今回はある意味禁断の企画。
「ワインとラーメン」です。
私は当然ワインが大好きですが、どうしても仕事にしていることもあり、ワインを飲んでいる時はつい考えすぎて純粋に楽しんでいない事が度々あります。
しかし同じく大好きな物のラーメンは、食べているとトランス状態に入ったかの如く無心で楽しんでいます(笑)。
仕事とプライベート、それぞれの「大好き」が交わることはないと思っていましたが、今回はその融合をテーマにしてみました。
そもそも何故この企画を考えたかと言いますと、以前カルフォルニアのアーバンワイナリーの代表格「Broc Cellars」のワインメーカーであるクリスさんが、来日時に自作のワイン「グルナッシュ グリ ロゼ」を飲み、「このワインはラーメンに合う」とおっしゃっていたのを思い出したからです。
今やラーメンはB級グルメの枠を飛び出し、最先端のグルメになっています。
普段は料理に無頓着な方もラーメンに関しては蘊蓄を語り、以前は化学調味料や質の悪い食材から造られていたラーメンも、今では高級食材が使われることも珍しくはありません。
ミシュランガイドで星付き店が登場したことも、記憶に新しいですね。
それにとどまらず世界の都市でもラーメン人気は高く、ハイレベルな日本料理としての地位をすでに確立しています。そしてラーメンとワインが、一部の海外では同居しているようなのです。これは両方を愛するものとしては非常に気になるので、調べてみたくなりました。
そこで今回は、
1. 海外でのラーメンとワインの現状
2. 日本におけるラーメンとワインの今後
3. どんなワインがラーメンと合うのか?
について考えていきたいと思います。
海外でのラーメンとワインの現状
まずは海外でのラーメンとワインの現状ですが、各国の都市に居る僕の知人友人にその現状を聞いてみました。
まずはロンドンです。
イギリス紳士が街を歩くイメージの強いイギリスのロンドンですが、ラーメンは近年人気で、とんこつラーメンが多いようです。そして価格は高いそうです!
以前のニュースで、NYの一風堂が一杯2,000円以上することに驚いていましたが、材料の確保やNYの地価を考えれば普通と思われ、逆に日本が幸せなくらい安いのだと思います。
さて、実際のワインとの絡みですが、ラーメン屋さんとは言っても(日本のように)ラーメン一本で勝負し、サイドメニューを置かない店がロンドンには無いようで、ほぼサイドメニューがあるそうです。つまり日本でイメージするラーメン屋さんではなく、あくまでレストランやダイニング(しかも少し高級)として存在します。そして少なくともヨーロッパでは、(若者のアルコール離れが進んでいるとはいえ)アルコールは食事に欠かせないと思う層もまだまだ多いので、ワインは普通に飲まれています。個人的にはうれしい風景ですが、ラーメンに合うワインという感覚ではワインリストが造られてはいないようです。
次にオーストラリア。
やはりラーメンは人気で、正統派からオリジナルまで、多種多様なラーメンが存在するようです。
もともとベトナム料理やタイ料理などのアジア料理が人気で、そういったオーストラリアアレンジのアジア料理店は、日本にも出店していたりします。その流れの延長線上にあるのか、オーストラリアでも、やはりラーメン店のサイドメニューは充実しているようですが、中にはラーメンとワインの相性は考えている店もあるようで、何軒かはオーストラリアのナチュラルワインが使われていました。
最後にアメリカですが、NYでのラーメン人気は言わずもがなですが、ラーメンそのものの味わいは日本と同じスタイルもあれば創作系もあり、多様化しています。しかしワインと同居しているかと言えばそうでもないようで、これに関しては日本と同じくサクッと食べて帰るスタイルのようです。(サッポロビールは人気のようです。)しかしカルフォルニアには、カルフォルニアを代表するレストラン「シェ パニーズ」で修業したシェフ達が、「ラーメンショップ」というハイクラスなラーメン屋さんを造り大人気という話を聞きました。
ウェイティングバーがあり、バーテンダーが本格的なカクテルを造り、ダイニングではソムリエがワインをチョイスする、どこかのイノベーションレストランのような夢のラーメン屋さんがカルフォルニアにはあります。
※情報は現地数名のワインのプロフェッショナルの方に聞いたものですが、僕ほどオタク気質でワインとラーメンについて調べて頂いたわけではないので、あくまで現地一般人のご意見とお思い下さい。
日本におけるラーメンとワインの今後
こんな海外の状況は個人的にはうらやましい限りですが、日本ではラーメンのレベルは世界トップではあっても中々ワインとは融合しません。
今や日本でも、ワインはフレンチやイタリアンだけの物ではなく、B級グルメにも浸透してきてはいます。中華料理なら神田の「味坊」が町中華とナチュラルワインの融合を自然な形で果たしていますし、居酒屋でワインは今や当たり前の光景です。
しかしラーメンは、ランチや飲んだあとの締めの食べ物のイメージが日本では強いため、お酒と一緒の注文はあまりありません。昔ながらの町中華風なラーメン屋さんは、メンマやチャーシューをつまみに日本酒やビールを飲み、締めにラーメンという形はありますが、海外の様な、レストラン的スタイリッシュさはなかなかありません。
今から15年ほど前には、有名ラーメン店「ちゃぶや」が表参道に出した、ラーメンを含んだコース仕立てのメニューも提供する、「ミスト」というレストラン的ラーメン屋さんがあり、新しいラーメンのスタイルを楽しめましたが、残念ながら現在はありません。
それでも、これだけラーメン文化の根付いた日本ですから、東京だけでみても、例外はあったりします。
新宿御苑には、「アトリエ フジタ」という和食コースの最後が手打ちの創作ラーメンという面白い店があったり、ナチュラルワインの聖地「アヒルストア」では、ラーメンのメニューもありました。
広尾には、「ラーメン会席」をコンセプトにした「GENEI.WAGAN」というなかなかの高級店があり、こちらでも、ワインやカクテルが親しまれているようです。
いずれもワインとの融合をしているので今後が楽しみではありますが、個人的にはこのようなコンセプトがもっと広がってほしいとは思います。
出来ればラーメン屋さんは、海外のようにラーメンを食べる前のサイドディッシュに力を入れて頂けると嬉しいです。例えばワイン一杯とおつまみをセットにして提供するなどして、ラーメンの前、もしくはラーメンと一緒のワインに抵抗をなくして頂くと、ワイン文化の今までに無い形が生まれるのではないかと思っています。
後編では、実際にワインとラーメンの相性を探っていきます。
<ソムリエプロフィール>
山根 宏士 / Hiroshi Yamane
フリーワインアドバイザー
1976年北海道生まれ。札幌の星付きフレンチでキッチンからこの業界をスタート。以後ソムリエに転身し札幌でも伝説的なビストロ「わいんや」を立ち上げる
東京に移住後は「オーバカナル」「ブラッスリーオザミ」「アロッサ渋谷」「W.W」「ARGO」
等の様々なジャンルのレストランでソムリエ、マネージャーとして研鑽を積み現在に至る。
現在は某企業の料飲コンサルタントを中心に行い、都内レストランやインポーターの手伝いをフリーにて行っている。
個人事業
R&C Office 代表
JSA認定シニアソムリエ
WSET Level 3
オーストラリア公社認定 ワインオーストラリア A+Level 2
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