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アップルパイと貴腐ワイン
オーストリアには様々な果物が豊かに実っているが、中でも リンゴ は在来種がとても多く、ここでしか味わえない独特の奥深さがある。 当然、リンゴを使ったデザートは伝統の一つで、 アプフェルシュトゥルーデル と呼ばれるパイは極上。 クローブとシナモンで味付けされたリンゴ、ラム漬けのレーズン、そしてヘーゼルナッツを練り込んだ薄いパイ生地で構成されるアプフェルシュトゥルーデルは、見た目よりも随分と軽やかに楽しめる。

梁 世柱
2024年6月4日


再会 <61> ネクスト・ステージ
Botanical Life, vin-shu plus rouge 1 ~terra~ 2022. ¥3,800 良いところも、そうとは言い切れないところも含めて、ワインに対して全面的に 正直 であることは、私がジャーナリストとして何よりも大切にしているポリシーだ。 そのワインの良い部分だけを探そう、というアイデア自体を否定しているわけではないが、建前とお世辞を並べただけの上っ面な賞賛は、少なくともジャーナリズムではないと私は思う。 しかし、状況によっては、 ある程度譲歩せざるを得なくなる ことも確かにある。 記事化が確定している訪問先のワインに、疑問符が多く付いてしまった時などは、まさにそうだ。 そのような経験はいくつか思いあたるが、(後悔という意味で)最も印象に残っているのは、兵庫県にある Botanical Life での出来事。

梁 世柱
2024年5月26日


最強のワイン保存ガジェット、Coravinの進化と多様化
古くは Vacu Vin に代表される瓶内の空気を抜く方式のものから、比較的新しいものでは Pulltex のような瓶口に被せるだけのものまで、ワインをできるだけ長く保存させるための「ガジェット」は数多く開発されてきた。 私自身も様々なものを使用してきたが、...

梁 世柱
2024年5月21日


SommeTimes’ Académie <61>(フランス・ロワール地方:Pays Nantais地区)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回は フランス・ロワール地方 について学んでいきます。 フランスの銘醸地産ワインが高騰するなか、日常に寄り添うフランチ・ワインの産地として、ロワール地方の価値は一層高まっています。 ロワール地方シリーズ第1回は、一連のMuscadet系ワインで知られる 「Pays Nantais 地区」 と致します。 Melon de Bourgogne Muscadet系アペラシオンの主要品種は ムロン・ド・ブルゴーニュ(ムロン) 、通称ではワイン名と同様にミュスカデと呼ばれます。 公式名にブルゴーニュとつく通り、原産地はブルゴーニュと考えられています。実は、1,395年にフィリップ豪胆公が発令した有名なガメイ栽培禁止令には、ムロンの栽培禁止も含まれていました。

梁 世柱
2024年5月17日


再会 <60> 南ローヌの伏兵
Domaine de Marcoux, Lirac Rouge “La Lorentine” 2021. ¥4,900 南ローヌ は世界的な銘醸地だが、(少なくとも日本では)あまり理解されていない産地でもある。 この地では Chateauneuf-du-Pape (以降、CDP)の名声がずば抜けて高いため、 南ローヌはCDPと「その他」のような構図になってしまっている ようにすら思えるが、そのCDPですら、品種構成も土壌組成も極めて複雑なため、理解は容易ではない。 世界的な食のライト化に伴って、より軽いワインを好む風潮が強まっているのも、南ローヌにとって向かい風となっている。 最も名高いCDPは、難しい上に高価だから、気軽に試すことも難しい。 おそらく、CDPに次いで認知されているのは Gigondas だと思うが、ワイン愛好家であっても、Gigondasを飲んだことがある人はかなりの少数派となるだろう。 さらに、今回の再会ワインである Lirac の赤ともなれば、ほとんどの人にとって未体験のワインとなる可能性は高い。

梁 世柱
2024年5月12日


Not a wine review <1>
Rampur, Double Cask.(免税店価格:約15,000円) 今週は「出会い」、「再会」のシリーズをお休みして、イレギュラーなレヴューをお届けしようと思う。 私は専門分野としているワインと日本酒以外にも、日常的にありとあらゆる酒類を嗜んでいるが、中でも ビールとウィスキーへのこだわり が強い。 今回はSommeTimesでは初のレヴューとなる ウィスキー 、しかも、 インド産のウィスキー が主役。 行きつけのインド料理店で、インド産ウィスキーを使ったハイボールは何度か飲んでいたので、生産していること自体は知っていたのだが、それほど良い印象をもっていたわけではなかった。 しかし、この Rampur, Double Cask を飲んだ瞬間、私はインドウィスキーに対して決定的に誤った認識をもっていた事に気づかされたのだ。

梁 世柱
2024年5月5日


SommeTimes’ Académie <60>(フランス・ボルドー地方:Castillon & Francs)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回も ボルドー地方 について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第11回は、 「ボルドー右岸:Castillon及びFrancs地区」 と致します。 Castillon-Côtes de Bordeaux Francs-Côtes de Bordeaux ボルドー右岸東端エリアには、約2,270haとかなり大きな Castillon-Côtes de Bordeaux (以降、Castillonと表記) 、約396haと右岸でも最小クラスの Francs-Côtes de Bordeaux (以降、Francsと表記) という2つのアペラシオンがあります。 共に、中域アペラシオンの C ô tes-de Bordeaux 内に含まれ

梁 世柱
2024年5月2日


Wine Memo <24>
Nyetimber, Cuvée Chérie Demi-Sec NV. 高品質かつテロワールに正直なワインでさえあれば、基本的には「なんでもあり」な私だが、それでも販売に四苦八苦するタイプのワインというのは僅かに存在する。 中でも特に、 Demi-Secタイプのスパークリング がそうだ。 もはや本家本元と言える Champagne ですら、 Demi-Secが絶滅危惧種と化しつつある ほど、生産量が減っているのには、 ちゃんと理由 があると思う。 端的に言うと、 時代に合わない 、のだ。 甘さを残したワインの販売難には、ドイツ、ソーテルヌ、トカイですら匙を投げはじめているのだから、 辛口な味わいを求める大衆の「集の力」はそれだけ大きい と言うこと。

梁 世柱
2024年4月26日


Wine Memo <23>
Geheimer Rat Dr. von Bassermann-Jordan, Deidesheimer Kieselberg Riesling Trockenbeerenauslese 2015. 世界三大貴腐ワインといえば、 フランス・ボルドーのソーテルヌ、ハンガリーのトカイ 、そして ドイツのリースリング・トロッケンベアレンアウシュレーゼ 。 トカイの最高級品であるエッセンシアは、飲むというより「舐める」ので、比較対象にそもそもならない気もするが、極甘口ワインがたまらなく好きな私にとっての 最上 は、 トロッケンベアレンアウシュレーゼ一択 だ。 平均して8%前後のアルコール濃度、濃密極まりない甘味を、時に12g/Lを上回る凄まじい酸で中和したダイナミックかつ超多次元的なストラクチャー、糖分と合わさって強烈な粘性を生む凝縮したミネラル、桃源郷の余韻。 この地球上に、これほど甘美な液体は存在しない と、最高のトロッケンベアレンアウシュレーゼと巡り合う幸運に恵まれる度に思い知らされる。

梁 世柱
2024年4月11日


SommeTimes’ Académie <59>(フランス・ボルドー地方:Fronsac周辺)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回も ボルドー地方 について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第10回は、 「ボルドー右岸:FronsacおよびCanon Fronsac地区」 と致します。 Fronsac Canon-Fronsac ボルドー右岸エリアの入り口に位置する Fronsac は約771haなのに対し、 Canon-Fronsac は約243haとより小さなアペラシオンとなります。 両アペラシオンは似ている部分も多いため、まずは類似点を把握するのが良いでしょう。

梁 世柱
2024年4月10日


出会い <57> 衝撃のグリ系オレンジ
Ziereisen Jaspis, Roter Gutedel Unterirdisch 2020. ¥6,900 (500ml) あらゆるワインに対して公平に接する、というのが私の基本スタンスだが、どうにも好きになれない葡萄品種も実際にはある。 品質判断自体はちゃんとできるのだが、こればかりは好みの問題であったり、特殊な事情が あったりもするので、如何ともし難い部分がある。 そして、実は ピノ・グリ(ピノ・グリージオ) は、私がなかなか好きになれなかった葡萄の一つだ。 過去形、なのは正しい。 考えを改めるきっかけがあったからだ。

梁 世柱
2024年3月31日


SommeTimes’ Académie <58>(フランス・ボルドー地方:Lalande de Pomerol)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Acad émie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回もボルドー地方について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第九回は、 「ボルドー右岸:Lalande de Pomerol地区」 と致します。 Lalande de Pomerol Lalande de Pomerolは、実質的にPomerolの衛星地区となりますが、Pomerolの総面積が約800haなのに対し、Lalande de Pomerolは 1,154ha とより大きなアペラシオンです。

梁 世柱
2024年3月27日


再会 <57> (私的)普遍のNo.1ボルドー
Chateau Lafleur 2013. ¥145,000 どの国のどの銘柄かは伏せるが、最近テイスティングする機会に恵まれた国内販売価格 30万円超のワインが、どうにもこうにも響いてこなかった。 ワインファン垂涎の超有名ワイン であり、当然私もそれなりの期待をもってテイスティングに臨んだが、期待外れも良いとこだった。 いや、実際には間違いなく高品質なワインではあったのだが、 同程度の品質のワインは、 1/30以下の価格でも、国や産地に拘らなければ簡単に見つけることができる 。 「それだけの超高価格なのに、その程度の味わいなのか。」 という落胆があまりにも大きく、すっかり気持ちが萎えてしまった。 ワインの価格とは、と考えさせられる機会に数えきれないほど触れてきた結果、私はいわゆる「ブランドもの」に対する興味を、ほとんど失ってしまっている。

梁 世柱
2024年3月24日


出会い <56> 新たなるHouillon
Corentin Houillon, Vieux Foug 2021. ワインの世界における 「親族」 というのは、実にややこしい話になりがちだ。 特にフランスの造り手にその傾向が強いと感じるが、親族のうちの誰かが突発的に素晴らしいワインを造り始めて名高い存在になった時、なぜか凡庸なままの他の親族のワインまで評価が上がる、という現象が度々起こる。 相続で「(有名な)誰々の畑を取得」といった類の話も同様だ。 この手の不可思議極まりない現象は、特に長年ブルゴーニュを追いかけていると、嫌というほど目にすることになるだろう。 ワイナリー一族に生まれれば、自動的に子供世代にも英才教育が施される。 親戚のおじさんが良いワイン造ってるから、甥っ子もその教えを存分に受けているに違いない。 前の所有者が素晴らしいワインを造っていた畑だから、所有者が変わっても素晴らしいに決まっている。 ちょっとでも冷静になれば、そんな状況に必ずなるとは全く限らないことなど、すぐに分かる と思うのだが、なんだかんだ結局「ブランド名」に弱いのもまた、現代人のサガ

梁 世柱
2024年3月17日


Wine Memo <21>
Quinta do Noval, Branco Reserva 2022. ポートが売れない。というのは、何も日本でだけ起こっていることではない。 酒精強化酒を含むあらゆる甘口ワインの売り上げは、世界的にずっと右肩下がりの状況が続いている。 流石に消滅してしまうことはなかなか無いだろうが、造り手としても在庫を余らせておくよりかは、限られた葡萄畑を他のスタイルのワイン用に回してしまった方がスマートであることは間違いない。 フランス・ボルドー地方には、世界最高峰の貴腐ワインと名高いソーテルヌ(とバルサック)があるが、近年のトレンドはもっぱら辛口仕立てのワイン造り。 ドイツのリースリングや、ハンガリーのトカイ(フルミント)にも全く同じ状況が当てはまる。

梁 世柱
2024年3月16日


再会 <56> いちご味のイタリア地葡萄
Ferdinando Principiano, Langhe Freisa 2022. ¥3,500 イタリアのマイナーな地品種を学ぶのは、この上なく楽しい。 フランス系国際品種や、イタリアの中でもより王道と言えるネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、アリアニコなどとは随分毛色の違う個性派集団。 どの品種をとっても「洗練」とは少々遠く、自己主張が激しめなのも良い。 まるで、予定調和的な美意識を嫌い、「絶対にアルマーニなど来てやるものか!」っと、こちらから聞いてもいないのに声高に叫んでいる、ちょっとうるさいイタリア人のようだ。 そして、 イタリア各地のマイナー地品種それぞれに、豊かなストーリーがある ところも良い。

梁 世柱
2024年3月10日


Not a Wine Pairing <4> マッコリとカキ刺し
クラシック・ペアリングというものは、何もワインの専売特許という訳ではない。 特定の食と飲が同一文化の中で共存し続けた結果、一部の組み合わせが完璧なクラシックへと昇華する例は、世界各地に少なからず存在する。 ペアリングの新シリーズ 「 Not a Wine Pairing」 では、 『ワイン以外のクラシック・ペアリングから、ワイン専門家や愛好家が何を学べるのか』 をテーマとして、様々な検証を行なっていく。 第四回のテーマは、 韓国料理における冬の定番 「カキ刺し」 と、韓国酒を代表する マッコリ との組み合わせ。 飲食の現場から退いた後、ようやく「解禁」されたと言える食材が、ニンニクとカキだ。 ニンニクは言うまでもないが、カキは現場によっては食中毒予防のために「暗黙の了解」的な NGとなっていることが多い。 カキは元々大好物なのだが、ヴァケーション期間中にしか食べれなかったのは、なんとも辛かった。 必然的に、今回の題材となる「カキ刺し」も、ニンニクたっぷりの味わいも相まって、当然 NGど真ん中の料理だったのだ。

梁 世柱
2024年3月9日


SommeTimes’ Académie <57>(フランス・ボルドー地方:Pomerol)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Acad émie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回もボルドー地方について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第八回は、「ボルドー右岸:Pomerol地区」と致します。 Pomerol St-Émilion と並び、ボルドー右岸を代表するアペラシオンが Pomerol です。総面積は約 800ha とボルドー主要アペラシオンの中では群を抜いて狭く、 St-Émilion の約1/7程度しかありません。 全植樹面積の 約80%をメルロー が占め、その他は主に カベルネ・フラン となっています。ブレンドにおいてもメルロー比率が90~100%になることも珍しくないため、 St-Émilion 以上にメルローの産地となりますが、エリアとシャトーのスタイルによってはカベルネ・フランの比率

梁 世柱
2024年3月6日


出会い <55> 最高のメルロー
Chiacchiera, Piccola Viola 2021. Wine Memo <19> で述べたように、国際品種がブレンドされた一連のChiantiやVino Nobileに対して、私が異を唱え続けることは今後も変わらないだろう。 サンジョヴェーゼとその他の補助的地品種だけで構成されたワインの、調和に満ちた優美な味わいを思えば、国際品種による補強が「伝統の進化」とはどうにも思えない。 ワインにとって「美味しい」ことは正義だと思うが、それが 伝統かと問われれば話が違う のだ。 一方で、国際品種のみで造られたワインに素晴らしい「品質」のものが数多くあるのもまた事実なので、そ の探究は私にとって隠れた趣味的なもの となっている。

梁 世柱
2024年3月3日
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