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ガストロノミック・ペアリング <10> 日本料理・ペアリングコース構築 Part.7
ガストロノミック・ペアリングでは、中級者以上を対象に、より高度かつ複雑な技法を駆使した、美食的完成度の高いペアリングを紹介、検証していく。 第四回より全7回にわたって、日本料理(コース)の流れに沿ったペアリングの構築をテーマとしていく。 日本料理編最終回となる第十回では、 「旨味」 の要素を取り入れて、ペアリングを考察していく。 旨味は、ペアリングにおける 非常に特殊な要素 の一つで、「テロワール」と同様に、 効果は強力だが、優先順位は基本的に低い ものとなる。 旨味の基本的かつ最も重要な効果は2つ。

梁 世柱
2024年11月22日


ガストロノミック・ペアリング <9> 日本料理・ペアリングコース構築 Part.6
ガストロノミック・ペアリングでは、中級者以上を対象に、より高度かつ複雑な技法を駆使した、美食的完成度の高いペアリングを紹介、検証していく。 第四回より全7回にわたって、日本料理(コース)の流れに沿ったペアリングの構築をテーマとしていく。 第八回(日本料理編としては第六回)となる本編では、 「テロワール」 の要素を取り入れて、ペアリングを考察していく。 内陸の食材には内陸のワイン、海辺の食材には海辺のワイン。 広く一般的には、 ペアリングの基本と考えられている「テロワール」の要素 だが、 実はペアリング基礎理論上は、かなり優先順位が低い ものとなっている。 その理由は、ワインという飲み物の味わいが最終的に決まるまでに至る、 変数の多さ にある。

梁 世柱
2024年11月15日


ガストロノミック・ペアリング <8> 日本料理・ペアリングコース構築 Part.5
ガストロノミック・ペアリングでは、中級者以上を対象に、より高度かつ複雑な技法を駆使した、美食的完成度の高いペアリングを紹介、検証していく。 第四回より全7回にわたって、日本料理(コース)の流れに沿ったペアリングの構築をテーマとしていく。 第七回(日本料理編としては第五回)となる本編では、肉とワインを合わせる際の基本と、特定の品種と食材間の相性にフォーカスして、ペアリングを考察していく。 肉料理に対して、非常に重要なアプローチとなってくるのが、 ワイン側の渋味とアルコール濃度の調整 だ。 まず肝になってくるのは、肉料理の 咀嚼回数 。 ワインが肉に対してアプローチするためには、 肉の細胞が破壊されて、ワインが染み込んでいく「隙間」が生じる必要 がある。

梁 世柱
2024年11月9日


ガストロノミック・ペアリング <7> 日本料理・ペアリングコース構築 Part.4
ガストロノミック・ペアリングでは、中級者以上を対象に、より高度かつ複雑な技法を駆使した、美食的完成度の高いペアリングを紹介、検証していく。 第四回より全7回にわたって、日本料理(コース)の流れに沿ったペアリングの構築をテーマとしていく。 第四~六回で学んできたこととは少し方向性を変え、今回は 「渋味と苦味の関係性」 にフォーカスしながら検証していく。 まず 重要なポイント として、 料理には基本的に、ペアリングの要素として換算できるほどの「渋味」が含まれることは無く、ワインには基本的に、ペアリングの要素として換算できるほどの「苦味」が含まれることは無いが、料理は苦味を含むことが多く、ワインは渋味を含むことが多い ということを、理解しておく。 そして、ペアリングにおいて、 苦味と渋味は、「非常に良く似たもの」 として考えることができるため、両者間には ハーモナイズ(調和)の関係性 を構築することができる。

梁 世柱
2024年11月1日


ガストロノミック・ペアリング <6> 日本料理・ペアリングコース構築 Part.3
ガストロノミック・ペアリングでは、中級者以上を対象に、より高度かつ複雑な技法を駆使した、美食的完成度の高いペアリングを紹介、検証していく。 第四回より全7回にわたって、日本料理(コース)の流れに沿ったペアリングの構築をテーマとしていく。 第四回 で学んだ ペアリングの緩急 、 第五回 で学んだ 「アロマ」 という要素に加えて、今回は 「重心」 という特殊な技法を交えて検証していく。 重心とは、口内で料理やワインの味わいを、上顎方向か、下顎方向のどちらで集中的に感じ取ることができるのか、という、少々「慣れ」が必要な概念。 ペアリング全般において、 決定的な意味をもつほど重要な要素とは言えない が、 特定のケースでは、抜群の効果を発揮 する。

梁 世柱
2024年10月23日


ガストロノミック・ペアリング <5> 日本料理・ペアリングコース構築 Part.2
ガストロノミック・ペアリングでは、中級者以上を対象に、より高度かつ複雑な技法を駆使した、美食的完成度の高いペアリングを紹介、検証していく。 第四回より全7回にわたって、日本料理(コース)の流れに沿ったペアリングの構築をテーマとしていく。 第四回で学んだ ペアリングの緩急 に、今回は 「アロマ」 という要素を加えて検証していく。 我々が日常的にテイスティングノートに書き溜めているアロマは、ペアリングでこそ最大限の意味を発揮する ことができる。 そして、アロマで着目すべきは、 「違和感」 である。 例えば、牛肉という食材とイチゴのアロマの組み合わせには違和感が無いが、牛肉とバナナのアロマの組み合わせには違和感が生じる。 ある程度は個人差も鑑みるべき点ではあるが、より多くの人にとって違和感を無くしていくための微調整は、特にペアリングの提供側であれば、しっかりと考えていきたいところ。

梁 世柱
2024年10月11日


ガストロノミック・ペアリング <4> 日本料理・ペアリングコース構築 Part.1
ガストロノミック・ペアリングでは、中級者以上を対象に、より高度かつ複雑な技法を駆使した、美食的完成度の高いペアリングを紹介、検証していく。 第四回となる本稿より7回にわたって、 日本料理(コース)の流れに沿ったペアリングの構築 をテーマとしていく。 西洋料理とのペアリングとは違い、 日本料理とワインの間には、クラシックという最適解がそもそも存在していない 。 それは 「自由」 であると同時に、高度なペアリングを実現するためには、 練り上げられた 構成 が必要となる ことも意味している。 さらに、コース料理ともなると、 料理単位に対するアプローチと並行して、全体の流れも強く意識する 必要がある。 つまり、料理に対してそのワインを合わせることで 「何をしたいのか」 という意図(アプローチ)を定めることと並行して、全体の流れにしっかりと 「緩急」 が生じるように、アプローチを柔軟に変化させつつ、ペアリングの 「強度」 を調整する、というかなり難しい作業となるのだ。

梁 世柱
2024年9月26日


ペアリングのタイミング<口内調味 or 余韻合わせ>
料理とワインでペアリングを行う際、 口内調味 を基本とするか、 余韻で合わせる のが正解か、という質問を非常に良く受ける。 まず結論から言うと、 「どちらでも良い」 が答えとなる。 ペアリングは 非常に主観性と嗜好性が高い ものであるため、 「完璧な正解」が存在し得ない のだ。 ただし、ペアリング基礎理論を活用して組み合わせとアプローチを考えていく際には、口内調味と余韻合わせでは、 効果が及ぶ範囲が大きく異なる 点には留意しておきたいところ。 端的にまとめると、口内調味ではより 複雑 に、余韻合わせではより シンプル なアプローチのペアリングとなる。

梁 世柱
2024年9月14日


カプレーゼのヴァリエーション対応
近年すっかり日本でも市民権を得たイタリア料理の一つに、 カプレーゼ が挙げられるだろう。 正式名称は インサラータ・カプレーゼ 。 「カプリ島のサラダ」 という意味で、カンパーニャ州カプリ島のGrand Hotel Quisisanaが発祥の地とされている。 スライスした トマト 、水牛乳から造られるカンパーニャ州のフレッシュチーズ 「モッツァレッラ・ディ・ブーファラ・カンパーニャ」 、 バジリコ をメインの食材とし、 塩、黒コショウ、オリーブオイル (カンパーニャ州産)で仕上げるのが、オリジナルのレシピだ。 トマト (赤) 、チーズ (白) 、バジリコ (緑) の組み合わせは、 イタリア国旗の配色と同じ であるため、ピッツァ・マルゲリータなど、イタリアではこの食材を組み合わせた料理が、とても大切にされている。 これは、日本で言うところの 「白米に梅干し」 と似たような感覚であり、日常的に食べるかは別として、国民の心象風景に深く刻まれているのだ。 さて、そんなカプレーゼも、 アレンジ・レシピ が盛んになっている。

梁 世柱
2024年9月13日


冷やし中華は夏ワインの友
夏の風物詩、というほど大袈裟なものでも無いかも知れないが、下町育ちの私にとって、 「冷やし中華はじめました」 と大きく書かれたのぼり旗は、暑さと虫が苦手で、夏には出不精が大加速する私を、昼間から屋外に引きずり出すのに十分な程度には、魅力的だ。 氷水でタイトな食感を得た中華麺の上で、ふわふわの錦糸卵、薄切りにしたハム、爽やかなトマトと胡瓜が踊り、酢の効いたタレが完璧な五重奏を指揮する。 絶妙にさっぱりとした食後感と、「野菜も摂れる」という言い訳で、ついつい炭水化物を大量摂取する罪悪感が消し飛んでしまうのが難点だが。 そんな 冷やし中華 が、 夏に飲みたくなるようなワインと抜群の相性を誇る ことは、あまり知られていないかも知れない。 夏といえば、 泡、白、ロゼでシャープな酸の効いたワインを、しっかりと冷やして楽しむのが定番 。

梁 世柱
2024年8月22日


煮物とワイン
日本料理とワイン の間に、およそ「伝統」と呼べるような関係性は まだ構築されていない し、日本料理と日本ワインの組み合わせが、他国のワインを使った時よりも優れているとも到底思えない。 クラシック・ペアリング とは、同じ地域の料理とワインが、非常に長い年月 「同じ食卓」 にあり続けた結果である。そして、その成り立ちも完全に恣意的なものではなく、潜在的集合意識が長期間にわたって働き続けたことによる偶発性が高いものだ。 つまり、極限まで噛み砕いて表現するのであれば、 「なんとなく」が積み重なり続けた結果 とも言える。 しかし、日本料理とワインのペアリング自体は 基礎理論をしっかりと駆使すれば十分に対応可能 だ。

梁 世柱
2024年8月11日


Corn & Wine
夏の旬食材 には、なぜか心が躍る。 個人的には、季節としては冬の方が好きなのだが(暑さと虫が苦手という理由で)、食材に関しては完全に夏派だ。 土用の丑の日に養殖 うなぎ (天然物の旬は10~12月だが、個体によっては猛烈に泥臭いことも)を楽しむ人、6~7月にかけて鱧や 若鮎 を楽しむ人、夏の太陽をたっぷりと浴びたエネルギッシュな 野菜 を楽しむ人。 人それぞれ夏食材の楽しみ方があると思うが、私が最も夏を感じる食材は、 とうもろこし だ。 蒸したりゆでたりして、とうもろこしの自然な甘味を味わっても良し、香ばしく焼き上げてかぶりついても良し、天ぷらにして食感の妙を堪能しても良し。 様々な調理法で楽しむことができる旬のとうもろこしだが、筆者が一番好きな食べ方は、 すり流し だ。

梁 世柱
2024年7月12日


ハプスブルグ風カジュアルペアリング
前回のペアリング研究室 では、西〜中央ヨーロッパ料理の粋と言える オーストリア料理 と、その象徴的な料理の一つである ヴィーナー・シュニッツェル の話をした。 今回もその流れのまま、もう一つの代表的なオーストリア料理である ヴィーナー・サフトグーラーシュ(ウィーン風ビーフグラーシュ) の話をしよう。

梁 世柱
2024年6月29日


オーストリアの大定番
ヨーロッパのワイン産出国は数多く訪れたが、カジュアルな食(ガストロノミーの話になると、国や地域ではなく、レストラン単位の話になる)の美味しさが際立っていると個人的に感じる国の2トップは、 オーストリアとポルトガル だ。 オーストリア料理 、と聞いてもイメージできる人は少ないかも知れないが、多民族国家であった ハプスブルグ王朝時代に、多種多様な食文化が融合し、磨き上げられた 結果、非常にバランス感に長けた料理体系として発展したという経緯がある。 言うなれば、 西〜中央ヨーロッパ料理の粋 、とも言えるのがオーストリア料理なのだ。 さらに、オーストリア料理は温かい料理が、 ちゃんと「温かく」提供される 、という日本人(アジア人)には特に嬉しい特徴もある。 さて、オーストリア料理の中でも、最も象徴的なものとされる料理の一つが、 ヴィーナー・シュニッツェル 。

梁 世柱
2024年6月23日


Not a Wine Pairing <5> ウィーン・クラシック
クラシック・ペアリングというものは、何もワインの専売特許という訳ではない。 特定の食と飲が同一文化の中で共存し続けた結果、一部の組み合わせが完璧なクラシックへと昇華する例は、世界各地に少なからず存在する。 ペアリングの新シリーズ「 Not a Wine Pairing 」では、 『ワイン以外のクラシック・ペアリングから、ワイン専門家や愛好家が何を学べるのか』 をテーマとして、様々な検証を行なっていく。 第5回のテーマは、 オーストリア・ウィーン の名スイーツであり、チョコレートケーキの王様と讃えられる 「ザッハトルテ」 と、フレイバード・ティー 「ザッハブレンド」 の組み合わせ。 共に 「ザッハ」 の名を冠することからも分かるように、これらはウィーンのフィルハーモニカー通りにある5ツ星ホテル 「ホテル・ザッハー」 にオリジンがある。 「四季」で知られる作曲家アントニオ・ルーチョ・ヴィヴァルディの邸宅跡に建てられたホテル・ザッハーは、 ザッハトルテを開発した菓子職人フランツ・ザッハー の息子、エドゥアルト・ザッハーが1876年に開業

梁 世柱
2024年6月15日


アップルパイと貴腐ワイン
オーストリアには様々な果物が豊かに実っているが、中でも リンゴ は在来種がとても多く、ここでしか味わえない独特の奥深さがある。 当然、リンゴを使ったデザートは伝統の一つで、 アプフェルシュトゥルーデル と呼ばれるパイは極上。 クローブとシナモンで味付けされたリンゴ、ラム漬けのレーズン、そしてヘーゼルナッツを練り込んだ薄いパイ生地で構成されるアプフェルシュトゥルーデルは、見た目よりも随分と軽やかに楽しめる。

梁 世柱
2024年6月4日


串10本に、10種のワインでペアリング <後編>
東京・根津にある比内地鶏焼き鳥の名店 「照隅」 にて開催した、 「10種の串それぞれに全く異なるワインを合わせる」 、というコンセプトの ペアリングワイン会 。 ストーリーを形作っていった前半の5串に続いて、後編では最後のクライマックスと収束に向けての流れを解説していく。 6串目 マッシュルーム Wine:Trinchero, Tajo‘ 2019. Piedmont, Italy. Grape: Nebbiolo 50%, Freisa 50%. 5串目の鴨ムネ肉に対して、あえてピノ・ノワールのロゼを使うことによって、テンションを落として「じらしていた」ため、次の6串目ではしっかりとギアを上げていくべきだと判断した。 大きく肉厚なマッシュルームに鳥脂を塗って焼いた一本には、焼いたキノコ類に対する鉄板中の鉄板であるネッビオーロを選択したが、ここでも少し捻りを利かせている。

梁 世柱
2024年5月18日


串10本に、10種のワインでペアリング <前編> 特別無料公開
先日、東京・根津にある比内地鶏を使った焼き鳥の名店 「照隅」 にて、 ペアリングワイン会 を開催した。 「10種の串それぞれに全く異なるワインを合わせる」 、というコンセプトの元、SommeTimesでも公開してきた ペアリング理論...

梁 世柱
2024年5月8日


難敵ウフマヨ
私は高級なコース仕立て料理としてのフレンチよりも、 古典的なビストロ料理 の方がどちらかと言うと好きだ。 NYでソムリエ修行をしていた時代、仕事場から自宅へと向かう帰り道にあった、深夜3時頃まで開いているビストロ/ワインバーに足繁く通っていた影響もかなりあるだろう。 疲れた体には、山盛りになったムール貝の白ワイン蒸しや、オニオングラタンスープが最高に染み渡ったものだ。 フレンチビストロの定番とされる名料理は数多くあるが、今回のペアリング研究室で題材とする Oeuf mayonnaise 「通称、ウフマヨ」は、殿堂入りの大クラシック。 ゆで卵 (固ゆでから半熟まで様々なヴァリエーションがあるが、クラシックは完熟の一歩手前くらいの塩梅)に、 マヨネーズとディジョンマスタード を合わせて水やレモン汁で軽く伸ばしたソースをかけるだけ、と言うシンプル極まりない料理だが、何度食べても飽きない、強力な魔力がこの料理には宿っている。 しかし、ペアリングとなると、この愛おしいウフマヨは、途端に 最強クラスの難敵 へと変貌する。

梁 世柱
2024年4月27日


オッソ・ブーコでオルタナティヴ・ペアリング
イタリア料理といえば、パスタとピッツァが代名詞となるが、その他多種多様な 郷土料理 の世界は実に奥深く、驚くほど美味な料理に彩られている。 日本人にとっては、全体的に少々塩分強めなのが難点とは言えるものの、塩味を酸味でしっかりカットできるワインがセットになった料理体系なのだから、こればかりは仕方ない。 今回ペアリング研究の題材にしたいのは、 イタリア北部ロンバルディア州(ミラノ) の郷土料理である、 オッソ・ブーコ 。 オッソ(骨)、ブーコ(穴)という奇妙な名前の料理だが、主食材となる 仔牛のスネ肉 を調理した際に、中央の骨髄部分が縮小して「穴の空いた骨」になることから由来している。 イタリアにトマトが到来する前から存在して料理であるため、大元のオリジナルレシピではアンチョヴィが味付けのベースとなっていたようだが、現代ではトマト、白ワイン、香味野菜類、ブイヨンを合わせて蒸し煮にして、グレモラータ(パセリ、レモンの皮、ニンニクで作る緑色のペースト)を添えるのが定番となる。 イタリア郷土料理の中でも比較的良く知られたものの一つであ

梁 世柱
2024年4月6日
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