 ロワール地方シリーズ第6回は、 「Anjou & Saumur地区」 からカベルネ・フランの主要産地を学んでいきます。 ボルドーよりも寒いロワールの地に、なぜカベルネ・フランが根付いたのかは、明確になっていない部分が多く残されています。可能性として挙げられるのは、カベルネ・フラン特有の 寒気耐性の高さ ですが、温暖化の影響が顕著になる前まで、ロワール渓谷で栽培されたカベルネ・フランの潜在アルコール濃度は、10~11%程度の熟度だったとされています。このことからも、ロワール渓谷におけるかつてのカベルネ・フランは、相当程度 「補糖」とのセット で成立していたことも見えてきます。 フルボディのワインが強く求められた時代背景

梁 世柱
2024年8月23日


冷やし中華は夏ワインの友
夏の風物詩、というほど大袈裟なものでも無いかも知れないが、下町育ちの私にとって、 「冷やし中華はじめました」 と大きく書かれたのぼり旗は、暑さと虫が苦手で、夏には出不精が大加速する私を、昼間から屋外に引きずり出すのに十分な程度には、魅力的だ。 氷水でタイトな食感を得た中華麺の上で、ふわふわの錦糸卵、薄切りにしたハム、爽やかなトマトと胡瓜が踊り、酢の効いたタレが完璧な五重奏を指揮する。 絶妙にさっぱりとした食後感と、「野菜も摂れる」という言い訳で、ついつい炭水化物を大量摂取する罪悪感が消し飛んでしまうのが難点だが。 そんな 冷やし中華 が、 夏に飲みたくなるようなワインと抜群の相性を誇る ことは、あまり知られていないかも知れない。 夏といえば、 泡、白、ロゼでシャープな酸の効いたワインを、しっかりと冷やして楽しむのが定番 。

梁 世柱
2024年8月22日


再会 <66> 北海道生まれ、最高のVin de Soif
Domaine Ichi, op.10 Petillant Naturel Rosé 2023. Vin de Soif(ヴァン・ド・ソワフ) という言葉に明確な定義があるわけでないが、一般的には、 フレッシュかつフルーティーで、アルコール濃度が低く、極めてドリンカビリティに長けたワイン のことを指す。 ワンフレーズで言い表すなら、 「超グビグビ系ワイン」 、といったところだろうか。 グビグビ、はサラサラでもスルスルでもゴクゴクでも構わない。どちらにしても、似たようなものだ。 この言葉自体がナチュラルワインを示唆しているわけでもない のだが、 低亜硫酸醸造の方が、Vin de Soifらしい性質を遥かに実現しやすい というのもあり、 実際にはナチュラルと呼べるカテゴリー内に入っていることが非常に多い 。 そんなVin de Soifは、私にとって極めて重要な役割をもったワインである。

梁 世柱
2024年8月18日


Wine Memo <27>
Laurent Bannwarth, Riesling Bildstoeckle 2019. ソムリエとしての修行を始めて間もない頃。今から20年ほど前の話だ。 私は順当に、“当時は”ワイン界の中心にいた フランスの銘醸地 、つまりブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュから学び始めていたが、ワインの教科書を読み進めるうちに、とある産地に強く興味をもった。 フランスの アルザス地方 だ。 理由は大したものではない。 フランスなのにドイツ語が飛び交う だとか、 度重なる戦争でフランス領とドイツ領を行き来した とか、 ワインのボトルがドイツと同じ細長いタイプ だとか。 その 背景にある悲惨な歴史と理不尽に奪われた命 には興味をもたず、ただただ アルザスの特異性という結果 だけが私を惹きつけた。

梁 世柱
2024年8月9日


SommeTimes’ Académie <65>(フランス・ロワール地方:Anjou & Saumur地区)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回は フランス・ロワール地方 について学んでいきます。 フランスの銘醸地産ワインが高騰するなか、日常に寄り添うフランチ・ワインの産地として、ロワール地方の価値は一層高まっています。 ロワール地方シリーズ第5回は、シュナン・ブランの銘醸地として知られる 「Anjou & Saumur地区」 と致します。 また、前回のTouraine地方と合わせて、両地区はカベルネ・フランの銘醸地でもあります。カベルネ・フランを主体としたAOPに関しては、両地区を合わせて、第6回で解説いたします。 Savennières Anjou地区の中でも、辛口タイプのワインを産出する小アペラシオンとして、圧倒的に良く知られているのが、北西部に位置する Savennières (サヴニエール)です。 1970年代後半には、僅か46haにまで栽培面積が落ちていた Savennières ですが、その安定した高品質が認められ、

梁 世柱
2024年8月7日


レジェンドの息子 <Elias Musterの挑戦>
ワイナリーの継承 というのはとても難しい。 そもそも子供世代が 大変な農作業 を伴うワイナリーを引き継ぎたいとも限らないし、親が造っていたワインの 品質を維持 できるとも限らない。 ワイン造りに 「人」が深く関わってくる 以上、 変化は避け難い ものだ。 さらに、一般消費者だけでなく、ワイン業界に携わる人々も、代替わり後の品質に関しては、 問答無用という厳しさ で接することも多い。 そういう私も、 ポジティヴとは言い切れない世代交代を何度も目にしてきた し、代替わり後にそのワインを全く購入しなくなったことも何度もある。 特に、 親がレジェンド級の造り手であった場合、後継者にかかるプレッシャーは相当なもの だ。 優れた造り手であった両親のもとに生まれた子供を、無条件で 「サラブレッド」 と表現したくなる気持ちはわかるが、 現実はそう甘くない 。 もちろん、この難しさを誰よりも理解しているのは、 造り手本人 だ。

梁 世柱
2024年8月3日


出会い <64> 古代型ワインの妙
Atipico, Under the Plum Tree 2023. ¥5,800 人類最古のワインカテゴリーは何なのか。 とても興味深い疑問だが、考古学である以上、どのような見解にも頻繁に 「おそらく」 という枕詞がついて回る。 しかし、少なくとも 白ワインが最も古いカテゴリーではない 、という見解は極めて信憑性が高い。 現時点で見つかっている考古学的証拠からは、 紀元前3500年頃 に、 最初の白ワインらしきもの が現代の イラン で造られ始めたと考えられている。 また、 紀元前460年 に、「医学の父」とも呼ばれる古代ギリシアの ヒポクラテス が、 白ワインを患者に処方したと記録 しているため、確定に限りなく近い証拠という意味では、白ワインの最古の記述はヒポクラテスの処方記録となるだろう。

梁 世柱
2024年7月28日


新時代のサスティナブル茶園 <AMBA Estate>
NYでサーヴィスを学んだ私は、徹底した分業制というシステムこそが、絶対的に正しいと信じるようになっていた。 ソムリエである私が、皿を下げたり水を注いだり、裏に回って皿洗いをしたり、ワイングラスを磨いたり、トイレ掃除をしたりすることは、メキシコなどから文字通り命懸けで越境し、...

梁 世柱
2024年7月27日


Not a wine review <3>
Rockland Distilleries, Ceylon Arrack. (免税店価格:約4,900円) 一週間に渡って、ワインジャーナリストにとっては無縁の国を訪れた。 スリランカ だ。 半分はヴァケーションも兼ねた旅であったが、紅茶の 世界三大銘茶 とされるスリランカの茶産地 「ウバ」 (他の二つはインドのダージリン、中国のキームン)を訪れることが、この旅の目的。 未知の異国故の様々な小トラブルにも見舞われつつ、腹を下す覚悟をしながら(日本の衛生感覚ではありえないような)ローカル店でスリランカカレーを堪能したり、アーユルヴェーダ(インド・スリランカの伝統医療だが、スパの一環としても楽しめる)でリラクゼーションの深淵に没入したり、激しくバウンスするジープに揺られながらサファリで40頭近い象の群れに遭遇したりと、ワインジャーナリストとしての旅では決して味わえない非日常を過ごすことができた。 ウバでの体験はまた別稿にてレポートさせていただくが、今回のレヴューシリーズで紹介したいのは スリランカのアラック 。

梁 世柱
2024年7月21日


SommeTimes’ Académie <64>(フランス・ロワール地方:Touraine地区)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回は フランス・ロワール地方 について学んでいきます。 フランスの銘醸地産ワインが高騰するなか、日常に寄り添うフランチ・ワインの産地として、ロワール地方の価値は一層高まっています。 ロワール地方シリーズ第4回は、シュナン・ブランの銘醸地として知られる 「Touraine地区」 と致します。 シュナン・ブラン この品種の歴史を紐解くと、最古の記述は 1496年 にまで遡ることができます。 トマ・ボヒエ なる貴族が、ロワール渓谷の古城群でも際立って名高い シャノンソー城周辺 に葡萄畑を開墾し、アンジュから葡萄を持ち込んだとの記録があり、この 「アンジュの葡萄」 は、シュナン・ブランであったと確実視されているため、少なくとも1496年以前から、ロワール渓谷にシュナン・ブランが根付いていたことが確認できます。

梁 世柱
2024年7月11日


再会 <64> 飲み頃観測の難しさ
Rall, AVA Syrah 2020. ¥11,800 ワインの飲み頃予測に、完璧な方程式は無い。 産地(もしくは特定の葡萄畑)と葡萄品種だけで予測が成り立つなら簡単だが、実際にはヴィンテージ、造り手の特徴(特に収穫時期と醸造関連)、輸送環境、管理状況などの様々な変数が関わってくるため、 極めて複雑なマトリックス となってしまう。 ワインファンなら、せっかく手にしたボトルを最高の状態で楽しむために、飲み頃予測に「神の数式」が存在すれば、と願うのはいたって普通の思考だと思うが、 百戦錬磨のトップ・プロフェッショナルであっても、本当の意味での正確無比な予測は100%に限りなく近いほど不可能 と言える。 私自身も、この法的式の探究には真摯に取り組んできた一人だが、正直に申し上げると、私は数年前に諦めている。

梁 世柱
2024年7月7日


ハプスブルグ風カジュアルペアリング
前回のペアリング研究室 では、西〜中央ヨーロッパ料理の粋と言える オーストリア料理 と、その象徴的な料理の一つである ヴィーナー・シュニッツェル の話をした。 今回もその流れのまま、もう一つの代表的なオーストリア料理である ヴィーナー・サフトグーラーシュ(ウィーン風ビーフグラーシュ) の話をしよう。

梁 世柱
2024年6月29日


SommeTimes’ Académie <63>(フランス・ロワール地方:Centre Nivernais地区:後編)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回は フランス・ロワール地方 について学んでいきます。 フランスの銘醸地産ワインが高騰するなか、日常に寄り添うフランチ・ワインの産地として、ロワール地方の価値は一層高まっています。 ロワール地方シリーズ第3回は、ソーヴィニヨン・ブランの殿堂として知られる 「Centre Nivernais地区:後編」 と致します。 今回は、Centre Nivernais地区の SancerreとPouilly-Fum é(以降PFと表記)に関して、より深く学んで行きます。 全体像 『サンセールは春のようで、プイィ=フュメは夏のようだ。』 故キット・スティーヴンスMWは、SancerreとPFの違いをこう詩的に表現しました。

梁 世柱
2024年6月27日


オーストリアの大定番
ヨーロッパのワイン産出国は数多く訪れたが、カジュアルな食(ガストロノミーの話になると、国や地域ではなく、レストラン単位の話になる)の美味しさが際立っていると個人的に感じる国の2トップは、 オーストリアとポルトガル だ。 オーストリア料理 、と聞いてもイメージできる人は少ないかも知れないが、多民族国家であった ハプスブルグ王朝時代に、多種多様な食文化が融合し、磨き上げられた 結果、非常にバランス感に長けた料理体系として発展したという経緯がある。 言うなれば、 西〜中央ヨーロッパ料理の粋 、とも言えるのがオーストリア料理なのだ。 さらに、オーストリア料理は温かい料理が、 ちゃんと「温かく」提供される 、という日本人(アジア人)には特に嬉しい特徴もある。 さて、オーストリア料理の中でも、最も象徴的なものとされる料理の一つが、 ヴィーナー・シュニッツェル 。

梁 世柱
2024年6月23日


Not a Wine Pairing <5> ウィーン・クラシック
クラシック・ペアリングというものは、何もワインの専売特許という訳ではない。 特定の食と飲が同一文化の中で共存し続けた結果、一部の組み合わせが完璧なクラシックへと昇華する例は、世界各地に少なからず存在する。 ペアリングの新シリーズ「 Not a Wine Pairing 」では、 『ワイン以外のクラシック・ペアリングから、ワイン専門家や愛好家が何を学べるのか』 をテーマとして、様々な検証を行なっていく。 第5回のテーマは、 オーストリア・ウィーン の名スイーツであり、チョコレートケーキの王様と讃えられる 「ザッハトルテ」 と、フレイバード・ティー 「ザッハブレンド」 の組み合わせ。 共に 「ザッハ」 の名を冠することからも分かるように、これらはウィーンのフィルハーモニカー通りにある5ツ星ホテル 「ホテル・ザッハー」 にオリジンがある。 「四季」で知られる作曲家アントニオ・ルーチョ・ヴィヴァルディの邸宅跡に建てられたホテル・ザッハーは、 ザッハトルテを開発した菓子職人フランツ・ザッハー の息子、エドゥアルト・ザッハーが1876年に開業

梁 世柱
2024年6月15日


SommeTimes’ Académie <62>(フランス・ロワール地方:Centre Nivernais地区:前編)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回は フランス・ロワール地方 について学んでいきます。 フランスの銘醸地産ワインが高騰するなか、日常に寄り添うフランチ・ワインの産地として、ロワール地方の価値は一層高まっています。 ロワール地方シリーズ第2回は、ソーヴィニヨン・ブランの殿堂として知られる 「Centre Nivernais地区:前編」 と致します。 Centre Nivernais地区 19世紀初頭 まで、現在ではソーヴィニヨン・ブランの産地となっている Sancerre は、 赤ワイン の生産が大半を占めていました。後に白葡萄である シャスラ に大幅に取って代わられましたが、それも19世紀後半の フィロキセラ禍で壊滅 しました。 ソーヴィニヨン・ブランの栽培が本格的に始まったのはフィロキセラ 禍 以降ですが、1930年代中頃まで、 Sancerreのワイナリーは シャンパーニュにバルクワインを送り届ける ことで生計を立

梁 世柱
2024年6月14日
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