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生肉のカルパッチョを攻略
肉料理、特に赤身肉を使った料理には、赤ワインが定番。 ワインペアリングの常識は概ね正しい。 特に噛みごたえのある赤身肉と合わせるには、赤ワインのタンニンが必要になるからだ。 しかし、その法則は、「逆」の可能性も示している。 噛むことを僅かしか必要としない赤身肉料理なのであれば、タンニンもまた不必要となるのでは無いのか、と。

梁 世柱
2025年5月10日


ネズミ臭ワインのリターン問題
先日、ふらっと立ち寄ったイタリアンレストランが、期待を遥かに超えた大当たりで驚いた。 最初に頼んだ乾杯用のフランチャコルタが抜群に美味しく、自家製の黒オリーブ入りフォカッチャも極上で、オーダーした料理の全てが最高に美味だった。 合間合間にグラスで頼んだワインも全体的に美味しかったのだが、実は退店する時、あまり良い気分にはなれなかった。 その理由は、グラスで頼んだオレンジワインの、ネズミ臭(俗称、マメ臭)だ。

梁 世柱
2025年5月9日


テーマ・テイスティング
私は昔、音楽に明け暮れていた。 主な楽器はギター、専攻は作曲で、実はアメリカの音楽大学を卒業までしている。 今はもう、音楽は完全な趣味で、本業がワインとなっているのだが、私にとっては音楽もワインも、似ている部分が多い。 まず、どちらも何かしらのインスピレーションを元に表現をする、という点が共通している。 音楽なら感情や情景などがインスピレーションに、ワインならテイスティングそのものがインスピレーションとなる。

梁 世柱
2025年4月27日


ユッケの正解は、赤ワインなのか?
1996年に、食材の中で死滅していなかったO-157などの大腸菌によって、大規模な食中毒が起こったことを機に、食品衛生への懸念が高まっていた中、2011年に焼肉チェーン店が起こした、ユッケ集団食中毒事件は、181人の顧客に腸管出血性大腸菌O-111を感染させ、5人の死者と24名の重症者を出すという、日本の飲食史上最悪とも言える大惨事に繋がった。 この事件を受けて、生食用牛肉の処理に関する基準がさらに厳格化。生肉としての提供自体が完全に禁止されたのは牛レバーのみ(2012年以降)だが、生肉提供のために必要な検査や処理の煩雑さ、所要時間、高いコストなどから、実質的には全ての牛生肉提供が禁止に限りなく等しい状況となった。 しかし、店舗が自治体からの許可を取得した上で、規定を満たした生肉処理を行なった肉卸業者から購入すれば、今でも牛レバー以外は提供することはできる。 そう、正しいお店選びをすれば、「本物の」ユッケを、安全に食べることができるのだ。

梁 世柱
2025年4月12日


フレンチトーストで朝ワイン
日本の一般的な洋食系朝食メニューの中でも、フレンチトーストとパンケーキは、王者争いをしているのではないだろうか。 パン生地そのものに味を染み込ませるフレンチトースト、上に乗せる食材で様々に表情を変えるパンケーキ。 近年の流行を鑑みると、勝負はややパンケーキが優勢に思えるが、私は頑なにフレンチトースト派だ。 フレンチトーストの起源は、古代ローマ時代にまで遡れるほど古いと考えられている。

梁 世柱
2025年3月29日


出会い <78> アンフォラとサンジョヴェーゼ
Il Borro, “Petruna” Sangiovese is Anfora 2020. 1990年代半ばに、北イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリアの東端で始まった オレンジワインの再興が、ワイン界にもたらしたものは、オレンジワインが第四のカテゴリーとして定着したことだけではない。 その過程で、アンフォラ(地中に埋める円錐形のものはクヴェヴリ)という古代の容器もまた、世界各地へと再伝達されて行ったのだ。 アンフォラとオレンジワインを直接的に結びつける人は多いとは思うが、現在では、赤、白、ロゼ、オレンジワインの全てで、アンフォラの採用が広がっている。

梁 世柱
2025年3月24日


甘口産地の辛口ワイン
近年、甘口ワインの銘醸地として名を馳せてきた産地で、辛口ワインの生産が急増している。 世界的な甘口離れ、がその根底にあるのは明白であり、実際に甘口〜極甘口ワインの産地は、どこも例外なく、セールスに苦しんでいる。 そのような時流の中で、改めて冷静になって、「甘口産地の辛口ワイン」に関して、考えてみようと思う。

梁 世柱
2025年3月23日


牡蠣グラタンのストライクペアリング
誰にでも、幼少期からの大好物、という食べ物があるだろうか。 私の場合は、なんといってもグラタンだ。 ベシャメル、チーズ、マカロニのゴールデントリオが奏でるハーモニーは、何ものに変え難い落ち着きを与えてくれる。 肉、海鮮などの追加食材によって、また味わいの性質が微妙に変わっていくところも、グラタンの面白いところだ。 今回ペアリング研究室の題材として取り上げたいのは、牡蠣グラタン。 牡蠣のエキスが絶妙に染み込んだ奥深い味わいのベシャメルと、シンプルにグリルした牡蠣が、グラタンを三重奏から五重奏へと重厚に変化させる。

梁 世柱
2025年3月22日


再会 <78> 魅惑のオーストラリア・リースリング
Ravensworth, Regional Riesling 2022. ¥4,500 リースリングは鏡のような葡萄品種だ。 葡萄が育ったテロワールを、どこまでも素直に表現することができる。 新樽を効かせたりといった手法が全く一般的では無いのも、また良い。 余計な味付けはせず、ただただ素材の味わいを活かす。 リースリングという葡萄が、私の心に深く響く理由は、そこにあるのかも知れない。

梁 世柱
2025年3月16日


再会 <77> やはり素晴らしかったTerra Electae
Marchesi Gondi, Chianti Ruffina Riserva Terra Electae “Vigneto Poggio Diamante” 2021. 昨年トスカーナ州を訪れた際、私の中では決して評価の高い産地ではなかったChianti Ruffinaという地に、一筋の光を見た。 Ruffinaを評価してこなかった理由は、全てと言って良いほど、過剰な国際品種のブレンドにあった。 そもそも、Ruffinaは、Chiantiの名を関するDOCGの中でも、最も冷涼な産地の一つ。 そのようなRuffinaにとっては、繊細で優美な酒質こそが本質のはずあり、それを覆い隠すようなカベルネ・ソーヴィニヨンのパワーには、違和感しか感じてこなかった。

梁 世柱
2025年3月3日


出会い <76> 補助品種の野心
Podere della Bruciata, Tizzo 2019. 葡萄栽培学と病害対策が現代に近い水準に進化するまで、ワイン造りは、多品種栽培と多品種ブレンドが基本であった。 それは、昔の人々が積み重ねた経験と観察眼に基づいた、リスクヘッジであった。 一つの葡萄が病害などによって不作に陥っても、他の品種が上手く育てば、ワインをつくることができる。 細かなブレンド比率や、テロワールなどといった概念よりも、毎年ちゃんと葡萄を実らせることの方が遥かに大切だったことは、想像に難くない。

梁 世柱
2025年2月24日


Wine Memo <33>
Stefano Amerighi, Syrah Cortona DOC 2021. 私が毎年2月に参加しているAnteprime di Toscanaというイベントでは、1日、もしくは2日毎にテーマの異なる試飲会が開催されるのだが、L’Altra Toscanaというトスカーナ州の「その他」を集めた試飲会が、実は密かな楽しみになっている。 Chianti Rufina、Carmignano、Montecucco、Maremmaといった、L’Altra Toscanaでは「お馴染み」のDOCやDOCGに加え、毎年もっとマイナーな産地から、交代でブースが出てくるのだ。 時に興味深い発見もあれば、肩透かしな年もあるが、2025年は「当たり」だった。

梁 世柱
2025年2月22日


トレンドと熟成
アメリカのワイン評論家であるロバート・パーカーJrが、世界中のワイン産業に巨大な影響力をもつに至った1990年代以降、繊細さよりもパワフルさを重視したワインが、続々と誕生した。 そのトレンドは、少なくとも2010年代前半までは続いていたのだが、2025年となった今、すっかりと軽快な味わいへと変貌したワインとの垂直試飲で、大きな違和感を感じることも増えてきた。 そう、ワインの性質が異なりすぎて、もはや垂直試飲として成立していない(ヴィンテージの差異や熟成の妙味が、強いワインメイキングによって覆い隠されている)のに加え、パワーワインの飲み頃に関して、大いに疑問が浮かんでくるのだ。

梁 世柱
2025年2月17日


国際品種とテロワール
1970~80年代。特に1976年の「パリスの審判」以降、伝統、新興問わず、世界各地のワイン産地に巨大な変化が訪れた。 カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、そしてシャルドネの大進出だ。 これらの葡萄には、ブレンドの中に15~20%程度含めるだけで、そのワインの味わいを数段階も「わかりやすい」ものとする特性があった。 わかりやすさは、圧倒的な売りやすさにも繋がる。 歴史ある銘醸地ですら、その誘惑には抗えなかったのだから、新興産地がフランス系国際品種に支配されるのは必然だった。

梁 世柱
2025年2月14日


ナパ・ヴァレーのエレガンス <Screaming Eagle>(特別無料公開)
世界に名だたる銘醸地 ナパ・ヴァレー でも、最も カルト的 と言えるステータス。 ボルドー左岸メドック地区公式格付け第一級シャトーを遥かに上回り、 シャトー=ペトリュスにすら迫る販売価格 。 有力評論家による、複数回の 満点評価 。...

梁 世柱
2025年2月8日


小籠包は、ワインのお供
筆者が小籠包の魅力に目覚めたのは、NYでのソムリエ修行時代だ。 チャイナタウンの名店「Joe’s Shanghai」(日本のも出店)の本店で、名物の蟹小籠包がたっぷりと入った蒸篭を、数人の友人達と共に次々に空にし、高く高く積み上げていったことは、食体験の記憶として今でも鮮明に残っている。 今思えば、小籠包を一人30~40個も平らげるような食べ方には、なかなか若気の至りを感じるが、抗いがたい強力な魔法によって、あっという間に胃袋へと吸い込まれていったのだ。 さて、小籠包といえば、おおかたビールか紹興酒が定番のペアリングとはなるが、ワインで合わせるのもまた楽しい。 いや、むしろ小籠包は、コツさえわかれば、ワインにとって最高のお供になり得るのだ。

梁 世柱
2025年2月2日


ニョッキとワインの複雑な関係
私はパスタには目がないのだが、中でも好きなものの一つが、少し変わり種のパスタである、ニョッキだ。 ジャガイモと小麦粉を合わせて練り、ぷるんとした独特の柔らかい食感と、ソースにしっかりと絡みつく濃厚な味わいが特徴だ。 他にも、カボチャ、パン、ほうれん草、リコッタチーズなど、様々なヴァリエーションが存在するのも、ニョッキの奥深い魅力の一つ。 パスタマシンなどがなくても、自宅で簡単に手作り点は、さらなるプラス要素と言えるだろう。 そんなニョッキとのワインペアリングだが、「粉物の法則」がここでも適用される。

梁 世柱
2025年1月24日


偉大なるメルロー Masseto
かつて、スーパートスカン(タスカン)と呼ばれる数々のワインが世界のワイン市場を席巻するほどの大ブームとなった頃、その頂点に2つのワインが鎮座していた。 一つはテヌータ・サン・グイドが手がけるサッシカイア。1985年ヴィンテージがワイン・アドヴォケイト誌で満点を獲得したことをきっかけに、イタリア産カベルネ・ソーヴィニヨン・ブレンドの象徴となった銘柄だ。 もう一つに関しては、多少の異論はあるかも知れないが、アンティノリ一族が手掛けるオルネライアではなく、同じオルネライアのスペシャルなメルローのキュヴェとなる、マッセートがその地位に相応しいだろう。

梁 世柱
2025年1月18日


欠陥的特徴の経過観察 <5>
「欠陥的特徴の経過観察」では、とあるナチュラルワインに生じた問題が、どれくらいの時間で「沈静化」、もしくは変化するのかを、約2ヶ月おきに検証していく企画としてスタートした。 前回検証時(2024年9月21日)では、2本を同じタイミングでテイスティング、2本ともに、揮発酸、還元臭、ブレタノミセスが複雑性の一部となり、高い次元のバランスに至っていた。 本企画の検証対象となるスパークリングワインは、同ケースのロットで11本入手したため、本来ならば瓶差という可能性は極限まで排除できていると考えて良いが、それでも十分な亜硫酸添加によって、菌類、微生物類の活動を最小限まで低減、かつ平均化させたワインではないため、その「誤差」はより大きくなる傾向にある。

梁 世柱
2025年1月13日


年越し蕎麦と合わせるワイン
激動の2024年が終わろうとする中、年の瀬といえば、と誰が決めたのかもよくわからないまま、例年通りに年越し蕎麦を食した。 少し濃いめの出汁に仕立て、海老がたくさん入ったかき揚げと共に仕上げた蕎麦は、寒気が強まる日々に、ぬくもり溢れるひとときを演出してくれた。 さて、蕎麦と言えば、やはり最高のお供は日本酒。特に少し熟成した純米酒に燗をつけると最高なのだが、ワインと楽しむのもまた良き。 しかし、ワイン選びはなかなか難しい。

梁 世柱
2025年1月10日
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