一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのがSommeTimes’ Académieシリーズ。初心者から中級者までを対象としています。今回はフランス・ロワール地方について学んでいきます。
フランスの銘醸地産ワインが高騰するなか、日常に寄り添うフランチ・ワインの産地として、ロワール地方の価値は一層高まっています。
ロワール地方シリーズ第5回は、シュナン・ブランの銘醸地として知られる「Anjou & Saumur地区」と致します。
また、前回のTouraine地方と合わせて、両地区はカベルネ・フランの銘醸地でもあります。カベルネ・フランを主体としたAOPに関しては、両地区を合わせて、第6回で解説いたします。
Savennières
Anjou地区の中でも、辛口タイプのワインを産出する小アペラシオンとして、圧倒的に良く知られているのが、北西部に位置するSavennières(サヴニエール)です。
1970年代後半には、僅か46haにまで栽培面積が落ちていたSavennièresですが、その安定した高品質が認められ、復活の最中にあります。南から南西に向いて連なる丘は日当たりが良く、雨が少なく病害リスクが低いため、葡萄が安定して熟しやすいという特徴があります。 Savennièresのアルコール濃度が、ロワール渓谷のシュナン・ブランの中でも最も高くなることが多いのは、このテロワールが所以です。
土壌は、シストと火山岩が主体となりますが、表土がかなり薄い点が特徴的です。
一般的に、Savennièresは非常に硬質で分厚いミネラル感が特徴で、全体的に「大柄で筋肉質」な印象が強いアペラシオンとなります。この特徴と、驚異的な長期熟成能力から、ロワール渓谷最上のシュナン・ブランの産地とされることも多いですが、同じアンジュ地方の中でも、優れたAnjou BlancとSavennièresの違いは、ブルゴーニュで例えるなら、順にムルソーとピュリニー・モンラッシェの違いに近いと言えます。つまり、両者間にあるのは、明確な優劣ではなく、個性の違いと考える方が正確ということです。
Savennières Roche aux Moines
Savennières Coulée de Serrant
基本的には階層制ではないロワール地方の原産地呼称制度において、Savennièresに内包される二つのサブアペラシオンを、より上位のエリアと見なすかは、意見が分かれるところです。ワイン法としては、これらのアペラシオンはSavennièresの上位ではなく、あくまでも独立したアペラシオンとして横並びになっています。歴史的にも、この二つが独立したアペラシオンとして成立したのは2011年と、つい最近の話です。
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