オーストリアの首都ウィーンにて、2年に一度開催される大展示会VieVinumに参加する前日、ウィーンから車で1時間ほどのアイゼンシュタットまで足を運び、Karakterreという別の展示会に参加した。
日本での知名度はほとんど無いが、Karakterreは中央〜東ヨーロッパの国々、そしてオーガニック、ビオディナミ、ナチュラルというカテゴリーに属するワイナリーにフォーカスした極めてユニークな展示会として知られている。
2011年にスタートしたKarakterreは、アイゼンシュタットで開催され続けてきたが、2022年にはNew Yorkへと初上陸し、伝統あるロックフェラーセンターにて開催された。
第13度目のKarkterreとなる今回は2日間のイベントとなり、初日と2日目で出展者が総入れ替えされるという仕組み。
非常に残念なことに、スケジュールの都合上、2日目しか参加できなかったが、オーストリア、ドイツ、スロベニア以外の国々に焦点を当てて、テイスティングを繰り返した。
1,000名近い参加者で溢れ返る会場の熱気に包まれながら、充実した取材を行うことができたため、特集記事としてレポートさせていただく。
今回紹介するワイナリーが拠点を置く国々は、ハンガリー、スロヴァキア、チェコ、クロアチア、ルーマニア、そしてセルビア。
いずれの国も、日本ではまだまだ馴染みの薄いワイン産出国と言える。
Hungary
Vaskapu Kastély
ハンガリー南部のペーチュに拠点を置くVaskapu Kastélyは、2018年に地品種が多く残された2.5haの葡萄畑と古いセラーを買い取ることで始まったワイナリー。
30年近く、フランス・アルザス出身の夫婦に管理されてきた葡萄畑は、すぐさまビオディナミへと転換し、人為的介入を極力避けたワイン造りを行うようになった。
このエリアの気候は準地中海性気候となり、基本的にはマイルドな気温となるが、ダヌーブ河からの冷風と山によるシェルター効果によって、昼夜の寒暖差が大きくなるため、長く健全な生育期間を獲得できる。
土壌は火山岩を母岩に、石灰質を非常に多く含むレス、粘土、ローム土壌が主体。Vaskapuのワインに一貫して緻密なミネラリティが宿る大きな要因となっているのは間違いないだろう。
地品種を主体とした混植のKert White 2023や、元々葡萄畑に植っていたカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローの強い個性を混植で和らげたKert Cuvée 2022なども興味深かったが、白眉は2種の赤ワイン。
Kékfrankos 2022は、ケークフランコシュ(ブラウフレンキッシュ)100%。やや高めの揮発酸が見受けられるものの、11.5%という軽やかな体躯は抜群にしなやかなテクスチャーを演出し、フレッシュ感の際立つ果実味、緻密なミネラリティーも非常に魅力的。
Kadarka 2022は、地品種のカダルカ100%。濃密だが軽やかなアロマ、スパイス風味がアクセントとなった果実味、バランス感に極めて優れた酸、充実したミッドパレット、緻密なミネラルの余韻。優れた地品種だからこそなし得る、個性と品質が両立された、見事としか言いようの無い大傑作ワイン。
Peter Nagyváradi
中央ヨーロッパ最大の湖に面したバラトンは、トカイ一強となってきたハンガリーに、多様性の扉を開いた重要な産地として認知度が高まりつつある。
ハンガリー西部に位置するバラトンは、歴史的な文化圏としても、東部のトカイとは異なり、むしろスティリア(オーストリア側とスロベニア側を合わせて)に近しいものがある。
バラトン湖がもたらすレイク・エフェクトによって、安定したマイクロ気候を得つつ、玄武岩や石灰を含む火山性土壌が、この地のワインに特有な爽やかさをもたらす。
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