top of page
検索


再会 <77> やはり素晴らしかったTerra Electae
Marchesi Gondi, Chianti Ruffina Riserva Terra Electae “Vigneto Poggio Diamante” 2021. 昨年トスカーナ州を訪れた際、私の中では決して評価の高い産地ではなかった Chianti Ruffina という地に、一筋の光を見た。 Ruffinaを評価してこなかった理由は、全てと言って良いほど、 過剰な国際品種のブレンド にあった。 そもそも、Ruffinaは、Chiantiの名を関するDOCGの中でも、 最も冷涼な産地の一つ 。 そのようなRuffinaにとっては、 繊細で優美な酒質こそが本質 のはずあり、それを覆い隠すようなカベルネ・ソーヴィニヨンのパワーには、違和感しか感じてこなかった。

梁 世柱
3月3日


出会い <76> 補助品種の野心
Podere della Bruciata, Tizzo 2019. 葡萄栽培学と病害対策が現代に近い水準に進化するまで、ワイン造りは、 多品種栽培と多品種ブレンドが基本 であった。 それは、昔の人々が積み重ねた経験と観察眼に基づいた、 リスクヘッジ であった。 一つの葡萄が病害などによって不作に陥っても、他の品種が上手く育てば、ワインをつくることができる。 細かなブレンド比率や、テロワールなどといった概念よりも、 毎年ちゃんと葡萄を実らせることの方が遥かに大切だった ことは、想像に難くない。

梁 世柱
2月24日


Wine Memo <33>
Stefano Amerighi, Syrah Cortona DOC 2021. 私が毎年2月に参加しているAnteprime di Toscanaというイベントでは、1日、もしくは2日毎にテーマの異なる試飲会が開催されるのだが、 L’Altra Toscana というトスカーナ州の「その他」を集めた試飲会が、実は密かな楽しみになっている。 Chianti Rufina、Carmignano、Montecucco、Maremmaといった、L’Altra Toscanaでは「お馴染み」のDOCやDOCGに加え、毎年もっとマイナーな産地から、交代でブースが出てくるのだ。 時に興味深い発見もあれば、肩透かしな年もあるが、2025年は「当たり」だった。

梁 世柱
2月22日


Wine Memo <32>
Hermann J. Wiemer, Cabernet Franc 2018. NYでのソムリエ修行時代、とにかくギリギリの生活をなんとか乗り切っていた私は、アメリカという大ワイン産出国に住んでいたにも関わらず、産地訪問をすることがほとんどできなかった。 今思えば、実にもったいないことをしていたと思うが、そもそも東海岸のNYからカリフォルニア州へと飛ぶのにも相当お金がかかるし、車も運転できず、無名のソムリエだった私には、ワイナリーに迎えに来てもらうなどという発想もなかった。 そんな中で、私にとって 人生で初めてのワイナリー訪問 となった場所は、今回Wine Memoで紹介するNY州フィンガーレイクの Hermann J. Wiemer だった。

梁 世柱
2月7日


再会 <76> メルローの掘り出しもの
Castellina, Daino Bianco 2019. ¥5,000

梁 世柱
2月3日


出会い <75> ハイコスパピノを求めて
Mound Edward, Ted Pinot Noir 2022. ¥4,350 世界的なワイン価格の高騰が止まらない中、我々の日常生活から最も遠いところへ行ってしまった品種は、おそらく ピノ・ノワール だろうか。 その原因は、兎にも角にも ブルゴーニュ にある、と考える人がほとんどだと思うが、それは 半分正解 と言ったところ。 確かに、ブルゴーニュが(特にコート・ド・ニュイ赤)なかなか天井が見えない高騰を続けているため、その価格に世界各地のピノ・ノワールが引っ張られている側面はある。 しかし、そもそも ピノ・ノワールという葡萄の性質 を理解してみると、 別の理由 も見えてくるのだ。

梁 世柱
1月27日


再会 <75> バックヴィンテージ定点観察の楽しさ
Sato Wines, Pinot Noir “Northburn” 2017. 同じワインを、新しいヴィンテージが出るたびにテイスティングすることは、ワインを深く理解していく上で、非常に大切だ。 ヴィンテージごとに全く異なる気象条件と、それらが最終的なワインに及ぼす影響を理解するという目的は当然だが、造り手の変化や進化に加え、「本質的に変わらない」テロワールを知る上でも、定点観測は大切になる。 しかし、 同じボトルを年月を跨いでテイスティング をする、という別の定点観測は、なかなか環境は整わないと難しい。 そもそも、「それをやり出したらキリがない」というのもあるが、コンディションを保つためのセラーリングも、それに必要なスペースも、用意するのは簡単ではない。

梁 世柱
1月20日


SommeTimes’ Best Performance Award 2024
本年もついに大晦日を迎え、また一年の締めくくりとなるBest Performance Awardの選出をする時がきた。 例年通り、選出基準は単純な価格でも味わいでもなく、その総合評価であり、さらにその中でも印象に強く残っているワインから、これぞというものを選出させていただい...

梁 世柱
2024年12月31日


出会い <74> 新世代ナチュラルボルドーの楽しさ
Marius Bielle, Pigalle 2021. ¥4,600 ボルドー といえば、 クラシックワインの殿堂 。 それは基本的に正しい見解だ。 左岸と右岸にそれぞれ存在する様々な 公式格付けシステム は、まさにその象徴であるし、大衆の多くは、確かにボルドーに 「格式」 を求めている。 それでもなお、多様性が広がる時代のうねりは止められない。

梁 世柱
2024年12月23日


Wine Memo <31>
Inglenook, Edizione Pennino Zinfandel 2019. ¥9,900 ジンファンデル はなかなか興味深い葡萄だ。 長らく 南イタリア・プーリア州のプリミティーヴォ種 と同品種という紹介が主流だったが、DNA解析によって、その源流が クロアチアのマイナー品種 である ツーリエンナーク・カーステラーンスキー (もしくは トリビドラーグ )にあると判明してからは、説明文に少々変化が起きた。 少々煩わしい。 ツーリエンナーク・カーステラーンスキーと言われても、名前も覚えにくく、味わいの想像もつかない。

梁 世柱
2024年12月21日


高級ビールを嗜む <3> リースリング・ビール
Gueuzerie Tilquin, Oude Riesling Tilquin a L'Ancienne. ¥4,800~ またまた随分と久々となる、高級ビールのレヴュー企画。 今回は、私が最も好きなタイプのビールである、 ランビック に関してお話ししていこう。 ランビックは ベルギービール の一種であり、 パヨッテンラント地域 (首都ブリュッセルの南西に位置)でのみ醸造される、非常に個性的なビールとなる。 一般的にビールの醸造には、培養酵母が使用されるが、ランビックは醸造所や周辺環境に棲む 野生酵母 の力で発酵させる。 ブリュッセルを縦断するゼンネの谷に自生すると言われているバクテリアや野生酵母は、通常の培養ビール酵母では分解できない デキストリン という多糖類まで分解するため、非常に辛口な仕上がりとなり、また乳酸を思わせるニュアンスも野生酵母によってはっきりと生じる。

梁 世柱
2024年12月16日


再会 <74> もう一つの、シャネルのボルドー
Château Canon 2021. 前回の再会 <73>では、 シャネル が1994年に取得し、長期計画で改革を行なった シャトー・ローザン=セグラ を取り上げたが、シャネルがボルドーに所有する最高レベルのシャトーは、もう一つある。 ボルドー右岸 サン=テミリオン 地区の、 シャトー・カノン だ。 シャトー=カノンが辿ってきた道のりもまた、シャトー・ローザン=セグラと良く似ている。 シャトー=カノンはサン=テミリオン公式格付けにおいて、 グラン・クリュ・クラッセB に格付けされてきたが、その評価は決して安定したものではなかった。

梁 世柱
2024年12月9日


出会い <73> 魔法のサンジョヴェーゼ
Chiara Condello, Predappio Sangiovese 2021. ¥4,500 サンジョヴェーゼ といえば、 イタリア・トスカーナ州 。 その地位と名誉と実力は、確かに揺るぎないものだ。 Chianti Classico 、 Brunello di Montalcino 、 Vino Nobile di Montepulciano 。サンジョヴェーゼの象徴たる三つの産地は、まるで不可侵の聖域が如く、色褪せない輝きを放ち続けている。 私自身、サンジョヴェーゼには強い関心と愛情を注いできたため、三大銘醸地に限らず、トスカーナ州以外やニューワールド諸国も含め、様々な産地のワインをテイスティングしてきたが、心の琴線に深く触れるワインは見つからなかった。 Chiara Condello と出会うまでは。

梁 世柱
2024年12月1日


再会 <73> シャネルのボルドー
Château Rauzan-Ségla 2021. ボルドーというワインが品質向上を果たすには、とにかく 時間とお金 がかかる。 相当な量で生産されているにも関わらず、価格が高い傾向にあるのは、 投資金の回収が大変だから という側面もかなり大きいのだ。 しかし、本腰を入れて、忍耐強く、優れたテロワールで品質改革を行えば、 「結果」 が付いてくる、というのもボルドーの面白いところだろうか。 過去に長らく低迷していたワインが大復活を果たした例も、実際に多くあるのだ。

梁 世柱
2024年11月25日


Wine Memo <30>
Tsukuba Winery, Twin Peaks Marselan 2022. ¥4,900 温暖化 を見据えて、 ボルドー を名乗れる品種として新たに認可された6種の葡萄。 黒葡萄は、マルスラン、トゥリガ・ナシオナル、カステット、アリナルノア。 白葡萄は、アルヴァリーニョとリリオリラ。 トゥリガ・ナシオナルとアルヴァリーニョは比較的良く知られた品種だが、その他はかなりマイナー。 黒葡萄のカステットは元々ボルドー近辺の絶滅危惧種。マルスランとアリナルノアは交配品種。白葡萄のリリオリラも交配品種だ。

梁 世柱
2024年11月23日


出会い <72> カルト・シャンパーニュ
Brigitte Fallon, Millesimé 2014. ¥18,000 私がワインを学び始めた20年と少し前の頃は、シャンパーニュと 「カルト」 というワードが結びつくことは、ほとんど無かったように思う。 ジャック・セロス 、 エグリ・ウーリエ などの レコルタン・マニピュラン(RM) ブームがすでに押し寄せてはいたが、RMとはいえ、 それなりの生産量はあった ため、全く手に入らないというほどのものでも無かった。 それから5年が経ち、10年が経った頃のタイミングから、どうも様子が異なり始めたと感じたのを、今でもはっきりと覚えている。 そう、カルト・シャンパーニュとでも呼びたくなるような 極少量生産型のシャンパーニュ が、続々と市場に出現し始めたのだ。

梁 世柱
2024年11月18日


再会 <72> カジュアルフレンチの救世主
Domaine Cauhapé, Jurançon Sec “Quatre Temps” 2020. ¥3,500 高騰を続けるワインの世界に救いはあるのか。 新型コロナ禍直前に比べると、複合的な理由から、平均して1.3~1.5倍の高騰となってしまった中、 新たなカジュアルワインの発掘 は、日本のワイン市場にとって、死活問題となっている。 特に、ブルゴーニュ、シャンパーニュ、ボルドーだけでなく、アルザス、ロワール、ローヌ、ジュラなどの産地にも高騰の大波が押し寄せているフレンチワインは、(不思議なことに、超高価格帯だけは堅調だが)我々の日常から、急速に遠ざかろうとしている。

梁 世柱
2024年11月10日


出会い <71> もう一つの大銘醸地
Prieler, Ried Steinweingarten 2022. ピノ・ブラン は 「偉大なワイン」 となれるのだろうか。 おそらく、100人のワイン好きに訊ねても、Yesと答える人は1人いるかいないか、だろう。 それもそのはず。 そもそも、 ピノ・ファミリー の中では圧倒的にピノ・ノワールの知名度と人気が高く、ピノ・ブランは実質的に、ピノ・ノワールの劣化版亜種のような扱いを受けている。 さらに、 ピノ・ブランが一般的に最も良く知られている産地 は、 フランスのアルザス地方 だと思うが、そのアルザスにおいても、ピノ・ブランは主役の座からは程遠く、高貴品種には同じピノ・ファミリーであるピノ・グリが名を連ねている。

梁 世柱
2024年11月4日


Wine Memo <29>
Smallfry Wines, Gewurz Bomb 2022. ¥4,000 オレンジワイン は楽しい。 白ワインとして、長年にわたって練り上げられてきた、 「クラシックな佇まい」 とやらが、オレンジワインになった瞬間から、 様変わり するからだ。 白ワインの常識は、オレンジワインには通用しない 。 もしかしたら我々は、白葡萄の数だけ 「学び直し」 が求められている時代を生きているのかも知れないが、その分だけ楽しさが増えたと思えば、なんてことはないだろう。

梁 世柱
2024年11月3日


再会 <71> シャブリの黄金時代
Alice et Olivier de Moor, Chablis l’humeur du temps 2022. ¥6,600 ワインを学び始めた頃、白ワインの「基本中の基本」として、 シャブリ を知った人は多いだろう。 シャープな酸 が持ち味の、 淡麗辛口型白ワインの典型 。 シャブリというワインをそう教わったはずだ。 しかし、近年の気候変動により、その 「シャブリらしさ」は随分と影を潜め始めている 。酸はまだなんとか高いレベルで維持できているが、 フルーツの性質が明らかに「淡麗」の域を超えてきている のだ。 近年では、 遅霜の被害による収量の激減 と、ブルゴーニュ全域を襲う 価格高騰 で、「安くて美味しいワインの代名詞」だったシャブリが、すっかり 非日常のワイン になってしまったことを嘆く声が多く聞かれる。 確かに、シャブリが昔のままの酒質で、価格だけが高騰したのであれば、その嘆きも仕方のないことと思うが、実際には少し様子が異なっていることに、一体どれだけの人が気付けているのだろうか。

梁 世柱
2024年10月28日
bottom of page