Weingut Keller, Riesling “von der Fels” 2021. ¥9,000
嬉しさのあまり、筆者が30回は観たであろう映画のタイトルをそのままつけてしまったが、ドイツの真の王者であるヴァイングート・ケラーと、このワインにまつわるストーリーを表現するのに、これ以上のキャッチコピーは思い浮かばない。
もう長い間、日本市場から実質的に姿を消していたケラーは、我々に極めて重要な教訓を与えてくれた。
アップデートを怠ると、気づいた時には手遅れになっている、と。
今でこそ、ワイン業界関係者もワイン消費者も世代交代が進み、『ドイツワイン=甘い』、あるいは『やっぱりワインは辛口じゃないと!』(筆者は「辛口マッチョ信仰」と呼んでいる)といった古い考えは消滅寸前まで追いやられているが、この固定概念こそが、日本のワイン市場がドイツのトップワイン争奪戦に完全敗北した、最大の原因でもある。
それは、今から10年以上も前のこと。
当時すでに、明確に辛口路線へと力強く踏み切っていたドイツのリースリングは、ニューヨーク、ロンドンなどの最先端市場で、その驚異的な品質がすぐに認められ、熾烈な争奪戦が繰り広げられていた。
新時代のドイツワインに、数多くのソムリエやワインショップのトップ・プロフェッショナルたちが飛びつき、熱狂的に迎え入れたのだ。
同じ頃、日本市場は固定概念に支配されたまま、本来その変化を敏感に察知して、フラットな目線から正しく評価すべき立場にあった人たちの多くが、然るべきアップデートを怠り、古い常識に縛られ続けた結果、一部の熱心なインポーターの懸命な努力も虚しく、我々は敗北した。
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