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- Box Wineって美味しいの??
今どきのボックスワインはクールでエレガント、スタイリッシュです! 家飲み全盛期のこの時代にこそお勧めしたいものが、 「BIB」バッグインボックス と呼ばれる 「箱ワイン」 です。 ボックスワイン (box wine / boxed wine)は、ポリエチレンまたはアルミ製の内袋に入った内容物が、硬質紙製の外箱の中に入れられた状態のワイン、またはその包装形態のこと。包装形態は カスク (cask)という呼び名も一般的です。内袋には気密性を有したバルブが取り付けられており、バルブをつまむことで好みの量を注ぐことができます。放出したワインの分だけ内袋がしぼみ、内袋に残存したワインが空気に触れることがないため、ワインの酸化を防止でき、長期間の保存が可能になります。注ぎ口の合成シールがコルクやスクリューキャップの代替物として、機能しています。 箱ワイン、カスクワイン (cask wine)、 バッグインボックス (bag in box, BIB)などとも。オーストラリアでは稀に goon (グーン) goon bag (グーン・バッグ)とも呼ばれます。 箱ワインのメリット ・オープナーが不用で誰でも開けられる。 ・飲む量を簡単に調整できる。1日1杯マイペースに楽しめる。 ・割れる心配が無い。 ・飲み終わった後も、分別廃棄しやすい。 ・保存性に優れている。開封後、およそ1ケ月から2ケ月保存可能。 ・紙製の箱は軽くてエコ。 ・環境に優しい持続可能な包装。 ・場所を取らない、四角い形であるので冷蔵庫の中でも嵩張らない。縦、横、逆さにも置ける。冷蔵庫のコーナーにすっぽり収まる。 ・コスパに優れている。お得な3リットル。 以前の箱ワインはブドウ品種の明記していないもの、バルクワインなどが多かったのですが、 今は品質に優れたものも増えて来ました 。 甘口・辛口など風味や産地も増え、スーパーやコンビニでも手軽に購入できます。日常的にワインを飲まれる方や宅飲みなどの集まりには、高コスパ・大容量ながら鮮度も長持ちする箱ワインって実はいいこと尽くし! ズバリ、箱ワインの魅力は大きく分けると3つあります。 「コスパ」「日持ち」「サスティナブル」 です! お勧め銘柄1 『Box Wineの王道、飲みごたえあり!』 Valdemonte Pinot Noir バルデモンテ ピノノワール NV 生産地:スペイン 品種:ピノ・ノワール 100% 容量:3L 生産者:フェルナンド・カストロ スペインワインの主要な生産地として知られる、カスティーリャ・ラ・ マンチャ地方のバルデペーニャスにある家族経営のワイナリー。 1850年の創業と長い歴史を誇り 、当 主のフェルナンド・カストロ氏は5代目に当たる。 comment:正直これがピノ・ノワールか?と思うほど芳醇でした。色は紫がかった濃いレッド。香りは カシス、ブラックチェリー、そしてエレガントなスパイス、さらにドライフルーツと複雑。ピノ・ノワールのイメージを覆すような力強さが、とても新鮮に感じられます。 合わせる料理:ビーフジャキー、もつ煮込み お勧め銘柄2 『先進的なBox Wineでありクリーンナチュラル、優しい味わいで癒される。』 Lunaria Malvasia ルナーリア マルヴァジア 生産地:イタリア 品種:マルヴァジア 容量:3L 生産者: イタリア・アブルッツォ州の30年前よりビオで栽培を行う協同組合 Cooperativa Olearia Vinicola Orsognaという名のこの組合、実は30年以上も前から無農薬栽培を、05年よりビオディナミ農法を採用。収穫したマルヴァジアをステンレスタンクで30日間発酵、3ヶ月熟成。 comment: クリーンナチュラルで何杯でも飲めちゃいます。淡いグリーンの外観から、 りんごキャンディやハーブ、桜餅の様な甘やかな香りが拡がります。味わいはグレープフルーツとリンゴジュースをミックスしたフレッシュな味わいで、果実と穏やかな酸のバランスが好印象。 合わせる料理:ケールサラダ、鰤のタルタル お勧め銘柄3 『本格的な赤ワイン、外したくないならばこれで決まり!』 BIO SYRAH JANINY ビオ シラー ジャニーニ 生産地:フランス 品種:シラー 容量:2L 生産者: マス・ド・ジャニーニ ラングドックで4世代に渡ってワイン造りを行っている家族経営のワイナリー。こちらは南フランスの太陽をいっぱいに浴びて育ったシラーを100%使用して造られるオーガニック箱ワイン。内容量はボトル2.6本分。 comment: 豊かな果実味が主役の濃厚な赤ワインでパッケージもスタイリッシュ。プルーンやベリー系のフルーツ、ブラックペッパーなどスパイスの香りがあります。味わいはまろやかでかすかにハーブのようなニュアンス、フルーティーな酸味があり、あとからほのかにくる渋みが心地よい。 合わせる料理:サンドウィッチ、チキンの煮込 お勧め銘柄4 『やっぱりコスパの4番バッターチリワイン!』 Santa Regina Chardonnay サンタ・レジーナ シャルドネ 生産地:チリ 品種:シャルドネ 容量:3L 生産者: サンタレジーナは、チリ産の完熟したブドウを使用した、トロピカルフルーツのような風味のある、スタイリッシュな白ワインです。砂礫質土壌で昼夜の寒暖差が大きい、病気が少ない、健康で純粋なぶどうの樹が育っている等、ブドウづくりに最適な環境が整っているチリならではの、メリハリの効いたワインに仕上がっています。 comment: チリワインの良さを存分に表現しています!芯のあるフルーティーな酸味が立ち、キリっとした辛口です。 冷蔵庫でよく冷やして飲むのがオススメ。 合わせる料理:とんかつ、唐揚げ、ポテトフライ 総評 一度Box Wineこの美味しさと便利さを知ってしまうと、きっともう手放せなくなってしまう事でしょう!気軽に温度を気にせず飲める魅力があるので、アウトドアにも連れ出したくなるワインです。現場でもソムリエにも多様性が求められるこの時代で、色々な引き出しをもっていたいですね。是非ともさまざまなシーンで便利に活用出来る、お勧めしたいBox Wineでした! <ソムリエプロフィール> 矢田部 匡且 / Masakatsu Yatabe 「東京エディション虎ノ門」ヘッドソムリエ 「エディション」は「ザ・リッツ・カールトン」と並ぶ、マリオット・インターナショナルにおける最高級グレードのラグジュアリーホテルブランド。上質なラグジュアリーとライフスタイル型を融合させた世界が注目する最先端のホテル。現在、ニューヨークのタイムズスクエア、ウエストハリウッド、ロンドン、マイアミビーチ、バルセロナ、中国の上海、三亜、アブダビ、トルコのボドルムに展開し、2020年にイタリア・ローマと東京で開業予定。
- Sato Wines 衝撃の自社畑ワイン
ニュージーランド南島の セントラル・オタゴ は、国土の北から南までワイン産地が点在するニュージーランドの中でも、 最南端 に位置するエリア。南半球で、最南端側となると、無条件寒いエリアだと思うかも知れないが、実際には冬は氷点下に入るほど寒く、夏は逆に暖かく乾燥しており、日照量も平均値では一月に約230時間、二月に約200時間、三月に約180時間(ブルゴーニュの平均値は七月に約250時間、八月に約230時間、九月に約180時間)と申し分ない。昼夜の寒暖差も大きく、一月の平均値は最高気温が24度前後、最低温度が11度弱となるため、葡萄は酸を長く保持しながら成熟できる。簡単に言えば、 年平均300mmという降水量以外は、ワイン用葡萄の栽培地として、好条件が見事に揃っている 産地、ということだ。 さらに、本格的なワイン産業が1970年代から始まったにも関わらず、セントラル・オタゴには 際立って優れた造り手も多い 。あえて筆者の趣向を全面的に反映させるが、 Felton Road、Mt Difficulty、Quartz Reef、Burn Cottage、Rippon、Mount Edward あたりは、ニュージーランドでもトップクラスの実力者だ。そして このトップリーグに、間違いなく加わっている生産者が、Sato Winesである 。 その名の通り、Sato Winesを造っているのは、日本人の佐藤さんだ。正確に言うと、 佐藤嘉晃さんと、佐藤恭子さんのご夫妻 である。 元々銀行の同僚だった佐藤ご夫妻は、共に転勤先となったロンドンでワインの魅力に目覚め、ワイン造りの夢を追ってニュージーランドへと渡り、リンカーン大学で栽培学と醸造学を修めた。大学卒業後は共に銘醸Felton Roadで働き始め、その2年半後に嘉晃さんは同じく銘醸として知られるMount Edwardのワインメーカーとなり、恭子さんはFelton Roadのヴィンヤード・スーパーバイザーとして活躍してきた。そんなご夫妻が 2009年 に立ち上げた小さなプロジェクトが、Sato Wines。僅か190ケースからのスタートだった。 Sato Winesは、 ビオロジック及びビオディナミによって育てられた健康な葡萄を、極限まで人為的介入を廃し、化学薬品や添加物を使用せずに、セントラル・オタゴのテロワールとヴィンテージの恵みが込められたワインとして表現する ことを理念として掲げている。あえてより分かりやすく表現するなら、Sato Winesは セントラル・オタゴに深く根ざした、テロワール主義のナチュラル・ワイン生産者 だ。 そして、Sato Winesには佐藤ご夫妻が在学中から重ねてきた ヨーロッパでの修行経験 も存分に生かされている。二人の修行先を合わせると、ベルンハルト・フーバー(ドイツ・バーデン)、ドメーヌ・マタッサ(フランス・ルーション)、ジャン・イヴ・ビゾー(フランス・ブルゴーニュ)、ピエール・フリック(フランス・アルザス)、フィリップ・パカレ(フランス・ブルゴーニュ)、ジュリアン・グィヨ(フランス・ブルゴーニュ)、クリスチャン・ビネール(フランス・アルザス)など、ヨーロッパにおけるビオディナミやナチュラル・ワイン大家の名が壮観に並ぶ。 ニュージーランド屈指のビオディナミ・ワイナリーであるFelton Roadや、セントラル・オタゴで最も早く有機認定を受けたパイオニア的存在であるMount Edwardでの活躍に加えて、ヨーロッパ各地の超一流ワイナリーで重ねてきた経験は、数多い日本人ワインメーカーの中でも、群を抜いているだろう。 つまり、佐藤ご夫妻には、 ビオディナミとナチュラル・ワインメイキングの 「理合」 が、強固に宿っている 。 近年こそようやく「クリーン・ナチュラル」という概念が浸透し、ナチュラル・ワインが本来もっていた多様性に目が向けられるようになったが、過去20年以上、ナチュラル・ワインの市場におけるスターとなってきたのは、欠陥的特徴が過度に出てしまうことを気にもとめない、乱暴で、粗雑で、偏執的なワインだった。「何もしないこと」が最も自然だと盲信する彼らのワインの相当な割合が、結果的に最も大切にしていたはずのテロワールを、跡形もなく消し去っていたのだ。 しかし、理合の宿った佐藤ご夫妻のワインは、そのような破滅的自己矛盾とは無縁の存在である。 念願の自社畑 2009年のデビュー以降、ビオロジック、もしくはビオディナミで栽培された買い葡萄や、リースした畑の葡萄でワイン造りを行ってきたSato Winesだが、 2015年 に5haの敷地を取得し、2016年の10~11月にかけて、 3.1haを植樹 した。売りに出た畑を購入しようと思っていた時期もあったそうだが、最終的には葡萄畑のデザインや農法も含めて、 ゼロから創り上げられる場所 を選んだ。 2022年、ついにリリースされた2019年ヴィンテージの自社畑シリーズであるLa Ferme de Satoを飲む限り、 その選択は正解だったとしか思えない 。 ©️SATO WINES 複写、転載厳禁 ブロック図をご覧頂きたいが、中央部のラインを境に北西方向と南西方向に向けて標高が高くなっている。つまり、畑全体としては純粋に東を向きながら、北側半分は中央に向かって南東向きに穏やかに傾斜してゆき、南側は北東向きに傾斜している。 標高はBlock6の下部が最も低く298m、Block2の上部が最も高く343mとなっており、畑の最下部から最上部までの高低差は45mもある。 また、この畑は、 セントラル・オタゴの平均的な葡萄畑よりも、50~100mほど上部に位置していることから 、より冷涼でハングタイムが長く、緻密な栽培が可能になる。 佐藤ご夫妻は開墾と植樹を行う前に、何度も調査を重ね、斜面の角度、日当たり、土壌組成などを精緻に把握した上で6つのBlockに分け、 地理的合理性 に基づいて植樹する葡萄とクローンを選定した。 例えば、北側のブロックは、朝日が顔を出すポイントが徐々に南東に移動する春以降、朝日の出る方角に対して真っ直ぐに向くようになることで、朝日を最も効率よく受ける場所となっている。また南東気味に傾斜していることにより、角度的に暑い日中の太陽をやや穏やかに受け取ることになる。ここに朝日が大好きで大きな熱量を欲しないピノ・ノワールを中心に植樹している。 反対に、南側はやや北東に向いているため日中の熱量が北側に比べて多い。ここに熱量を欲するシャルドネを植樹している。 「正しい場所に正しい葡萄が育っている。」 Sato Winesの自社畑は、 ファイン・ワインの絶対的条件となる適地適品種の大原則が、徹底的に守られた畑 として創り上げられたのだ。 参考までに、以下は各ブロックに植樹された葡萄品種の情報となる。 Block 1 (0.2ha) Pinot Noir Block 2 (0.5ha)Chenin Blanc 0.42ha, Chardonnay 0.08ha Block 3 (0.85ha)Pinot Noir 0.6ha, Gamay 0.25ha Block 4 (0.25ha)Cabernet Franc Block 5 (0.8ha)Chardonnay Block 6 (0.5ha)Pinot Noir 0.43ha, Chardonnay 0.07ha 醸造所と熟成庫 2019年には、同敷地内に醸造所と熟成庫も建設された。わざわざ2つの建物に分けられた理由は、Sato Winesならではの緻密な温度管理にある。 発酵中のワインと熟成中のワインが好む温度帯は異なる。熟成中のワインは15度前後が理想だが、発酵中のワインにとってその温度は低すぎる。マロラクティック発酵なども含めると、多くの「自然派」ワイナリーが陥る、葡萄を潰したらそのまま放置という考えでは、発酵や熟成と密接に関わる微生物たちが最大のパフォーマンスが発揮できる環境を整えることは不可能に近い。 ゼロから創り上げる利点が、ここでも発揮されているのだ。 話が複雑化しすぎるため、詳細は割愛するが、ワイン造りのあらゆる局面において、佐藤ご夫妻は徹底的に合理的である。全てのプロセスにおける手段の選択に、明確な意図があるのだ。そして、その合理性の積み重ねこそが、極めて完成度の高いクリーン・ナチュラルワインの創造へと繋がっている。 セントラル・オタゴのワイン 佐藤ご夫妻のワインから常に感じてきたことがある。それは、 Sato Winesは徹頭徹尾、セントラル・オタゴのワインである 、ということだ。当たり前のように思うかも知れないが、ワイン造りにおいて、 これほど難しいことは無い と筆者は考えている。そして、今回の自社畑ワインでは、Sato Winesの魅力が「セントラル・オタゴのワインである」という点に集約されることを、改めて確信した。 La Ferme de Sato, Gamay “Alyssum” 2019. 自社畑に自生するようになったニワナズナ(Alyssum)という小さな花から名付けられたのが、ガメイのキュヴェ。植樹3年目という超若木らしい躍動感と、疾走感に満ちた快作だ。古樹のクリュ・ボジョレーに見られるような奥深い味わいは当然のように無いが、それを補って余りあるほどのエネルギーに圧倒される。特に余韻の前半で爆発的に弾けるような果実のアロマが最高に心地良く、葡萄を皮ごとかじっているような、噛みごたえのある味わいは、単純なジューシーさとは一線を画す魅力を放っている。 La Ferme de Sato, Cabernet Franc “Sous Bois” 2019. 晩熟の品種であることから、最も日照量の多い北東向きのBlock 4に植えられたカベルネ・フランもまた、セントラル・オタゴにおけるこの品種の偉大な可能性を雄弁に物語る意欲的なワインとなっている。日本語では「森の下生え」と訳される「スー・ボワ」というキュヴェ名は、このワインの本質を見事に射抜いたネーミングであり、ピラジンによるほのかなハーバルノーツと、軽く湿った土のようなアロマが合わさり、飲み手を「森の中」へと誘う。ガメイと同様に、余韻にかけて香味が急激に膨らむ瞬間は、まさに夢見心地。 La Ferme de Sato, Chardonnay “Le Chant du Vent” 2019. セントラル・オタゴでも際立って風が強く吹き抜ける場所に畑があることから、「風の歌」と名付けられたのがシャルドネのキュヴェ。そして、樹齢3年という事実を本気で疑ってしまうほどの、大傑作である。畑の上部から下部まで3ブロックに分けて植樹された「微妙に味わいの異なる」シャルドネがブレンドされることによって、シェーンベルクの弦楽六重奏を思わせるような、繊細かつ緻密でありながら、重厚なドラマ性も兼ね備えたワインとなっている。 今回リリースされた3キュヴェは、どれも想像の遥か上をいく傑作揃いだった。遅れてリリースされる予定の、ピノ・ノワールとシュナン・ブランのキュヴェが待ち遠しくて仕方ないし、新しいヴィンテージが届くたびに、その成長を見届けていくという楽しみも増えた。 そして、私は心から誇らしい気持ちになった。異国の地で、これほどのワインを生み出した日本人がいることに。
- 償いの丘 <カタルーニャ特集:ペネデス編>
何度も、何度も、フラッシュバックする光景がある。あの瞬間、不意に気付かされた過ちに、あらゆる言い訳は意味消失した。私にとってペネデスの丘は、終わりのない贖 罪 の日々と、生涯守り続けることになる約束の、始まりの地である。 ペネデス カタルーニャ州のペネデスは、プリオラートと並ぶ最重要産地として、名を馳せてきた。しかし、この2産地は 両極端の性質をもつ に至ったことでも知られている。プリオラートが4人組による復興後、スペイン最上のクオリティ産地へと進化した一方で、 ペネデスは超大量生産型産地の典型例として猛進を続けた 。 言うまでもないかも知れないが、ペネデスで超大量生産されてきたワインとは、スパークリングワインの カバ である。 コストパフォーマンスという一点において、カバは世界各国のトラディショナル製法(シャンパーニュ製法)で造られるスパークリングワインに対して、圧倒的な優位を維持し続けてきた。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンなどで造られる インターナショナルスタイル のワインも、カバに比べればマイナーだが、強い勢力を維持してきた。こういったワインも、コスト面ではチリなどと比べても遜色ないレベルのパフォーマンスで知られてきた。 まさに 総体としてのペネデスは、人々の「渇き」を安価に癒すための産地として発展してきた のだ。 そして、若かりし頃の筆者は、このようなワインを大量に販売していた。 文字通り、大量に、だ。 安くて美味しい、それだけをクリアしていれば、当時の私にとっては正義だった。
- 出会い <7> 経験を超えるもの
Augalevada, Ollos de Roque. 2018 ¥3,900 卓越したワイン造りに、 経験値 は必要なのでしょうか。 普通に考えれば、答えは YES です。 かつて「猿酒」造り(葡萄を容器の中で潰して、放置するだけ)に挑戦して、大失敗した経験のある筆者にとって、ワインメーカーという職は、明白に 「専門職」 です。素人がいきなり素晴らしいワインをいとも簡単に造れるほど、ワイン造りは甘いものではありません。それだけは間違いない、と断言できます。 しかし、モノづくりとは不思議なもので、経験値に加えて、 センス 、別の言い方をすれば 才能 とでも呼ぶべきものが、大いに関わることも確かにあるのです。 少々厳しい言い方にはなりますが、いつまで経っても一向に品質が向上しない造り手もいれば、キャリアは浅くても三段跳びで進化してしまうような造り手もいる、ということです。 排他的な考え方は好きではないので、センスに恵まれなかった(と私が個人的に感じる)造り手を非難する気は一切ありませんが、ルーキーの大活躍には、心が躍るのも確かです。
- IPAの始まり
まだまだ大変なご時世の中ではありますが、この時勢を乗り越えて更に質を高めて頑張っていこうとしている飲食業界の動きに感化されまして、私事ではありますが、つい最近、自身の店の屋号を変えて心機一転、気合いを入れ直す運びとなりました。 新屋号を 【BAR SERVICIA(セルヴィシア)】 と言います。 「サービス」と言う言葉の語源であり、「力になる」、「助ける」と言った意味を持つラテン語の「SERVICIAL」から頂いてます。 『皆様の気分を上げ、人生を豊かにする手助けをしたい!』という想いを込めて、この名前にしました。 (ちなみに、スペイン語でビールを意味する「セルベッサ」とも掛けていて、更に自分の名前の「祐」の字とも同じ意味を持たせています。笑) 屋号を変え、さらに仕事に気持ちが入り、気分を上げるためにも、ますます勉強して楽しくお酒を提供して行こう!と気合が入ったところで、今回は気分の上がるビアスタイルの代名詞! 【IPA(インディア・ペールエール)】 について改めて学び直し、考察していこうと思います。 お酒全般でも言える事だとは思いますが、ビールのスタイルや味わいの一つ一つには様々な文化性や意味性があると思っています。 傍らに常に置いておきたい、馴染む感じのビール。 食事文化や気候風土との調和を図ったビール。 新聞読みながら、ワイワイしながら、しっぽり語り合いながら、etc…。 様々なシーンに合わせたビールが存在していて、その味わいに意味があると思っております。 そんな中、最近のIPAはどんな感じなのか?と言われると、自分的には「派手でアッパーでオシャレで、コレについて語らずには居られない!」って感じです(笑)。 呑んでてとても楽しい 「晴れの日ビール」 な印象。 呑んでる側も楽しけりゃ、作ってる側も楽しんでるんじゃないかなぁ?とも思って ます。 「最近の…」という言い方をあえてしましたが、元々IPAとはどんなお酒だったのかご存知でしょうか? 知ってる方も多いと思いますが、改めてご説明させて頂きます。 以前のコラムにも書かせていただきましたが、ビールには 「エール」と「ラガー」 (別枠で「ワイルド」)と言う大きな分類があり、古来より存在していたのが「エールスタイル」のビールです。 エール文化であるイギリスでは、作り方の問題で、昔は濃かったり濁ってたりする色合いのエールがほとんどだった様ですが、400年ほど前に、それまでのエールには無い淡い色合いの画期的なエールが開発されました。それが 「ペールエール」 と呼ばれるビールです。 「ペール」とは淡いと言う意味で、それまでのエールに比べると、実際にだいぶ淡い印象だったのでしょう。イギリスでペールエールの製法は一斉に広まり、瞬く間に主流な飲み物として位置づけられました。 その後、植民地であるインドにペールエールを輸出する際、ビールが長旅に耐えられず腐らせてしまうと言う問題を解決する為に、輸出用のペールエールに ホップを大量投入 して、味や香りを強めた物が出来上がりました。 これが後に、イギリス本国でも呑まれて大流行りし、そのスタイルのビールに 『IPA(インディア・ペールエール)』 という名前が付いたのが起源と言われています。 ちなみに、同時期にドイツのエクスポートビールであるドルトムント・スタイルラガー(ドルトムンター)もインドに輸入されていて、ホップを効かせた濃い味わいのドルトムンターが輸出に向いている、ということを参考にしてIPAは作られたとも言われています。 ちょうど 前回のコラム でドルトムンターについて語ったばかりだったので、あえて別の説に関しても記載させてもらいました。歴史って繋がりますね! 最初期のIPAは、イギリス式の落ち着いた緩い印象のペールエールに、ホップの防腐作用を付け加えた程度の物だったので、そこまでホップの味わいや苦味、香りが強くなく、アルコール度数もイギリスエールっぽい低い物が普通でした。 イギリスでも一時は流行ったIPAですが、当時はそこまで大きな特徴がある訳ではなかった為か、次第に他のスタイルのビールに埋もれて忘れられていくようになりました。 時は進んで近代、アメリカでクラフトビール作りが盛んになり始めた頃、造り手達は様々な味わいのビールを造ろうと必死に勉強していました。造り手たちがビールについて調べ学ぶ中、昔の造り方の1つに 「保存の為、ホップを多く投入するビアスタイル」 IPAと言うものを見つけました。 イギリス含めたヨーロッパのホップは落ち着いているものが多かったのですが、アメリカで栽培されているホップは苦味や香りが強いものが多く、 「この強烈なホップ達を大量投入したら面白いんじゃないか?」 と造り手は考えました。そうして生み出された物が、私がこの文章の初めに 「最近のIPA」 という表現をしたビールの始まりです。 本来、防腐作用を求める為の造り方であった物を魔改造しまくったので、当初は邪道とも言われましたが、その強烈な味や香りは呑む人々を驚かせ、1度呑んだら癖になり、瞬く間に大流行! アメリカクラフトビールの文化発展を加速させ、そして今でも世界的に大人気のビアスタイルとなりました。 私も初めて(最近の)IPAと言う物を呑んだ時、 「今までに口にした事の無い液体だ!」 と思ったものです。 当時の造り手も同じ事を思ったことでしょう。 本来はあくまでもペールエールの発生系としての立ち位置だったIPAですが、現代においてIPAと言うのもは、魔改造し甲斐が有るその独特の個性のお陰で、大きなビアスタイルの1つとして確立しており、様々な雰囲気や味わいの物が造り出され、ビアスタイルとしてただ一言で「IPA」と表現出来ないぐらい細分化されていっております。 世界的にホップの品種も増えましたし、造り方も日々工夫を凝らされ、革新的な味わいのIPAが多く生まれており、IPAを語るにおいて 「何スタイルのIPAなのか?」「どんな雰囲気のIPAなのか?」 が重要になってきてると思います。 今回のコラムでは、ホップの品種や細分化されたビアスタイルについては、長くなるので1度置いておきますが、ぜひ今後IPAを呑む際には、 「今日出会ったIPA、こんな味で面白かった〜」 と酒好き同士で語り合ってみてください(笑)。 最後に、エクスポートビールとして存在していた原初の雰囲気のIPAと、アメリカで流行り始めた当初の、苦味強めでキレのある香りが特徴的なIPA、同じIPAなのに雰囲気の全然違う2銘柄を紹介して終わりたいと思います。 IPAを呑んだら語らずには居られない!!! さぁーて皆さん、今宵も呑んで語って楽しみましょう!IPAを呑んだらそんな雰囲気になるんだから、絶対楽しいですよ〜! 今回もありがとうございました。 ビール名 :グリーンキングIPA ブルワリー名 :グリーンキング ブルワリー所在地 :イングランド アルコール度数 :3.6% ビアスタイル :India Pale Ale(ブリティッシュスタイルIPA) カラー :淡色アンバーブラウン フレーバー :ビターなホップの香りはあれど抑え目、モルトの優しいフレーバー テイスト :麦芽の旨み、ナッティなコク、優しく広がるビター コメント :日本の流通がどんどん無くなっていってるブリティッシュスタイルのエールなので、日本でお目にかかるのは結構レアかも…苦かったり香り強いIPAしか知らないと、ビックリするほど優しい呑み口なので逆に驚きます。少し温目の温度でダラダラ呑むのがベスト! ビール名 :Stone IPA ブルワリー名 :Stone ブルワリー所在地 :アメリカ カリフォルニア州サンディエゴ アルコール度数 :6.9% ビアスタイル :India Pale Ale(ウエストコーストIPA) カラー :ほんのり濃くて美しい銅色 フレーバー :柑橘のような香りと松のようなホップアロマ テイスト :ホップの苦味とモルトのバランスの良い旨味、心地好い余韻のある苦味、アフターはドライ。 コメント :アメリカンクラフトビール、アメリカンIPAのパイオニア的存在!造り手本人も当時はこんなに流行ると思わなかったことでしょう。今でも常にアメリカンクラフトビール業界を牽引し続けています。鮮烈な苦味とモルトとのバランスを楽しめます。 <プロフィール> 高橋 祐之介 (のすけ) 湯島 BAR SERVICIA(セルヴィシア)店主 1989年生まれの埼玉県幸手市出身 ↓ 大学時代、千葉県柏市にて初めて飲食業及びバーテンダーの仕事を経験、バーテンダーに強い憧れを抱く…。 ↓ 初めての就職は建築業でしたが、足立区北千住にて夜な夜なBARを徘徊…BARや酒場の奥深さや存在意義を学ぶ。 ↓ 湯島にてクラフトビールを扱うBARに出会いそのままそこに就職、パブバーテンダーとして本格始動し、早々に店長職に昇進するも会社が潰れて志半ばで退職…人生最高に悔しくて辛い思いをするがやはり諦め切れず、お客様からの後押しもあり復活を心に誓う。 ↓ 大型店舗のキッチンや高回転の居酒屋の厨房等で経験を積みながら、虎視眈々と湯島の店を取り戻す方法を模索する日々を送る。 ↓ ひょんな事から湯島で再就職し、再就職先のオーナーや関係者に熱意を伝え賛同を集め、そしてついに2018年9月13日、1度追い出された湯島の場所を取り戻す!!!当時からのお客様と大号泣(笑)。 ↓ 2021年11月27日、コロナ禍の中、屋号をBAR SERVICIA(セルヴィシア)に変更、代表として就任。 ↓ 現在に至る。 大好きなこの場所(お店)で通算長い事お店を営業させて頂いております。 大好きな空間で大好きなビールとウイスキーをのんびり楽しんでもらいたく常に精進しております。 食べ物ももちろん好きです。居酒屋や大型バルで修行を積んだ経験をこのお店で発揮し、更に美味しいものをご提供するために常に奮闘しております。 湯島を愛し、湯島に愛される努力をし、「界隈で1番従業員が楽しそうに働く店」を自負しております! <BAR SERVICIA(セルヴィシア)> ドリンクはビールとウイスキーがメインです 多種様々なスタイルのビール、ウイスキーを取り揃え、来る度に変化のあるラインナップを心掛けてます。 フードはパエリアをオススメしてます!出汁をしっかり吸った米は食事としても美味しいですが、シェアフードとして数人でつつきながらお酒のアテとして食べるのもオススメです。 また、特製ビールソースで煮込んだスペアリブに濃厚とろけるチーズを乗せた「濃厚!チーズビアリブ」もイチオシでお酒が進むこと間違いなしです!!! 最近では「パブでもメシを」をコンセプトにしっかりバランスの取れた食事メニューも充実させていて、近隣のお客様に大変好評頂いております!
- 葡萄品種から探るペアリング術 <9> アルバリーニョ
葡萄品種から探るペアリング術シリーズは、特定の葡萄品種をテーマとして、その品種自体の特性、スタイル、様々なペアリング活用法や、NG例などを学んでいきます。 今回は、アルバリーニョをテーマと致します。 また、このシリーズに共通する 重要事項 として、葡萄品種から探った場合、 理論的なバックアップが不完全 となることが多くあります。カジュアルなペアリングの場合は十分な効果を発揮しますが、よりプロフェショナルな状況でこの手法を用いる場合は、ペアリング基礎理論も同時に参照しながら、正確なペアリングを組み上げてください。 アルバリーニョのスタイル アルバリーニョのスタイルは、(甘口が非常に少ないという点を除いて) リースリングとの類似点 が多く見られます。醸造方法や他品種とブレンドするか否かに関しては、世界各地で様々なヴァリエーションがありますが、ペアリングという局面において、アルバリーニョを用いる意味を踏まえれば、 考慮すべき基本スタイルは一つ しかありません。基本的には、 ステンレスタンクやコンクリートタンクといったクリーンでニュートラルな発酵槽と熟成槽を用い、新樽、古樽を問わず樽は効かせていないアルバリーニョを、長期熟成はさせずに(ヴィンテージにプラス5年までが目安となるでしょう)、楽しむ のが良いでしょう。もちろん、新樽を効かせたアルバリーニョでも優れたワインはありますが、どちらかと言うとレアケースと言えます。ブレンド型の筆頭例はポルトガルのヴィーニョ・ヴェルデですが、そのタイプの大多数が、ルーレイロが主体となり、アルバリーニョは酸を増強させる目的で補助品種になります。
- 再会 <7> テロワールを感じれるワインとは
Good Intentions Wine Co., Chardonnay “Volcanic Lakes” 2020. ¥5,800 ワインに宿る 「テロワール」の不思議 は、飲み手をいつまで飽きさせることなく、ワインの深淵へと誘ってくれます。ですが、テロワールというものは、一言二言で言い表せるほど単純なものでもありません。基本的には、とても分かりにくいもの、と言っても良いでしょう。 では、ワインのどういった要素や性質から、テロワールを感じ取れば良いのでしょうか?どうすればテロワールを楽しめるのでしょうか? これもまた、難題です。 ワインや産地に対する知識が手助けになることは確かに多いのですが、 知識に偏り過ぎてしまうと、それほどテロワールの特徴が出ているとは言えないワインにまで、安易にこの言葉を使ってしまいがち になります。 例えば、ニューワールドの産地で、葡萄を極限まで濃縮させ、ワインメイキングの粋を尽くし、たっぷりと新樽でトリートメントをした高級ワインでも頻繁に、「〜〜〜〜のテロワールが表現されている」といった記述を目にしますが、筆者には全く理解ができません。 このようなワインからテロワールを感じ取る秘技でもあるのなら、教えを請いたいところです。
- 共鳴するシャンパーニュ
私には見えないものを感じたり証明する能力は全くありませんが、自分が良いと感じるものに出会った時、身体が共鳴するかのようにゾクゾクと鳥肌が立つことがあったりします。それは私の五感に働きかけ、鋭敏にし、ある種の恍惚とした幸せの感覚へと誘ってくれる素晴らしい瞬間ですが、それはとても儚く、一度経験してしまうと再度その感覚が同じ様に得られるとは限らないのです。 改めまして、乃木坂しんの飛田です。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。 こういう感覚の話しはとても伝えにくいのですが、皆さんだれもが経験したことのある、言ってしまえば 「感動」 という言葉になるのでしょうが、そこにも大小様々な感覚があるのではないかと思います。今回はそんな不思議な体験のお話を…。 昔、日本料理屋の立ち上げの為パリで働いていた時期があります。ある日シャンパーニュの生産者から、ランデヴーの問い合わせがありました。彼は日本のインポーターさんから紹介され、わざわざ連絡をくれたので、直ぐに約束をしました。 当時の私には彼のワインの情報はあまりなく、私は元来習うより感じよっていうタイプの人間ですので、特に前情報などは入れないで当日を迎えました。 当日現れた彼は屈託ない笑顔と物腰柔らかい口調でまずは飲んでみてと、様々なシャンパーニュを試飲させてくれました。 最初の一口からその素晴らしさを感じ、彼の話しとともに引き込まれていきました。 彼の名前は 「Benoit Marguet(ブノワ・マルゲ)」 。 今や業界では知らない人はいないのでは、というぐらいに知名度を得た素晴らしい生産者だと思います。昨今その勢いも知名度も更に増してきていますが、当時からその片鱗はしっかりとあり、更なる理想への追求をした彼のワインにはそれらがしっかり現れているとティスティングして感じ取る事ができます。 そんな中から本日ご紹介したいシャンパーニュが、 「 Cuvée Sapience 」 です。 何を今更って思う方も多いかもしれませんが、私にとっては初めて何か 不思議なシンパシーを感じたワイン だったのです…。それは正に ワインという飲み物の概念を飛び越して、エネルギーが身体の中に流れ込んでくる様な感覚 でした。 その当時一緒に試飲していた場所は、日本建築を施した部屋だったのですが、周りの空気が震えるかのようにザワザワし、全身に鳥肌が立ったのを覚えています。こんな事ってあるのかなと自分でも信じられないほどの経験でした…。 すっかり気に入ってしまった私は、後日彼のワイナリーにもお邪魔し、その流れで 「André Beaufort」 も紹介いただくのですが、その話しはまた今度…。 話しは戻り、彼のワイナリーに訪れた際には一緒にランチもしましたが、 その時には同じ感覚にはなれず 、パリに戻ってからもお客様にお勧めして一緒に楽しませていただきましたが、素晴らしい味わいのシャンパーニュなのは間違いないのですが、そういった感覚にはやはりなれず、あれは私の勘違いなのかなと疑うようになってきていました…。 そこから歳月は流れ、大望の彼の初来日が決まり、再会することができました。 久しぶりに会った彼は、以前より更に静謐さを増し、ワインの話しを聞いているというよりは、修道僧から何か説法を聞いている様な感覚に陥るほどでした。 テイスティングが始まると、驚くことに、何と、そう、あの時と同じように大気がざわつき、体がゾクゾクし、鳥肌が立つあの感覚が戻ってきたのです。作り手を目の前にしたワインが、まるで生きているかのように共鳴し、活動を始め、活き活きとし始めたのではないかと思うほどでした。 そしてその瞬間に、私は テロワールという言葉の意味やビオディナミという概念を少しだけ理解できた様な感覚 を得ることできました。マルゲの畑やセラーを訪れた際の景色がフラッシュバックのように思い出されましたし、以前の感覚を取り戻すことができました。そう考えるとやはり人も含めてテロワールなんだなと、実体験で感じることができたように思います。 もちろんこれは私の経験であり、何が正しいとかいうつもりもありません。 ただ、ワインってとても不思議な楽しい魅力的な飲み物なんだなあって、つくづく思うってそんなお話でした。 以降は、サピエンスを飲む度にやはりソワッとはするのですが、彼がいるときほどには感じることはもはやありません。 また、彼だけではなく素晴らしい生産者のフィロソフィーはいつも素材を大切に、やり過ぎないように注視し、 1つ1つのディテールを丁寧に作り上げる料理の世界に相通ずるもの がある様な気がしてならないのは私だけでしょうか。 そんな素晴らしい人、もの、こと、などをご紹介しいていけるように日々感じ、精進していきたいなと思う今日この頃でした。 最後までお読みいただきありがとうございました。 <ソムリエプロフィール> 飛田 泰秀 / Yasuhide Tobita The Flying Stones LLC 乃木坂しん オーナーソムリエ 1974年東京都出身 19歳で単身渡英し習得した語学力をもとに、都内イタリアンレストランサービススタッフとして飲食業界でのキャリアを開始する。 2002年 東京・銀座フランス料理「オストラル」。 同店移転オープニング業務にも携わる。 2006年 オストラル閉店に伴い、南青山のフランス料理「ランベリー」開業。支配⼈として2年間レストラン開業準備から運営の経験を積む。 (在職中、ミシュランガイド東京2008にて1つ星) 退職後、各種レストランの開業運営コンサルタントとして携わり、その経験を活かし、フランス料理「ラ・ロシェル溜池山王」入社。シェフソムリエとして新店舗開業を成功へと導く。 2012 年 東京・銀座日本料理店(当時3つ星)に支配人兼シェフソムリエとして入社。グループのフランス・パリ店の開業に伴い渡仏。開業準備から営業オペレーションなど全ての礎を築く。(在職中1つ星) 2016 年 6 月 日本料理「乃木坂 しん」を開業し独立。オープンから半年でミシュランガイド東京2017において1つ星を獲得。以降現在まで1つ星を維持 様々なイベントの企画や開発、育成、ワインスクールでの指導など幅広く活動している。 <乃木坂しん> 東京は赤坂、乃木神社にほど近い赤坂通り沿いに、料理人である石田伸二氏とともに開店させた会席料理店。お料理に合わせたワインや日本酒とのペアリングコースも楽しめる。 ミシュランガイド東京において1つ星の日本料理店
- Advanced Académie <20> 外観
我々が日々行うワインテイスティングは、実に様々なものに影響を受ける。味わうという行為は、味覚だけでなく、五感にワインの情報がプラスされた、 脳の総合体験 と言い換えることができるという話は度々してきたが、今回は 「視覚」 の影響について、より深く考察していく。 真っ黒なグラス(Riedel社などが販売している)にワインを注いで飲むと、白ワインか赤ワインか判別できない人が続出する、といった話は有名だし、白ワインを無味無臭の食用着色料で赤ワインのように色付けして、専門家にテイスティングさせたところ、テイスティングシートが、赤ワインを想起させるコメントで埋め尽くされた、なんていうなんとも意地悪な実験の報告もあったりする。 認知心理学者の フレデリック・ブロシェ (後者の実験を行った人物)は、この現象を 「知覚の期待」 と呼んでいる。 簡単に言うと、視覚的なものであれ、情報的(例えば、グランクリュであるという前情報)なものであれ、嗅覚的なものであれ、 人は味わう前に知覚したものと同じ結果を無意識に求める 、ということだ。
- 誰がために鐘は鳴る <カタルーニャ特集:プリオラート編>
世界を旅していると、自分がその場所にいる違和感を全く感じない街に出会うことが稀にある。異国であるはずの場所が、生まれ故郷のように肌に、心に、自然と馴染むのだ。街角から聞こえてくる色とりどりの音が、耳あたりの良い大阪の言葉にすら聞こえてくるのだ。 筆者にとっては、ニューヨークとバルセロナが、そういう街である。 心地良さの理由は、はっきりしている。ニューヨークにも、バルセロナにも、 反骨精神が強固に根付いている からだ。自由と尊厳を求める人々のエネルギーが巨大な渦となって、街全体を満たしているからだ。だからこそ、大阪の下町で、社会的マイノリティーとして生まれた筆者は、その場所をホームと感じることができたのだと思う。 長らく訪問は叶っていないが、久々に心の故郷の一つに、想いを馳せよう。 騒がしく、慌ただしく、エネルギッシュで、優しく、何よりも美しいバロセロナに。 そして、バルセロナを囲む、カタルーニャ自治州という驚異的な魅惑な放つ偉大なワイン産地に。 カタルーニャの反骨精神 かつて地中海の覇者として栄華を誇ったカタルーニャ帝国は、15世紀以降、苦難の道のりを歩んできた。 地中海貿易の覇権をオスマン帝国とベネチアに奪われたのと時をほぼ同じくして 大航海時代 が始まり、地中海でも、大西洋でも、巨大貿易網から蚊帳の外となってしまったカタルーニャは、 1,479年のスペイン統一によって、ついに政治的独自性も奪われてしまった 。さらに、アフリカ大陸における植民活動からの除外が追い討ちをかけるように、カタルーニャはますます衰退の一途を辿っていた。1,659年には、フランス・スペイン戦争の落とし前として、北カタルーニャがフランスへと割譲され、1,701年から始まったスペイン王位継承戦争ではスペイン王家に対して反旗を翻したが、1,714年にバルセロナが陥落し、地方自治が認められてきたカタルーニャの政府と議会は解体、 言語(カタルーニャ語)を奪われる、という最も残酷な文化破壊 を受けるに至った。 しかし、追い詰められたカタルーニャ人は持ち前の 反骨精神 を発揮し、まずは農業で財をなし、続いて商業と綿織物工業が隆盛を極め、18世紀後半には、スペインでも筆頭格の先進的経済地域にまで成長した。19世紀前半のスペイン産業革命時も、多くの都市が外資に頼る中、カタルーニャは地元資本で突き進んだ。19世紀中頃には、カタルーニャ語とカタルーニャ文化を復興させるルネサンス運動が興り、カタルーニャの誇りがいよいよ戻ろうとしていたが、20世紀に入ってからも、動乱の日々が収まることはなかった。 1,909年の市民運動に対する政府軍による厳しい弾圧、1,923年から1,930年まで続いたミゲル・プリモ・デ・リベーラによる軍事独裁政権が、カタルーニャのナショナリズムを強力に刺激したことにより急進化、1,932年には自治政府と自治憲章が承認されるに至ったが、1,936年のスペイン内戦によって、すぐさま自治権は撤回され、1,939年以降のフランシスコ・フランコ・バーモンデ政権下では、再びカタルーニャ語とカタルーニャ文化に対する無慈悲な弾圧を受けた。この文化的弾圧は、フランコが1975年に死去し、民主的な新政権によって1,979年に自治憲章が復活したことによって、ようやく 終焉 を迎えたのだ。 その間も粘り強く自尊心を保とうと、カタルーニャは戦ってきた。第二次世界大戦で完全に疲弊したものの、1,960年代から一時的に経済は回復。しかし、ようやく1,979年に自治権が完全に戻ったと同時に、第二次オイルショックが発生、カタルーニャ銀行の倒産によって、バルセロナは失業者であふれた。 この時も、カタルーニャ人は反骨精神を発揮した。1,985年頃にはカタルーニャ経済は立て直され、1,986年にスペインがECに加盟した際に、外国企業の約1/3がカタルーニャに進出した要因となり、 1,992年にはバルセロナで夏季オリンピックも開催 された。 2,000年代に突入してからは、ナショナリズムが再興し、新たな自治憲章をめぐって中央政府と法廷で争ったり、大規模な独立デモが発生したり、独立を問う住民投票が行われたりと、カタルーニャは相変わらず混乱している。 中世以降のカタルーニャの歴史を、書き連ねた理由はただ一つ。奪われ、取り戻し、また奪われても立ち上がり、抑圧されれば必死に抵抗する。カタルーニャの歴史を形作ってきた、カタルーニャ人の精神的性質を知らなければ、カタルーニャ州というワイン産地で何が起こってきたのかを理解することは難しいからだ。 プリオラートの変遷 カタルーニャ特集前編となる本編では、カタルーニャ自治州の最重要産地の一つ、 プリオラート に焦点を当てる。 バルセロナから南西方向に車で2時間ほど走ると、 モンサン山脈の南側斜面 に広がるプリオラートに到着する。葡萄畑は、 標高100m付近から800mを超えるエリア にまで広がり、時折現れる車一台がギリギリ通れるような細い山道は、恐怖心を覚えるほど曲がりくねりながら、アップダウンを繰り返す。まるでジェットコースターのようだ。 葡萄畑に着くと、まっすぐは立っていられない 。傾斜角が40度を超えるような急斜面だらけの畑では、気を抜くと命に関わる怪我をする。プリオラートを初めて訪れた人なら、誰もが真っ先に思うだろう。 よくこんなところに、これだけの数の葡萄畑を拓いたものだと 。 プリオラートで本格的なワイン造りが始まったのは、 13世紀中頃 。1,194年に、カソリック系修道会のカルトジオ会(*1)に属する スカラ・デイ修道院 が建設され、赴任した修道士たちは葡萄畑を拓くことに興味をもった。やがて、葡萄栽培とワイン醸造が始まり、 最初のワインは1,263年に誕生 した。修道院主体のワイン生産は長らく続いたが、 1,835年 にフアン・アルバレス・メンディサバル首相が発令した 永代所有財産解放令 (通称メンディサバル法)によって、 修道院の所有地は没収され、小規模農家に分配された 。19世紀末にフランスをフィロキセラが襲った際には、代替品としてプリオラートからも非常に多くのバルクワインが(主にボルドーに)送られたが、プリオラートも1,893年からフィロキセラ禍に見舞われ、1,910年までにはほぼ壊滅状態に陥った。平地の多いモンサン(プリオラートを取り囲むように位置するDO)はまだましだったが、山間の急斜面にばかり畑が拓かれていたプリオラートは、そのあまりに劣悪な作業効率故に、復興もままならなかったのだ。
- 真・日本酒評論 <5> 飲みやすさの進化系
<正雪:純米大吟醸 天満月> 飲みやすい酒。水のような酒。 この表現が 褒め言葉なのか、そうでないのかは、実にややこしい問題 だ。 古典的な反論は、 「水のように飲みやすい酒が飲みたいなら、水でも茶でもレモンサワーでも飲めば良い。」 だとか、 「酒は飲んだら酔うのだから、飲みにくいくらいがちょうど良い。」 と言った、実に正論と言えるもの。 そのジャンルの玄人になればなるほど、飲みやすい酒という表現を嫌う傾向も見られるが、 さらに突き抜けたところになるとまた話が違ってきたりする のが、難しいところでもある。 例えばワインなら、 ロマネ・コンティやシャトー・マルゴー は究極的な意味で「飲みやすい酒」と表現して差し支えないだろう。 スコッチ・ウィスキーで最も「飲みやすい酒」が マッカラン であることに異論を唱える人は、どう考えても少数派だ。 もし、同じことが日本酒にも当てはまるのであれば、中途半端に飲みやすい酒は賛否両論、突き抜けて飲みやすい酒は称賛の的となるのかも知れない。 むしろ、大量の水を原料とし、各酒蔵の仕込み水の水質が酒質にも大きく影響する日本酒だからこそ、「水のように飲める酒」という言葉とは、とことん真剣に向き合うべきなのかも知れない。
- ワイン×アート [南仏を愛する芸術家]
日頃から日本で西洋の文化や芸術に触れられる機会がある際は、なるべく足を運ぶようにしている。 2020年の秋頃、待ちに待った「ゴッホ展」が始まり、上野にある東京都美術館に引き寄せられた。ゴッホの作品自体はその少し前に、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで同時期開催中であった印象派コレクション「甘美なるフランス」でも、数点展示されているのを見かけた。その前は二年前に「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で見た以来となるだろうか。 国外の美術館でも幾らか見た記憶はあるが、ゴッホのみにフォーカスしてここまで多くの作品が時系列を追って見られる機会は初めてだった。時の流れと共に移りゆく彼の心情が捉えやすく、フランスへ移り住んだ後に晩年を過ごした南仏でのクライマックスの作品集はやはり何度見ても傑作であった。 特に思い入れがあり、多くの名作を生み出した移住地が フランスのプロヴァンス地方アルル (1888年 - 1889年5月)と、療養時代に過ごした サン=レミ (1889年5月- 1890年5月)であるとされている。 いつも美術館へ行く度に、フランスに住んでいた頃にもっとたくさんの絵画にも触れ、偉人たちが愛した田舎の町巡りをすればよかった…。 と、決まって少し後悔した気分になるものだが、今回は何かもやもやするものを感じた。 記憶に訴えかけるような、どちらかと言うと懐かしい気持ちというのか…。 そう、思い返してみると自分は、アルルやサン=レミのすぐ近くを訪れていたのである。そこはサン=テティエンヌ・デュ・グレという、アルルの行政区内にある田舎町。観光目的では到底訪れることがないような小さな町だが、それはとある生産者のワイナリー訪問をさせていただいたときだった。 どこの国にも、辺境の地でワイン造りをしている者はいる 。 まるで何かに取り憑かれたかのようにその地や自然を愛して移り住み、自給自足をしながら人目のつかないところで黙々とつくる者。 はたまたワイン大国にありながら皆が知る偉大な産地ではないけれど、代々受け継がれてきた土地を守りながらつくっている者。 前者はヨーロッパなどの伝統的な生産国ではなかなか起こりにくい。というのも、自国のワイン法によって歴史とともに既に産地として細かい線引きがされているからである。 「ここでどんなに美味しいワインが出来たとしても原産地呼称を名乗る事は出来ませんよ?」 その様に決められた地に、新しく労力と費用を割くというのは考えにくい。 しかし、このような事例は逆にニューワールドなどではよく起こりうることである。まだ知られぬ土地でありながら、自由な考え方と巧みなセンスを駆使して見事なワインを造り上げ、後にその成果が認められる。まるで法律が後から追いついてきたかのように葡萄栽培の適地として認められていくパターンである。筆者が住んでいたオーストラリアなどでも、そのような生産者を見かけてきた。ワイン造りの歴史が浅い国にとってはそのような新天地を切り開いていく生産者たちは、後々にその地域のリーディング・プロデューサーとなっていくケースも多い。 今でこそSNSなどを初め様々なメディアが発展し、小さな生産者にもスポットが当てられやすくなった時代ではあるが、その昔は人が足を運んで少しずつ開拓され世に広められてきたのだろう。「まだ誰も知らない」などの話題性はマーケティングには大きな武器となり、そこに確かな品質と味わいがついてきて初めて、消費者へ真の驚きを与え深く記憶となっていく。素晴らしいものと新たに出会ったときの喜びは皆同じである。 今回は御察しの通り、美術館で思い出したときから高まる気持ちに後押しされて直ぐにこの生産者を紹介しようと決めたのであった。先ほどお話した前者と後者両方の要素を持ち、 正に異端で素晴らしい造り手 。 Domaine de Trévallon 生産者:ドメード・ド ・トレヴァロン 葡萄品種:カベルネ・ソーヴィニョン50% 、シラー50% 生産国:フランス 生産地:プロヴァンス地方 ヴィンテージ:2017 インポーター:株式会社アルカン 参考小売価格:¥12,000 ワイナリー所在地のサン=テティエンヌ・デュ・グレはアヴィニョンから25km、アルルから15km、サン・レミ・ド・プロヴァンスから7kmに位置する。 1950年代に両親が購入し、別荘としていた土地へエロワ・デュルバック氏が葡萄樹を植樹したのが1973年。ここから歴史が始まる。名前の由来はアルピーユ山脈に開墾した畑がある土地 Tre Vallon (three valleys) = "3つの谷" の意味から。 19世紀の著名な葡萄栽培家であった ジュール・グイヨ の著書には、フィロキセロ禍以前のプロヴァンスでは カベルネ・ソーヴィニョンとシラー がよく育ち、それらをブレンドすると素晴らしいものが出来ていた事が記されている。氏はその再現を夢見て、両品種を約半分ずつバランスよく植える事にした。 もともと辺りに葡萄畑はなく、ガリーグが生い茂っていた土地。硬い石灰の岩々をときにダイナマイトで砕き、根気よく耕作して細心の手入れを施した。 畑は殺虫剤や除草剤などは使用せず、出来る限り持続可能な自然農法。収量を抑えて樹が長生きできるように短梢仕立てで、地中の深くまで耕している。自然酵母による全房発酵は品種ごとに行われた後、二年にも及ぶ大樽での長期熟成が特徴。その間もオリ引きは出来る限り少なくして、最大限に旨味を引き出している。 また何より多くのエピソードがあり、複雑なのがここの 原産地呼称 である。生産開始から間も無くして1985年に一度は『 AOC Coteaux d’Aix-en-Provence 』に昇格するも1993年にワイン法の変更により再び、ヴァン・ド・ペイ(『 Vin de Pays des Bouches du Rhone 』)に降格してしまう。その後はAOP法導入により2009年から『 IGP Alpilles 』の表記で生産されている。 ここで大きな転機となったのが、 1993年 に起こった悲劇だろう。晴れてAOCに昇格し、光が射したかのように見られたのも束の間、更に小さく独立したAOCのレ・ボー・ド・プロヴァンス(1995年認定でプロヴァンス地方最西)の発足に伴い、INAOによる規定変更があった。そこには細かい使用品種の決まりも含まれており、それ以降プロヴァンスでは20%以上のカベルネを混ぜるとAOCを取得出来なくなってしまったのである。 当時は正に究極の選択を強いられただろう。規定に従い葡萄を植え替えるか、一度得た地位を格下げしてスタイルを貫くのか。エロワ氏は後者を選んだ。 「そのような決断をするのは怖くなかったのか?」 私は氏に直接質問した事がある。彼は、 「それは怖かったさ、もしかしたら皆に認められないかもしれない。しかしAOCを名乗ることよりも、自らのスタイルを守ることを優先したかったんだ。」 不安はあったが、迷いはなかった「確かな意思」のようなものを私はその時に感じた。たくさんの法に縛られるワイン大国フランスで、彼は小さな自由を選んだのである。 今でこそ地域の規定にそぐわない、独創的なスタイルで注目を集め成功する例も多いが、その先駆けともいえる存在。 AOCから降格後も、確立されたスタイルと更なる美味しさの追求により、南仏最高位の地位を築いてきた。 日本にある現行のヴィンテージは2017年。アルピーユ山脈の北部にあたるため、シラーの成熟はやや遅い。所謂南仏の煮詰めたジャムを思わせるフルーツの甘さや柔らかさよりも、北ローヌのように冷んやりとした鉄っぽいミネラルのノートや、塩漬けにした生胡椒感を強く感じる。そこにカベルネ・ソーヴィニョンの強靭なタンニンとボディが厳しさを与え、骨格を成している。ボルドー×ローヌの高いレベルのハイブリッドスタイルで両品種それぞれの"旨さ"が際立っており、唯一無二の味わいといえる。 筆者自身、何度もその味に魅了された。と云うのもパリのトゥールダルジャンに務めていた際、地下のセラーには膨大な数のトレヴァロンが保管されていたから。そこでは様々なヴィンテージを試飲する機会に恵まれたが、特に30年程熟成したものなどはまた格別であった。 実は今回調べていて、後から知った事である。エロワの父ルネ・デュルバック氏は画家であり、近代美術の改革者であるパブロ・ピカソなどとも親交があったらしい。父が生前に遺した作品がエチケットのデザインになっているようだ。 先代とは進む道は違えど、芸術家の血をしっかりと受け継いだ彼が情熱を込めて造ったワイン。これもまた一つの独創的なアート作品といえる。 毎年違ったキャラクターをもつこの"芸術作品"にこれからも目が離せない。 ※ 追記 今回この原稿を書き終えて、掲載されるのを待っている間にエロワ・デュルバック氏の訃報が入ってきた。急きょこちらの場を借りて彼のご冥福をお祈りさせていただきたい。プロヴァンス地方の革命児であり巨星を失ったのは、一ワインファンとしてもとても悲しいことであるが、これからもその遺志を引き継いだご家族による変わらずの繁栄を見守っていきたいと思う。 <ソムリエプロフィール> 丸山 俊輔 / Shunsuke Maruyama Restaurant Ryuzu Chef Sommelier 1988年 埼玉生まれ。 2008年 都内のフレンチレストランでサービスとしてのキャリアをスタート。 2011年 ソムリエ資格を取得。 2014年 渡豪、二年間シドニーやメルボルンなどシティのレストランでソムリエとしての勤 務、南オーストラリア州のワイナリーで働く。 2016年 渡仏、パリの星付きレストランで一年間研鑽を積む 2017年 帰国後より現職。 オーストラリア、フランスと計三年間の海外滞在期間中は語学取得に励み、現地や近隣諸国のワイン産地、ワイナリー訪問などにも日々足を運ぶ。国内の食通のお客様のほか、海外からも毎日たくさんのゲストを迎えるRyuzuでは経験、スキルを活かし現在も日々研鑽中。 六本木交差点からほど近くにあるフレンチレストラン。オーナーシェフの飯塚隆太により2011年オープン。2013年よりミシュラン二つ星。











![ワイン×アート [南仏を愛する芸術家]](https://static.wixstatic.com/media/568330_18e5cae449ce4aac8414f6d82659d782~mv2.jpg/v1/fit/w_176,h_124,q_80,usm_0.66_1.00_0.01,blur_3,enc_auto/568330_18e5cae449ce4aac8414f6d82659d782~mv2.jpg)