ハイブリッド・ソムリエ 後編

0.ハイブリッド・ソムリエとは


ハイブリッド:生物学で異なる種類などを掛け合わせた交雑種


ソムリエ:レストランで従事し、ワイン全般を含めた飲料に対しての専門性の高いウエイター、とここでは位置付けておきたいと思います。 


ハイブリッド・ソムリエ:状況の変化に対応し、外的要素(世の中の流れ)に対応しながら、専門性とニーズを掴みながら他業種の良さを取り入れワイン脳(ソムリエ脳)を活用できるソムリエのことを指す。



1.前回からの流れ

後編も読んでくださりありがとうございます。

まだの方は、ぜひ前回の記事もご覧下さいませ。


新型コロナ禍で緊急事態宣言が出た都道府県では、お酒の提供も制限される状況が続いています。お酒を中心とした様々な飲料に関わるソムリエという職業に身を置く人間としては、

本気で、「仕事ってなんだろう。」「人生ってなんだろう。」と考えます。



2. 他業種のスーパースター

前回の流れで2018年に受けた衝撃と書き、「続く」と締めくくりましたが

ここで、私の経歴を少し、話させていただきたいと思います。


もともと私はバーテンダーを志し、二十歳の時にキャリアをスタートしました。最初に勤めていたバーがレストランも経営しており、バーとレストランと両方で勤務する形になり、そのレストランにいたシェフが、まぁー恐くて(笑)。

ワインを勉強したいというよりも、やらないとシェフに怒られる。という感覚で必死にやっておりました。(汗)


最初は怒られないように勉強していたワインも次第に好きになりまして、いつしかバーテンダーよりもソムリエに興味を持ち、今日までキャリアを積んでいくわけでございます。

2018年、当時を振り返りますと「バーテンダーよりソムリエが稼げるし活躍している。」と思っておりました。


後閑信五さんというバーテンダーの存在を知るまでは。


たまたま、スピリッツの事を調べていたら、後閑信五さんが優勝した【Bacardi Legacy Cocktail Competition 2012世界大会】の記事を発見。

※米国代表として出場し、 劇的な最終審査を経て優勝。


飲料の業界で、こんな凄い日本人がいるんだ!!

NYと上海にBarを展開し世界中を飛び回るBartender。クールだ。


2018年よりフリーランスのソムリエとして活動をしていくわけですが、後閑信五さんの存在を知ったことにより、もっと幅広く飲食に関わる全ての方と交流し、遊びを知らなきゃいけないと感じ、他業種の方々とコミュニケーションを取る事を意識していきました。


バリスタはどのようなマインドなのか? バーテンダーは?

泡盛を提供している人達は? アパレルは?

デザイナーは? などなど。他業種から学ぶことは凄く多い。


ワインの世界、ソムリエの世界が奥深く一生追求していきたいと思うと同時に他業種の方々とのコミュニケーションを積極的にとっていこうと思っている次第である。



3. 禁酒法:Speak easy

実にバーテンダーのマインドは面白い。

いわゆる遊び上手である。

ソムリエって全体的に真面目ですよね。笑

職業的な性質なのか。


2021年に日本は一時的に、飲食店でのアルコールの提供を禁じられるのだが、この中でも、クリエイティヴにアルコール提供を行い通常営業を行っていたのが、後閑信五さん率いるSG Groupであると思う。(Bar2店舗、カクテル居酒屋1店舗)

店舗の入り口にベニヤ板を打ち付け「テナント募集」の張り紙。

現代版、Speak easy(※)を面白くやってのけている。


※1920-1933年、当時アメリカの禁酒法時代に発展したbar culture。潜りのバーを指す。


色々、言いたいことがありすぎる、このご時世ではございますが、逆境での面白いアイディアはピンチをチャンスに変えるといっても良い。



4. ベーシックなソムリエ・ルーチン

さて、この2021年の禁酒法時代、レストランで働くソムリエ達はどのような活動をしてきたのか?

1.ノンアルコールリストの充実化。

2.ノンアルコールペアリングの強化。

3.オンラインでのワインセミナーやワイントレーニング。(YouTubeを含む)

4.自身のワイン学習。

5.ワインリストの見直し。


上記の5つが主な柱になってくるのでは、ないだろうか?



5. 石原ソムリエによる人体実験

【禁酒期間に私が行った事。】

①ノンアルコールリストの充実化(特にお茶)

コーヒー屋さんが多い沖縄の中で、ノンアルコール飲料で、お茶のマーケットはブルーオーシャンに思える。


更に日本茶から中国、台湾茶まで入れますと、バリエーションが豊富で朝、昼、夜と時間を選ばない飲料とも言える為、ますます知識や提供方法を強化していかねばと思う。

(昼はカフェ業態で提供でき、夜はレストランでも、ノンアルコールペアリングにおいてお茶は使いこなせた方が良い一種の武器である。(日本茶、中国茶含めて)


②ノンアルコールペアリングの体験

(京都のLurraのノンアルコールペアリングを体験してくる。)

評判通り良かった。ミクソロジスト堺部 雄介さんの創り出すノンアルコールペアリングは、独創的でいくつもの香りをレイヤードしていきペアリングも心地よく合わせてくる。

レストラン後に一緒に飲みに行って分かった事だが、かなりペアリングのロジックもしっかりしているミクソロジストだった。ワインやお料理の事もしっかりと勉強しており、次世代のヒーローの予感。まさにハイブリッド・バーテンダー。

海外での様々なレストラン経験、更にお会いした事はないですが、SommeTimes writerの外山 博之氏の影響、更になんでもアップデートしてしまう年代(30代前半)と感じる。


③パートナー企業でのソムリエ対策講座(オンラインではない。)

イノベーションというカテゴリーではないが、2021年JSAソムリエ教本は皆さまご覧になりましたでしょうか?

去年と比べても、こんなにアップデートしたの?という内容。一度は目を通してほしい。


④ドーナツ屋の経営

(こちらは、去年のコロナ時にアルコール以外のビジネスを1本持たなければいけないと感じ立ち上げたビジネス。)eat inとTo Goのどちらも対応。更に現在、Uber eatsの準備も進めている。

2020年から考え始めた事で、誰でもアクセスしやすいチャンネルを持ちたいと思い開業しました。

今までは、ワイン関係の高価格帯のレストラン(15,000円〜)という繋がりのお客様が多かったのですが、ドーナツ屋という(500円〜)チャンネルを持つことにより、その層からもワインに興味を持つきっかけが作れると感じている。勿論、ビジネスのリスクヘッジも兼ねての展開である。

instagram; @downtown_donuts_okinawa 



6. ソムリエの今後

「何も変わらない。」に超したことはないが、仮に現在のような事例が今後も法律で全部ダメになった仮想を立てた時、ソムリエはどう動くだろうか?


【日本の情勢から立てた仮説】

①飲食店でのアルコールの提供が法的に禁止になる。

1.お茶、コーヒーなどのノンアルコールの専門家になる。

2.ネット販売も可能な酒屋(小売業)に転身する。

3.speak easyを行う。

4.表現力や語彙力を生かしセールスの仕事につく。


②外食産業で20時以降の飲食が禁止。(ディナーという概念が消える。)

1.セレブのプライベート・ソムリエになり、主にホームパーティーやセレブのワインセラーの管理者になる。

2.飲食店から身を離れる。

3.愛好家の方へのワインの教育をメインに行うワインスクールの先生になる。

4.ソムリエ・ユーチューバーになる。


【世界の情勢から立てた仮説】

③世界的にコロナ渦が収まらずコンテナ不足による輸入ワインが入らない。

1.日本ワインだけのリストを作る。

2.日本酒や焼酎に特化していく。

3.食や農業についての国内自給率アップに向けて、しっかりと声があげられる、 聞いてもらえるソムリエが必要。


④世界的な水不足によって灌漑によるぶどう作りの禁止。

(チリ、アルゼンチンや南アフリカは大丈夫なのか?と考えずにはいられない。

日本の大衆的安価ワインの代名詞チリワインが入ってこなくなる。)

1.セレクトの見直し。


⑤世界が求めるSDGsな配慮がなされていないワイナリーの製造禁止。

(輸入ワインの値上がりが加速し、更にワインが国内のマーケットでの一般消費者の選択肢から外れていく。)

1.より正しい見識を持ったソムリエが求められる。


⑥世界的に適正飲酒が行えない人たちによる更なるイメージダウンによってWHOからのアルコール業界への規制強化。

(世界的に未成年の飲酒や飲酒運転、お酒による家庭崩壊というネガティヴな話題が後を絶たない事による更なる職業のイメージダウン)

1.ソムリエとしてはメリット?!

2.世論に対して発言権のあるソムリエが誕生しないといけない。

3.よりワインと健康の結びつきや、文化以外の存在意義を打ち出すコメントを発信していかないといけない。


日本のコロナ情勢に加えて、世界的なSDGsな観点の問題も加わり、収拾のつかない世紀末?! 革命前夜と思うような世の中であるが、最悪な仮説を立てビジネスとして準備しておく方が良いのではないかと常に考える。

※勿論、オープンマインドでブレイクスルーするという気持ちの元で。


仮にノアの箱船が出された時に、生き残るソムリエ像を私は皆様と一緒に考えていきたいです。


追記:僕はレストランの現場でライブ感のある動きや雰囲気が好きですし、フィジカルを使いどんどんプレーできるレストランがずっと残って欲しいです。だってレストランやバーが好きで始めた仕事ですもん。


沖縄のソムリエより 心を込めて。



7.最近のワイン



生産者:Domaine de Belle Vue / Jerome Bretaudeau ドメーヌ・ド・ベル・ヴュー

ワイン名:Muscadet Gabbro Clos Bouquinardieres /

ミュスカデ・ガブロ・クロ・ブキナルディエール

葡萄品種:Muscadet / ミュスカデ

ワインタイプ:White / 白

生産国: France / フランス

生産地:Loire / ロワール・ペイナント・ミュスカデ・セーブル・エ・メーヌ

ヴィンテージ:2018

インポーター:ヴァンクール

希望小売価格:4,345円(税込)


【Producer’s Profile】

ジェローム・ブレトドー

ワイン農家とは全く無縁の家系で育ったが、15歳の時に父親から何気なくボルドーワイン教本でワインに興味を持ち、ランンドロー村の醸造学校、ナントのワイン学校で栽培を学ぶ。

ジョー・ランドロンのドメーヌでスタージュをし、1997年12月からドメーヌをスタートさせる。


【Viticulture&Wine making】

平均50年の古木からできるミュスカデ。

自然発酵44日、セメントタンクでシュール・リー25ヶ月。

マロラティック発酵100%、Total SO2 20g/L


【WINE】

クリーン・ナチュラル。いやピュア・クリーン・ナチュラルと呼ぶに相応しいワイン。

夏の草原のような清々しさ、爽やかなフレッシュ青リンゴの香りに長期のシュール・リー由来なのか重心の低い落ち着いたパンドゥミの香り。

心地よいアタックにスムーズに流れる液体。透明感があり気づけば1本空いている大人のミネラルウォーター。健康に気を使う今日この頃、こういったワインを常に欲している。

ワインリストでも、プライベートでも。


【Recommendation】

最高にクールだと思う。これだけミドル・バランス(ニュートラルな味わい)で整えてくるワインは実に凡庸性が高い。by the glass、Pairingの序盤、素材を生かすための少量の塩づかいや、澄んだ上品な出汁を取ってくるよう店には間違いなく最適である。


ここにしかない個性に乾杯!!



〈ソムリエ プロフィール〉

石原 大輝/ Daiki Ishihara

1986年 沖縄生まれ


バーテンダーからキャリアをスタートして福岡と東京のレストラン、そして地元の沖縄に戻りホテルやレストランでシェフ・ソムリエやマネージャーとして研鑽を積む。

2018年 Le Monde [Freelance Sommelierとして独立] 、J.S.A. Senior Sommelier取得。

2019年 A.S.I. Diploma取得。

2021年3月 自身がオーナーを務めるDowntown Donuts(ワインが飲めるドーナツ屋さん)が

沖繩市にオープン。



〈Le Monde〉

Freelance Sommelier、Beverage consultantとして活動。

沖縄のレストラン、ラグジュアリーホテル、鮨屋、ステーキショップやワインショップという様々なジャンルの店舗のワインリスト作成、ペアリングの提案、スタッフ教育にマネージメントなどを行う。沖縄のレストランやドリンクシーンをワールドクラスにする事を理念として日々奮闘中。


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