甘口ワインだけでフレンチのコースを通してみた!

こんにちはRestaurant Re:の苅田です。


今回は少し趣向を変えて、甘口ワインだけでフレンチのコースを通してみた!

こんな〇ouTubeのような少し実験型の記事にしてみようかと思います。


なんでこんなことをやろうと思ったかというと。以前、フランス、ボルドーにある甘口ワインの聖地ソーテルヌ(*1)の有名な作り手(どこのシャトーだったか忘れてしまったのですが)のオーナーの記事で、「食文化の変容によって甘口は消費量が減りつつあるが、ソーテルヌはダークチョコレート以外何でもあう!」と言っていたのが印象的で、その時は「コマーシャル的に言っているのでは?」と思ったものですが、それから試すことなく何年も時が過ぎ。


そもそも、多くのレストランでペアリングがある現代。甘口1本でコースを通す人もいないだろうし、それでも、甘口をペアリングの流れの中で有効に使うという可能性を考えると、やってみても面白いだろうと始まったわけです。


せっかくなので、クラシックなソーテルヌと最近よくデザートワイン代わりにつかう甘口の日本酒を糖度別で2本、合計3本で検証してみます。あくまで料理を合わせるということではなく、通常のコースにどんな形であっていくかを検証するスタイルです。



お酒は以下の通りになります。

①日本酒1  長野県 伴野酒造 Beau Michelle 9%  半甘口

アルコール低めでお米の甘みと酸味をしっかり引き出し、甘酸っぱい飲み口は日本酒嫌いキラーとして当店でも活躍中。


②日本酒2  長野県 伴野酒造 Beau Michelle 11%  極甘口

➀のお酒を貴醸酒(*2)にして、しっかり甘口に仕上げたタイプ、アルコールが少し高く、濃厚な甘みと生酛づくりから複雑身がある。


③ワイン  フランス ボルドー地区 ソーテルヌ Chateau Coutet 2001年 14% 極甘口

貴腐ワインの代表格 20年近くの熟成を経てしっかりとした甘さと熟成感、両方味わえます。

左から順に①〜③


それぞれのお酒の詳細は最後に書かせていただきますので、ご興味がある方はそちらも合わせて読んでください。


さてコースは私が勤めております、東京中目黒【Restaurant Re】。日本の食材や食文化をフレンチの技法で再発見することをコンセプトにコースを提供しております。それでは参りましょう。私の感覚で相性を◎〇△×で表現しておりますので、ご参考までに。


アミューズ フォアグラのテリーヌ 生八つ橋風

フォアグラとリンゴとスパイスという組み合わせ。下に自家製の生八つ橋の皮、シナモンではなくティムールペッパーというフルーティーなネパールの胡椒を練りこんだもの。その上にリンゴのソース、フォアグラのテリーヌ、リンゴのカットと山椒のフタバと組み合わせ。フォアグラの上品な脂は甘口とよく合わせます。さっそく好結果になりそうです。


① 〇 さわやかなリンゴの感じにマッチ。フォアグラには少し弱い印象。

② 〇 リンゴよりフォアグラの深みとしっかりした甘みがマッチ。

③ ◎ フォアグラの脂とマッチかつ、食事のスパイス感がソーテルヌの熟成したフレーバーともGOOD!



前菜 三陸産ムールマリニエール 柚子風味のノーザンルビーのソテー

三陸産の大粒のムール貝を白ワイン蒸しに、クチナシの実で色と香りをつけ、柚子でソテーしたノーザンルビー(ピンクのジャガイモ)と合わせてさっぱりと。スープもおいしい一品。


① ◎ 爽やかな酸味で切れ味よく、優しい甘さが柚子の風味を増長してくれる。

② ✖️ 甘みが強く食事の風味をマスキングしてしまっている印象。

③ ◎ ➀と同じく柚子の風味と増長させつつ、海のミネラル感やクチナシの実の風味が熟成したソーテルヌと意外とマッチ。



前菜 紅富士サーモンの炙り 梨とフェンネルのサラダ 落花生のレムラードソース

富士山の伏流水で育てたブランド鱒の炙り、さっぱりした和梨とフェンネルのサラダ、ローストした落花生を使ったレムラードソースが適度なコクを与える。


① ◎ 適度な酸味が全体的にマッチし、落花生と合わせると南部せんべいのようなおいしさに。

② △ 合わなくはないけど後半甘さが強すぎる印象。

③ 〇 全体的には➀のほうがあっていたが、ローストした落花生のソースとは抜群で、ワインの熟成感からくるナッツ感と相まってデザートのようにも感じた。



温菜 リードヴォーのフリカッセ グリーンマスタードと水晶文旦のソース

ようやくお肉が出てきました!仔牛の柔らかい胸腺肉をクリーム煮にして、水晶文旦とハーブの風味の聞いたマスタードで酸味を感じる仕立てに。


① 〇 やはり柑橘と愛称がいいようです。文旦の風味ととてもマッチ。 

② ◎ お肉自体とマスタードソースのバランスがいい。それ単体がソースのようなイメージ、ミルキーさが増して、文旦味のハイチュウのような味わいに。

③ ◎ 文旦の柑橘フレーバーが少しスパイスを入れたオレンジマーマレードのような味わいになり、マスタードの酸味が熟成感とマッチ。



魚料理 鹿児島県産コモンハタのポワレ サフラン風味ののっぺ汁ソース ととまめのアクセント

白身魚でもうまみのあるコモンハタを焼いて、新潟ののっぺ汁をイメージしたソース。サフランで香りをつけた魚介のスープに銀杏、インゲン、黄色ニンジンなどをこまかく切って、いくらに火を入れて食べるととまめと紫蘇のスプラウトをアクセントに。


① 〇 適度な酸味と甘さが全体の味わいに同調して、香り物をブーストしてくれる印象があります。今回は紫蘇のフレーバーが立っていました。

② ✖️ 甘さがオーバーになってしまう。

③ △ 悪くはないが、後半ソーテルヌが勝ってしまう。



メイン まるみ豚のフィレのロースト 柚子胡椒ガストリックソース 栗とかぼちゃのピュレ

柔らかくローストした、九州宮崎のまるみ豚のフィレ。酸味を効かせた柚子胡椒風味のお肉の出汁のソースに、濃厚さのある栗とかぼちゃを使ったピュレ。ブラックオリーブを乾燥させてパウダー状にし、一緒にソテーした赤チコリと春菊、ジロール茸が苦みとうまみを添えます。


① 〇 お肉単体やお野菜のソテーとは悪くないが、ソースや栗のピュレなどのパワーに負けてしまう。

② 〇 かぼちゃと栗のピュレの濃厚さにはマッチするが、お肉や野菜の部分とは味わいが強すぎるかもしれない。

③ ◎ お肉単体とも相性がいいし。ガストリックソースやカボチャピュレには適度な甘さと複雑味がコクをあたえ、きのこともワインの熟成感がちょうどいい。



デザート サツマイモのミルフィーユ たき火仕立て

ミルフィーユとはMille=千、Feuille=葉っぱという意味。薄くスライスしたサツマイモのチップを落葉千枚に見立てた、たき火をイメージしたミルフィーユ。火の形を摸したキャラメルとチョコレートのエスプーマの中には洋ナシのコンポート。アイスはたき火のようなスモーキーな香りの京番茶をつかったアイス。ここに洋ナシの割合が50%を超えるカルヴァドス・ドンフロンテを目の前でフランベして香りと一緒に召し上がっていただきます。


① 〇 控え目な甘さが全体をすっきりさせてくれる。アイスやエスプーマに溶けて寄り添う印象。

② ◎ ようやく本領発揮、しっかりした甘さがデザートにコクをあたえる。

③ ◎ スモーキーな感じと熟成感がよく合い、複雑さをきわだせてくれる高い満足感。


【総括】

さて、終了です。全体の印象としてはほとんどのお料理とはNGと思うものはありませんでしたが、繊細な魚料理は難しい印象でした。ここは、甘さを控えたほうよさそうです。

お酒の種類では特にソーテルヌの受け幅は広く。あながち先の(有名シャトーオーナーの)セリフは、コマーシャルではなかったことが証明されました。特に熟成していたのがまた、よかったかもしれません。少しまとめます。


ⅰお料理の味わい、濃度とワインの甘さのレベルを合わせることで幅広い相性を模索できる。


ⅱⅰを踏まえたうえで、柑橘のフレーバーや強いハーブの香りと甘みは相性がよく引き立たせることができる。


ⅲ 熟成したお酒を使うと、料理に含まれるスパイス香、メイラード香、スモーク香などと同調しそこに甘みが加わるのでより複雑なペアリングとなる。


ⅳ濃厚な甘さのお酒は食事と合わせるのが難しいが、しっかりはまると足し算や引き算ではなく掛け算のような新しい味わいを作り出すこともできる。


注意事項甘口は少量での満足度が高いので量があまり多く飲めませんでした。これはアルコール度数の強弱よりも、甘みの濃厚さが重要なようです。逆をいえば、たくさん飲めない人を少量のアルコールで満足させることができる武器ともなりえます。


ワインを飲みなれてない人や歴が浅い人はおのずと、レストランでも甘いお酒を最初や早い段階でたのむ傾向があるように思います。


コース前半の繊細なお料理の時に、とにかく重い赤!濃くて渋いやつ!と注文されると、料理と合わせるなら最初は白やロゼ、オレンジワイン、日本酒でもいいし、赤しか飲まれないなら軽めのものを先に召し上がって後から重いワインをいかがでしょうか?などとソムリエは勧めると思いますが。


最初から甘口と言われた時もおなじような感じで、なるべく甘さが控え目のものを出そうと、ほのかに残糖があるリースリングなどで対応していました。しかし今回のことで、甘口のお酒が結構受け幅の広いことが実感でき、なんだったら、甘口だけでペアリングが可能なのではないかと思ってしまいました。(多分やりませんけど笑)


私は意地悪なので、ペアリングをお出しする際、ワインを先にだして、お客様がこれあうのかな?という顔から料理と飲んで、すごくいい!という顔に変わるのを見るのがすきです(笑)


ペアリングを考える際、「安定性、意外性、ストーリー性、メッセージ性」などを意識してチョイスしますが、デザートでないタイミングでの甘口のお酒、お客様を驚かせる武器になりそうです。


濃いめの味付けになりがちなご自宅でのご飯にも(うちだけかもしれませんが、、、)甘口のお酒の出番は意外と多いかもしれません。ワインは苦手だといっていたお子様がおいしいと言って一緒に飲んでくれるかもしれませんよ?ぜひ皆様お試しくださいませ!



【ワイン、日本酒詳細】

生産者:伴野酒造

酒名: Beau Michelle/ボーミシェル

品種:――――

タイプ:半甘口

アルコール度数:9%

生産国:Japan /日本

生産地:長野県佐久市

ヴィンテージ:(2019年)表記なし

参考価格:¥1,100(500ml)

創業明治34年の老舗酒屋、日本酒本来のうまみを表現することにこだわり、穏やかな味わいの「澤乃花」という日本酒が主力。このボーミシェルはもろみに音楽を聞かせながら(そうすると味わいがまろやかになるのだそう)仕込み9%の低アルコールの甘酸っぱい日本酒。香りはお米と和梨のようなさわやかな香り。飲むとマスカットのような軽やかなフルーツ感と和梨の風味、甘さと酸味の軽快なバランスが素晴らしくキレもいい。日本酒が苦手という人キラーの1本!


生産者:伴野酒造

酒名: Beau Michelle BLISS/ボーミシェル ブリス

品種:――――

タイプ:極甘口

アルコール度数:11%

生産国:Japan /日本

生産地:長野県佐久市

ヴィンテージ:2019年

参考価格:¥2,500(500ml)

➀のボーミシェルの貴醸酒バージョン、ヨーグルトやはちみつ思わせる香り、11%とは思えないくらいのとろみのある口当たり飲みごたえ。ほのかな柑橘の味わい、濃厚な甘さ。

➀に比べてかなり濃厚でアフターまで甘さがしっかり残る。ロックやソーダ割もいいかもしれない。


生産者:Château Coutet/シャトー クーテ

ワイン名: Château Coutet/シャトー クーテ

品種:セミヨン ソーヴィニヨンブラン

タイプ:極甘口 白

アルコール度数:14%

生産国:France/フランス

生産地:Sauternes(Barsac)/ソーテルヌ(バルザック)

ヴィンテージ:2001年

参考価格:¥5,800(350ml)

インポーター:フィラデス

購入したのが以前なのでお値段は参考までに、説明不要のソーテルヌ1級シャトー。ソーテルヌを名乗れるバルザック村の代表的な貴腐ワイン。香りは、コンポートにしたオレンジやスパイス、バニラやナッツはちみつと複雑な香り、味わいもしっかりしたあまさながら、酸味もしっかりありバランスがよく、ローストしてキャラメリゼしたヘーゼルナッツの香りがアフターに残る。



(*1)ソーテルヌ:世界三大貴腐ワイン(極甘口ワイン)の一つ。セミヨンを主体に、ソーヴィニヨン・ブランとミュスカデルがブレンドされる。長期熟成能力も非常に高く、熟成することによってやや甘みが和らぎ、ナッティーな熟成香と、蜂蜜のニュアンスが強まる。最も有名なソーテルヌは、シャトー・ディケム。


(*2)貴醸酒:日本酒を作る際、通常をお水を入れる工程で水の代わりにお酒を入れることで、アルコールに変わるはずだった、お米の糖分を残し甘さを残す日本酒の製法。「再醸仕込み」「醸醸」「三塁醸酒」などの別名がある。



<ソムリエプロフィール>

苅田 知昭 / Tomoaki Karita

Restaurant Re:

支配人兼シェフソムリエ

1982年栃木県日光生まれ。

臨床心理学を専攻するものの大学時代のアルバイト先の研修旅行でジュヴレシャンベルタンのドメーヌに連れていかれワインをはじめとした飲食、飲料の虜に。株式会社シャノアールにてコーヒー業界から飲食に入るが、カフェインに極端に弱いことが発覚しワインの道へ。イタリアンバル、カフェ、パティスリー、ビストロと様々な業態の立ち上げ。飲料を担当。

飲食以外のジャンルを経験する為、株式会社KDDIの常駐営業として人材育成を担当後、中目黒cuisine francaise NARITA YUTAKA 支配人兼シェフソムリエとして飲食業界に復帰。

現Restaurant Re: 支配人兼シェフソムリエ 。


2018年 JSA シニアソムリエ 取得

営業の傍ら、毎月、若手ソムリエや飲食人、インポーターを集めた勉強会を開催。近年はワインだけでなく、日本酒や焼酎の酒蔵の方も招き、情報提供、普及に尽力している。


<Restaurant Re:>

東京中目黒、目黒川沿いにあるフレンチレストラン。八重桜の季節には満開の桜を見ながら食事を楽しむこともできる。

日本各地の和の食材を使い、昔ながらの食材や地方の食文化が再発見できるフレンチ。


シャンパーニュやブルゴーニュのボトルワインが充実していながら世界各国の豊富なグラスワインの数は都内屈指。ペアリングではワインはもちろん、日本酒、焼酎、紹興酒と幅の広さも定評がある。