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空の検索で1008件の結果が見つかりました。

  • Advanced Académie <23> フルボディ

    フルボディ という言葉は、感覚的に感じるワインの 「重さ」 を表現するために、長く用いられてきた。実際、非常に便利な言葉であり、自身のおおよその好みを伝える際にも、重宝してきた人は多いだろう。 しかし今、このフルボディという言葉の基準が大きく揺らいでいる。 これまでの一般論で言うと、おおよそ以下の通りに「重さ」に関する表現は使い分けられてきた。 1. アルコール濃度12%以下:ライトボディ 2. アルコール濃度12~12.5%:ライト or ミディアムボディ 3. アルコール濃度12.5 ~ 13.5%:ミディアムボディ 4. アルコール濃度13.5 ~14%:ミディアム or フルボディ 5. アルコール濃度14%以上:フルボディ 簡単に整理すると、 12%以下はライト、13%前後はミディアム、14%以上はフルボディ となり、その間に意見が分かれるグレーゾーンが存在してきた。 これは基本的には赤ワインがベースの考え方だが、白ワインの場合はそのまま用いるか、0.5%ずつそれぞれ下げれば、違和感なく使えていた。

  • 至極の天麩羅とワイン

    油が熱を宿していくと、扇情的なハイノートの旋律が流れ、徐々にその音色は音域を広げながらハーモニーとなり、やがて、小さな管弦楽団のような厚みとリズムが生まれる。つややかな衣を纏った食材が加わると、パーカッシヴな音に包まれたオーケストラへと変貌する。 何度も聴いてきた音だが、この日だけは何もかもが違った。 全ての音が、驚くほど鮮明に聴こえたのだ。 全ての音が、緻密な強弱と抑揚を讃えながらも、一つの壮大な音楽を奏でていたのだ。 それはまるで、天才指揮者 サイモン・ラトル が率いていた頃の、 ベルリン・フィル・ハーモニー の演奏のようだった。 コンサートホールの名は、 成生(なるせ) 。 静岡にある僅か8席の天麩羅料理店には、日本全国から筋金入りの美食家たちが集う。 食材は、ほぼ全て静岡産。 鮮度もそうだが、目利きも桁違いに凄い。 さらに、固定概念に捉われない自由な発想と、それを実現する技の圧倒的な練度。 時に揚げたてが供され、時に余熱を経たものが供される、千変万化の夕べ。 次の天麩羅が供されるまでの時間ですら、未体験のご馳走に思えた。 成生は、噂に違わぬ、いや、想像を遥かに越えた、至極の名店だった。 筆者は、ワインペアリングについて語る時、可能な限り 論理的なアプローチ をとるようにしている。感覚に偏りすぎると、再現性が著しく下がるからだ。 しかし、世界には、 ペアリングの論理が全くといって良いほど通用しない料理 が、ごくわずかながら存在する。

  • 比内地鶏に挑む

    日本にはかなりの数の「地鶏」がいる。 全国的に流通、もしくは地方の焼き鳥店などへ行けばそれなりに食べられる、という括りにすれば、その数は 60種類をゆうに超える というのだから、驚きだ。 その圧倒的なヴァリエーションゆえに、地鶏は日本という小さな国の異次元的に豊かな食文化を象徴する食材、とすら言える。 そして、その中でも日本三大地鶏と呼ばれているのが、鹿児島県の「 さつま地鶏 」、愛知県の「 名古屋コーチン 」、そして秋田県の「 比内地鶏 」である。 食べ比べをすれば誰でもわかるくらいに、地鶏によって味わいと肉質は大きく異なる。 最終的にはもちろん、人それぞれの好みの問題、となるが、 筆者にとっての至高の地鶏は、比内地鶏だ 。 濃密な脂と肉の旨味、絶妙な弾力のある歯応え、縦横無尽に広がる味わい、中心の圧倒的な力強さ。 どれをとっても、比内地鶏は「 グランクリュの味 」がする地鶏だ。 東京都内にも比内地鶏を売りにする焼き鳥の名店は多数あるが、先日訪れた根津の「 照隅 」もまた、比内地鶏のポテンシャルを最大化する極上の名店だ。

  • 曇り空の向こうへ <シャブリ特集:後編>

    変わらないための努力をしていくのか。変わっていくための努力をしていくのか。たった2つしかない選択肢が示されたとき、そしてその両方が茨の道であると知ったとき、人はどちらを選ぶのだろうか。 混迷の中にある銘醸地 シャブリ は、まさに今、 岐路 に立たされている。 選択をするのは、 この問題の当事者である造り手 であり、あくまでも 傍観者 である我々飲み手では決してない。 しかしその選択は、否応なしに、 飲み手の審判を受ける ことにもなる。 造り手と飲み手は、本質的に 並列の関係 にあるのだ。 造り手がいるからこそ、飲み手はワインを味わうことができる一方で、そのワインに対価を支払う飲み手がいてこそ、造り手はワイン造りを続けることができる。 だからこそ、飲み手に見限られるという最悪の結末を、世界に名だたる銘醸地シャブリが迎えるようなことは、決してあってはならない。

  • 再会 <9> ブティック・ワイナリーという選択肢

    Villard Fine Wines, Sauvignon Blanc “Expression Reserve” 2019. 海外に出ると、本来の目的とは別の取材を、スケジュールの隙間に入れ込むことが多い。建前としては、メイン取材に深みを与えるため、としているが、実際には、自分が興味をもっているテーマに沿って、訪問するワイナリーを選んでいることの方が多い。 少なくとも、私は。 チリ を訪問したとき、メインの取材先は例外なく、いわゆる有名ワイナリーだったため、サイド取材としてアポイントを取ったのは、そういったワイナリーとは真逆の、小さな小さなワイナリーにした。 チリは南北に長大に広がる国 。生産量ランキングでいうと、近年はアルゼンチン、オーストラリア、南アフリカと 5~8位の間 を争っている。 (1~3位はフランス、イタリア、スペインの争い、4位はアメリカがほぼ不動、一時期大躍進していた中国は低下傾向。余談だが、食用葡萄も含まれる栽培面積ランキングは、ワインにとっては無意味だ。) 参考までに 日本 の数字を出してみよう。 2020年度の「日本ワイン」 の生産量は 約 16万hL 、でワイナリーの総数は2020年時点では 369件 だった。 チリ の平均的な生産量は年間 約1200万hL で、ワイナリーの数は 800 ほど。 この数字から見てもわかるように、 チリにあるワイナリーの多くは、とにかく巨大 なのだ。

  • 受け継がれる志

    近年、世界のレストランでは食事との相性を重視し、バリエーション豊かな楽しみを表現する“ペアリング”を提案するお店が増え、私自身も様々なお店で驚きや高揚感を楽しませて頂いております。 そのバリエーションという観点でワインについて考えると、生産地やブドウ品種の前に「色調」があり、従来の白、ロゼ、赤ワインに加えて オレンジワイン というカテゴリーが認知され、 果皮浸漬 による豊かな味わいは重要な役割を果たしています。 イタリアにおける オレンジワイン の潮流は、北東イタリアの フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州 と、その東に隣接する スロヴェニア で古くから行われてきた醸造方法を、1990年代後半に ヨスコ・グラヴネル が中心となり改良を重ねつつ、その理論や成果を惜しみなく同志に伝えることで広まっていきました。 グラブネルは今でこそオレンジワインのリーディング生産者として認知されていますが、大切な事はいかに健全で良いブドウを栽培し、その果実の力をどのようにワインとして表現するかを継続してきた生産者です。それは80年代に大樽熟成が主流だった頃に、いち早くバリック樽を導入して高品質ワイン造りに成功したことからもブドウ栽培とワイン造りの可能性に挑戦しつづける姿勢が窺えます。 その潮流の発祥地であるゴリツィア北エリアには、現在多くの名立たるオレンジワイン生産者が連なり、「オレンジワインロード」とも呼ばれるようになっています。 北側にある山地がアルプスの寒さを遮り、南からはアドリア海の潮風が到達する海と山、両方の影響を受ける個性的な環境で、土壌はこのエリアの特徴である「ポンカ」と呼ばれるマール(*1)と砂岩で構成されます。 *1:粘土と石灰が混合した土壌。泥灰土とも呼ばれる。 今回紹介したいのは、名高いワイナリーである ドラガ の次期当主であり、そのエリアで若手NO.1として注目されている ミトヤ・ミクルス の造るワインです。 生産者:Draga / ドラガ ワイン名:Venezia Giulia Ribolla gialla Miklus / ヴェネツィア・ジューリア リボッラ・ジャッラ ミクルス 葡萄品種:Ribolla gialla 100% / リボッラ・ジャッラ100% ワインタイプ:オレンジワイン 生産国:イタリア 生産地:Friuli Venezia Giulia / フリウリ= ヴェネツィア・ジューリア 州 ヴィンテージ:2015 インポーター:リリブ 参考小売価格:¥4,800 ドラガは1900年代初めにブドウ畑の耕作を始め、1950年頃までは小さなガレージワイナリーとしてバルクワインの販売と、のちに瓶詰めを始めます。その後1990年までに畑の購入やセラー建設などをしてワイナリーとして成長していきますが、この時期は前述したグラブネルなどがバリック熟成した高品質ワインを生産し、産地として注目を集め始めた頃と重なります。 この流れに追随するようにドラガも1997年からバリック樽熟成のワインを作り始め、近代的な設備を整えるなどの変化が生まれていきました。 現在、畑は標高200mの「ドラガ地区」と標高220m「ブレッグ地区」=グラブネルがブレッグワインを造る地区にあります。畑は草で覆われており、除草剤は使用しない、太陽光発電システムによるグリーンエネルギーを使用、雨水を最大限利用するなど環境への配慮を怠りません。 ドラガがバリック熟成を始めた時代に、今回のコラムの主人公である青年期の ミトヤ・ミクルス は、祖父から薄濁りの発砲した飲み物を与えられていたようですが、もちろん当時の彼にそれが何なのかは理解できなかったようです。 その後、他のワイナリーなどでの研修を終える2005年にその祖父が数本のワインを家族とともに開けた時、その青年期の記憶は、金色に輝く果皮浸漬ワインと繋がったのでした。 その魅力の意味を理解したミトヤは、当時のドラガでは樽熟成はするものの、数日の果皮浸漬しかしていなかった中で、2週間の浸漬を試みることを許され、2006年にミクルスのリボッラ・ジャッラが誕生しました。 現行のワインは30日の果皮浸漬と開放樽での発酵、アカシアの小樽で48か月の熟成を経て出来上がります。 オレンジがかった黄金色に輝く鮮やかな色調のワインは、花梨やビワ、黄色い花のようなフローラルな香りが溢れ、上品なアカシアの香りが追随します。フルボディのしっかりとしたストラクチャーを持ちつつも、口当たりは滑らかで凝縮した果実味に圧倒されます。 ミッドからは芯のあるしなやかなミネラルとタンニンが調和していき、洗練された長いフィネスへと導かれていきます。 クリーンナチュラルのお手元のような味わいは、そのブドウの健全さや土壌の個性、彼の真摯なワイン造りの結晶と言えるでしょう。まだ発展途上にもあるので、数年後にどんなワインに変化するのかも楽しみです。 しっかりとした辛口でありながらも、エキス分の強い果実感とタンニンが調和することで生まれる、旨味たっぷりな甘苦さが味わいの特徴であり、ほんのりと甘さを感じさせるような食事との相性が期待できます。 フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州はハプスブルク文化の影響を受け、イタリアでは珍しく砂糖を料理に多用します。現地では甘いプラムやグラニュー糖、燻製したリコッタチーズを使ったパスタやポレンタと呼ばれるトウモロコシ粉を使った料理、モンタジオチーズと共に飲まれるでしょう。 料理にお砂糖を使うという発想から、みりんなどの程よい甘味が残る和食とのペアリングも試してみたいところです。 ヨスコ・グラヴネルが導いたオレンジワインの世界は、多くの生産者に受け継いがれており、今後はミトヤ・ミクルスのような若手醸造家が新たな世界を開くでしょう。 伝統や革新、原点回帰や新たなチャレンジなどが凝縮する今の時代に、ワインを楽しめることは最高の贅沢であり、毎年造られるワインを心待ちに出来ることを幸せに感じます。 <ソムリエプロフィール> 永瀬 喜洋 Yoshihiro Nagase 株式会社 クアトロヴィーニ 代表取締役 2001年 イタリアに渡り、レストランにてソムリエとして従事しながら20州のワイン生産者を訪ね見聞を広げ、2007年までの間に日本とイタリアを行き来し数々の新規レストラン立ち上げに参画。 2014 年  第8回イタリアワイン・ベストソムリエコンクール(JETCUP) 優勝 駐日イタリア大使館公認 イタリアワイン大使 拝命 2018年  株式会社 クアトロヴィーニ設立 2019 年  Italian International Indigena Center Piemonte Specialist 資格取得

  • 真・日本酒評論 <6> ナチュラル・サケは存在するのか

    <みむろ杉:木桶菩提酛 2021> それは数年前のこと。筆者とは旧知の仲でもある、アメリカ在住のナチュラル・ワインを専門とするワインライター( 以降、Aさんと表記する )が、Facebook上に、 「ナチュラル・サケが素晴らしい!」 という旨の投稿をした。 その投稿を目にした筆者は、即座に反論のコメントをした。 「ナチュラル・サケってなに?そんなの無いよ?」 筆者のコメントに返答してきたワインライターも、その主張を全く譲らず、炎上の気配が漂い始めたため、議論の場をMessengerでのグループチャットへと移行した。 名は伏せさせていただくが、このグループチャットには、とある高名な日本酒の造り手( 以降、Mさんと表記する )も参加した。 Aさんの主張をまとめるとこうだ。 オーガニックで栽培した米を、添加物を一切使わずに醸造したサケがある。それはナチュラル・サケと呼べるものだ。 Aさんのその時点での主張を探っていくと、どうやら オーガニック米を、乳酸菌と酵母を添加せずに醸した日本酒 のことを具体的には指しているようだった。つまり、 有機米を使用し、生モトか山廃モトを酒母とし、培養酵母を添加していないタイプの日本酒は、ナチュラル・サケである、という主張 だ。 オーガニック農法がナチュラルと呼ぶべきものの絶対的前提条件であることには、筆者もMさんも、無条件の賛同を示した。 しかし、その他の部分が問題だった。 Aさんの主張には、 ナチュラル・ワインにおける「野生酵母」に対する考え方が根底にあった 。ワイン側の話をすれば、オーガニック農法で守られた葡萄畑に棲む微生物(酵母など)が、葡萄に引っ付いて醸造所へ運ばれ、酵母添加などをせずに醸造すれば、その畑の個性を素直に表現することになる、という筋書きだ。 この考え方に対して、 Mさん は2つの回答をした。

  • Advanced Académie <22> 農薬の歴史

    農薬は近代農業と共に発展し、ワイン産業もまた、近代は農薬と共に歩んできた。 農薬という言葉そのものは、実は対象範囲が広く、一般的にイメージされる化学合成農薬にとどまらず、天然由来のものも含まれる。 そのような範囲で農薬を定義するなら、農業と農薬の関係は非常に古い。 例えば、 古代ローマや古代ギリシャ では、様々な植物の煮汁や、ワイン、オリーブオイルの搾りかすなども、農薬的な使われ方をされていたと考えられている。 また、 紀元前1,000年ごろの技術 とされ、その後 約2,500年 もの間、害虫駆除のために用いられてきたのは、 硫黄を燃やす、燻煙法 だ。

  • Domaine de la Romanée-Conti

    ファインダイニングのソムリエをしていると幸運なことがある。ブルゴーニュのトップ生産者、* DRC をティスティングする機会に恵まれることだ。ワインをあまり嗜まない方でもDRCの ロマネ・コンティ といえば世界で最も高価なワインの一つということを知っていると思うが、『なぜ素晴らしいのか』を知っている方は少ないのではないだろうか。それもそのはず、DRCの中でもお求めやすい(?) CortonやEchezeaux でさえもレストランでの販売価格は10万円を優に超えてくる。ソムリエという職業を選んだからには一度は口にしてみたいDRC。今回、憧れと尊敬の念を込めてDRCが所有する Vosne-Roman é e 村にある特級畑の違いを記事にさせていただく。 *DRC: Domaine de la Romanée-Conti の略 DRC -その凄さとは- DRCが他の生産者と違うところといえば、 グラン・クリュ(特級畑)しか造らない ことがまず挙げられる。現在ブルゴーニュの特級畑1haの平均価格は銀座の一等地より高く、約625万ユーロ、日本円にして約9億円弱だ。それらの畑を複数所有している事実だけでも、 DRCが特別だということがわかる。 DRCが所有する特級畑の説明を、簡潔にさせていただく。 ヴォーヌ・ロマネ村、及びフラジェ・エシェゾー村には8つの特級畑があり、DRCはその中の7つの畑を所有、もしくは借りてワインを造っている。 単独所有は Romanée-ContiとLa Tâche の2つ。 他にもコルトンの丘から Corton(赤)、Corton-Charlemagne(白) 、そして白ワインの最高峰 Montrachet を0.68ha所有している。2018年に、ボノー・デュ・マルトレイからCorton-Charlemagneの畑を借地契約した件は記憶にも新しい。どのような順番や経緯でDRCは貴重な特級畑を手に入れたのだろう。少し歴史を遡りながら解説させていただく。 *参考までに各特級畑の斜度と標高をまとめたのがこちら。 全てはここから始まった DRCのオーナーである オーベール・ド・ヴィレーヌ 氏は、 『ロマネ・サン・ヴィヴァンから全てが始まった』 と語る。歴史を遡ると、12世紀にAlex de Vergy家がSaint-Vivant修道院にLe Cloux de Vosneと呼ばれる区画を寄付したことから始まる。その約400年後、Le Cloux de Vosneを買い取ったCroonembourg家が、ワイン造りをもたらしたローマ人に敬意を表して『 Romanée=ローマ人の 』と名付けた。この当時は Romanée-ContiもRomanée-Saint-Vivant も一緒だったのだ。 *16世紀のLe Clouxを構成していた4つの区画と、現在のグランクリュを重ねたもの。 *紫色の外枠は、現在DRCが所有する区画。 *1Journaux:0.34ha。1ジョルノーは当時の1日で耕作できる広さ。 1745年にCroonembourg家の当主フィリップが亡くなり、素晴らしい領地だけでなく莫大な借金も残したため、その息子は1760年にドメーヌを売ろうと決断した。それを購入したのが、のちにロマネ・コンティの名前の由来となったコンティ公ルイ・フランソワ・ド・ブルボンだ(ルイ15世の従兄弟)。その当時、近隣相場の10倍以上で Roman é e の領主権を買い取り、自身の名前を冠してロマネ・コンティ Romanée-Conti と呼ぶようになった。(その時、競売を争ったのがルイ15世の公妾であったポンパドゥール夫人である。) Roman é e のワインは彼と親しい者たちとの晩餐会でのみ供出されたので、市場から姿を消し幻の存在になったそう。 フランス革命後、領地は没収され、1794年に園芸家であったパリジャンのNicolas Defer de la Nouerreが競売で落札、1819年にナポレオンの資産を管理していたJulien Ouvardの手に渡った。 Roman é e は78,000フランで購入されたそうだが、この価格は、当時の Chambertin、 La Tâche、Richebourg という三つの特級畑を全て合わせた価格とほぼ同額であったことから、 非常に高額だった ことがわかる。 そして1896年、ついに現在のオーナーであるオーベール・ド・ヴィレーヌ氏のヒイヒイヒイ爺さんに当たる ジャック・マリー・デュヴォー・ブロシェ に売却された。そう、あの特級畑の若木などを格下げした特別な年にしか生産されない、ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュの cuvée Duvalt-Brochet の由来となった人物である。 DRCはこの時代に、 Echézeaux、Grands-Echézeaux、Richebourg の畑を獲得している。 彼が亡くなった後、畑の所有は玄孫(やしゃご)であったジャックとマリー・シャンボンの手に渡った。さらにマリーの夫のエドモン・ゴーダン・ド・ヴィレーヌは、ヴォーヌ・ロマネの名家コント・リジェ・べレールから La Tâche を購入。ここまで順調に特級畑を獲得してきたが、1930-1960年代は世界大戦によって厳しい時代を迎える。この時、畑の所有権を半分持っていたジャック・シャンボンは手放すことを考えたが、ヴィレーヌ家のエドモンは Romanée-ContiやLa Tâche が細分化するのを恐れ、 DRCを法人化 することを決意。この考えに賛同し協力したのがネゴシアンの ルロワ である。法人化されたことによって、ジャック・シャンボンがもっていた権利は株式となり、その株をルロワ家が取得。これによりド・ヴィレーヌ家とルロワ家の共同経営となって、現在に至る。 1963年:ムーシュロン伯爵から Montrachet を購入 1966年:マレ・モンジュ家から Romanée-Saint-Vivant の畑を折半耕作にて造り始める。 1988年:後継者がいなかったため、 Romanée-Saint-Vivant の所有権を買い取る。 (推定1000万ドル、資金を工面するためにドイツの保険会社に一部 EchézeauxとGrands-Echézeaux の畑を売却) 2009年: Corton をプランス・フローラン・ド・メロードより借地。 2018年: Corton-Charlemagne をボノー・デュ・マルトレイより借地。 土壌よりも斜度が大事 生産者の個性が強く表れるブルゴーニュのワインを畑の個性を説明するとき、 私は村毎の特徴より斜面のどこにあるのかでワインのスタイルを表現することが多い 。斜面上部は標高が高い分、より涼しいので、ワインのスタイルも引き締まったタンニンの力強いタイプになることが多く、反対に下部の方は豊満でタンニンの優しいスタイルになりやすい。 斜面上の位置は、大きく分けて3つある土壌タイプとも関係してくる。 石灰質、粘土 、そしてその二つを合わせた 泥灰岩のマール土壌 だ。(石灰岩も種類が沢山あるがここでは割愛させていただく) 表土は通常細かい粒子である粘土が蓄積されるが、斜面の畑だと表土は雨風で流されるため、表土が薄く石灰質が露出する傾向にある。 斜面でも上部はより薄く、下部は厚くなる 。 ブルゴーニュでは、 石灰質はwarm soil、粘土はcool soil と言い換えられる。その理由は石灰岩と粘土の“温まりやすさ“にある。表面積が大きい石灰質の石は太陽の熱をよく吸収し、色も白いので反射しブドウの成熟を助けることもある。対して粘土は赤茶色で太陽があたっても温まるのに時間がかかり、温まっても日が暮れると冷めやすい。 これが暖かい土壌、冷たい土壌と言われる所以だ。斜面上部が涼しいのに、繊細ではなく力強いと表現するのはこの為だ。どちらが素晴らしいかというのは、ヴィンテージによっても変わる。雨の少ない年には水分の保水率がより高い粘土の多い斜面下部の畑の方が良い場合もあるし、雨が多く曇りがちの年は斜面上部や中腹の石灰岩の比率が強い方が良いだろう。まず以下の画像から、斜面の土壌がどのような構成になっているかをご覧いただきたい。斜面上部は表土が薄くマールや粘土石灰、下部の方は泥灰岩に粘土の割合が高くなる。筆者は決して土壌=ワインの味わいに直結するとは考えていないが、土壌の種類、つまり水捌けによってワインのスタイルは変わると思っている。 又、地質学者ロランド・ガディルによると、 『重要なのは土壌よりも斜度』 らしく、 斜度によりブドウの生育スピードが変わる らしい。DRCの特級畑を調べた際に一番積算温度が高かったのは中腹にある Romanée-Conti で、一番早く熟すのも Romanée-Conti だったそうだ。ただ、一番早く熟すからといって一番早く摘むのかといえばそうでもなく、香りの元となるフェノールの成熟を伸ばす目的で、ブドウの実が樹になっている ハンギングタイム を長くとるため収穫は遅い。 Romanée-Conti が幾層にも広がる官能的なアロマをもつのは、こういった背景がある。 *参考までに各特級畑の斜度と標高をまとめたのがこちら。 La TâcheがRomanée-Conti を上回る年があるというのを、聞いたことがあるだろうか。実はこれ、 La Tâche の畑の高低差が関係する。 La Tâcheが約50mも標高にアップダウンがあるのに対し、Romanée-Conti は2 62-272mとわずか10mの間に収まっている。Romanée-Conti がヴィンテージを直接反映するのに対し、 La Tâche はある程度“調整”が効きそうだ。暑い年には斜面上部、寒い年には斜面下部の良いとこ取りが出来る。土壌のスペシャリストのイヴ・エロディ氏によると、 La Tâche の特異性は斜面下部で暖かい風が渦巻き斜面を昇るので、雨が降っても他の畑より早く乾くという。また斜度が強いために雨はすぐ側面に排水され、ブドウが実膨れるのを防いでくれる。これらの理由により出来上がるワインは凝縮感に富んだ力強いワインとなる。よく La Tâche の方が Romanée-Conti より長期熟成すると言われるのは、この恵まれたテロワールから生まれる豊富なタンニンによるところが大きい。 Vosne-Romanéeのグランクリュ分布図はこちらのリンクから 標高差でいえば、 RichebourgとRomanée-Saint Vivant の関係も面白い。隣接しているのに、そのワインのスタイルは対局にある。近年ジェンダーの関係でフェミニンとマスキュランという言葉はワインを表現する際に使用されなくなってきてはいるが、オーナーのヴィレーヌ氏によると Richebourg はマスキュラン、 Romanée-Saint Vivant はフェミニンだという。ここであえて、ヴォーヌ・ロマネの特級畑の違いを女系と男系に分けると、以下のようになるだろう。 フェミニン Romanée-Conti ▶︎ Romanée-Saint Vivant ▶︎ Echézeaux マスキュラン La Tâche ▶︎ Richebourg ▶︎ Grands-Echézeaux 男系である RichebourgがLa Tâche の弟的な存在と言われるのは、 二つの畑に共通する急勾配の斜度 にある。出来上がるワインはリッチで濃厚、若い時にはタンニンをしっかりと感じる。又、化学肥料を大量に使っていた1960-70年代、『ブルゴーニュの土壌はサハラ砂漠より微生物が乏しい』と衝撃の発言をして当時注目を浴びた地質学者のクロード・ブルギニヨン氏(DRCの土壌改良のコンサルタントでもあった)によると、 Richebourg は1g当たりの粘土の比表面積が他の特級畑より大きいらしく(対照的に一番小さいのが Romanée-Conti )、この粘土の比表面積も出来上がるワインのタイプに関係してくる。例えるなら、 Richebourg は筋骨逞ましく豪華。しっかりとした構成要素をもつ。 Romanée-Saint Vivant は他の3つに比べると最も標高が低く斜度が緩やかな為、出来上がるワインは可憐で華やか。若いうちから調和が取れていて、最もフラグラントなワインになる。さらにSaint-Vivant修道院が所有していたことを考えると歴史が深く、市場価格では負けるものの、“格”では Richebourg より上だと考える人も多い。 困ったことに、 Grands-EchézeauxとEchézeaux の違いは、斜度や標高では語れないところがある。Grand(偉大)と名前につく通り、 Echézeaux よりもしっかりとした構成をもつ Grands-Echézeaux は、元々は Echézeaux より大きかったためにGrandと名前がついた。断層の真上に位置し、Clos de Vougeotの上部やMusignyとも近しいスタイルとなる。土壌は Echézeaux よりも粘土が多めで表土が厚く、ストラクチャーのしっかりした壮大なワインとなる。 対して Echézeaux は同じ名前を冠するもののスタイルとしては真逆で、ワイン評論家のマイケル・ブロードベント氏は「 Echézeaux を合唱に例えると、真っ先に聞こえてくる歌声」だと言う。標高は Grands-Echézeaux より高いが、大部分はコンブ(涸 れ谷 )にあるのでほとんどが平らに見え、緩い波のようにうねっている。その為、他のDRCの畑と比べると一番熟成が早くに訪れ、若いうちから微笑みかけてくれる繊細でチャーミングなワインとなる。 DRCの特徴として他にも覚えておいていただきたいのは、 ・ヴォーヌ・ロマネで最も収穫の遅い生産者であること ・haに対し、他のワイナリーよりブドウ畑を管理する人が多いこと この二点が挙げられる。筆者も初めてブルゴーニュに訪れた時に、管理の行き届いた畑を見て思わずため息が出たものだ。対照的にルロワの畑はボーボー生い茂っていたのが印象的で、同じビオディナミ栽培でもそのスタイルの違いを感じたことを覚えている。 DRCをブラインド・ティスティングする際にはぜひこの記事を思い出し、参考にして欲しい。 今夜もまたこの幸運が訪れますように。 <ソムリエプロフィール> 井黒 卓 国際ソムリエ協会(A.S.I.)認定ソムリエ 米国Court of Master Sommelier認定ソムリエ 2020年 JSA主催 第9回全日本最優秀ソムリエコンクール 優勝 2021年 ASI主催 アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール 日本代表

  • ペアリングの構築手順

    ペアリングの基礎理論に関しては、一連の 「ペアリングの基本」シリーズ で説明してきましたが、実践になると、 理論をどのように順序立てて組み合わせて使っていくかが鍵 となります。 なお、あらゆる基礎理論を精密に組み合わせられるようになれば立派な上級者ですが、最終的に 「主観」 に落ちてしまうのがペアリングの本質でもありますので、 徹底的に理論武装したからといって、常に最適なペアリングになるとは思い込まないほうが良い でしょう。 実は、ペアリング基礎理論には、明確な 「優先順位」 があります。 これは、ペアリング理論に基づいた複数の効果が確認できる際に、より 優先度、もしくは支配度の高い項目が存在する ということです。 この優先順位を理解していないと、どれだけ基礎理論を単体の項目ごとにマスターしていても、完成度の高いペアリングにはあまりなりません。 では、優先順位の高い順から説明していきましょう。 また、スムーズな解説の流れになるように、各項目の詳細は記載しません。 「ペアリングの基本」シリーズ の中から、該当する詳細を学んでください。 優先順位No.1:酸味 ワインの酸味が関連したペアリングは大きく分けて3種類あります。 ・塩分、油分、脂肪分、軽度のスパイスに対する カット 効果。 ・料理(食材)の酸味に対する、 調和 効果。 ・料理(食材)のシンプルな味わいに対する、 ハイライト 効果。 この中で、優先順位が関係してくるのは、 カット効果と調和効果 です。 この二つの項目は、あらゆる基礎理論の中でも、最優先で考慮すべきものとなります。 ハイライト効果に関しては、オプション的手法と捉えて問題ありません。 優先順位No.2:甘味 ワインの甘味が関連したペアリングは大きく分けて3種類あります。 ・料理(食材)の甘味に対する、 調和 効果。 ・強いスパイス、酸味、苦味に対する 中和 効果。 ・強い塩分に対する、 対比 効果。 この中で、問答無用で優先順位が高くなるのは、 調和効果 です。

  • ペアリングの基本 <風土>

    多くのワインにとって極めて重要な要素の一つである「テロワール」と、その葡萄が育つ地方の郷土料理の間には密接な関係が生じることがある。長い歴史の中で築き上げられてきた 同じ郷土同士のクラシックペアリング は、大部分がこの 風土のペアリング に基づいているが、その様なクラシックとされる例の中でも、極めて完成度の高いものは、風土だけではなく、酸、甘味、渋味、アルコール濃度、風味といった ペアリングのより重要な要素においても、高い整合性が見られる 一方で、風土によりきったペアリングの中には、完成度がそれほどまで高くないものも少なからず存在している。

  • ペアリングの基本 <質感>

    ペアリング理論の多くは、客観的かつ固定的な要素だけを論理的に組み合わせて用いていくことができるが、 質感という要素はその中でも例外的な存在 。質感をペアリング上で意識して使っていくためには、それなりの 知識、経験と感性が必要 となってくる。

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