IPAの始まり

まだまだ大変なご時世の中ではありますが、この時勢を乗り越えて更に質を高めて頑張っていこうとしている飲食業界の動きに感化されまして、私事ではありますが、つい最近、自身の店の屋号を変えて心機一転、気合いを入れ直す運びとなりました。


新屋号を【BAR SERVICIA(セルヴィシア)】と言います。


「サービス」と言う言葉の語源であり、「力になる」、「助ける」と言った意味を持つラテン語の「SERVICIAL」から頂いてます。


『皆様の気分を上げ、人生を豊かにする手助けをしたい!』という想いを込めて、この名前にしました。

(ちなみに、スペイン語でビールを意味する「セルベッサ」とも掛けていて、更に自分の名前の「祐」の字とも同じ意味を持たせています。笑)


屋号を変え、さらに仕事に気持ちが入り、気分を上げるためにも、ますます勉強して楽しくお酒を提供して行こう!と気合が入ったところで、今回は気分の上がるビアスタイルの代名詞!【IPA(インディア・ペールエール)】について改めて学び直し、考察していこうと思います。


お酒全般でも言える事だとは思いますが、ビールのスタイルや味わいの一つ一つには様々な文化性や意味性があると思っています。


傍らに常に置いておきたい、馴染む感じのビール。

食事文化や気候風土との調和を図ったビール。

新聞読みながら、ワイワイしながら、しっぽり語り合いながら、etc…。


様々なシーンに合わせたビールが存在していて、その味わいに意味があると思っております。


そんな中、最近のIPAはどんな感じなのか?と言われると、自分的には「派手でアッパーでオシャレで、コレについて語らずには居られない!」って感じです(笑)。


呑んでてとても楽しい「晴れの日ビール」な印象。


呑んでる側も楽しけりゃ、作ってる側も楽しんでるんじゃないかなぁ?とも思って

ます。


「最近の…」という言い方をあえてしましたが、元々IPAとはどんなお酒だったのかご存知でしょうか?


知ってる方も多いと思いますが、改めてご説明させて頂きます。


以前のコラムにも書かせていただきましたが、ビールには「エール」「ラガー」(別枠で「ワイルド」)と言う大きな分類があり、古来より存在していたのが「エールスタイル」のビールです。


エール文化であるイギリスでは、作り方の問題で、昔は濃かったり濁ってたりする色合いのエールがほとんどだった様ですが、400年ほど前に、それまでのエールには無い淡い色合いの画期的なエールが開発されました。それが「ペールエール」と呼ばれるビールです。


「ペール」とは淡いと言う意味で、それまでのエールに比べると、実際にだいぶ淡い印象だったのでしょう。イギリスでペールエールの製法は一斉に広まり、瞬く間に主流な飲み物として位置づけられました。


その後、植民地であるインドにペールエールを輸出する際、ビールが長旅に耐えられず腐らせてしまうと言う問題を解決する為に、輸出用のペールエールにホップを大量投入して、味や香りを強めた物が出来上がりました。


これが後に、イギリス本国でも呑まれて大流行りし、そのスタイルのビールに『IPA(インディア・ペールエール)』という名前が付いたのが起源と言われています。


ちなみに、同時期にドイツのエクスポートビールであるドルトムント・スタイルラガー(ドルトムンター)もインドに輸入されていて、ホップを効かせた濃い味わいのドルトムンターが輸出に向いている、ということを参考にしてIPAは作られたとも言われています。


ちょうど前回のコラムでドルトムンターについて語ったばかりだったので、あえて別の説に関しても記載させてもらいました。歴史って繋がりますね!


最初期のIPAは、イギリス式の落ち着いた緩い印象のペールエールに、ホップの防腐作用を付け加えた程度の物だったので、そこまでホップの味わいや苦味、香りが強くなく、アルコール度数もイギリスエールっぽい低い物が普通でした。


イギリスでも一時は流行ったIPAですが、当時はそこまで大きな特徴がある訳ではなかった為か、次第に他のスタイルのビールに埋もれて忘れられていくようになりました。


時は進んで近代、アメリカでクラフトビール作りが盛んになり始めた頃、造り手達は様々な味わいのビールを造ろうと必死に勉強していました。造り手たちがビールについて調べ学ぶ中、昔の造り方の1つに「保存の為、ホップを多く投入するビアスタイル」IPAと言うものを見つけました。


イギリス含めたヨーロッパのホップは落ち着いているものが多かったのですが、アメリカで栽培されているホップは苦味や香りが強いものが多く、「この強烈なホップ達を大量投入したら面白いんじゃないか?」と造り手は考えました。そうして生み出された物が、私がこの文章の初めに「最近のIPA」という表現をしたビールの始まりです。


本来、防腐作用を求める為の造り方であった物を魔改造しまくったので、当初は邪道とも言われましたが、その強烈な味や香りは呑む人々を驚かせ、1度呑んだら癖になり、瞬く間に大流行!


アメリカクラフトビールの文化発展を加速させ、そして今でも世界的に大人気のビアスタイルとなりました。


私も初めて(最近の)IPAと言う物を呑んだ時、「今までに口にした事の無い液体だ!」と思ったものです。


当時の造り手も同じ事を思ったことでしょう。


本来はあくまでもペールエールの発生系としての立ち位置だったIPAですが、現代においてIPAと言うのもは、魔改造し甲斐が有るその独特の個性のお陰で、大きなビアスタイルの1つとして確立しており、様々な雰囲気や味わいの物が造り出され、ビアスタイルとしてただ一言で「IPA」と表現出来ないぐらい細分化されていっております。


世界的にホップの品種も増えましたし、造り方も日々工夫を凝らされ、革新的な味わいのIPAが多く生まれており、IPAを語るにおいて「何スタイルのIPAなのか?」「どんな雰囲気のIPAなのか?」が重要になってきてると思います。


今回のコラムでは、ホップの品種や細分化されたビアスタイルについては、長くなるので1度置いておきますが、ぜひ今後IPAを呑む際には、「今日出会ったIPA、こんな味で面白かった〜」と酒好き同士で語り合ってみてください(笑)。


最後に、エクスポートビールとして存在していた原初の雰囲気のIPAと、アメリカで流行り始めた当初の、苦味強めでキレのある香りが特徴的なIPA、同じIPAなのに雰囲気の全然違う2銘柄を紹介して終わりたいと思います。


IPAを呑んだら語らずには居られない!!!


さぁーて皆さん、今宵も呑んで語って楽しみましょう!IPAを呑んだらそんな雰囲気になるんだから、絶対楽しいですよ〜!


今回もありがとうございました。



ビール名:グリーンキングIPA

ブルワリー名:グリーンキング

ブルワリー所在地:イングランド

アルコール度数:3.6%

ビアスタイル:India Pale Ale(ブリティッシュスタイルIPA)

カラー:淡色アンバーブラウン

フレーバー:ビターなホップの香りはあれど抑え目、モルトの優しいフレーバー

テイスト:麦芽の旨み、ナッティなコク、優しく広がるビター

コメント:日本の流通がどんどん無くなっていってるブリティッシュスタイルのエールなので、日本でお目にかかるのは結構レアかも…苦かったり香り強いIPAしか知らないと、ビックリするほど優しい呑み口なので逆に驚きます。少し温目の温度でダラダラ呑むのがベスト!


ビール名:Stone IPA

ブルワリー名:Stone

ブルワリー所在地:アメリカ カリフォルニア州サンディエゴ

アルコール度数:6.9%

ビアスタイル:India Pale Ale(ウエストコーストIPA)

カラー:ほんのり濃くて美しい銅色

フレーバー:柑橘のような香りと松のようなホップアロマ

テイスト:ホップの苦味とモルトのバランスの良い旨味、心地好い余韻のある苦味、アフターはドライ。

コメント:アメリカンクラフトビール、アメリカンIPAのパイオニア的存在!造り手本人も当時はこんなに流行ると思わなかったことでしょう。今でも常にアメリカンクラフトビール業界を牽引し続けています。鮮烈な苦味とモルトとのバランスを楽しめます。


<プロフィール>

高橋 祐之介(のすけ)

湯島 BAR SERVICIA(セルヴィシア)店主

1989年生まれの埼玉県幸手市出身

大学時代、千葉県柏市にて初めて飲食業及びバーテンダーの仕事を経験、バーテンダーに強い憧れを抱く…。

初めての就職は建築業でしたが、足立区北千住にて夜な夜なBARを徘徊…BARや酒場の奥深さや存在意義を学ぶ。

湯島にてクラフトビールを扱うBARに出会いそのままそこに就職、パブバーテンダーとして本格始動し、早々に店長職に昇進するも会社が潰れて志半ばで退職…人生最高に悔しくて辛い思いをするがやはり諦め切れず、お客様からの後押しもあり復活を心に誓う。

大型店舗のキッチンや高回転の居酒屋の厨房等で経験を積みながら、虎視眈々と湯島の店を取り戻す方法を模索する日々を送る。

ひょんな事から湯島で再就職し、再就職先のオーナーや関係者に熱意を伝え賛同を集め、そしてついに2018年9月13日、1度追い出された湯島の場所を取り戻す!!!当時からのお客様と大号泣(笑)。

2021年11月27日、コロナ禍の中、屋号をBAR SERVICIA(セルヴィシア)に変更、代表として就任。

現在に至る。


大好きなこの場所(お店)で通算長い事お店を営業させて頂いております。

大好きな空間で大好きなビールとウイスキーをのんびり楽しんでもらいたく常に精進しております。

食べ物ももちろん好きです。居酒屋や大型バルで修行を積んだ経験をこのお店で発揮し、更に美味しいものをご提供するために常に奮闘しております。

湯島を愛し、湯島に愛される努力をし、「界隈で1番従業員が楽しそうに働く店」を自負しております!



<BAR SERVICIA(セルヴィシア)>

ドリンクはビールとウイスキーがメインです

多種様々なスタイルのビール、ウイスキーを取り揃え、来る度に変化のあるラインナップを心掛けてます。


フードはパエリアをオススメしてます!出汁をしっかり吸った米は食事としても美味しいですが、シェアフードとして数人でつつきながらお酒のアテとして食べるのもオススメです。


また、特製ビールソースで煮込んだスペアリブに濃厚とろけるチーズを乗せた「濃厚!チーズビアリブ」もイチオシでお酒が進むこと間違いなしです!!!


最近では「パブでもメシを」をコンセプトにしっかりバランスの取れた食事メニューも充実させていて、近隣のお客様に大変好評頂いております!