何度も、何度も、フラッシュバックする光景がある。あの瞬間、不意に気付かされた過ちに、あらゆる言い訳は意味消失した。私にとってペネデスの丘は、終わりのない贖罪の日々と、生涯守り続けることになる約束の、始まりの地である。
ペネデス
カタルーニャ州のペネデスは、プリオラートと並ぶ最重要産地として、名を馳せてきた。しかし、この2産地は両極端の性質をもつに至ったことでも知られている。プリオラートが4人組による復興後、スペイン最上のクオリティ産地へと進化した一方で、ペネデスは超大量生産型産地の典型例として猛進を続けた。
言うまでもないかも知れないが、ペネデスで超大量生産されてきたワインとは、スパークリングワインのカバである。
コストパフォーマンスという一点において、カバは世界各国のトラディショナル製法(シャンパーニュ製法)で造られるスパークリングワインに対して、圧倒的な優位を維持し続けてきた。
また、カベルネ・ソーヴィニヨンなどで造られるインターナショナルスタイルのワインも、カバに比べればマイナーだが、強い勢力を維持してきた。こういったワインも、コスト面ではチリなどと比べても遜色ないレベルのパフォーマンスで知られてきた。
まさに総体としてのペネデスは、人々の「渇き」を安価に癒すための産地として発展してきたのだ。
そして、若かりし頃の筆者は、このようなワインを大量に販売していた。
文字通り、大量に、だ。
安くて美味しい、それだけをクリアしていれば、当時の私にとっては正義だった。