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  • SommeTimes’ Académie <28>(ワイン概論24:オレンジワイン醸造 2)

    一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。今回は 、一般的なオレンジワインのスタイルを学んでいきます。 試験後に忘れてしまった知識に意味はありません 。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「 記号 」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「 何を意味するのか 」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。 SommeTimes Académie では、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「 リアル 」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。 SommeTimes’ Viewをしっかりと読み込みながら進めてください 。 多様化 オレンジワインが復活し、世界中で造られるようになった現在、そのスタイルも多様化の一途を辿っています。それらのスタイルを整理するためには、 3つの要素 を組み合わせて、考えていく必要があります。 3つの要素とは以下の通りです。 1. 醸し発酵の期間 2. 醸し発酵中〜育成期間における温度管理の有無 3. 補酒の頻度 なお、最終的には葡萄品種も強い影響を及ぼしますが、変数があまりにも多く、一般化が難しい要素のため、ワインごとに葡萄品種の影響を分析した方が良いでしょう。 SommeTimes’ View 3つの要素は、それぞれ異なる形でワインに影響を及ぼします。一つ一つをしっかりと理解しることによって、最終的に組み合わさった際の傾向が見えやすくなります。 1. 醸し発酵の期間 期間だけを見た場合、基本的には長ければ長いほど、果皮からの影響が強まり、タンニンなどのポリフェノール類もより多く抽出されます。

  • 日本ワインペアリング <3> ブラック・クイーン

    本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第三回となる今回は、日本発祥のハイブリッド品種である「 ブラック・クイーン 」を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 ブラック・クイーンは、より有名な マスカット・ベイリーA と同様に、 川上善兵衛氏 によって、 アメリカ系葡萄品種のベイリー 、そして、 イギリスの食用ハイブリッド品種であるゴールデン・クイーン の交配品種として、1927年に開発されました。 親であるゴールデン・クイーン自体も、ヨーロッパ系ヴィニフェラ種とハイブリッド系品種の交配葡萄であることから、ブラック・クイーンに残った(一般的にワイン醸造に向いているとされる) ヴィニフェラ種の遺伝子割合は、かなり少ない ことがわかります。 そして、この遺伝的特徴は、ワインにも確かに現れてきます。 さて、ワインになった時の、一般的なブラック・クイーンの特徴を分析していきましょう。 酸味:High 果実味:Med - 渋味:Med- アルコール濃度:Low ~ Med + 余韻:Very Short アロマ:未熟なブラックラズベリー その他:非常に鋭角な酸。酸を抑えるために極端な遅摘みにしたり、過剰に樽を効かせることも。 となります。 ブラック・クイーンの特性として、ペアリングの観点から特に注視すべきなのは、 それほど強くない果実味と、強烈過ぎるほどの酸が、かなり極端な構成要素として共存している点 です。

  • 出会い <14> 温暖化時代のロゼ

    Dom. du Moncaut, Rosèita 2020 ¥2,700 ロゼは夏の飲み物 だ。 筋金入りのロゼ好きである筆者のような飲み手にとっては、ロゼはオールシーズンなのだが、世界的なスタンダードとしては、ロゼとは夏の季語である。 しかし、日本ではなぜか春の、桜の時期の飲み物と印象付けられてきた。 世界中を見回しても、ロゼ=春、となっているのは日本だけ だ。 挙句の果てには、春のロゼプロモーションが始まると、「桜の香り〜」といった理解不能なテイスティングコメントまで氾濫する。 もし筆者が間違っていたら素直に認めるので、誰か私に飲ませて欲しいものだ。桜の香りがするロゼなるものを。 ロゼにまつわる誤解はこれだけではない。 ロゼ=甘い、というイメージもかなりの謎。 確かに、昔田舎で見た一升瓶に詰められた謎めいたロゼは甘かったし、フランス・ロワール地方のロゼ・ダンジュや、アメリカ・カリフォルニア州のホワイト・ジンファンデルのように甘いロゼは存在しているが、生産量ベースで見ると、 間違いなく圧倒的なマイノリティー だ。 いつか、本格的なリサーチをしてみたいと思っている謎だ。 さらにもう一つ、 ロゼシャンパーニュの誤解 、がある。

  • ワインとラーメン <後編>

    前編 では、世界のラーメン事情のお話をしました。 (ワインの話がほとんど無くて、すいません。) さて、いよいよ本題の、ラーメンとワイン、です。 一体どんなワインがラーメンと合うのでしょうか? まず、(言うまでも無く)ラーメンの種類は大きく醤油、塩、味噌、豚骨に分かれ、最近ではチーズ風味やトマトスープなどもあり、まさに多種多様。これら全てに合うワイン、またはそれぞれに合うワイン1種ずつを選ぶのはさすがに壮大な話なので、今回はスタンダードの醤油ラーメンとの相性を探させて頂きます。 醤油に関してもバリエーションは様々ですが、化学調味料未使用で淡麗な味わいのあっさりした醤油ラーメンとの相性、とさせていただきます。 まずはラーメン屋さん探しから始めましたが、ちょうど僕の住んでいる埼玉県さいたま市大和田で贔屓にしているラーメン屋さんがあり、東京はもちろん他県でも必ず美味しいと思ってもらえるクオリティの高いラーメン屋さんです。「自家製麺 コトホギ」と言いまして、定期的にオリジナルラーメンを開発し、サイドメニューも斬新かつ本格的。さすがのミシュランも、ここは見逃したようです。基本のラーメンは、無化調ですっきりコクある素晴らしい一品です。今回はこちらの醤油ラーメンとの相性を試してみました。 相性を探る際のポイント 何度も書きますが、ラーメンの味わいやスタイルがあまりにも多種多様な為、相性を考えるポイントは絞らせて頂きました。 では、ポイントとその理由を書き出します。 1. 化学調味料無添加 これに関しては、皆様のご意見に相違はないかと思います。恐らく日本の多くのラーメンには化学調味料が入っており、またそれが多数の人が思うラーメンの味の一部になっていることは個人的には異論が無いです。しかし安くて誰でも食べられるラーメンを造る場合、多少の化学調味料はビジネス上で使用することはしょうが無いとは思いますし、体に必ず害があるとはまだ解明されていないようです。しかし ワインと合わせる場合は、間違いなくワインのみならず双方の味わいを壊してしまう相性の悪さがあります 。 恐らく何らかの化学変化が起こっているようなのですが、詳しくは別の機会に調べます。しかし明らかに品質がわからなくなる現象を避けるため、ここは絶対に外してはいけないポイントとなります。 2. 中国料理として考えない 日本におけるラーメンのスープは和風の出汁を使っていたりと、すでに中国料理とは違うカテゴリーと考えています。最初は有名中国料理店で働かれている名ソムリエの方々が考えている、中国料理とワインの相性を参考にすることもありかと思いましたが、味わいの構成が違うため、「このワインは中国料理に合うからラーメンにも合うだろう」とは一切考えないようにしました。同様に「麺料理なのだから、パスタに合うイタリアワインなら合うのでは?」のような考え方も止めました。あくまでストレートにラーメンとワインの相性を考えます。 3. ワインを口の中で合わせるタイミングによってワインを変える。 いかに日本や世界各国でラーメンがハイレベルな食べ物として定着しつつあっても、食べ方に作法は無いというか、むしろ必要すらなく、フレンチやイタリアンの様に考えながら食べる物でもありません。しかし、そうなると問題になるのは、ワインを飲むタイミングです。一般的な料理とワインの相性でもそうですが、料理を口に含んだ状態でワインを飲む状態(口内調理)と、飲み込んでからワインを飲む状態(余韻ペアリング)では多少の違いがあるのですが、ラーメンの場合も同様なのか、確かめてみようと思います。 4. いつかはラーメン屋さんに置いて欲しい願いを込めての価格 仮にラーメン店がワインに合うワインを置くことがあっても、ラーメン一杯の平均価格が800~900円くらいと考えれば、グラス1杯1,000円を超えるのはあまり現実的ではありません。その点を鑑みて、希望小売価格1500円~2500円くらいの範囲で選びました。 検証結果 ① ラーメンを飲み込んでからのワイン ラーメンを飲み込んだ後は、淡麗の醤油味とは言え多少脂が残り、旨味や香りも程よく残っています。なるべく口の中をすっきりとさせ、尚且つこの余韻を消しすぎないワインと考えました。 何種か試しましたが、下記が良かったと思います。 ・シャブリ ・ソアヴェ ・シャルドネ(オーストラリア) ・ペットナット※微発泡ワイン 相性が良かったワインに共通する点は、 樽の影響や品種由来の強い個性が無い事 です。そして 程良い酸味 もキーポイントでした。 ワインの酸味は脂肪分を流しますが、程よい酸の塩梅であれば、流しすぎません。香りも支配的ではないため、余韻も邪魔しませんでした。また、こだわった店の醤油ラーメンは醤油にもこだわっていることが多く、この店のラーメンも醤油由来の良い酸味を感じます。また鰹節を出汁に加えた場合も、鰹節から来るかすかな酸味があるので、ワイン自体にも多少酸味があるとうまくマッチします。 ② 口内にラーメンが残っている場合 上記の合わせ方は、もしかしたらラーメンにかかわらず、スペインのアホスープ(ニンニクと卵、オリーブオイルのスープ)や、韓国のユッケジャンクッパ(辛くない)などの料理にも当てはまる可能性がありますが、麺とスープを口に含んだ状態でのペアリングは、ワインならではと思っています。個人的感覚ですが、スープのような味わいのワインなら違和感なくワインとの融合ができるのではと考えました。 合わなかったワインは後ほど書きますが、まずは結論から。 旨味のあるロゼが抜群 でした。 オレンジも良いかと考えて合わせてみましたが、タンニンがスープの味わいを邪魔し、苦みを発生させる事がありました。しかし、タンニンが全くないとスープのコクを受け止めきれないなという印象も同時にありました。 そこで試したのは酸味が程よく、適度なフレッシュ感がり、触感にトロミを感じ、そして強くないタンニンと旨味をもちあわせたロゼ。 何種かのロゼを合わせたところ、最高の結果だったのがこちらのワイン。 生産者:Podere Luiza ワイン名:OMBRA Di ROSA /オンブラディローザ 葡萄品種 :Sangiovese/ サンジョベーゼ ワインタイプ :ロゼワイン 生産国 :イタリア 生産地 : / トスカーナ州 キャンティ地区 ヴィンテージ :2019 インポーター :è Vino 参考小売価格 :¥2,650(税込み) イタリアはトスカーナ州キャンティ地区のワイン。 クラッシコなどの銘醸地ではなくColli Aretiniで造られていて、2008年からボトル詰めを開始した造り手ですが、農薬や化学肥料を一度も使ったことが無いというこのワインは、まさしく自然な葡萄のスープ。味わいに引っかかりが全くなく、ワイン単体でも美味しいのですが、合う料理はパスタや魚料理でもなく、ハムやチーズでもなく、ラーメン(笑)。 あくまで個人的意見ですが、ラーメンと出会うために生まれてきたワインではなかろうか、 とすら思ってしまいました。 今回合わせたコトホギさんの、優しくもコクあるスープの味わいを邪魔することなく膨ら ませ、余韻にも良い風味を加えており、麺が伸びるのが不安になるほどじっくり食べてい たくなります。 合わなかったワイン 合わないと感じたワインの具体的な名前は書きませんが、下記にそのタイプをまとめました。 1. タンニンの強いワイン ヘビーなタンニンをもつ赤ワインや、新樽を使った白ワイン、果皮浸漬を行ったオレンジやセニエのロゼは、ラーメンを食べているどのタイミングで合わせても、味わいを邪魔するように感じました。何より苦みを強く感じます。白ワインでもストラクチャーのしっかりしたものや、「カチッとした」固い味わいのものも同様に苦みを感じました。 2. 香りや風味が強すぎるワイン ドイツのリースリングやアルザスのゲヴェルツトラミネールは、味わいの部分は良いのですが、香の主張が強く、マッチしませんでした。 赤に関しても、熟成した物は味わいよりも香りが強く同様の結果となりました。 3. 甘口のワイン 程良い甘さはあった方が、相性は高まるとは思いましたが、貴腐ワインや食後酒に飲むレベルの甘さは、タンニンの強いワイン同様にラーメンの味わいを損ねてしまいました。 総評 そもそも何故この企画を始めたのかは 前編 で書かせて頂きましたが、別の個人的理由が実はあります。 中国料理やベトナム料理、タイ料理や居酒屋。どれもその美味しさはわかっていても、フレンチやイタリアンの様な観点からはクローズアップされづらいイメージがどうしてもありました。しかし、それらの料理に合わせて素晴らしいワインを提供するお店が数多く出現したことによって、その料理自体にあまり興味が無かった人達にも、元々の素晴らしさがスムーズに伝わるようになった側面があるのではと思っています。 なので、今後自身が好きなラーメンというカテゴリーも、同じく好きなワインによって素晴らしさが伝わってくれればと思っています。 また、今回の相性に関しては、ペアリングのプロの皆様に比べれば、幾分主観が強かったかもという反省と、そもそもラーメンにワインを合わせるなんて邪道、と思われる方がいらっしゃるのも重々承知しております。 しかしながらラーメンとワイン愛から来る気持ちの強さゆえ、とお思い頂ければありがたいです。 ご好評頂ければ、今後もタイミングを見つけて、違うラーメンでの相性も試していきたいと考えています。 今回のラーメン屋さん 自家製麺 コトホギ 〒337‐0053 address埼玉県さいたま市見沼区大和田町1丁目1389 Tel 048-687-4567 Close 水曜日 <ソムリエプロフィール> 山根 宏士 / Hiroshi Yamane フリーワインアドバイザー 1976年北海道生まれ。札幌の星付きフレンチでキッチンからこの業界をスタート。以後ソムリエに転身し札幌でも伝説的なビストロ「わいんや」を立ち上げる 東京に移住後は「オーバカナル」「ブラッスリーオザミ」「アロッサ渋谷」「W.W」「ARGO」 等の様々なジャンルのレストランでソムリエ、マネージャーとして研鑽を積み現在に至る。 現在は某企業の料飲コンサルタントを中心に行い、都内レストランやインポーターの手伝いをフリーにて行っている。 個人事業 R&C Office 代表 JSA認定シニアソムリエ WSET Level 3 オーストラリア公社認定 ワインオーストラリア A+Level 2

  • 再会 <14> ガリシアの秘宝

    Quinta da Muradella, Muradella Blanco 2012 2000~2010年前後頃のスペインワインは、実に楽しかった。 現在はカタルーニャ州の各地やマドリード近郊を中心に新たな盛り上がりを見せ、また違った楽しさが生まれているが、 ほんの10年ほど前まで、スペインワインのホットゾーンは、間違いなく北西のガリシア地方だった 。 そのシーンを引っ張っていた象徴的存在は、 ラウル・ペレス 。 天才 の名をほしいままにした希代の醸造家は、ガリシアの各地に点在していた気概溢れる造り手たちとタッグを組み、時に自らの名を冠し、時に彼らの名を冠して、数えきれないほどの傑作群を世に送り出していた。 ラウルとタッグを組んだことによって、結果的にその名声や評価が大きく高まった造り手も多く、フォルハス・デル・サルネスのロドリゴ・メンデス(リアス・バイシャス)、アデガス・ギマロのペドロ・ロドリゲス(リベラ・サクラ)などは、すでにスーパースター級の存在となっている。 そんなラウルに連なる造り手たちの中でも、最も地味で、最も奥深く、最も難解かつ異質なのが、今回久々の「再会」を果たした、 キンタ・ダ・ムラデッラ だ。

  • 孤高のアルザス

    北東フランスの銘醸地、アルザス。 歴史的に数多くの侵略を受けてきた「東の玄関」は、今もまだ、いびつな多様性という形でその影響を強く残している。 ワイン産地として見れば、 フランスとドイツの文化が融合した場所 であり、同じくドイツ領となっていた時代があったロワール地方のモゼールという小産地と共に、 ドイツ型の細長い瓶 にワインを詰める習慣が残っている。 ドイツとは異なる点、という観点から見ると、葡萄品種の構成にそれがよく現れている。近年こそ例外も増えてきたが、 ドイツの銘醸地ではリースリングが圧倒的な王者として君臨 してきた。生産量、品質の両方においてだ。 一方アルザスでは、 リースリング、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカ は、高貴品種として横並びの地位にある。生産量ではリースリングが多いが、 品質面では甲乙つけ難い 。 高貴品種に続く品種でも、 ピノ・ノワール、ピノ・ブラン、オーセロワ、シルヴァネール などから、高品質なワインが造られることが多い。 このように、 品種面の多様性と全体的な質の高さ において、ドイツとの比較にとどまらず、フランス全土を見渡しても、群を抜いている存在がアルザスである。 また、山脈の麓に開かれた特性から、 テロワールもまた多様 で、異なるテロワールにどの品種が適しているかの研究も、アルザスではかなり進んでいるため、質の高さに明らかな貢献を果たしている。 さらに、アルザスには もう一つ非常に面白い要素 が加わる。 それが、 生産者の多様性 だ。 HugelやTrimbach のような大ネゴシアンの品質は安定して高く、 WeinbachやZind Humbrecht、Marcel Deiss のような中規模ドメーヌは圧巻の個性を放つワイン群を手がけ、より小規模なドメーヌもクラシックからナチュラルまで多種多様。 それぞれの生産者タイプに独自の魅力 があり、ここもまた甲乙つけがたいポイントとなっている。 品種の多様性と生産者の多様性が組み合わさると、無限とも思えるような掛け算 となり、アルザスの底知れない奥深さを形成する土台となっているのだ。 そんなアルザスの中でも、特に際立った個性を発揮し続けている造り手を、今回は紹介する。 その名は Rolly-Gassmann 。約51haを所有する 中規模ドメーヌ である。 ワイン造りの歴史は 1611年 にまで遡れるそうだが、現在のドメーヌは、Rolly家とGassmann家の結婚によって、 1967年 に誕生した。 ビオディナミとビオロジックの技法を大々的に取り入れた独自のサスティナビリティ農法 は非常に厳格で、オーガニック認証こそ取得していないが、高い信頼のおける造り手だ。 Rolly-Gassmannが手がける 40種類にも及ぶワイン には、 ほぼ一貫した特徴 が見られる。 確かな残糖感と、鮮烈な酸 (一部品種を除く)だ。 アルザスは辛口白ワインの産地というイメージが強いかも知れないが、実情はかなり異なる。 端正な辛口へと明確にシフトしているのは、大手ネゴシアンが中心で、中規模ドメーヌ(Weinbachなど)や小規模生産者にも、そのスタイルを踏襲している造り手はかなり多いが、「そうではない」グループも昔からいた。 Marcel Deiss、Zind Humbrecht、そしてRolly-Gassmannは「辛口とは限らない」グループの代表格であり、その中でもRolly-Gassmannは最も残糖の印象が強く残ることから、一際強い個性に繋がっている。 甘さの壁 さて、Rolly-Gassmannのワインを理解する上で、とにかく煩わしいのが、この 「甘さ」 だ。 実際には、 甘さをしっかりと中和するだけの酸 があるため、ベトつくような甘さには決してならないのだが、(他国でもある程度その傾向はあるが)洗脳的に「辛口こそ正義」と植え付けてきた日本市場においては、どうしてもネガティヴポイントになることが多い。 この際だからはっきりと言うが、 甘さだけを切り取ってワインを評価するのは、「木を見て森を見ず」と全く同様 だ。消費者が自らの好みでそう評価するのなら、もちろん何も問題は無いのだが、プロフェッショナルと自称する人々がそのような狭い視点からテイスティングを行うのは、極めてアンプロフェッショナルである。 別の角度から、もう少しマイルドに言い直そう。 「甘い」と言うただ一つの理由でもって拒絶するには、Rolly-Gassmannのワインは素晴らし過ぎるし、そのあまりに特異な存在価値を思えば、このスタイルを理解しなくても良いとは、断じて言えない。 圧巻のテイスティング 今回はRolly-Gassmannのワインを30種類以上同時にテイスティングする機会に恵まれたのだが、正直驚きを隠せなかった。 Rolly-Gassmannが、常にワインを「 飲み頃、もしくはそれに近いタイミング 」でのみリリースすることは知っていたが、そのポリシーがリリースされたワインに及ぼす影響は、私の予測可能範囲を遥か超えていた。 ほぼ全てのワインが、しっかりと開き、ちゃんと美味しかった のだ。 長年のワインファンなら、これだけでもRolly-Gassmannがいかに特殊かが分かるかと思う。 ワインの「飲み頃問題」は、非常に頭の痛いトピックで、数多くのワインファンに、多くの失望感を与えてきたことだろう。 大金を払って購入した憧れのワインや、自宅セラーでゆっくりと寝かせていたワインを、意を決して抜栓するも、どうにもこうにも閉じこもったままで、全く微笑んでくれない。 そんな経験をしたことがある方は、決して少なくないだろう。 だが、Rolly-Gassmannのワインなら、そんな心配は無用。リリースされたワインは、すぐにでも飲める。 この安心感の恩恵は、計り知れない。 では、具体的なワインのレヴューに入っていくが、34種類全てをレヴューするわけにもいかないので、ある程度のテーマ性をもたせて、特に優れていると感じたワインのみをご紹介していく。 Pinot Noirのタイミング Pinot Noirのリリースは3種。ヴィンテージは2017、2014、2009年。 どれもが、違う魅力を放つ状態にありながらも、しっかりと開き、どのヴィンテージも美味しい。 筆者が最も惹かれたのは 2014年 で、 僅かな熟成感と豊かな果実味のタッチが絶妙な塩梅で交錯 していた。 当然2017年は若々しく、2009年はより発展していたので、自分の好みによってヴィンテージを選べば良いと思う。そして、この言葉が簡単に言えてしまうところからも、Rolly-Gassmannの素晴らしさが見えてくる。 2014年ヴィンテージの価格は3,340円。正直言って、安過ぎる。 極上のエデルツヴィッカー Terroir des Chateaux Fortsの名でリリースされる Edelzwicker (様々な品種を混ぜて作るカジュアルな白ワイン)はRolly-Gassmannの十八番だ。今回のリリースは2017年で、最高にメロウな状態。Edelzwickerと言うワインは、 普通はもっとカジュアルで薄い味わいなものだが、このワインは別格の奥深さ を備えている。 価格は2,670円。 3,000円以下の白ワインとしては、世界最高峰の一角 だと思う。 シャープなシルヴァネール Rolly-Gassmannのラインナップの中でも、 最も硬質な特徴 をもっているのがシルヴァネールだ。今回のリリースは2011年で、飲み頃のど真ん中。鋭角で力強いミネラルと、エッジの効いた酸、独特なスパイス感溢れる風味が絶妙。価格は3,670円と、驚異的にリーズナブルだ。 良く似た品種 ピノ・ブランとオーセロワは、完全な辛口となった場合、ブラインドでの判別が非常に難しいほど、 良く似た味わい となる。 しかし、残糖と酸によってリッチな味わいに仕上がったRolly-Gassmanの場合、 両品種の違いがより鮮明に浮き上がってくる 。ピノ・ブランは丸みがあり、オーセロワにはより強いエッジがあるのだ。 Riesling 以降は高貴品種の紹介となる。 Vendanges Tardives(V.T)やSelection de Grains Nobles(S.G.N) も含まれていたため、そちらも併せて紹介していく。 今回リリースされたスタンダードリースリングは、2019、2017、2014、2012、2011、2010年と幅広く、さらにテロワールやキュヴェの違いもあったため、一括りにして話すのは困難。 ピノ・ノワールと同様に、全てのワインがしっかりと開いた状態で、異なる魅力をもっていた。 その前提での話にはなるが、優れたリースリングには、 10-12の法則 というものがあり、これはヴィンテージから10~12年経過したタイミングで、最高の飲み頃タイミングが一度来る、と言うことを意味する。 今回のリースリングラインナップにも、その傾向が顕著に見られ、筆者が「特に素晴らしい」とマークしたリースリングは、以下の通りとなった。 2011 Riesling de Rorschwhir “Cuvée Yves” ¥4,500 2010 Riesling Kappelweg de Rorschwhir ¥6,670 2011 Riesling Pflaenzerrenben de Rorschwhir ¥6,500 2012 Riesling Pflaenzerrenben de Rorschwhir ¥7,500 リースリングのV.TやS.G.Nは非常に特殊 で、一般的なこれらのワインとしては、 かなりドライに感じる部類 となっている。V.Tでは確かに辛口に寄ったものはあるが、S.G.Nでもとなると、異質極まりない。 2009年ヴィンテージのS.G.N(8,000円)は、巨大なボディの中に、濃密な果実味が閉じ込められ、同じく巨大な酸と堅牢なミネラルが、それに拮 抗 するかのように組み合いながら、凄まじい緊張感を生み出している。 S.G.Nだからと、デザートに合わせるのではなく、厚切りにした豚肉などをロティやポワレにして合わせるのがベストだろう。上質なフォアグラのステーキとも間違いなく最高だ。 Pinot Gris ピノ・グリは、 スタンダードラインと、S.G.Nで、大きく感想が異なった 。 スタンダードのリリースは、2016、2013、2009、2007年で、筆者が最も素晴らしいと感じたのは、 2016年 (5,170円)だった。 ヴィンテージが進むにつれ、熟成の妙が立ち現れてはくるのだが、このレベルの残糖感をもったピノ・グリの魅力が最も強く出るのはどの段階か、となると、筆者は より若い段階 と答える。その純粋性が、非常に良く現れるからだ。 一方で、S.G.Nは2003年(9,000円)。今回のラインナップの中で最も甘いワインだったが、驚異的に濃密な果実味が熟成によってほぐれ、妖艶極まりない味わいへと進化していた。 Gewürztraminer 個人的に、 Rolly-Gassmannのスタイルはゲヴュルツトラミネールと相性が良い と感じている。 今回のラインナップではスタンダードが2種(2016、2019年)、V.Tが1種(2016年、7,000円))、S.G.Nが1種(2017年、9,500円)となっていたが、正直なところ、 どのワインも格別に素晴らしかった 。 ゲヴュルツならではの濃密な味わいや、独特の甘いスパイス感が、豊かな酸と見事に調和しているが、筆者は、(ピノ・グリと同様に) 若い段階の方がゲヴュルツの魅力が存分に発揮されると思う 。その意味で甲乙つけるとしたら、スタンダードの2種の中では、より若い2019年(5,500円)の方が優れていたとも言えるだろう。 Muscat 筆者が最初にRolly-Gassmannのワインと出会ったのは、約13年前。その時も数多くのワインを試飲したのだが、その中には、今なお色褪せない記憶として残っているワインがあった。2003年ヴィンテージのミュスカだ。 それから幾度となくRolly-Gassmannのミュスカに触れてきたが、 これほどまでに生産者のスタイルと、葡萄の特性が、同じ方向で強固に結びついた例は、かなり珍しい と言える。 つまり、筆者が考える Rolly-Gassmannの最高傑作はミュスカ と言うことだ。 基本的に 酸が低い ミュスカは、辛口ワインとしては難しい側面があり、世界各国に広がっているものの、酒精強化した甘口ワインの方が高評価であり続けてきた。 南フランス、コルシカ島、ギリシャ、南アフリカ、オーストラリアなど、酒精強化ミュスカで名高い産地は数多くある。 しかし、 Rolly-Gassmannのミュスカは、酒精強化をしていないワイン だ。 そして、その品質が圧倒的に高い。 スタンダードの2019年(3,840円)は生々しい果実感が素晴らしい傑作。 そして、 V.Tの2015年(6,500円)は、開いた口が塞がらなくなるような大傑作 だ。 Rolly-Gassmannのミュスカが、非常に特殊なワインであることは間違いないが、このワインの価値は、ミュスカという葡萄の世界全体における立ち位置を鑑みても、計り知れないほど高い。 魅惑の世界観 Rolly-Gassmannのワインは、確かに甘い。完全な辛口と言い切れるワインは、ピノ・ノワールくらいで、白ワインはスタンダートラインでもほぼ例外なく、半辛口だ。 だが、その甘さの表層だけを捉えるのではなく、その奥に潜む豊かな酸とミネラルの調和、エネルギッシュな味わい、そして熟成の妙を味わえば、これまで見てきた世界が一変していくような感覚すら覚えるだろう。

  • ワインとラーメン <前編>

    今回はある意味禁断の企画。 「 ワインとラーメン 」です。 私は当然ワインが大好きですが、どうしても仕事にしていることもあり、ワインを飲んでいる時はつい考えすぎて純粋に楽しんでいない事が度々あります。 しかし同じく大好きな物のラーメンは、食べているとトランス状態に入ったかの如く無心で楽しんでいます(笑)。 仕事とプライベート、それぞれの「大好き」が交わることはないと思っていましたが、今回はその融合をテーマにしてみました。 そもそも何故この企画を考えたかと言いますと、以前カルフォルニアのアーバンワイナリーの代表格「 Broc Cellars 」のワインメーカーである クリス さんが、来日時に自作のワイン「 グルナッシュ グリ ロゼ 」を飲み、「このワインはラーメンに合う」とおっしゃっていたのを思い出したからです。 今やラーメンはB級グルメの枠を飛び出し、最先端のグルメになっています。 普段は料理に無頓着な方もラーメンに関しては蘊 蓄 を語り、以前は化学調味料や質の悪い食材から造られていたラーメンも、今では高級食材が使われることも珍しくはありません。 ミシュランガイドで星付き店が登場したことも、記憶に新しいですね。 それにとどまらず世界の都市でもラーメン人気は高く、ハイレベルな日本料理としての地位をすでに確立しています。そしてラーメンとワインが、一部の海外では同居しているようなのです。これは両方を愛するものとしては非常に気になるので、調べてみたくなりました。 そこで今回は、 1. 海外でのラーメンとワインの現状 2. 日本におけるラーメンとワインの今後 3. どんなワインがラーメンと合うのか? について考えていきたいと思います。 海外でのラーメンとワインの現状 まずは海外でのラーメンとワインの現状ですが、各国の都市に居る僕の知人友人にその現状を聞いてみました。 まずは ロンドン です。 イギリス紳士が街を歩くイメージの強いイギリスのロンドンですが、ラーメンは近年人気で、とんこつラーメンが多いようです。そして価格は高いそうです! 以前のニュースで、NYの一風堂が一杯2,000円以上することに驚いていましたが、材料の確保やNYの地価を考えれば普通と思われ、逆に日本が幸せなくらい安いのだと思います。 さて、実際のワインとの絡みですが、ラーメン屋さんとは言っても(日本のように)ラーメン一本で勝負し、サイドメニューを置かない店がロンドンには無いようで、 ほぼサイドメニューがある そうです。つまり日本でイメージするラーメン屋さんではなく、あくまで レストランやダイニング (しかも少し高級)として存在します。そして少なくともヨーロッパでは、(若者のアルコール離れが進んでいるとはいえ)アルコールは食事に欠かせないと思う層もまだまだ多いので、ワインは普通に飲まれています。個人的にはうれしい風景ですが、 ラーメンに合うワインという感覚ではワインリストが造られてはいない ようです。 次に オーストラリア。 やはりラーメンは人気で、正統派からオリジナルまで、多種多様なラーメンが存在するようです。 もともとベトナム料理やタイ料理などのアジア料理が人気で、そういったオーストラリアアレンジのアジア料理店は、日本にも出店していたりします。その流れの延長線上にあるのか、オーストラリアでも、やはりラーメン店のサイドメニューは充実しているようですが、 中にはラーメンとワインの相性は考えている店もあるようで、何軒かはオーストラリアのナチュラルワインが使われていました 。 最後に アメリカ ですが、NYでのラーメン人気は言わずもがなですが、ラーメンそのものの味わいは日本と同じスタイルもあれば創作系もあり、多様化しています。しかし ワインと同居しているかと言えばそうでもない ようで、これに関しては日本と同じくサクッと食べて帰るスタイルのようです。(サッポロビールは人気のようです。)しかしカルフォルニアには、カルフォルニアを代表するレストラン「 シェ パニーズ 」で修業したシェフ達が、「 ラーメンショップ 」というハイクラスなラーメン屋さんを造り大人気という話を聞きました。 ウェイティングバーがあり、バーテンダーが本格的なカクテルを造り、ダイニングではソムリエがワインをチョイスする、どこかのイノベーションレストランのような夢のラーメン屋さんがカルフォルニアにはあります。 ※情報は現地数名のワインのプロフェッショナルの方に聞いたものですが、僕ほどオタク気質でワインとラーメンについて調べて頂いたわけではないので、あくまで現地一般人のご意見とお思い下さい。 日本におけるラーメンとワインの今後 こんな海外の状況は個人的にはうらやましい限りですが、日本ではラーメンのレベルは世界トップではあっても中々ワインとは融合しません。 今や日本でも、ワインはフレンチやイタリアンだけの物ではなく、B級グルメにも浸透してきてはいます。中華料理なら神田の「味坊」が町中華とナチュラルワインの融合を自然な形で果たしていますし、居酒屋でワインは今や当たり前の光景です。 しかしラーメンは、ランチや飲んだあとの締めの食べ物のイメージが日本では強いため、お酒と一緒の注文はあまりありません。昔ながらの町中華風なラーメン屋さんは、メンマやチャーシューをつまみに日本酒やビールを飲み、締めにラーメンという形はありますが、海外の様な、レストラン的スタイリッシュさはなかなかありません。 今から15年ほど前には、有名ラーメン店「ちゃぶや」が表参道に出した、ラーメンを含んだコース仕立てのメニューも提供する、「ミスト」というレストラン的ラーメン屋さんがあり、新しいラーメンのスタイルを楽しめましたが、残念ながら現在はありません。 それでも、これだけラーメン文化の根付いた日本ですから、東京だけでみても、例外はあったりします。 新宿御苑には、「 アトリエ フジタ 」という和食コースの最後が手打ちの創作ラーメンという面白い店があったり、ナチュラルワインの聖地「 アヒルストア 」では、ラーメンのメニューもありました。 広尾には、「 ラーメン会席 」をコンセプトにした「 GENEI.WAGAN 」というなかなかの高級店があり、こちらでも、ワインやカクテルが親しまれているようです。 いずれもワインとの融合をしているので今後が楽しみではありますが、個人的にはこのようなコンセプトがもっと広がってほしいとは思います。 出来ればラーメン屋さんは、海外のようにラーメンを食べる前のサイドディッシュに力を入れて頂けると嬉しいです。例えばワイン一杯とおつまみをセットにして提供するなどして、ラーメンの前、もしくはラーメンと一緒のワインに抵抗をなくして頂くと、ワイン文化の今までに無い形が生まれるのではないかと思っています。 後編では、実際にワインとラーメンの相性を探っていきます。 <ソムリエプロフィール> 山根 宏士 / Hiroshi Yamane フリーワインアドバイザー 1976年北海道生まれ。札幌の星付きフレンチでキッチンからこの業界をスタート。以後ソムリエに転身し札幌でも伝説的なビストロ「わいんや」を立ち上げる 東京に移住後は「オーバカナル」「ブラッスリーオザミ」「アロッサ渋谷」「W.W」「ARGO」 等の様々なジャンルのレストランでソムリエ、マネージャーとして研鑽を積み現在に至る。 現在は某企業の料飲コンサルタントを中心に行い、都内レストランやインポーターの手伝いをフリーにて行っている。 個人事業 R&C Office 代表 JSA認定シニアソムリエ WSET Level 3 オーストラリア公社認定 ワインオーストラリア A+Level 2

  • 高級ビールを嗜む <1> 聖地ポートランド

    レヴュー企画の不定期連載として、 「高級ビールを嗜む」 をスタート致します。 ビールには、ワインも顔負けの 非常に奥深い世界 が広がっています。 基本のスタイル( 製法カテゴリー )に、 様々な副材料 も含まれば、 そのヴァリエーションはまさに無限大 。 筆者はビールの専門家ではありませんが、飲料のプロフェッショナルとしての目線から、厳選したビールをレヴューして参ります。 基本的なテーマはタイトルの通り、「高級ビール」です。 つまり、日常の中で、乾いた喉を潤すために飲むビールではありません。 ここで言う高級ビールとは、(価格も高いですが)特別な時間を演出してくれる、孤高のビールたちのことです。 日本でも、クラフトビールがブームからスタンダードへと移り変わりつつありますが、 世界のクラフトビール事情は、思ったよりも遥か先へと進んでいます 。 本企画の初回は、クラフトビールの中でも、特に クリエイティヴなビールの聖地 とされる、 アメリカ・オレゴン州の州都ポートランド で誕生した、驚きの一本です。

  • 出会い <13> ワインファンのロマン

    SRC, Etna Rosso “Alberello” 2019 ¥9,400 近年爆発的な人気の高まりを見せ、今では イタリアの銘醸地 として、真っ先に名前が挙がっても不思議では無いほどの地位を得た シチリア島・エトナ火山 。 『火山の山肌で葡萄を育て、火山のテロワールが宿る。』 なんていうパワーワードも素敵だが、 それだけで人気が出るほど世界のワイン市場は甘くない 。 そう、エトナの人気が高まった理由は、その 圧倒的な個性と品質 にあるのだ。 イタリアのワイン史にその名を残す名醸造家 サルヴォ・フォティ による一連のワイン群や、 フランク・コーネリッセン のようなカルト的人気を誇る生産者など、エトナを彩る造り手たちの魅力も申し分ない。 成功すべくして成功した 。エトナとは、そういう産地だと思う。 そして、エトナの底知れない可能性に心を奪われ、この地に移住してきた新たな造り手たちも多い。 今回の出会いは、そんなエトナのニュージェネレーション組と。

  • 日本ワインペアリング <2> 甲州

    本シリーズの第一回 で書いた通り、 文化としてワインが根付いていない 日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、 特別な関係性は極めて生じにくい と言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、 冷静さであり、素直さ です。本稿では、日本の土着品種とも言える 「甲州」 を題材にして、甲州ワインを使ったペアリングを冷静かつ素直に分析していきます。 甲州は、現時点でのDNA鑑定(この手の鑑定は、覆ることがしばしばあります)では、 欧州種 (ヴィティス・ヴィニフェラ種)が 東洋系欧州種 (ヴィティス・ダヴィディ種)と自然交雑した後、 さらに欧州種と交雑 したことによって誕生したと考えられています。この鑑定結果が正しければ、 甲州の3/4は遺伝子的にヴィニフェラ種 であるということになります。 ヴィニフェラ種と中国系野生種との交配がきっかけで誕生したため、 起源は日本ではありません が、 7世紀 (奈良時代最初期)に山梨県甲州市にある大善寺を建立した時に発見されたという説と、 12世紀後半 (鎌倉時代最初期)に同じく甲州市の上岩崎で雨宮勘解由(かげゆ)という人物が発見したという説があり、どちらが正しいにしても、 非常に古くから日本に根付いてきたことは間違いない ようです。しかし、長らくの間 生食用 として栽培されてきた甲州がワイン醸造にも使われるようになったのは、 第二次世界大戦後 のことですので、 実質的なワイン用葡萄としての歴史は70年程度しかありません 。 そのあまりにも短い歴史と、山梨県に栽培が一極集中しているという事実、非常に小さな生産規模を考えると、「日本料理と良く合う」といった、あまりにも幅が広く大雑把な括りが、そもそも成立し得ないことが理解できるかと思います。 さて、ワインになった時の、一般的な甲州の特徴を分析していきましょう。

  • 片岩偏愛 ロワール・アンジュの官能

    片岩 、その名前を聞いて、ワインの味わいをイメージできる人がどれほどいるでしょうか。 そもそも土壌とワインを結びつけて飲むことに、どれほどの意味があるでしょうか。 ワインの世界ではその文化が始まって以来、土壌と味わいの関係性についてずっと考えられてきましたし、現在も研究は続いています。でもまだ 明確な答えは出ていません 。私はこの答えが出てないことにこそ、ロマンと神秘を感じます。そう、まるで神話をもとにトロイアを発見したシュリーマンのように。 今回は岩井が愛してやまない片岩土壌のワイン、そしてその最高峰だと確信するロワール・アンジュを舞台にお送りしたいと思います。まずは簡単にワイン産地における土壌と片岩をみていきましょう。 ワイン産地の土壌を大まかに分類すると、 ・火成岩 Igneous ・堆積岩 Sedimentary ・変成岩 Metamorphic ・堆積土壌 (表土) Soil textures に分かれます。 それぞれの詳しい説明は、今回は置いておくとして、片岩はこの中で変成岩のひとつにあたり、私が思う 変成岩界のエース です。「片岩」って聞くと、片の岩ってなんだか素気ないような気もしますが、要は片理(薄く平行に積み重なる)状になっている岩のことです。英語にすると 「schist」 (シスト)、フランス語でも 「shiste」 (シスト)で、なんだかカッコ良いですね。変成岩ですので、元は様々な岩石(主に頁岩-泥が葉状に積み重なって固まった岩)が、地球の地殻変動を受けて形成された岩石です。その姿は 地球の躍動を感じる荒々しくも美しい佇まい です。 片岩を愛してすぎて、説明だけで今回の記事が終わってしまうので、そろそろワイン産地における片岩の影響をみていきましょう。 ワイン産地において 片岩の魅力は、まずなんといっても水捌けの良さ です。雨の多い年でも葡萄が水っぽくならず凝縮した果実ができます。また片理状に剥離しやすく侵食されやすいので葡萄の根が地中深くまで伸びます。よって雨が少ない年でも根が地下水に達することにより、水分を適度に補給出来ます。そして岩石ならではの熱を溜める性質も、熟した葡萄を収穫する際に大きなアドバンテージになるでしょう。さらに土壌自体のPH値が高く、そのような土壌は葡萄の酸度を保つことができます。さて、このことからどんな葡萄ができるかと言うと、以下の通りになります。 ・収量が低く、凝縮した果実 ・生理学的に熟した葡萄であるが酸はしっかりとある ・果皮が厚くなる傾向にあり、フェノールの値が高くなる なんと、完璧でしょうか! そしてそんな葡萄から、どんなワインができるのでしょうか。 それではアンジュの地に入っていきましょう! アンジュはフランスの西部、メーヌ川湖畔に位置するロワール県の県庁所在地であります。かつて9世紀ごろアンジュは、イングランドまでを支配した「アンジュ帝国」のあった地として歴史のある町です。 フランスの中でも屈指のワイン産地であるロワール地方の一地区にあたり、多くのAOCワインを有しているフランス国内でも有力な産地の一つ。海洋性気候で夏は暑く、冬は温暖。また南にあるモージュ山が南西部に降る雨からこの地を守り、乾燥した温暖な土地であり葡萄の糖度は高くなります。葡萄はシュナン・ブランが主体で、辛口白ワインと共に貴腐による甘口も作られます。ロゼダンジュRose d'anjou(アンジュのロゼ)というロゼの名産地でもあります。   このアンジュを形作っているのが 「アンジュ・ノワール」 と呼ばれる片岩の大地です。約5億4千年前、当時海中だった頃に降り積もった養分たっぷりの泥が固まって頁岩になり、やがてあの有名な(?)バリスカン造山運動によって、熱と圧力を受けて片岩へと変わっていったのです。やはりとてもダイナミックですね! そんな アンジュ・ノワールを一番に表現しているのが、シュナン・ブラン です。 収穫時期が早いと、酸が強く「不快なワイン」となり、収量が多いと個性がなくなると言われるこの葡萄が片岩と出会ったとき、なんとも官能的で美しいワインになります。 生産者: Les Grandes Vignes / レ・グランド・ヴィーニュ ワイン名: La Varenne de Combre /ラ・ヴァレンヌ・ド・コンブル 葡萄品種 :Chenin Blanc 100% ワインタイプ :白ワイン 生産国 :France 生産地 :Val de Loire Anjou / ロワール アンジュ ヴィンテージ :2017 インポーター :野村ユニソン 参考小売価格 :¥5,500 税別 アンジュの地で17世紀から代々土地を引き継いできた ジャン=フランソワ・ヴァイラン は、ワイン作りにのみ全神経を集中させる生粋のヴィニュロン。 「よりワインの本質に触れる様なワインを作って行かなければならない。その為には葡萄をより健全にしていく必要があり、それに最も適したアプローチがビオディナミと感じた。」 と語る彼は、2008年よりビオディナミでもワイン作りをおこなっています。レ・グランド・ヴィーニュのワインはこのアンジュの地に息づく片岩とシュナン・ブランの本質を見事に表現しております。 ラ・ヴァレンヌ・ド・コンブルは、抜栓したてはスモーキーなミネラルの香りが支配的ですが、還元というより少し閉じている印象です。ただ、グラスに注いで少しスワリングをするとその個性が全開で広がっていきます。 片岩土壌がワインに与えるもっとも魅力的な香りは、エキゾチックなアロマ です。お香のような香り。そこにシュナン・ブラン特有のリンゴと柑橘のアロマが混ざり合い、熟した葡萄ならではの蜜のニュアンスが溶け込みます。口に含むと少し粘性のあるその液体は口いっぱいに絡みつくようにひろがり、うっとりとゆっくりと喉へ流れていきます。果実の甘さはしっかりと感じますが、片岩の酸味がマロラクティック発酵により、さらに上品な酸となり、バランスをとってくれます。そして余韻に最初にあったスモーキーなミネラルが還ってきて、大人の魅惑的な個性を漂わせます。その色の濃さから、まるで黄玉と呼ばれるトパーズを溶かして飲んでいるかのよう。とても 官能的で色気を感じるワイン です。 500Lのアンフォラと200Lの卵型砂岩タンクにて発酵(とっても原点的です!)、12か月の熟成を経て、亜硫酸は無添加でリリースされます。 ペアリングはもちろん魚系もよく合いますが、是非合わせて欲しいのは お肉との組み合わせ です。特に、ブーダンブランのような白いソーセージや、蒸鶏にスパイスやハーブのソースをかけたエスニック系、そしてクリームやチーズを使ったソース料理全般(魚でも肉でも)、もちろんロワールのチーズ全般には当然よく合います。 味わいの幅が広いワインですので、合う料理がとても多いのが魅力です。酒質に若干のとろみがありますので、生魚や生野菜などフレッシュでシャキッとしたものではなく、食感にクリーミーさやふっくらしたニュアンスを感じるお料理が良いです。そうすると、日本の家庭料理なんかほぼカバーできますね!飲む温度帯は、あまり冷やしすぎず10-12℃ぐらいが良いでしょうか。グラスはシャルドネグラスのような口径が大きめのほうが「片岩×シュナン・ブラン」のリッチでボリュームのある味わいに最適です。 片岩とシュナン・ブランは、とてもエキゾチックで官能的な組み合わせです。土壌と聞くと、「難しそう」とか「マニアック」といった声も聞こえてきそうですが、 土壌を少し知るだけでより自分の好みのワインに出会えます 。そしてもっとその土壌のことを知りたくなり、知識欲求は地質学や歴史にまで及んでしまいます。わたしはこの片岩土壌のワインは、 「実は好きだったワインが片岩土壌だった」 という人が意外と多いのではと思っております。もし今回の記事を読んでご興味をもっていただき、より片岩のワインを飲みたい場合には、ラングドックのフォジェールやサンシニアン、ルーションのコリウール、ポルトガルのドウロなども是非試してみてください。そのエキゾチックな大人の魅力にとりつかれてしまうことでしょう! <ソムリエプロフィール> 岩井 穂純 / Hozumi Iwai 酒美土場 shubiduba 相談役 AWMB認定オーストリアワイン大使 J.S.A.認定ソムリエ アカデミー・デュ・ヴァン講師 ヴィノテラス ワインスクール講師 かじたいずみチーズ教室ワイン講師 Japan Wine Challenge審査員 オーストリアワイン普及団体「AdWein Austria」代表 経歴 1978年生まれ。20代前半より都内のワインバー、高級レストラン勤務を経て神楽坂ラリアンスのシェフ・ソムリエを長年に渡り勤める。その後丸の内の有名ワインバーのマネージャー/ソムリエ、ワインインポーターのコンサルタント、都内隠れ家レストランのプロデューサー/マネージャーを経て、2016年に酒美土場をオープン、2021年より長野県に拠点を移し、ワイン畑を取得。新しい店舗とともにニュープロジェクトを準備中。 オーストリアワインのスペシャリストであるが、近年はオレンジワインの専門家としても活動。さまざまなオレンジワインのイベントや講座を主催。現在ではTVや雑誌などにもオレンジワインの企画で出演している。 共著「おうちペアリング」主婦の友社 (2021/4/22) <酒美土場 -shubiduba-> 2016年に東京・築地場外市場にオープンしたわずか5.5坪のワインショップ&バー。ナチュラルワインにこだわり、特にオレンジワインの品揃えには定評がある。酒屋ならではの角打ち(かくうち)も行なっており、ナチュラルワインを求めるお客さんで連日にぎわいをみせる。

  • 高みへと <ロワール渓谷特集:最終章>

    ロワール渓谷のソーヴィニヨン・ブランには、どうも複雑な思いが拭いきれずにいた。 セントラル地区 は、この品種の 世界的聖地 とされてきたが、特に日本においてはあまり話題に上がることもないし、レストランやショップでも、それほど見かけるわけでもない。同じくフランス国内にある、その他品種の「聖地」と比べれば、その歴然とした格差に正直驚きも隠せない。一般的なワインショップなら、ブルゴーニュの品揃えはサンセールの10倍を遥かに凌駕するだろう。 価格だけを見れば、もう一つのソーヴィニヨン・ブラン伝統産地であるボルドーの後塵を拝したままどころか、その差はますます広がる一方だ。 ふと、頭によぎる。サンセールやプイィ=フュメは、名前だけの聖地なのかと。フランスの産地である、という理由だけで、聖地に押し上げられた存在なのかと。 オリジンとパーソナリティ ロワール渓谷のセントラル地区( 以降、ロワール・セントラルと表記 )がソーヴィニヨン・ブランの聖地と見なされてきた確実な理由の一つとして、その 歴史 を挙げることができる。現時点で判明している限り、 ソーヴィニヨン・ブラン発祥の地は、ボルドーではなくロワール渓谷だと考えられている からだ。 最古の記録は 1534年 。ロワール渓谷の文献に、ソーヴィニヨン・ブランと確実視される記述がある。当時の呼び名は fiers だった。 ソーヴィニヨン・ブランは、ヴィティス・ヴィニフェラ種としては稀に見るほどの 環境適応力 があるのも特徴だ。その適応力は、特有の 非常に高い樹勢 と相まって、国際品種として最高の資質となり、フランスを飛び出して世界各国に根付いた。 簡単に言うと、 育てやすい葡萄 なのだ。 しかし、その高すぎる適応力と樹勢が故に、実際には適切な畑に適切なクローンを植樹しないと、収量過多になるという側面ももっている。これはつまり、 品種の個性が、テロワールの個性をいとも簡単に上回ってしまう ということも意味している。 本来ならシャルドネやピノ・ノワールにも劣らないほど、テロワールの個性を驚くほど緻密に反映する力をもっている にも関わらず、世界はこの品種をそのようには見ていない。一般的に言うと、品種個性が、テロワール個性よりも分かりやすいのは明確で、(テロワールの反映を無視すれば)多産にも向くソーヴィニヨン・ブランが、簡単に大量生産ができ、しかも売りやすいという、実にエコノミカルというイメージが相当程度定着してしまった理由は、そもそもの品種特性にもあるのだ。 世界中に根付いた育てやすくエコノミカルな国際品種のオリジン。聖地とされるには、十分過ぎるほどの要素だろう。 でも、それだと私は納得できない。 ワインの世界では、聖地は最上とイコールであるべき だからだ。

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