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ヴィニュロンの一年 <2023年12月>
2023年も残り僅か。 今年の1月から毎月執筆してきた「ヴィニュロンの一年」も今月で最後となり、私のブドウ畑での作業は一区切りとなる。 1月の剪定から10月の収穫まであっという間に時間が過ぎ、収穫されたブドウ達はワインへと変化、ブドウ樹達は来春までの長い休眠期へと入った。...

ソン ユガン
2023年12月28日


ヴィニュロンの一年 <2023年11月>
収穫の終わったブドウ畑は静まり返っている。 あの収穫前の熱気や、興奮が渦巻いていた空気感は一切なく、紅葉したブドウ達が何事もなかったかの様に、ただ風に揺られ佇み、落葉が地面を覆っている。 収穫を終えた数日後、久し振りに畑を訪れて後片付けをし、それから暫く畑には行かなかった。 昨年もそうであったが、なぜか少し距離を取りたくなってしまう。 しかし、 2024年シーズンは既に始まっている 。 葉の紅葉や落葉の状態、枝の登熟具合を確認しながら、今シーズンの栽培を振り返り、来年へ向けて見直しを考えていかなければならない。 【紅葉】 周りの山々草木が美しく色鮮やかに紅葉している。ブドウ畑も同様に葉の色が変わり、黄色や赤など一面を彩っている。 「紅葉」とは、気温の低下に伴って光合成効率の下がった葉の、葉内クロロフィル分解による老化反応であり、且つ落葉および再利用物質の回収準備でもある。

ソン ユガン
2023年11月28日


ヴィニュロンの一年 <2023年10月> 特別無料公開
10月1~2日の2日間で今年の収穫を行った。 昨年が10月15~16日だったので、約2週間早い収穫となったが、周りにも、例年より1週間から2週間早い収穫の決断をした生産者が多くいたようだ。 異常な暑さが続いた2023年、長く雨量の多かった梅雨、猛暑、病害虫、9月の雨と、私に...

ソン ユガン
2023年11月1日


ヴィニュロンの一年 <2023年9月>
9月に入っても30度を超える真夏日が続いた長野市。 雨が非常に少なく、晴れ間の多い日が続いていたが、9月中旬から徐々に気温が下がり、雨の日が増え始め、天気が崩れ始めている。 ベト病やさび病、黒とう病 などが発生してしまっていたが、晴天少雨の天候にどうにか救われた状態だ。しかし、果実への被害は変わらずに発生している。 ブドウトリバの幼虫による食害被害 は未だ収まらず(ピークは過ぎた模様)、 鳥による食害、収穫前の降雨による裂果、裂果からの灰色カビ病 、更に 晩腐病 と、収穫が近づくにつれて厳しい状況に追いやられている。 昨年は9月の降雨量が非常に多かった為に、裂果が多く発生し、それによる病気の多発や水分過多による品質低下(糖度やPhに影響)などがあり苦労した。 今年は9月中旬まで雨が少なかったが、ここ数日の降雨で昨年に近い状況になってきてしまっている。収穫まで天候は一体どうなるのだろうか? 10月の 「収穫日」 を決定しなければならないが、果実の成熟具合を確認し(食味および糖度測定)、地元収穫ボランティア方達の都合を考慮した日時、および委託醸造先の

ソン ユガン
2023年9月28日


ヴィニュロンの一年 <2023年8月>
雨、雨、雨の 厳しい梅雨 が終わった途端、一転して 雨がほとんど降らない真夏日、猛暑日 が8月中旬まで続いた長野県。 7月末に発生した台風6号が発達しながら北上し、8月初旬に沖縄と九州に上陸し被害をもたらした。台風は進路を変えて北上した為に甲信越には影響がほとんどなかったが、被災された地および人たちの、一日も早い復旧復興を願うばかりである。 台風6号が通過した後も真夏日が続き、 日中気温が35度近くまで上がる日 も多く、地元の方達は 「昔の長野は30度になることもめったになかった。35度は異常だ。」 と話している。 気温35度の中で行う農作業は、想像以上にきつい。照りつける強烈な日差しと、猛烈な暑さの中で農作業を行っていると、徐々に息苦さを感じ呼吸が乱れ、体が悲鳴をあげる。無理をして作業を行えば「熱中症」になってしまう可能性がある為、なるべく直射日光を避ける服装や、こまめな水分補給などを心がけ対処している。 8月中旬以降も真夏日/猛暑日が続いているが、 雷雨やゲリラ豪雨も定期的に発生 しており、今後天候不順にならぬことを祈るばかりである。 【熱中

ソン ユガン
2023年8月29日


ヴィニュロンの一年 <2023年7月>
6月8日に始まった長い長い 梅雨 が、ようやく明けた。 気象庁は7月22日、長野県を含む関東甲信地方が梅雨明けしたとみられると発表、 平年より3日遅く去年より1日早い梅雨明けで、 梅雨明け前90日間の合計降水量は393.5mm(平年比131%) であった。 6月末から7月に発生した日本各地の豪雨により、多くの方が被災された。 ブドウにとっても厳しい天候が続き、特に開花前後の降雨による果実への影響、高湿度による病気の発生が多く発生し、雨の恐ろしさを再認識する年となった。 10月の収穫までまだ3か月近く残っており、今後の晴天を祈るばかりである。 【開花】 6月中旬から開花を始めたブドウ達。

ソン ユガン
2023年7月27日


ヴィニュロンの一年 <2023年5月>
5月に入っても気候の安定しない長野市。例年ならGW明けから急激に暖かくなり、完全な春の訪れを感じるのだが、 日毎の寒暖差が激しく 、最高気温が 30 ℃近い日もあれば、 15 ℃という日もある。雨も多く降っており、さらに先日、ゲリラ豪雨とともに「雹(ひょう)」が降った。 霰と雹の間くらいの小粒で短時間だった為に、農園被害は無かったが、「もし粒がもっと大きく長時間降っていたら。」と考えると非常に恐怖を感じた。 ブドウ達は萌芽後すくすくと生長し、長い新梢で40cmを超えている。 雨が多ければブドウも育つが雑草も育つ。さらに病害虫リスクも高まるため、必要な作業をしっかりとこなし、観察し、対処していかなければならない。 【定植(品種)】 いよいよ栽培する品種が決定し、植え替えの定植を行った。 植樹から5年目、ようやく昨年に初収穫を迎えたブドウ樹を切り、新しい苗を植えるという行為をなかなか理解してくれない方も多いが、私は未来へ向けて進んでいきたい。 今年200本、来年250本、再来年は様子を見て追加の定植を行う予定でいる。

ソン ユガン
2023年5月28日


ヴィニュロンの一年 <2023年4月>
4月に入りすっかり春を感じる長野市。気温の上下はまだ激しいが、20度を越す暖かい日も多くなってきている。 春を告げる野花たちが顔を出し、自然の山々は新緑が初々しく、梅や桃、桜の花が咲き誇り、ちょうど今、林檎の花が満開である。畑では様々な虫たちが活動を開始し、冬の静けさから一変、生命が活発に動き出しているのを感じる。 長野地方気象台にあるソメイヨシノの標本木の開花は、なんと3月28日。例年より2週間ほど早く、統計開始以来、最も早い開花だそうだ。地元の方達も「長野で3月に桜が見れるなんて。」と驚いている。 圃場のブドウ達も例年より早く芽吹く予感がする。 ブドウが萌芽する前に、出来るだけの準備を急いで行わなければならない。 【休眠期防除】 ブドウの病害防除は、萌芽後の生育期に行うのが一般的だが、 萌芽前の休眠期に一度行う事で、その効果をより一層高める事ができると言われている 。 休眠期防除によって越冬病原菌の第一感染源となる分生子(胞子)の形成量を抑えて、伝染源密度を低下させ、生育初期の発病抑制および生育期防除の効果を高めることが出来る。

ソン ユガン
2023年4月28日


ヴィニュロンの一年 <2023年3月>
3月中旬で既に春を感じる長野市。 標高630mの圃場に雪は無く、 オオイヌノフグリ の花が既に美しく咲き乱れている。森の木々も芽吹き、 檀香梅 (クロモジ属)は満開を迎えている。植物達は例年よりも早い春の訪れを感じ、それを私たちに知らせてくれているようである。ちなみにオオイヌノフグリの花言葉は「 春の喜び 」。 冬の厳しい寒さが長く続く長野県。この地に住む身として、春の訪れはとても嬉しく喜び溢れる季節でもある。気温の上昇とともに、自然界に住む生き物達が活動を開始し、そこから大きなエネルギーが発するのを感じることができる。寒さ厳しい地だからこそ、より一層春の到来に喜びを感じるのだろう。 1月下旬に開始した剪定作業がようやく終わり、ここからは 4月の萌芽に向けて準備 を進めていかなければならない。

ソン ユガン
2023年3月25日


ヴィニュロンの一年 <2023年2月>
暖冬の続く長野県。 1月下旬および2月初旬の大寒波によって一時的な大雪は降ったものの、例年に比べて非常に雪が少ない。2月下旬には日中に10℃を越える暖かい日も多く、雪ではなく雨が降っている。 現時点で生育期の天候を予想することは難しいが、近年続く悪天候がまた今年も来るのでは...

ソン ユガン
2023年2月27日


ヴィニュロンの一年 <2023年1月>
2019年に植樹したブドウ達は、今年5年目を迎える。 長野県長野市北部、自然豊かな中山間地「浅川地区」のとある森の中にある約2haの土地。 標高630m、南向き、若干の傾斜で日当りは良く、優しい風が通り抜ける。周りは木々に囲まれ、山の中に静かに佇み、鳥達の歌声だけが聞こえてくるブドウ畑。 昨年10月に念願の初収穫を終えた畑は、それから時が止まったかのように静まり返り、 ブドウ樹は、冬の寒さに耐えながら春の訪れを待っている。 収穫後の安堵した時間も束の間、2023年1月、いよいよ今シーズンの始まりである。 「暖冬」 通常なら2月から開始する剪定作業なのだが、今年は少し早める事にした。 理由は“暖冬”。今年は雪が異常に少なく、例年に比べて非常に暖かい。1月に気温が15℃近くまで上がった日もあり、さらに雪ではなく雨まで降っている。地元の方に聞いたが、1月に雨は経験がないと言っている。

ソン ユガン
2023年1月31日


自然農法の真理 <後編>
私は、昨年の春からこの冬の間中ずっと思い悩んでいたことがあった。 「なぜ人間は、野に舞う蝶や、空飛ぶ鳥のように自由に生きることができないのか…。」 その悩みに答えを示してくれたのが、 福岡正信氏 だ。 自然農法の大家、福岡氏の遺した数々の言葉。 それらは、表面的には 非常に宗教色が強く思えるかも知れないが、その本質は大きく異なる 。 氏の鋭く、時に断定的な言葉使いを、断片として切り取ってしまうと、真意を読み誤ることもあるだろう。 よって、以降の内容を、 宗教的という目線から考えないことを、強く推奨する 。 福岡氏の言葉も、 本意としては様々な宗教を否定するものでは決してなく、氏の言葉をもとに書かれたこの記事もまた、宗教を否定する類のものでは一切ない 。 真理 福岡氏の 「無の哲学」 では、仏教における 「空」の思想 をもとにした、氏の思想が語られている。 福岡氏は著書で何度も 「真理は一つだ」(絶対的真理) と言っているのだ。 その真理とは。 「 絶対的真理 は、無力どころか、架空の概念を一時的に満足せしめるに役立つのみの科学的真理よりも、より強

ソン ユガン
2022年6月28日


自然農法の真理 <前編>
福岡正信氏とは?と聞かれて一言で答えることができる人がどれ程いるだろうか。 自然農法の人、粘土団子の人、わら一本の革命の人。 世界のワインに通じる方なら、氏について知っているかもしれない。 海外に通じるワインプロフェッショナルなら、氏について聞かれたことがあるかもしれない。 実は、新型コロナ禍で世界の価値観に変化の兆しが見えている。 今、世界的に、東洋的思想が再評価されてきているのだ。 本特集では、福岡正信氏とは一体だれなのかを、丁寧に紐解いていく。 自然農法の本質、その実践に至った経緯、そして氏の哲学。 その思想は農業にとどまらず、人間性、神性、生き方へと繋がり、この現代社会を導く灯火ともなる。 そしてそれは、日本の農業、ブドウ栽培とも関わりがある。 福岡正信氏とは? 私はこう答える。 「キリストやガンジーのように真理を振りかざし、仏のように慈悲をもって無に還ろうと絶叫した百姓であり、哲学者であり、ある種の神性を得た存在。」 と。 本特集は、なるべく福岡正信氏自身が著書内で語っている内容をそのまま使用するよう努めているが、私の個人的な見解も多分

ソン ユガン
2022年6月15日


選択 <循環の守り手として生きていく>
2021年に入ってしばらく経過したが、長野は12月中旬の初雪から継続して雪が降り、畑は2月の中旬を過ぎても雪に覆われていた。日本都市部、世界各国、かわらず新型コロナウイルスの影響で苦しい状態が続いているが、今年はどんな年になるのか、昨年の自然災害、地球気候危機に直面している...

ソン ユガン
2021年3月31日
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