このコラムを書いている最中がちょうど3度目の緊急事態宣言真っ只中で、
「飲食店での酒類の提供禁止」
と言う辛いルールが発令されています。
呑みの場でのコミュニケーションが出来ないとは、なんと由々しき事態。それならせめて好きな酒、旨い酒を呑んで気分を上げたい。こんな時こそ気分を落とさず元気を出すために、大好きな銘柄に手を出す時ではないか!
…という事で、自分なりではありますが、なるべく呑み飽きずに馴染んで呑める、スタンダードなタイプのお気に入り国産ビール銘柄を1つ紹介しようと思います。
今回ご紹介するのは、人気実力ともに名高い岩手の老舗ブルワリー、『ベアレン醸造所』の『クラシック』と言う銘柄です。名前からしてクラシカルなこの「ラガータイプビール」についてご紹介致します。
ですがその前に、そもそも「エール」と「ラガー」とは何か?
基礎知識として知っている方も多く居るとは思いますが、おさらいの意味も込めてご説明したいと思います
まず、酒のジャンルに「ビール」と言うものがあります。
そのビールを大きくざっくりタイプ分けすると、「エール」、「ラガー」、「ワイルド(これだけは特殊なので今回説明等は割愛します)」に分けられます。
この3つのタイプの違いは何か?と言うと、酵母の違いです。
エール
「エール」とは、常温下にて活発に発酵を行う酵母を使用して造るビール。発酵期間が比較的短い。多量の炭酸が排出されるため、酵母が最終的に浮いて液面で層を作るので「上面発酵」と呼ばれている(浮いてこない場合もあります)。発酵温度や酵母の特性の関係で香りや味に複雑さやコクが産まれやすく、芳醇で豊かな呑み口やフルーティな雰囲気のものが多い。
日本の大手メーカーの造る「ピルスナースタイルビール」とはだいぶ異なる印象の物が多い為、日本人に驚かれる事がしばしば…。巷で「クラフトビールっぽい!」と言われたりする事があるが、流行りのエールの味わいが華やかなものが多く、これまで呑んできたピルスナーと全く雰囲気が違うため派手な印象として残りやすいのと、国内で造り手も流通も増えたので呑む機会が多くなったと言うだけで、「エール=クラフトビール」では決して無いのでご注意を!
ラガーより簡単な条件で作る事が出来るので、歴史は圧倒的に古く、古来より全世界で様々なエールが造られている。(今と昔では完成品の雰囲気はだいぶ違う様ですが…)
「ペールエール」、「スタウト」、「ヴァイツェン」、「ベルジャンホワイト」辺りは日本の販売店などでも見かけるようになったと思いますが、これらはエールを細かく分類分けしたスタイルの事。よく聞く「IPA(インディア ペール エール)」とはペールエールを起源に発生して造られるようになったスタイルのビールの事で、要するにペールエールをさらに細分化したビアスタイルです。
ビール全体で言えますが、エールの種類も物凄く豊富で、味や香りや色合いや口当たり等など…様々な部分において幅広くて多様です。
ラガー
「ラガー」とは、低温下で発酵する酵母を用いてゆっくり時間をかけて発酵、熟成をして造るビールのこと。
エールでも熟成はしますが、ラガーを造る工程での発酵と熟成は、エールと比較するとだいぶ長い期間に及び、かつ基本的にかなりの低温で行われます。
発祥の地、ドイツのバイエルンでは秋終わりに洞窟内で氷と共に貯蔵熟成し、春に取り出して呑んでいたので、ドイツ語で貯蔵を意味する「ラガー(Lager)」を行うビールということで「ラガー(貯蔵)ビール」と名付けられたのが今の呼び方の原型。
低温熟成による炭酸の落ち着きが理由の一つだと思いますが、発酵熟成が進むと酵母が底に沈み込むので「下面発酵」と呼ばれている。
ゆっくり落ち着いた発酵、低温での熟成、酵母の性質により、口当たり滑らかで、香りも味わいもキレがありマイルドな印象のビールが出来上がる事が多い。
冷却や貯蔵施設等が必要なので設備投資が高くなるが、低温の為に雑菌の繁殖の心配が少なく、醸造工程や醸造過程的にも大量生産が可能。また味や品質の安定も取れるので大資本が生産に参入しやすく、世界の多くの大手ビールメーカーはこのラガータイプのビールを生産していて、世界のビール生産量の大部分もこのラガータイプのビールが占めている。
もれなく、日本の大手ビールメーカーの造るビールのほとんどはこのラガータイプであり、日本大手メーカーのメインのビールのほぼ全てが、チェコ発祥の「ピルスナー」と言われる「ラガーの内の1種類のスタイルのビール」を製造しています。
大手の流通とプロモーションの上手さにより、日本人の多くはピルスナー以外のビールを知らないで過ごしているのが現状ですが、エールというタイプのビールもある訳だし、ラガーにだって多くのスタイルが存在していて、多種多様な味わいや雰囲気を醸し出すラガービールが存在しています。
…と言った所が、「エール」と「ラガー」の簡単な特徴の説明です。簡単な知識を知るだけでも、皆様の中でビールの世界感が広がったのでは無いでしょうか?
ビールの魅力を知って様々なビールに出会う事が出来れば、皆様の呑みライフはもっと豊かになっていくと思います。
美味しくて楽しくて、多様性を感じるビールの世界に少しでも興味を持って貰えたらとても嬉しいです。
以下はお気に入りのラガービール、「ベアレン クラシック」についてご紹介。
ビール名:(ベアレン)クラシック
ブルワリー名:ベアレン醸造所
ブルワリー所在地:岩手県盛岡市
アルコール度数:6%
ビアスタイル:ドルトムンダー
カラー:綺麗に透き通った薄黄金色
テイスト:程よいコクと苦味、高バランス、オールマイティ
容量:330ml
参考小売価格:¥410-(程)
岩手盛岡に拠点を構える『ベアレン醸造所』。
ベアレンとはドイツ語で熊の事で、岩手の大自然と屈強な醸造職人をイメージしてその名前が付けられたのだとか…(ちなみにロゴには渋めな熊と伝統を守るという意味の盾がデザインされています。)
伝統的ドイツビールや、ヨーロッパのビール文化を尊重したスタイルのビールを基本として醸造しています。ビールが生活に浸透しているヨーロッパの方々が毎日呑み飽きない為には、どの様なビールであるべきか?を、すごくちゃんと考えてビール造りしてるなぁ…と言う印象のブルワリーですし、個人的にめちゃくちゃ好きな方向性のビールを造って頂けるブルワリーです。
また、昔から根強いファンが多く、インターネットでボトルビールの定期配送を一般客向けに行っており、SNSでビールの事を調べると、「ベアレンのボトルビール呑んでます!」みないな投稿をかなりよく見かけます。ベアレン独自のオクトーバーフェストも開催していて、特設の特大テントは「本場ミュンヘンのフェスを彷彿とさせる」と評判で、地方だと言う事を忘れさせるぐらいの集客力を発揮してます。
また、このブルワリーが造るレモネードビールの「ラードラー」や、地元リンゴで作る醸造酒「サイダー(シードル)」、地元フルーツを使用した「フルーツビール」もこれまた旨い。
特にこのブルワリーが造る『ラードラー』は、レモネードとビールのバランスが最高で、Alc2.5%のめちゃ軽な呑み口は、夏場のうだる暑さの中呑むと「こんなに旨い液体この世にあったのかぁぁ!」と思うくらい秒でグラスが空になります。樽生で呑めると尚更旨い!!!
ラードラーとは自転車乗り(ライダー)という意味で、「色々あってライダーに呑ませたらライダーに大ウケした!」、「ライダーが呑んでも問題無いアルコール度数と呑み口」と言う名前の由来があるそうです(問題はあるw)。出来上がったビールにレモネードを混ぜた、いわゆるカクテルに近い存在で、フランスでは「パナシェ」って名前だったり、自宅やBARでも簡単に作れるので全世界で親しまれてる呑み方ですが、商品としてボトリングして販売され、手軽に呑むことが出来るのがドイツスタイルならでわです。
このベアレン醸造所のフラッグシップであり、個人的にすごく気に入ってるラガータイプビールが『クラシック』です。
このクラシック、「ドルトムンダー」というスタイルのビールで、ドイツのドルトムントでピルスナー(日本の大手メーカーの基本のビールと同じビアスタイル)をお手本に独自開発されたビアスタイルです。エキス分やアルコールが少し強めで保存性が効き、エキスポート(輸出用)としても名を馳せたこのビアスタイル。
基本の特徴としては…
・色合いはかなり綺麗な薄黄金色。
・ホップのキャラクターを強めない製法なので落ち着いた香り。
・エキス分が強めで基本はコクがありますが、アルコールが高い分、味にドライさを産み、ホップの適度な苦味が全体のバランスを取り、その結果適度なコクでマイルド&ドライなバランスの良い味わいを形成します。発酵時に温度を上げることで発酵を促進させてアルコール度数を高め、味も濃くなり、酒質を常温にも耐えられる状態にする事でエクスポートビールとしても流行しました。
・日本では「エビスビール」がこのスタイルであると言われていて、多くの日本人にも親しみやすい味わいだと思います。
そんなドルトムンダーと言われるスタイルの『ベアレンのクラシック』。
ただでさえ移動に強いビアスタイルなのに、更に国内生産だからなのか?味のクリアさに鮮度の良さを毎度感じます。樽生であればその味わいのポテンシャルに痺れる事間違いなし!
最高バランスの適度なコクと苦味はとっても満足度の高い味わいだと思うのに、味のクリアさからゴクゴク呑めてしまい、満足しながらも、もう一杯、もう二杯とおかわりに手を出してしまう凶悪な旨さで、呑んでいくと満足感の沼にハマれます。
ビールの文化性を重んじるブルワリーの造るビールなだけあり、どんな食事も更に美味しくさせる味わいの『ベアレン クラシック』は、食卓全体をハッピーなものにしてくれる雰囲気を持っています。
<プロフィール>
高橋 祐之介(のすけ)
湯島 ビアバルボラッチョ店主
1989年生まれの埼玉県幸手市出身
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大学時代、千葉県柏市にて初めて飲食業及びバーテンダーの仕事を経験、バーテンダーに強い憧れを抱く…
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初めての就職は建築業でしたが、足立区北千住にて夜な夜なBARを徘徊…BARや酒場の奥深さや存在意義を学ぶ
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湯島にてクラフトビールを扱うBARに出会いそのままそこに就職、パブバーテンダーとして本格始動し、早々に店長職に昇進するも会社が潰れて志半ばで退職…人生最高に悔しくて辛い思いをするがやはり諦め切れず、お客様からの後押しもあり復活を心に誓う
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大型店舗のキッチンや高回転の居酒屋の厨房等で経験を積みながら虎視眈々と湯島の店を取り戻す方法を模索する日々を送る
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ひょんな事から湯島で再就職し、再就職先のオーナーや関係者に熱意を伝え賛同を集め、そしてついに2018年9月13日、1度追い出された湯島の場所を取り戻す!!!当時からのお客様と大号泣(笑)
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そして現在に至る
大好きなこの場所(お店)で通算長い事お店を営業させて頂いております
大好きな空間で大好きなビールとウイスキーをのんびり楽しんでもらいたく常に精進しております
食べ物ももちろん好きです。居酒屋や大型バルで修行を積んだ経験をこのお店で発揮し、更に美味しいものをご提供するために常に奮闘しております
湯島を愛し、湯島に愛される努力をし、「界隈で1番従業員が楽しそうに働く店」を自負しております!
<ビアバルボラッチョ>
ドリンクはビールとウイスキーがメインです
多種様々なスタイルのビール、ウイスキーを取り揃え、来る度に変化のあるラインナップを心掛けてます
フードはパエリアをオススメしてます!出汁をしっかり吸った米は食事としても美味しいですが、シェアフードとして数人でつつきながらお酒のアテとして食べるのもオススメです
また、特製ビールソースで煮込んだスペアリブに濃厚とろけるチーズを乗せた「濃厚!チーズビアリブ」もイチオシでお酒が進むこと間違いなしです!!!
最近では「パブでもメシを」をコンセプトにしっかりバランスの取れた食事メニューも充実させていて、近隣のお客様に大変好評頂いております