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- 再会 <13> アリゴテの覚醒
Benjamin Leroux, Bourgogne Aligoté 2018, ¥4,340 長年のブルゴーニュファンであれば、 アリゴテ という葡萄のことをご存じの方も多いだろう。 ブルゴーニュで栽培されるシャルドネ以外の葡萄品種としては、最も良く知られているアリゴテだが、 その評価は極めて低かった と言える。 もちろん、 ドメーヌ・ドーヴネ (不世出の大天才、マダム・ビーズ・ルロワが率いるドメーヌ)のアリゴテのように、突然変異的に異常な品質に到達したワインはあったものの、アリゴテと言えば「安いけど、薄くて酸っぱくて微妙」というのが定評だった。 DRC (世界で最も高価なワイン群の一つを手がける、ブルゴーニュのトップ・ドメーヌ)の所有者も、(プライベートワイナリーの ドメーヌ・ド・ヴィレーヌ として)ブルゴーニュのマイナーエリア(ブーズロン)でアリゴテに注力してきたりもしたが、それも影響力としてはあまりにもピンポイントだった。 ドーヴネにしても、ドメーヌ・ド・ヴィレーヌにしても、造り手がとにかく有名過ぎたため、アリゴテ自体の評価を上げたというよりは、「 彼らが造ったから、凄いアリゴテになった 」という認識ばかりが先行してしまったのだ。 さて、そんなうだつの上がらない存在だったアリゴテが、有名クラシックカクテルである「 キール 」の原料という立ち位置から、ついに抜け出そうとしていることをご存知だろうか。
- SommeTimes’ Académie <27>(ワイン概論23:オレンジワイン醸造 1)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。今回は 、一般的なロゼワインの醸造フローを学んでいきます。 なお、日本のワイン教育においては、醸造用語としてフランス語を用いるのが今日でも一般的ですが、SommeTimes’ Academieでは、すでに世界の共通語としてフランス語からの置き換えが進んでいる 英語にて表記し、英語が一般的で無いものに限り、フランス語で表記します 。また、醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまでも「一般論の範疇」とご理解ください。 試験後に忘れてしまった知識に意味はありません 。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「 記号 」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「 何を意味するのか 」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。SommeTimes Académieでは、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「 リアル 」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。 SommeTimes’ Viewをしっかりと読み込みながら進めてください 。 前提 現状、 オレンジワインというカテゴリーは正式には認められていません 。小さな原産地呼称制度単位では、明確化される例も出てきていますが、赤ワイン、白ワインのような、大元のカテゴリーとしては成立していないため、 実際には白ワインの一種として扱われています 。 製法 白ワインとオレンジワインを隔てる境界線は曖昧なままです。しかし、あくまでも一般論としてですが、オレンジワインの領域に踏み込むラインは確かに存在します。議論の余地は十分にありますが、重要なポイントを以下にまとめておきます。 1. 葡萄品種 白葡萄 、及び グリ系葡萄 (ピノ・グリなど)を使用している。 2. 果皮浸漬 破砕後に、果汁と果皮(種子や梗が含まれることも)が、 発酵が始まる温度帯で、3日以上接触 している。
- 夏こそ…お燗
こんにちは。ラボンヌターブルの 戸 澤です。 今回はワインではなく日本酒を、それも お 燗のご紹介させて頂きます。 【神亀 純米辛口】 今さら皆様へお伝えすることもない程、その名を馳せている日本酒蔵、埼玉県蓮田にある「 神亀酒造 」。 「神亀」…なんとも良い名前である。 由来はかつて蔵の裏手にあったと言われる「 天神池 」に棲む、 「 神の使いである亀 」に因んだそう。 蔵の歴史が始まったのは嘉永元年(1848年)。 今でこそ日本酒好き(特に燗 酒好き )なら知らない方はいないであろう、確固たる地位を得ている神亀も、現在の名声を得るまでは度重なる苦労があったそう。 質よりも量を重視された昭和40年代、当時はアルコール添加が当たり前の時代にいち早く純米酒作りを手がけ、昭和62年に先代である7代目蔵元 故 小川原 良征 氏が全国で初めて全量純米酒に変更したことで脚光を浴びたのも、蔵の歴史としては有名なエピソードです。 「酒は米から」 という信念を貫き、当時、そして今の世代へと影響を与え続けてきている蔵です。 さて、このお酒を何故ご紹介したのかというと、皆様に「燗 酒 」をもっと飲んで欲しいからです。 寒さの厳しい冬も明け、春から夏へ移ろいでいくこの頃…。 暑くなると、キリッと冷えたお酒が美味しくなります。 しかし夏場は、室内は冷房が効き、冷たい飲み物を摂取することで身体が冷え切り、 代謝が落ち、内蔵の動きが鈍くなり、消化不良、冷えによる倦怠感や夏風邪を引いたりします。 江戸時代には *福岡藩の儒学者 貝原益軒によって発行された『養生訓』にも、同じような記述があります。 *(かいばらえきけん 江戸時代の本草学者、儒学者 ) 『酒は夏月も温るなるべし、冷飲は脾胃を破る』 現代よりも気温は低かったとは言え、夏は暑く今のように冷房設備が無い時代であっても、 夏の時期に燗酒を推奨されていた というのは驚きです。 また、摂取したアルコールは体温に近づくことにより分解が始まるため、冷酒の場合は分解が始まるまでにタイムラグがありますが、燗 酒は体温に近い 、もしくは高い温度になるので、冷酒のように急に酔いが回ることもなく、 悪酔いしづらい というのもメリットです。 特に神亀のような純米酒は、旨味、甘味を舌が最も感じ取りやすい温度帯が40~50度と言われております。 基本的に加糖等はせず*、何も加えず燗 酒 にするので、温度域の違いによる味わいの広がりや様々な表情を、提供者の意図によって出すことも容易です。世界中でも稀な「食中に温めて提供する」数少ない酒であることは、「 お 燗」が世界に誇れる日本の酒文化であると考えております。 *(原酒等は加水、または人によってはスパイスや茶葉等、他の食材を組み合わせることも勿論あります。) ちなみにひとくちに「燗」と言っても温度帯によって様々な名称があります。 ■ 日向 燗 約30 ℃ ■ 人肌 燗 約35 ℃ ■ ぬる 燗 約40 ℃ ■ 上 燗 約45 ℃ ■ 熱 燗 約50 ℃ ■ 飛切 燗 約55 ℃以上 *(店舗では お 燗 番 やってますw) 筆者は基本的に 60 ℃以下で お 燗をつける事はあまりありませんが(適したお酒である事が前提)、 5 ℃単位で名称が変わるのも面白いですね! 燗 酒の歴史 は、奈良時代に始まったとされ、平安時代には貴族、そして一般に広まっていったのは江戸時代中期以降とされております。大衆へと広まったのは、上記に記載した養生訓の影響であるのは容易に想像できます。現代は冷酒のほうが圧倒的に多く飲まれておりますが、江戸の中期では四季を問わず 年中お燗で飲まれていた そうです。 粋な江戸っ子達が 日向 燗で!とか 飛切 燗で!とか細かい注文が飛び交っているのを想像してしまいますが、実際に お 燗つけるのが筆者なら実に嫌ですね(笑)。 また、かの有名な宣教師ルイス・フロストの著書「日本覚書」にも、「ヨーロッパではワインを冷やして飲むが、日本では酒を年中温めている」と記載があり、当時の外国から来た方々には、食中酒を温める事がとても珍しい文化だったのでしょう。 さて、そんな お 燗が冴え渡る神亀は濃厚辛口な、所謂 " The 男酒 " …。 最近の低アルコール、白麹等のクエン酸を使用した軽さや甘酸系のモダンスタイルとは異なり、数年の熟成を経て出荷されることで生まれる「コクと旨味」の、濃醇かつキレのある味わいが特徴です。 使用酵母等の関係で発酵過程にクエン酸などのフレッシュな成分よりコハク酸、乳酸を多く含む「*温旨酸」が形成されるそうです。 名前の通り、温める事で旨味が増す成分が多いので、燗にすることで神亀が美味しくなるが理解出来ます。 *(おんしさん:温める事で旨味が増すコハク酸、乳酸等含む有機酸であり、対象的に冷やす事で美味しくなるリンゴ酸、クエン酸等の有機酸を冷旨酸と呼びます。) 仕込み水には秩父系荒川の伏流水、硬水を使用することにより、ワインで言うところのフルボディな酒質の辛口純米酒を醸しています。 生酒や、季節限定品を除き基本的に数年の熟成を経て出荷されるのも神亀ならではの魅力。 実に個性的な風味、円熟したまろやかな旨味とコク、豊かな味わい。 決して甘みがある訳ではなく、飲んだ瞬間のコク、濃密な旨味が驚く程スッと消える その「キレ」の良さこそが神亀の素晴らしい味わいだと捉えております。 長期熟成に耐えうる酒質、複雑な風味は燗にすることで、その風味をより一層花開かせ、60度を超える温度域に上げたとしてもバランスが崩れることなく、逆に高い温度域に達する事で骨格、旨味が柔らかくなる印象。 スタンダードレンジである神亀 純米などは、個人的には65~70度程度の高温域まで上げて、しっかりとした風味から、ゆっくりと温度を下げ、揮発していくアルコールを落としながら、まろやかになっていくのを楽しむのが好きです。 濃醇な味わいには、海鼠腸(このわた)、カラスミなどの珍味は勿論、猪などの脂をしっかりともった肉に濃いめのタレを合わせた肉料理などは、神亀 純米辛口の熟成香と相まって格別です。 勿論、フレンチ、中華、エスニック等、様々な相性を模索することが出来ます。 私は実際に店舗では、定番のメニューである椎茸、胡桃に乳酸発酵させた米麹を使ったソースに、 70 ℃まで上げきったこのお酒をペアリングでご提供してあります。 香ばしく焼き上がった香りと塩気の聞いた濃厚なソースにこのお酒が抜群に合います。 当店フレンチではありますが LA BONNE TABLEへぜひお燗 を飲みに お越し下さいませ(笑) 夏に飲む お 燗 酒 も最高です。 今夏はお燗 酒 を是非、お楽しみ下さい。 「酒は純米、燗ならなお良し」 *(故 上原浩先生の言葉) ! ■ 神亀酒造 ■ 神亀 純米辛口 ■ 山田錦/五百万石/美山錦 60%精米 ■ アルコール15~16% ■ 酒度 +5~+6 ■ 720ml 1600~1800円、1800ml 3200~3500円 ■ 通年商品 ■ 所在地:埼玉県蓮田市馬込3-7-4 *(左から…神亀純米辛口、神亀ひこ孫、神亀山廃Black、神亀樽酒) 〈ソムリエプロフィール〉 戸 澤 祐耶 / Yuya Tozawa LA BONNE TABLE Manager & Chef Sommelier 1985 年秋田生まれ。 銀座、三軒茶屋などを経て 2015 年より LA BONNE TABLE へ勤務 翌 2016 年より Chef Sommelier となり 2019 年より Manager も兼任。 ソムリエとしてワインを扱いつつノンアルコールペアリングも独自の手法、観点で手掛ける。
- 日本ワインペアリング <1> 巨峰
かねてより非常にリクエストの多かった、 日本ワイン を題材としたペアリング記事の新シリーズをスタートいたします。 まずは、このシリーズをお読みいただくにあたって、ご理解いただきたいことがございますので、最初に述べさせていただきます。少々厳しい意見かも知れませんが、ご容赦くださいませ。 特定の地方や国の料理と、同じ地で生まれるワインの間 には、 切っても切り離せない関係性 が生まれることがあります。これらのペアリングは「 クラシックペアリング 」と呼ばれることも多く、現代に至ってもペアリング理論の基礎を、部分的ではありますが(全てのクラシックペアリングが優れているわけではありません)、確かに担っています。 しかし、これらのクラシックペアリングは、 必ず同じ条件の元に生じます 。それは、 その地のワインが、その地の食文化の中に、何百年もの間、深く根差し続けてきた、という条件 です。 その何百年もの間で、地方の料理と地方のワインが同じテーブルに並び続けた結果として、相互が自然と寄り添うように変化し合い、クラシックペアリングが生まれます。 さて、ここで一つ、確かな疑問が生じます。 日本ワインは、日本の食文化に深く根差してきたのだろうか、と。 答えは、明白にNOです。
- 出会い <12> 若者の感性
Indomiti, “Arga” IGT Garganega 2020 ¥3,800 私もとうに「若手」ではなくなり、すっかりと「中堅」になって久しい。むしろ、ベテランに片足を突っ込み始めたぐらいのタイミングだろうか。年を重ねるにつれ、学ぶ機会よりも教える機会の方が増えてくるのは必然なのだが、どちらかというと学ぶことの方が好きな私にとっては、少々悩ましい問題だ。インプットとアウトプットのバランスを取るのは、とても難しい。 というと、年を重ねるのが辛いように思えてしまうかも知れないが、楽しい部分もたくさんある。特に、若手の台頭にはいつも心が踊らされるのだ。 ワインを扱う業種(ソムリエやショップ店員、インポーターなど)であれば、随分と前からたくさんの後輩や若者たちと接してきたのだが、最近は ワインを造っている人でも、私より若い人がかなり増えてきた 。 彼らのワインを飲むのは本当に 楽しく刺激的 で、もはや趣味と言えるほど、ついついのめり込んでしまう。 今回出会った造り手はまだ30歳にもなっていない、ミレニアル世代の シモーネ・アンブロジーニ 。イタリア国内の様々な地方だけでなく、ブルゴーニュでも学んだ後、地元のヴェネト州でナチュラル・ワインのプロジェクトである「 インドミティ 」を立ち上げた。
- アイデンティティの行方 <ロワール渓谷特集:第三章 >
悲壮感漂うワイン。 カベルネ・フランから生み出される、ロワール渓谷を代表する数々の素晴らしい赤ワインを一言で表すとそうなる。 華やいだスミレの香りと、力強い大地のトーンが交差し、ワイルドとエレガンスを行き来しながら、メンソールのような心地よい余韻へと誘われる。最高のテロワールと、最適な品種と、奥深い伝統が織り成していた確かな 様式美 は、その多くが すでに過去 のものだ。 かつて、葡萄品種とテロワールの統合的特性である「青い」風味を、絶対的な悪と見なした評論家がいた。彼はそういったワインに平然と60~70点代という低スコアを叩きつけて、ボルドーだけでなく、ロワールのカベルネ・フランという伝統をも、根底から否定した。そこまでなら、ただの一意見に過ぎなかったはずだが、真の問題は別のところにあった。自らの感性を信じず、他者の、しかもたった一人の他者の評価を絶対として信じた主体性なき群衆が、意気揚々と非難の声をあげて同調してしまったのだ。まるで、突然手のひらを返すかのように。 世紀の変わり目を迎える頃には、ロワール渓谷の偉大な赤ワインは、すっかり様変わりしていた。 しかし、自らの在り方そのものを否定され、他者の「普通」を押し付けられ、ついにアイデンティティの改ざんに同意してしまったロワール渓谷の人々を責めるべきではないだろう。 彼らにも生活があり、守るべき家族や仲間がいる。 誇りだけでは飯は食えない。 彼らは、残酷で、無慈悲で、あまりにも一方的な仕打ちに耐え忍びながら、雌伏の時を過ごさざるをえなくなったのだ。 いつか世界が、彼らの「らしさ」を再び認めてくれる日が来ることを信じながら。
- ワイン × 映画 「未来は過去を変えている」
ワインを題材にした映画といえば、「モンドヴィーノ Mondovino」、「ボトルドリーム Bottle Shock」などのドキュメンタリータッチの作品や、アカデミー脚色賞を受賞した「サイドウェイ Sideways」を思い浮かべる方は多いと思います。 また、古き佳きモノクロ映画から現代まで、多くの俳優(女優)にシャンパーニュが彩りを添えてきました。 オードリー・ヘップバーンは、モエ・エ・シャンドン(昼下がりの情事)やドン・ペリニョン(おしゃれ泥棒)。ジュリア・ロバーツは、イチゴと共に(プリティ・ウーマン)。ジェームス・ボンドは、ボランジェ(007)。そして、ハンフリー・ボガードはマム(カサブランカ)。「君の瞳に乾杯Here’s looking at you kid.」という台詞はあまりにも有名ですね。 では、日本映画はどうでしょう。「ウスケボーイズ」のようなノンフィクション小説が原作の作品以外は、ワインは登場しても銘柄はほとんど公表されていません。 映画の同時視聴会(zoomトークイベント)で、作品と俳優(女優)に合わせるワインのセレクトを依頼されたのが、ちょうど1年前の4月でした。 映画のプロフェッショナルによる実況解説を聴きながら、ワインを片手に作品を共に鑑賞する贅沢なひと時。 このような時代だから生まれた、新たな「映画とワインの触れ方」です。 オンラインイベントの長所は、全国各地(海外を含む)の参加者と繋がれること。ご好評いただき、イベントでセレクトしたワインは1年間で10銘柄になりました。 今回ご紹介するのは、2021年11月に映画のオフィシャルライターの方と開催したイベントでセレクトした白ワインです。 映画は、2019年11月に公開された「マチネの終わりに」。(原作・平野啓一郎 主演・福山雅治 ヒロイン・石田ゆり子) 舞台は、パリ・セーヌ川沿いの瀟洒(しょうしゃ)なレストラン。主人公の「薪野」と「洋子」の、最初で最後の逢瀬(デジュネ)に寄り添っていた1本の白ワイン。ワインクーラーから、ネックの細長いボトルがのぞいています。 セレクトしたのは、「畑の芸術家」 マルク・テンペ Marc Tempe 氏の限定キュヴェ「 Alliance 2018 」。 また、ペアリングのフードとしてアペタイザー3種 (by Cuveee) を合わせました。 ビオディナミで育てた多種の地ブドウをアッサンブラージュし、フードルで24ヶ月発酵・シュールリー熟成 。 ワイン名の「Alliance アリアンス」は「協力」、「結婚指輪」という意味で、ブドウが仲睦まじくという思いが込められています。 色調は、グリーンを帯びたイエロー。白桃やカリンと紅茶の香り、柑橘系の果実味と柔らかなテクスチャー。 温厚で包み込むようなマルク・テンペさんの人柄を表す味わいは、昼下がりの語らいにふさわしいブラン。 実は、映画の撮影が行われた2018年11月。私はフランスに出張中で、パリでこのシーンの撮影現場に遭遇したのです。そして、滞在中に主人公の二人と同じように食事をしてワイングラスを傾けました。 それだけに、大変思い入れのある作品でした。 また、この年の4月にはワインの造り手マルク・テンペ氏とお逢いしています。この時が11回目の来日で、お嬢様のお名前が「Marie」さんと伺いご縁を感じました。 まさに、「 未来は過去を変えている 」。 主人公「薪野」の台詞であり、この映画のテーマです。 美術だけでなく映画も、ワインも、そして料理もアート(芸術作品)と言われますが、それは人の手間がかけられた「手造り」だから。共通して宿るものは「美」であり、それを観て味わう人の心を美しくします。 時代が移り変わっても、ワインと映画が密接な関係を保ち続けている理由かもしれません。 ステラリマリーとして、今後のイベントについてもリアル、オンライン共にオーダーメイド(手造り)に拘ってまいりたいと思います。 次回、皆様とお目にかかれる日を心待ちにしております。 生産者 : Marc Tempe /マルク・テンペ ワイン名 : Alliance /アリアンス 葡萄品種 : Pinot Blanc /ピノ・ブラン Silvaner/シルヴァネール Chasselas/シャスラ ワインタイプ : 白ワイン 生産国 : France /フランス 生産地 : Alsace /アルザス ヴィンテージ : 2018 インポーター : ディオニー 参考小売価格 : ¥3,100 【テロワール】 アルザス南部の中心、コルマールから7kmほど進んだ南西向きのツェレンヘベルグ村。 降雨量が少なく、乾燥した地域でブドウにしっかりと糖度がのる。 標高は225〜260m、粘土石灰土壌をべースに、ヴォージュ山脈の花崗 岩や黄色みを帯びた石灰の混じる多様な土壌は、様々なブドウ品種に適合し、ミネラルが豊富でふくよかな味わいを生み出す。 【アルザスのヴィオディナミスト】 総面積8haの畑で1993年からビオロジックによる栽培を始め、1996年ビオディナミに転向し、エコセール認証を受けている。 「おいしい畑はかたつむりも知ってるよ。」 化学肥料や農薬をいっさい使わず、芽かきによる収量制限や夏季剪定も行わない。 「テントウ虫が生きたまま出てこられるくらい優しいプレスなんだよ。」 9月に選果しつつ手摘み収穫。 房、茎をつけたまま優しく5〜6時間かけてプレス。(インポーター資料より抜粋) 【シャンパン・アペ Cuveee by eat-link】 スパークリングワインや白ワインにそっと寄り添うアペタイザー。 ホームパーティや大切な人との優雅なひと時に心ときめくプロローグを。シェフソムリエ監修 <ソムリエプロフィール> 秋山 まりえ / Marie Akiyama ステラマリー株式会社 / Stella Marie Co., Ltd. 代表取締役 CEO ステラマリー☆ワイン会主宰 ワインイベントのプロデュース( メーカーズイベント、ペアリングディナー、ウェビナーの開催) レストランコンサルティング、ワインギフトのセレクションなど。 東京都中央区出身。総合商社を退職後、2006年に出逢ったモルドバワインが転機となり資格を取得。J.S.A. ソムリエ、WSET® Advanced Certificate 2011年8月より4年間、ワインバーにてソムリエールとして経験を積む。 2015年7月 ステラマリー株式会社 設立。代表取締役CEOに就任。 2015年9月 第1回ステラマリー☆ワイン会を開催。(次回214回目) 2019年7月「ワイナートWinart」ウェブサイトにて、日本人女性として初のフランス版ミシュランガイド一つ星を獲得した神崎千帆シェフとのパリでの対談(全5回)が連載される。 2021年9月「ワイナートWinart」106号にて、「ワインと人。〜a Story〜」連載開始。現在、108号(2022年4月号)にて掲載中。 ☆ステラマリーは、ワインが繋ぐ一期一会を大切にしております。
- 南アフリカのパイオニアたち <後編>
前編 ではクライン・コンスタンシアを中心にレポートしたが、ワイン産地としての豊かな歴史を誇る南アフリカには、まだまだパイオニアたちがいる。 確かにクライン・コンスタンシアは象徴的な存在ではあるが、それだけでは決して全容は見えない。多様なアイデンティティとスタイルが混在する在り方こそが、南アフリカの「らしさ」なのだ。 Diemersdal, Sauvignon Rosé 2021 1698年にその歴史が始まり、1885年には現在もワイナリーを取り仕切るLouws家の所有となった Diemersdal(ディーマーズダル) は、ケープ州でも最も古い産地の一つであるDurbanville Valleyの象徴的な存在だ。大西洋を流れる寒流の影響を受けた冷涼なテロワールを活かし、緻密でデリケートなワイン造りに心血を注ぐ。 ワイン名は、少しややこしい。ソーヴィニョン・ブランのロゼ(そもそもありえないが)でも、カベルネ・ソーヴィニヨンのロゼでもないが、その両方ではある。 セパージュは93%のソーヴィニヨン・ブラン(白ワイン)に、7%のカベルネ・ソーヴィニヨン(赤ワイン)で構成されている。 白葡萄と黒葡萄を両方使ってロゼを造ることに関しては非常に制限の多いヨーロッパ伝統国に比べ、ニューワールドでは自由な発想でブレンドすることができる。これは、ロゼというカテゴリーにおいては、「違い」というよりも明確な「 アドヴァンテージ 」だ。特に、温暖化によって単一の品種ではロゼとしてのバランスが取りづらくなってきているエリアも多い中、 自由な組み合わせがもたらす恩恵は計り知れない 。 ディーマーズダルのロゼも、その例に漏れず、アルコール濃度を13.39%としっかり抑えめにしながら、フレッシュで清涼感のあるソーヴィニヨン・ブラン由来のアロマと、黒スグリ的なカベルネ・ソーヴィニヨン由来のアロマが絶妙に交わりつつ、味わいには海辺の産地らしいソルティーなタッチが加わる。 テロワールの個性に加えて、発想のセンスも感じられ、品質も高い。 相対的に、価格は非常にリーズナブルだ。 Vergelegen Flagship G.V.B. Red 2012 1700年創業の Vergelegen(フィルハーレヘン) は古い銘醸が今でも数多く残るステレンボッシュにおいても、一際格式高い存在だ。ワイナリー名は南アフリカではそれなりにある「字面通りに読めない」タイプで、日本語表記も現地の発音を聞く限り、正確性に少々欠けるが、それは仕方ないだろう。むしろ、読めないが故に、覚えやすいとも言える。 また、フィルハーレヘンは、環境問題への意識が全体的に高い南アフリカの中でも、リーダー的存在である。特に 生態系の多様性保護に関する取り組み は素晴らしく、侵略的外来種の排除、動物の保護活動、森林の保護活動などに注力している。 セミナーでは2017年のシャルドネもあったのだが、2017年は西ケープで大規模な山火事があった年で、ワインにも残念ながら スモークテイント (煙の影響で、ワインに燻したような味わいが生じてしまう)が感じられた。このワインを、今回のフィルハーレヘンの評価に組み込むのはフェアではないだろう。 しかし、ペアリング目線で見ると、 スモークテイントは必ずしもマイナスではない 。燻したような風味を「特徴」として捉えれば、クリエイティヴなペアリングを生み出すことは可能だ。一度、このようなワインを燻製したハムや鶏肉などと合わせて見ていただきたい。普通のワインでは実現できないような、興味深い世界がそこに広がっていることに、必ず気付くはずだ。 さて、驚くほど素晴らしかったのは「 Flagship G.V.B. Red 2012 」というキュヴェ。ワインの世界で、GとVが並ぶと、「Grand Vin(偉大なワイン)」と解釈されるのが通例だが、南アフリカの場合は、 G rown, V inified and B ottledを意味し、これはつまりドメーヌワインや、エステートワインに相当する言葉となる。 セパージュはカベルネ・ソーヴィニヨンが65%、メルロが21%、カベルネ・フランが5%、プティ・ヴェルドが9%と、典型的なボルドー左岸型となっている。 アルコール濃度は14.52%とパワフルだが、100%新樽のバリック熟成がしっかりとした土台を形成しており、構造に破綻が無く、非常にシームレス。 熟成からくるアーシーなアロマに、ブラックベリーやカシス、ブラックカラントの香りが彩を添える。クローブやシナモン的な甘いスパイスのタッチ、ほのかにスモーキーな風味と、まさにテキストブック的なスタイルだが、印象としては完全なニューワールドタイプというよりも、カリフォルニアとボルドーの中間的な味わいに近い。 この手のワインにはもう飽きた、という御仁は少なからずいらっしゃるとは思うが、多様性が重要なワインの世界において、決して無くなるべきではないスタイルでもあるし、これだけの高い完成度でこのスタイルのワインを造れるということそのものが、フィルハーレヘンの高い技術と、恵まれたテロワールを証明している。 Lanzerac, Pinotage 2019 ステレンボッシュの重要なパイオニアとして、その名が真っ先に挙がることも多いのが、Lanzerac(ランゼラック)。その歴史は1692年にまで遡ることができるのだが、ランゼラックの名を世に知らしめたのは、なんといっても「ピノタージュ」だ。 南アフリカ独自の交配品種であるピノタージュに関して、本記事で詳しく解説をすることはしないが、1957年にランゼラックが南アフリカで初めてピノタージュを植樹してから、この品種は長きに渡って賛否両論の的となってきた。 「高貴な両親から生まれた、ワイルドチャイルド」とも呼ばれるピノタージュにとって、どのスタイルで造ることが正解なのかは、未だに不明だ。 少なくともはっきりしているのは、この葡萄は「適当に」扱うと、とんでもない駄作ワインになってしまうということ。歪な酸とタンニン、独特の焦げたような薫香、強い揮発酸のタッチなど、とにかくバランスが悪いワインになり、好き嫌いがあまりにもはっきりと別れてしまう。かくいう筆者も、低品質なピノタージュは、低品質なマスカット・ベイリーAと同じくらい、苦手だ。 近年はロゼ用の品種として確かなポテンシャルを示し、ナチュラル感の強いワインメイキングとも相性の良さを発揮し始めたピノタージュだが、正統進化が完全に諦められた訳ではない。 その最後の砦こそが、ピノタージュのパイオニアたるランゼラックなのだ。しっかりと収量制限をし、適熟のタイミングを見定め、丁寧な手摘みと選果でクリーンさを高め、部分的にフレンチオークの新樽も取り入れながら、ピノタージュらしい豪快なタッチと、確かな技術を感じる洗練されたテクスチャーが共存する「ファインワイン」へと仕上げている。 このワインが、ピノタージュの一つの重要な指標であることに、異論はない。 パイオニアを知り、今を知る 続々と新たな、しかも、とびっきり優れた造り手が現れる南アフリカで、パイオニアの影が薄くなりがちなのは、仕方の無いことだ。しかし、品質面で見れば、パイオニアたちの実力は、再評価されて然るべきである。 流行りだけを追いかけていても、その産地の真価は決して見えない。歴史があってこその今であり、パイオニアがいてこその、若手なのだ。どちらかに極端に偏ることなく、両方を知ること。その大切さを改めて痛感させてくれた、素晴らしいセミナーだった。
- 魅惑のスリランカタンドリーとペアリング
昨今のオリエンタルカレーや、スパイスカレー人気の高まりもあり、いわゆる「インドカレー屋」は日本全国津々浦々に広がっている。 筆者も無類のインドカレー好きで、良く食べ歩くのだが、今回はインドカレーとは少し違う スリランカカレー の名店に出会った。 東京は足立区、 北千住 にある「 タンブリンカレー&バー 」だ。 北千住駅の西口から出て、左方向を見るとマクドナルドがある。そこを境目に右側の通りと左側の通りには、東京でも指折りのカオスな空間が広がっており、センベロ的な立ち飲み店や、世界各国の様々な専門料理店だけでなく、いわゆる「ピンクなお店」も狭い範囲に多数混在しており、またそれらのお店が絶妙な「場末感」を醸し出しているため、なんとも不思議な空間になっている。 人通りは多く、細かな路地にもお店がびっしりと入っており、なかなかの繁盛エリアだ。 ぶらぶらと歩いて、気になるお店に立ち寄って一杯ひっかけるだけでも、かなり楽しいエリアなので、東京のメジャースポットに飽きた人には、訪問を強くおすすめする。 筆者にとっても、生まれ育った大阪の鶴橋という街の高架下エリアに良く似た雰囲気があるため、妙に落ち着く場所なのだ。 「タンブリンカレー&バー」はそんなカオス街を、荒川区へと向かう南方向に抜け、少し閑静になったエリアにある。
- 再会 <12> 良薬、口に甘し
L.Garnier, Yellow Chartreuse V.E.P. シャルトリューズ というリキュールをご存じだろうか? リキュールの女王 とも称されるこの魔法の液体は、酒の世界における 都市伝説的な存在 でもある。 伝承によれば、 1605年にフランソワ・アンニバル・デストレ なる人物(当時のフランス王、アンリ4世の妾の実兄だったそう)が、カルトジオ会という修道会に、現在のシャルトリューズの元となった手書きのレシピを、「なぜか」渡したことから始まったそうだが、その話が真にシャルトリューズの起源であるという説を確実に裏付けるような証拠は発見(もしくは公開)されていない。 錬金術的な構成となっていたそのレシピには、「 長寿のためのエリクサー 」と書かれていたそうである。 それから130年後の1735年、忘れさられていた謎のレシピがカルトジオ会の本山である グラン・シャルトリューズ に届けられ、1737年には修道士の ジェローム・マウベック によってより洗練されたレシピへと改変された後に、本格的な生産が始まった。当初は販売用ではなかったが、やがて修道士たちが少しずつ売り歩くようになった。 しかし、1793年の フランス革命 によって、修道会があらゆる資産を没収されると、しばらくの紆余曲折を経て、1835年にシャルトリューズの生産はヴォワロンの地へと移ることとなった。(2017年にエグノワールに移った)
- 出会い <9> ワイン界最強のリキュール
B é n é dicte & Stéphane Tissot, Macvin du Jura Rouge “Pinot Noir”. 2018 ¥8,800 Macvin du Jura(マクヴァン・デュ・ジュラ) という飲み物をご存じの方は、どれだけいらっしゃるでしょうか? 聞いたことはある、という方も中にはいらっしゃるとは思いますが、飲んだことがある人は相当少ないと思います。 マクヴァンは、 厳密にいうとワインではありません 。 葡萄を原料にした リキュール です。 原産地呼称制度では、 糖度170g/L以上 で収穫した葡萄の果汁に、 アルコール濃度52%以上 のフランシュ・コンテ産(同じジュラ地方にある産地) オー・ド・ヴィ (*1)を添加して、10ヶ月以上樽熟成をする必要があると定められています。 ちなみに糖度170g/Lというのは 非常に甘い状態 です。
- 歴史を楽しむ
長い新型コロナ禍で外食の機会が減る中で、読書をする時間が増えている方もとても多いと思います。 ワインはやはり気のおけない仲間たちと飲むのが一番美味しいですが、自分も一人飲みがだいぶ増えました。元々読書をしながらお酒を飲むことが多かったので、あまり苦にはなってませんが、早く日常を取り戻したいですね。 というわけで今回はちょっと違う角度から、ワインのご紹介をしたいと思います。 皆様はワインが好きになったきっかけはなんでしょうか。 自分は両親の跡を継いでいるので、自然と好きになりましたが、元々 歴史が大好き でしたのでワインを通じて歴史を調べることがとても楽しく感じます。 壮大な歴史のロマンに想いを馳せながら、長い年月の歴史をもつワインを飲む時が最高に贅沢で楽しい時間です。そして自分の大好きな ポムロール のワインを、歴史を通じてご紹介できたら面白いだろうなと思いまして、今回のテーマは 『歴史を楽しむ』 にしました。 ご存じの通り、ポムロールは ボルドーの偉大な産地 であり、非常に希少性が高いワインが生まれます。 『ペトリュス』 やシンデレラワインと言われた 『ル・パン』 など、非常に高価で神話的なワインが多数生まれています。 あまりにも有名なこの地域のワインを今回あえて取り上げるのは、 ポムロールにまつわる歴史がとても面白いから なのです。 ワインの歴史を語るにはキリスト教の存在が欠かせませんが、御多分に洩れず、ポムロールも キリスト教の影響 がとても強いです。 ワイナリー名を見てみると、実はポムロールには宗教的なワイン名が沢山見受けられます。 レヴァンジル・・・・・福音 ロスピタル・・・・・病院 ドメーヌ・ド・レグリーズ・・・・・教会 ル・ボン・パストゥール・・・・善き司祭 オスピタレ・・・・・ 病院(聖エルサレム騎士団の役割) ペトリュス・・・・・聖ペテロ。天国に渡る最後の鍵をもつ使徒 より間接的な例ですと、トロタノワはtros ennuyeux という言葉が語源で、「とっても耕すのが厄介」という意味になります。 セルタンはポルトガル語に由来し、「砂漠」という意味があります。土壌が極度に痩せていて、作物が育ちにくいところからきています。 ブルゴーニュのシトー派でもそうですが、厳格、勤労をモットーとする修道会は、このようなところを開墾することが修行の一環だったと思われますので、トロタノワやセルタンのような例もあります。 ちなみに、ポムロールは『 ポム(りんご)=種のある果実 』からきています。 痩せた大地に葡萄畑が広がった頃に、このような名前が付けられたのでしょう。 巡礼の宿泊地 スペインにある『Saint-Jacques des Compostella 』( サンチアゴ・デ・コンポステーラの巡礼地 )のことを皆様方はご存じでしょうか。 キリスト教の聖地であり『ローマ』、『エルサレム』と並んで、< 3大巡礼地 >に数えられています。 サンチアゴは9世紀に12使徒の一人である聖ヤコブの遺骸が発見されたとして、大聖堂が建立され、巡礼の地となりました。 当時ポムロールは、この巡礼の途中の 宿泊地 でした。 この地には、 『聖ヨハネ騎士団』<Hospitaliers de Saint-Jean de Jérusalem >が大きく関わっています。 聖ヨハネ騎士団は1023年ごろ、アマルフィ商人がエルサレムの聖ヨハネ修道院の後に病院を兼ねた巡礼宿泊地から始まります。第1回十字軍の後、騎士修道会として当時の教皇から正式な承認を受け、軍事的要素の強い団体となりました。 この騎士団は ホスピタル騎士団 とも呼ばれ、騎士たちは 医療奉仕の義務 があり、 病院や治療も兼ねた宿泊施設を多く運営 していました。 ポムロールにも聖ヨハネ騎士団が運営する宿泊施設があったので、先ほど記載したように、現在のワイナリーに由来するネーミングが多数見受けられます。 ちなみに3大宗教騎士団と言われるものが、 『テンプル騎士団』、『ドイツ騎士団』、 そして 『聖ヨハネ騎士団』 です。 テンプル騎士団は20年前の映画ですが、ダン・ブラウン原作の『ダヴィンチコード』で名前が多く取り上げられたのが思い出されます。 テンプル騎士団は 最古の銀行システム を作り上げ、王侯貴族相手に取引をして国際的銀行として莫大な富を築き上げました。しかし14世紀初頭その富の集中に目を向けたフランス王フィリップ4世に異端扱いをされ、一斉弾圧が行われました。その日が10月13日の金曜日であり、あの13日の金曜日の由来とも言われています。 その異端審問の認可をした法王はクレメンス5世。 初代アヴィニョンの教皇 (アヴィニョン捕囚)であり、シャトーヌフ・デュ・パープ(*)の名前の由来の方です。もともとボルドー大司教でしたので、ボルドーのペサック・レオニャンの素晴らしいワイナリー『パプ・クレマン』の由来でもあります。 (*)パプは法王を意味します。シャトーヌフは新しい城。クレメンス5世の後任のヨハネ22世がアヴィニョンに住居を兼ねた要塞を作り上げました。 フィリップ4世によるテンプル騎士団への弾圧により、その資産は聖ヨハネ騎士団へと移行されます。シャトーヌフ・デュ・パープの畑も元々はテンプル騎士団の持ち物が多く、ヨハネ22世はカオールから大勢の醸造家を移住させ、ワイン作りを奨励させたと言います。 マルタ騎士団 聖ヨハネ騎士団に話を戻します。 テンプル騎士団亡き後、聖ヨハネ騎士団はイスラム教徒と戦う唯一の騎士修道会となりましたが、16世紀にオスマン帝国の来襲を受け、 マルタ島 に本拠地を移しました。この頃から、 『マルタ騎士団』 と呼ばれるようになります。 マルタ島でもオスマン帝国との闘いは繰り広げられ、オスマン帝国に初めての敗戦をもたらしたマルタ包囲戦やレパントの海戦での勝利に、マルタ騎士団は多くの重要な役割を果たしました。 ちなみにこのレパントの戦いに ドンキホーテ の作者、 ミゲル・デ・セルヴァンテス が参加しています。ドンキホーテは、この戦いで捕虜になった体験から生まれた作品です。 その後の宗教改革やナポレオン・ボナパルトの影響により、その力は失われて行きましたが、 1822年のヴェローナ会議で承認され、『領土なき国家』として今も活動しています。 現在の正式名称は『エルサレム、ロードス島およびマルタにおける聖ヨハネ主権軍事病院騎士修道会』であり、国際慈善団体として活動しています。 マルタ十字 ポムロールではワイナリーの紋章に「正十字」がとっても多いのに気付かされます。 これは『マルタ十字』と呼ばれるもので、聖エルサレム騎士団の紋章です。 4つのVの形が組み合わされ、8つの角を持ちます。 これは騎士道における8つの美徳を意味します。 1忠誠心 2敬 虔 3率直 4勇敢 5名誉 6死を恐れない 7弱者への庇護 8教会への敬意 ドメーヌ・ド・レグリーズ ワイン:Domaine de l’Eglise ドメーヌ・ド・レグリーズ 産地:Bordeaux Pomerol 地区 品種:Merlot 95% Cabernet Franc 5% 輸入元:多数 今回はJALUX 価格:約7,000円 今回ご紹介する『ドメーヌ・ド・レグリーズ』のラベルは、まさしく『マルタ十字です』 フランス語で教会を意味する『レグリーズ』の名をもつこのシャトーは、1589年設立のワイナリーで、ポムロールでも歴史が一番古く、かつてはハンセン病患者を受け入れていた病院であったと言われています。 もちろん、聖エルサレム騎士団が作り上げた病院です。 現在はカステジャ家が所有し、7ヘクタールの畑から約2500ケースのワインが作られています。 土壌は粘土質で表面を砂利が覆っており、やや砂質。またクラス・ド・フェールと呼ばれる鉄の酸化物が土壌に含まれており、ワインに力強さを与えています。 ここのワインは他の年も含めて、ミディアムボディ。 色は濃くなく、繊細でしなやかなワイン。若いうちから楽しめて、長期熟成にも向いていて、ヴィンテージから20年前後がベストに思えます。 重心も軽く、複雑なブーケがとても楽しめます。 値段もこの地にしては抑えられていて、クオリティを考えるととてもお買い得です。 2011年ヴィンテージは、少しオレンジがかったガーネットの色調。やはり、この地域としては色が濃くない。 プルーン、カカオ、クローヴ、シナモンの香りから、スワリングするとアッサムティー、シガー、ドライセージ、トリュフの香りが出始める。 ミディアムボディで滑らか。適度な酸があり品がある。まだ細やかなタンニンを感じるが、それが溶け込んだ時がピークになる。余韻は9秒。 2011年は古典的な存在感が魅力のヴィンテージなので、『仔牛のヒレ肉のソテー』、『牛頬の赤ワイン煮込み ポルトソース』など、フレンチクラシックの料理が合うでしょう。 北京ダックや、焼き肉のハラミなども合いそうです。 あまりにも王道すぎる地域のワインですので、皆様には驚きのある味わいのワインではありませんが、やはり王道の風格を感じられます。いつ飲んでも安心できる素晴らしいクオリティで、渋谷にある当店でも大勢の方に愛されています。騎士道における8つの美徳が込められているワインなのかもしれません。 ポムロールがワイン産地として発展していった歴史はまた別の機会にさせて頂くとしまして、今回はワインを通じて歴史を楽しんでもらう記事にさせていただきました。 一つのワイン産地でこれだけの歴史が詰まっているのは、とても興味深いことなのではないでしょうか。 <ソムリエプロフィール> 加藤 重信 IZAKAYA VIN 代表 家族の影響で幼少の頃よりワイン文化に触れ、1999年にフランスに滞在。 毎日のようにワイナリーをめぐる。 渋谷で唯一のシャンパンバーや恵比寿にワインバーを立ち上げ、現在はIZAKAYA VINの代表に就任。











