ワインとラーメン <後編>

前編では、世界のラーメン事情のお話をしました。

(ワインの話がほとんど無くて、すいません。)


さて、いよいよ本題の、ラーメンとワイン、です。


一体どんなワインがラーメンと合うのでしょうか?


まず、(言うまでも無く)ラーメンの種類は大きく醤油、塩、味噌、豚骨に分かれ、最近ではチーズ風味やトマトスープなどもあり、まさに多種多様。これら全てに合うワイン、またはそれぞれに合うワイン1種ずつを選ぶのはさすがに壮大な話なので、今回はスタンダードの醤油ラーメンとの相性を探させて頂きます。


醤油に関してもバリエーションは様々ですが、化学調味料未使用で淡麗な味わいのあっさりした醤油ラーメンとの相性、とさせていただきます。


まずはラーメン屋さん探しから始めましたが、ちょうど僕の住んでいる埼玉県さいたま市大和田で贔屓にしているラーメン屋さんがあり、東京はもちろん他県でも必ず美味しいと思ってもらえるクオリティの高いラーメン屋さんです。「自家製麺 コトホギ」と言いまして、定期的にオリジナルラーメンを開発し、サイドメニューも斬新かつ本格的。さすがのミシュランも、ここは見逃したようです。基本のラーメンは、無化調ですっきりコクある素晴らしい一品です。今回はこちらの醤油ラーメンとの相性を試してみました。




相性を探る際のポイント


何度も書きますが、ラーメンの味わいやスタイルがあまりにも多種多様な為、相性を考えるポイントは絞らせて頂きました。


では、ポイントとその理由を書き出します。


1. 化学調味料無添加

これに関しては、皆様のご意見に相違はないかと思います。恐らく日本の多くのラーメンには化学調味料が入っており、またそれが多数の人が思うラーメンの味の一部になっていることは個人的には異論が無いです。しかし安くて誰でも食べられるラーメンを造る場合、多少の化学調味料はビジネス上で使用することはしょうが無いとは思いますし、体に必ず害があるとはまだ解明されていないようです。しかしワインと合わせる場合は、間違いなくワインのみならず双方の味わいを壊してしまう相性の悪さがあります

恐らく何らかの化学変化が起こっているようなのですが、詳しくは別の機会に調べます。しかし明らかに品質がわからなくなる現象を避けるため、ここは絶対に外してはいけないポイントとなります。



2. 中国料理として考えない

日本におけるラーメンのスープは和風の出汁を使っていたりと、すでに中国料理とは違うカテゴリーと考えています。最初は有名中国料理店で働かれている名ソムリエの方々が考えている、中国料理とワインの相性を参考にすることもありかと思いましたが、味わいの構成が違うため、「このワインは中国料理に合うからラーメンにも合うだろう」とは一切考えないようにしました。同様に「麺料理なのだから、パスタに合うイタリアワインなら合うのでは?」のような考え方も止めました。あくまでストレートにラーメンとワインの相性を考えます。



3. ワインを口の中で合わせるタイミングによってワインを変える。

いかに日本や世界各国でラーメンがハイレベルな食べ物として定着しつつあっても、食べ方に作法は無いというか、むしろ必要すらなく、フレンチやイタリアンの様に考えながら食べる物でもありません。しかし、そうなると問題になるのは、ワインを飲むタイミングです。一般的な料理とワインの相性でもそうですが、料理を口に含んだ状態でワインを飲む状態(口内調理)と、飲み込んでからワインを飲む状態(余韻ペアリング)では多少の違いがあるのですが、ラーメンの場合も同様なのか、確かめてみようと思います。



4. いつかはラーメン屋さんに置いて欲しい願いを込めての価格

仮にラーメン店がワインに合うワインを置くことがあっても、ラーメン一杯の平均価格が800~900円くらいと考えれば、グラス1杯1,000円を超えるのはあまり現実的ではありません。その点を鑑みて、希望小売価格1500円~2500円くらいの範囲で選びました。




検証結果

① ラーメンを飲み込んでからのワイン

ラーメンを飲み込んだ後は、淡麗の醤油味とは言え多少脂が残り、旨味や香りも程よく残っています。なるべく口の中をすっきりとさせ、尚且つこの余韻を消しすぎないワインと考えました。


何種か試しましたが、下記が良かったと思います。

・シャブリ

・ソアヴェ

・シャルドネ(オーストラリア)

・ペットナット※微発泡ワイン



相性が良かったワインに共通する点は、樽の影響や品種由来の強い個性が無い事です。そして程良い酸味もキーポイントでした。

ワインの酸味は脂肪分を流しますが、程よい酸の塩梅であれば、流しすぎません。香りも支配的ではないため、余韻も邪魔しませんでした。また、こだわった店の醤油ラーメンは醤油にもこだわっていることが多く、この店のラーメンも醤油由来の良い酸味を感じます。また鰹節を出汁に加えた場合も、鰹節から来るかすかな酸味があるので、ワイン自体にも多少酸味があるとうまくマッチします。



② 口内にラーメンが残っている場合

上記の合わせ方は、もしかしたらラーメンにかかわらず、スペインのアホスープ(ニンニクと卵、オリーブオイルのスープ)や、韓国のユッケジャンクッパ(辛くない)などの料理にも当てはまる可能性がありますが、麺とスープを口に含んだ状態でのペアリングは、ワインならではと思っています。個人的感覚ですが、スープのような味わいのワインなら違和感なくワインとの融合ができるのではと考えました。


合わなかったワインは後ほど書きますが、まずは結論から。


旨味のあるロゼが抜群でした。


オレンジも良いかと考えて合わせてみましたが、タンニンがスープの味わいを邪魔し、苦みを発生させる事がありました。しかし、タンニンが全くないとスープのコクを受け止めきれないなという印象も同時にありました。


そこで試したのは酸味が程よく、適度なフレッシュ感がり、触感にトロミを感じ、そして強くないタンニンと旨味をもちあわせたロゼ。


何種かのロゼを合わせたところ、最高の結果だったのがこちらのワイン。



生産者:Podere Luiza

ワイン名:OMBRA Di ROSA/オンブラディローザ

葡萄品種:Sangiovese/ サンジョベーゼ

ワインタイプ:ロゼワイン

生産国:イタリア

生産地: / トスカーナ州 キャンティ地区

ヴィンテージ:2019

インポーター:èVino

参考小売価格:¥2,650(税込み)


イタリアはトスカーナ州キャンティ地区のワイン。


クラッシコなどの銘醸地ではなくColli Aretiniで造られていて、2008年からボトル詰めを開始した造り手ですが、農薬や化学肥料を一度も使ったことが無いというこのワインは、まさしく自然な葡萄のスープ。味わいに引っかかりが全くなく、ワイン単体でも美味しいのですが、合う料理はパスタや魚料理でもなく、ハムやチーズでもなく、ラーメン(笑)。


あくまで個人的意見ですが、ラーメンと出会うために生まれてきたワインではなかろうか、

とすら思ってしまいました。


今回合わせたコトホギさんの、優しくもコクあるスープの味わいを邪魔することなく膨ら

ませ、余韻にも良い風味を加えており、麺が伸びるのが不安になるほどじっくり食べてい

たくなります。





合わなかったワイン


合わないと感じたワインの具体的な名前は書きませんが、下記にそのタイプをまとめました。


1. タンニンの強いワイン

ヘビーなタンニンをもつ赤ワインや、新樽を使った白ワイン、果皮浸漬を行ったオレンジやセニエのロゼは、ラーメンを食べているどのタイミングで合わせても、味わいを邪魔するように感じました。何より苦みを強く感じます。白ワインでもストラクチャーのしっかりしたものや、「カチッとした」固い味わいのものも同様に苦みを感じました。



2. 香りや風味が強すぎるワイン

ドイツのリースリングやアルザスのゲヴェルツトラミネールは、味わいの部分は良いのですが、香の主張が強く、マッチしませんでした。

赤に関しても、熟成した物は味わいよりも香りが強く同様の結果となりました。



3. 甘口のワイン

程良い甘さはあった方が、相性は高まるとは思いましたが、貴腐ワインや食後酒に飲むレベルの甘さは、タンニンの強いワイン同様にラーメンの味わいを損ねてしまいました。




総評

そもそも何故この企画を始めたのかは前編で書かせて頂きましたが、別の個人的理由が実はあります。


中国料理やベトナム料理、タイ料理や居酒屋。どれもその美味しさはわかっていても、フレンチやイタリアンの様な観点からはクローズアップされづらいイメージがどうしてもありました。しかし、それらの料理に合わせて素晴らしいワインを提供するお店が数多く出現したことによって、その料理自体にあまり興味が無かった人達にも、元々の素晴らしさがスムーズに伝わるようになった側面があるのではと思っています。


なので、今後自身が好きなラーメンというカテゴリーも、同じく好きなワインによって素晴らしさが伝わってくれればと思っています。


また、今回の相性に関しては、ペアリングのプロの皆様に比べれば、幾分主観が強かったかもという反省と、そもそもラーメンにワインを合わせるなんて邪道、と思われる方がいらっしゃるのも重々承知しております。


しかしながらラーメンとワイン愛から来る気持ちの強さゆえ、とお思い頂ければありがたいです。


ご好評頂ければ、今後もタイミングを見つけて、違うラーメンでの相性も試していきたいと考えています。


今回のラーメン屋さん

自家製麺 コトホギ

〒337‐0053

address埼玉県さいたま市見沼区大和田町1丁目1389

Tel 048-687-4567

Close 水曜日


<ソムリエプロフィール>

山根 宏士 / Hiroshi Yamane

フリーワインアドバイザー


1976年北海道生まれ。札幌の星付きフレンチでキッチンからこの業界をスタート。以後ソムリエに転身し札幌でも伝説的なビストロ「わいんや」を立ち上げる


東京に移住後は「オーバカナル」「ブラッスリーオザミ」「アロッサ渋谷」「W.W」「ARGO」

等の様々なジャンルのレストランでソムリエ、マネージャーとして研鑽を積み現在に至る。

現在は某企業の料飲コンサルタントを中心に行い、都内レストランやインポーターの手伝いをフリーにて行っている。


個人事業

R&C Office 代表


JSA認定シニアソムリエ

WSET Level 3

オーストラリア公社認定 ワインオーストラリア A+Level 2