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- オーストリアのグリーン・ハート シュタイヤーマルクを歩く <オーストリア特集:後編>
オーストリア南部の シュタイヤーマルク は、まだ「知られざる産地」と表現した方がいいだろうか。この産地の特徴は、「ナチュラル」「ミネラリー」そして「フルーティ」な、世界に類を見ないスタイルのソーヴィニヨン・ブランだ。5月に当産地協会のツアーに参加した内容をここではレポートしたい。 セップ・ムスター、アンドレアス・ツェッペ、ヴェルリッチ、シュトロマイヤー 。 シュタイヤーマルクは、一部で熱狂的なファンを持つ ナチュラルワインの生産者 たちが本拠としている産地だ。 しかし、ナチュラルワインの聖地だ、という理解で終わっていないか? シュタイヤーマルクとはそもそもどのような産地なのか 、考えてみたことはあるだろうか? オーストリアを代表する品種、 グリューナー・フェルトリーナーがほぼ存在しない産地 、シュタイヤーマルク。今回当地のワイン協会主催のツアーに参加し、その独自性と面白さに改めて驚かされることとなった。オーストリア編後半の本稿では、シュタイヤーマルクという産地の特徴に改めて目を向けてみたい。ナチュラルワインのイメージに覆い隠された、その特異性や多様性が浮かび上がってくるはずだ。
- 出会い <17> ブルゴーニュ味のワイン
Racines Wine, Chardonnay “Sanford & Benedict Vyd.” 2018. ¥16,000 ブルゴーニュが高い。いくらなんでも高過ぎる。 ワインファンを大いに悩ませるこの問題は、実に深刻だ。 特に、新しくワインの魅力に目覚めた人たちにとって、世界最高峰のクラシックワインを体験するためのハードルがとてつもなく高くなってしまったという現実は、非常に厳しいものだ。 それなのに、 先輩たちは口を揃えて「クラシックを学べ」と言う 。 よほどの経済力か、稼ぎのほとんどをワインに捧げるほどの覚悟、もしくは、ごく僅かな幸運に恵まれた人しか入れない特殊な環境やグループにでも属していない限り実現不可能な「指導」など、もはや ただの理不尽 でしかない。 それに、ブルゴーニュにしても、ボルドーにしても、 気候変動の影響で「クラシック」な味わいは、すっかり迷子 になっている。 例えば2018年ヴィンテージのブルゴーニュに大枚を叩いてその味わいを体験したとしても、それはクラシックワインの体験などとは到底言えないだろう。(例外的に素晴らしいワインを造った生産者もいるが。)
- 日本ワインペアリング <4> マスカット・ベイリーA
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第四回となる今回は、日本発祥のハイブリッド品種である 「マスカット・ベイリーA」 を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 マスカット・ベイリーA(以降、 MBA と表記)は、 川上善兵衛氏 によって、アメリカ系葡萄品種の ベイリー種 、そして、フランスやイタリアで主に生食用の葡萄として栽培されていたヴィニフェラの一種である ミュスカ・ド・ハンブール (イタリア語ではモスカート・ディ・アンブルゴ、英語ではブラック・マスカット)の交配品種として、1927年に開発されました。 日本では、 「ベーリーA」と表記される方がより一般的 で、「ベリーA」や稀にですが「ベーリA」という表記も見かけます。しかし、親品種であるベイリー種の綴りが「Bailey」であることから、 「ベイリーA」と表記するのが最も正確 (*)でしょう。 *国際的な葡萄登録機関であるO.I.Vには同義語として、ベイリーA、ベリーA、ベーリーA、ベーリAという四種類の呼称も一応登録されているので、(なぜ登録したのかという疑問はさておき)仮にベリーAと表記しても間違いではありません。 MBAも、ハイブリッド交配品種の宿命として、 ヴィニフェラよりもラブルスカの特徴が強く生じています 。 さらに、その特徴は、同年に川上善兵衛氏によって開発されたブラック・クイーンよりも強く立ち現れていると言えます。 分かりやすくいうと、 非常に強いキャンディー香 があるということです。。
- シャブリ近郊で造られるクレマン・ド・ブルゴーニュが美味しい理由。
現在、私が働いている恵比寿のワインマーケット・パーティーは改装の為休業中。 10月上旬のリニューアルオープンに向けて動いております。 ワイン好きでも、そうでなくても楽しいショップにしていきますので、オープンしたら遊びに来てください。 色々な試飲もできるようにしておきます。 さて、何を紹介しようか色々と考えていたのですが、今回はコストパフォーマンス抜群のスパークリングワインにしてみました。 「クレマン・ド・ブルゴーニュ」 と検索すると様々な生産者のスパークリングワインが出てきますが、個人的にお薦めしたいのは 「シャブリ近郊」 で造られるクレマン・ド・ブルゴーニュ。 通常ブルゴーニュ地方のコート・ドール地区で造られているクレマン・ド・ブルゴーニュはほぼ委託醸造の物が多く、葡萄を渡し、共同組合などに醸造をお願いして、ボトルに自社のラベルを貼ってリリースされるものが多い印象です。 ラベルは違くとも中身が同じ・・・なんて事もあったり無かったり・・・。 バランスが取れて美味しい物もありますが、酸が足りなかったり、少し甘かったり、泡立ちが粗かったり、と、どうしてもシャンパーニュを比べてしまうとちょっと物足りない。 そんな中、毎回「素晴らしいなぁ!」と感じるのが、シャブリ近郊で造られるクレマン・ド・ブルゴーニュ! まず、「シャブリ」であれば、良い意味でも悪い意味でも勝手に売れます、よね? シャブリ近郊の産地「イランシー」「サン・ブリ」「オーセール」「トネール」「エピヌイユ」などと聞いてピンとくるのはソムリエ志望の方くらい。 ブルゴーニュとは言え、濃いピノ・ノワールが造れるかというとそういう産地ではなく(求めてもいけない)、シャブリのようなシャルドネを造っても、やはりシャブリというブランドには敵わない・・・。 現地で探すと熟成されたワインがふと出てくる産地でもあります(そんなところも面白いのですが)。 しかしながら、コート・ドールなどと違い土地が広く、シャンパーニュ地方のコート・デ・バール地区に近い為、涼しく、良いスパークリングワインが造られる場所でもあります。 「シャンパーニュ」とも名乗れず、「シャブリ」でもない、「南仏のような果実感」も、「アルザスのようなアロマ」も出せない。 しかし、近年評価も高く、注目されているスパークリングワインの産地の一つになっています。 生産者: クロード・ゲラエール ワイン名: クレマン・ド・ブルゴーニュ シャルドネ 葡萄品種 :シャルドネ100% ワインタイプ :泡白 生産国 :フランス 生産地 :ブルゴーニュ ヴィンテージ :N.V インポーター :ヴィントナーズ 参考小売価格 :2,900円(税抜) 3,190円(税込) 今回紹介している生産者 クロード・ゲラエール は、ブルゴーニュ北部、ディジョンの北西70km、トネールから東に45km程の場所に位置する、シャティヨネという地区でクレマンを仕込む家族経営の生産者。 この地区、行政区画上はブルゴーニュですが、実はアペラシオン制定が行われるまではシャンパーニュとして葡萄栽培が行われた歴史のある土地。 ここで育てられた シャルドネを100%使用したブラン・ド・ブラン は、柑橘系の果実としっかりとしたレモンのような酸があり、頬に張り付く旨味も素晴らしい。 私、このワインをブラインドで飲んだ時、見事に「シャンパーニュ」と答えました。 これなら、 5,000~6,000円のシャンパーニュに匹敵する可能性 があるなぁ、と。 しかもシャルドネ100%、シャンパーニュでブラン・ド・ブランだと5,000円を下回る事はなかなか無いので、純粋に 価格の倍近いクオリティ があるのではないでしょうか? 元々は近隣の協同組合であるレ・ヴィニュロン・オート・ブルゴーニュに加盟していたのですが、そこから独立。 独立した事により、大手メゾンのNMというよりは個人生産者のRMになったイメージです。 現在はこのシャティヨネという地区を独立した呼称にできないかと、「クレマン・ド・シャティヨネ」の申請を行っているとか。 この生産者以外でも、サン・ブリやエピヌイユの生産者が造っているクレマンも秀逸です。 ただ単にクレマン・ド・ブルゴーニュを飲むのではなく、どの産地の生産者が造っているクレマン・ド・ブルゴーニュを飲んでいるのか、気にしながら楽しんでみるのも良いのではないでしょうか? あ、これ美味しい、と思ったクレマン、もしかするとシャブリ近郊の生産者かもしれません。 一つの気づきになれば、それではまた。 <ソムリエプロフィール> 沼田 英之 / Hideyuki Numata WINE MARKET PARTY 店長 1978年東京生まれ。 ホテルのレストラン、バーで経験を積み、イタリアのトスカーナへ留学。 帰国後ホテルのフレンチレストランでソムリエとして従事し、フランスワインを勉強する為、2008年にフランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。2012年より姉妹店であるWINE MARKET PARTY店長として働く。飲食店へのワインリスト制作、料理研究家の方向けのワイン講師、企業向けのワインセミナー、個別のワインサロンなども多数行っている。 恵比寿ガーデンプレイスにあるワインショップ。100坪ある店内は常時1,200種類以上のワインを揃え、世界中のワイン、食品、雑貨、書籍などを取り扱う。 併設している姉妹店フランスワイン専門店ラ・ヴィネにはマニアックなフランスワインを含め1,000種類近いワインが並ぶ。 計2,000種類以上のワインが揃う、日本屈指の大型ワインショップ。 テイスティングコーナーも併設しており、常時25種類以上のグラスワインが楽しめる。
- Bouchon Family Wines ~ワイルド・ヴィンヤードの魅力~
過去2年ほどの間だろうか、最先端のアイデアに敏感なソムリエやワインプロフェッショナルをじわじわと賑わせてきたワインがあった。 その名は、 パイス・サルヴァヘ 。 チリの中でもややマイナーな、 マウレ・ヴァレー から登場したこのワインが、多くのトッププロフェッショナルを魅了してきた理由は、その個性豊かな味わいだけでなく、 非常に特殊な葡萄畑 にもあった。 葡萄品種は パイス 。樹齢は不明(おそらく、200年以上)。無灌漑、無農薬、そして、 無剪定 のこの葡萄は、まさに「手付かず」のまま、 自然環境と完全に一体化 する形で、数えきれないほどの 悪天候による試練 、旱魃、 病害を 自力のみで乗り切ってきた 。 今でも栽培において人の手が入ることは一切なく、収穫時にのみ、ありのままの自然の恵みを人が分けて貰っている形だ。 さて、このワインの特殊性を深掘りする前に、まずはパイスという葡萄の話をしておこう。 パイスは、 16世紀 に当時「黄金の世紀」と呼ばれるほどの最盛期を謳歌していた スペイン王国・ハプスブルグ朝 が中南米大陸に対して非常に積極的な植民地化政策を行っていた際に、キリスト教布教という重要な役割を担っていた 宣教師達 によって、イベリア半島から カナリア諸島 を経由して、現在のメキシコとペルーに持ち込まれた。 元々の葡萄品種名は リスタン・プリエト 。発祥の地とされるスペイン本土ではすでに姿を消したが、カナリア諸島には極僅かながら生き残っている。 注目すべきは、 当時の航海者たちは、リスタン・プリエトの「枝」ではなく、「種」を持ち込んだ という点だ。
- 出会い <10> チリの秘宝
Garage wine co., VIGNO Truquilemu Vyd. 2018 ¥6,000 チリというワイン産出国の奥深さには、いつも驚かされます。南北に広くワイン産地が点在し、それぞれのエリアに適合した好適品種も既に判明しています。しかも、大手メーカー(規模的には超巨大ワイナリー)が率先して 適地適品種の研究 を進めてきた歴史があり、その知見がより小規模な生産者とも共有されています。 まさに、 国を挙げての大探求作戦 。日本のワイン産業は、チリから大いに見習うべきことがたくさんあります。 そんなチリでも最も有名かつ高価なワインが集中しているのは、中央部の コルチャグア・ヴァレー。モンテス、カサ・ラポストール、クロ・アパルタ と、高名なワインが目白押しです。 他の産地でも、アコンカグア・コスタのピノ・ノワール、カサブランカ・ヴァレーのソーヴィニヨン・ブラン、レイダ・ヴァレーのシラー、リマリ・ヴァレーのシャルドネなど、ほんの触り程度名前を挙げるだけでも、魅力的な産地と品種の組み合わせがたくさん出てきます。 しかし、 チリのカリニャン 、と聞いてピンとくる方はどれくらいいらっしゃるでしょうか? 今回は、そんな チリの秘宝 とも言える、驚異的なカリニャンとの出会いのお話です。
- 前進するオーストリアワイン <オーストリア特集:前編>
最良のオーストリアワインとは何か? という問いには、様々な答えがあるだろう。 とはいえ少なくとも、素晴らしいテロワールから生まれるワインだ、ということについてはどなたも同意いただけるのではないか。 ではオーストリアの優れたテロワールとはどこか? そこにはどのような特徴があるのだろうか? 今後、例えばハイリゲンシュタインの名前はさらに重要性を増すだろう。 オーストリアのほぼ全ての畑をデジタルデータにするという意欲的なプロジェクト が指し示す先は、更なるそれぞれの畑への理解と、優れたテロワールへの希求である。 VieVinum ウィーンで2年に一度開催される「 VieVinum 」は、 世界で最も美しいワインフェア ともいわれる。それは会場となる ホーフブルグ宮殿 の美しさによるものか、それとも出展者から供されるオーストリアワインによるものだろうか。 Covid-19のため前回はキャンセルとなり、4年ぶりの開催となった今年は、待ちに待った生産者と世界中から集まったプロフェッショナルの再開を喜ぶ空気が会場に溢れていた。 400社以上が出展する この試飲会では、オーストリアワインをテーマとした数々のセミナーも行われる。先陣を切ったのは、2020年からオーストリア・ワイン・マーケティング協会の代表を務める クリス・ヨーク氏 。 過去20年間、オーストリアワインの躍進を支えてきたのは、美しくオーガナイズされたこの協会の マーケティング戦略 と、それを率いた 前代表のヴィリー・クリンガー氏 である。そして、その後を継いだヨーク氏による 「Austrian Wine Update」 と題されたこのセミナーも、同様にとてもよくオーガナイズされたセミナーだった。 © Ö WM / ÖWM 誰しも例外なくCovid-19の影響を強く受けた この2年間の中で、オーストリアワインの輸出量は大きな伸びを記録 した。特に 2021年度は金額ベースで前年比15.7%の上昇 と、爆発的といってもいい。オーストリア国内の飲食店や観光業に関わる消費は苦戦したものの、オンラインを主軸にしたセミナーやコミュニケーションがこれまで以上の成果をあげたのが成長の主な要因だ。従来の重要なヨーロッパ市場だけでなく、アメリカやカナダ、そして中国などでも伸長している。 もうひとつ注目したいのは、その 単価の伸び だ。2000-2021の間に、輸出量が約2倍になっているのに対し、輸出金額は5倍以上。 単価は2.5倍の伸長 である。
- 再会 <17> 「らしさ」とは
農楽蔵, Nora Rouge 2017 日本でワインの仕事をするなら、日本ワインのことを無視するわけにはいかない。 時代は、インターナショナル&ボーダーレス。海外のワインプロフェッショナルやワインファンから、日本ワインのことを訊ねられるのはもはや日常茶飯事だ。 日本酒(清酒)、焼酎、お茶など、これまでは「日本色」の強い飲料に関して聞かれることの方が多かったが、近年は 日本ワインへの海外からの関心も確実に高まっている 。 「だから」、というとなんとも調子の良い話に聞こえると思うが、もちろん、自発的な興味は十分にもって、日本ワインとなるべく頻繁に接してきたつもりだ。 過去10年ちょっとの間に、様々な側面で、 日本ワインの品質は確かに向上してきた 。 だが、正直なところ、それでもまだ、大多数の日本ワインは、私にとっては「 ものたりない 」。 そう感じる理由もわかっている。 インターナショナルスタイル(*1)というカテゴリーのワインが、すでに旧時代の遺物となりつつある からだ。
- ど田舎からサステナブルを考える
サステナブル 。 ここ近年、頻繁に耳にするワードである。 私はこのSomme Timesにおいて 「ど田舎」でのソムリエ生活 を発信し続けているが、その大きな目的は 地域で頑張っているソムリエへエールを送る こと。しかし実はもうひとつ理由があり、 地域でも都市部と変わらずソムリエとして活躍できる機会をもっと増やしていきたい という願いも込めている。すべては サステナブルな地域づくり のためである。 ソムリエが地域で活躍することで、その地域の食文化レベルは向上していくだろう。結果として地域経済の活性化にも繋がり、サステナブルな地域づくりに貢献することができると考えている。実際にその流れは少しずつ起こっていて、都市部の第一線で活躍してきたソムリエが、新たな活躍の場を都市部から離れた地元などに移す動きがある。 とは言え、現状はまだまだソムリエとして働く環境、ソムリエとして活躍できる機会、ワインを中心とする飲料を学ぶ利便性、すべてにおいて都市部のほうが優位であり、地域との格差は大きいと感じている。 地方での ワイン造り における、サステナブルの問題も考えてみよう。 一般的に持続可能なワイン造りにはビオロジックやビオディナミといったブドウ畑の環境を守ることが引き合いに出されることが多いが、 ブドウ畑を取り巻く環境を持続させることだけではサステナブルの問題は解決しない 。ワインは最終的に人が造るからである。 人が人間らしい生活を送るためには、その地域がどんなに田舎で不便であっても最低限の電気、ガス、水道というインフラは必要となる。食事をする店、食料や生活必需品を買う店、ワイン生産者にとっては、同業者とワイン造りを語り合う居酒屋も必要だろうか。それ以外にも現実問題としてブドウ畑に向かうためには車が必要であると思われるが、車を維持するためには車のメンテナンスを行う店やガソリンスタンドが必要だろう。 人口減少によりそれらの店々の維持が難しくなれば、いくらブドウ畑の環境が良くなろうとワイン造りは困難になる。ブドウ畑の環境のみならず、ワインを造る人たちが生活するコミュニティもまたサステナブルでなければならず、人口維持や地域の経済活動も重要となる。 海外での例 も見てみよう。 サステナブルな地域づくりという面において、例えば イタリア は日本よりも進んでいる。地域づくりには都市計画や農業政策、観光や雇用対策などの様々な要素が絡んでくるが、食という面に注目してみてもイタリアの地域の食は日本と比べて非常に元気である。 現在イタリアで最も注目されているレストランのひとつに オステリア・フランチェスカーナ (注1)があるが、ローマやミラノのような大都市ではなく、エミリア・ロマーニャ州の小さな都市モデナにそのレストランはある。そこで出されている料理は一見イノベーティブのようにも見えるが、エミリア・ロマーニャの郷土料理がしっかりとベースになっている。 ここでイタリアの街並みについて見てみよう。イタリアの歴史的街並み、例えばローマと、高層ビルが立ち並ぶ東京の街並みを比較すると、都市の魅力の方向性が全く異なることがわかる。どちらが良くてどちらが悪いというものではない。どちらの街並みが好きかは好みによるが、その価値観は大きく異なる。 そして、どちらの街にもブルガリやアルマーニといったブティックがある。ローマでは歴史的建築物の一部屋を改装した店舗が多いのに対し、東京のそれは店舗のみならず建物そのものが新しく現代的であるといった違いがある。では仮にローマがコロッセオなどの歴史的建築物をすべて取り壊し、スクラップ・アンド・ビルドで東京を上回る近代都市を創造したとして、はたしてその近代的建築群がローマの魅力となり得るかは大きな疑問が残る。 これはイタリアという国の魅力を語るうえで、 「保存」 というキーワードが非常に重要であることを意味している。その上、 イタリアの街並みのみならず郷土料理にも同じ価値観が存在する 。イタリアの地域の食が元気なのは、しっかりと 料理の地域性が保存されていて、それをベースに新しい価値観が上乗せされた料理が多いから であると考えられる。 地域性を守ることは、料理とワインのペアリングにおいても非常に重要 である。食の歴史が長いヨーロッパの伝統国、特にイタリアは料理とともにあるワインの存在が欠かせない。では何を合わせるか、私はソムリエとしての立場から料理とワインのペアリングを考える際は Somme Timesの梁編集長のペアリングロジック (注2)を大いに活用している。 一方で、 イタリアワインアンバサダー としての立場から、イタリアワインのペアリングを発信する際は、 「郷土の料理に郷土のワイン」という考え方をロジックから切り離し、ひとつの独立した魅力として発信 するようにしている(注3)。イタリアという国の魅力が「保存」というキーワードの上の成り立つことから、 伝統的ペアリングを保存し、その価値を伝え継承を促すこともひとつのサステナブル であると考えているからである。 例を挙げれば、 ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ (注4)という料理にどのワインが合うのかを考えるのではなく、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナとキアンティ・クラシコという組み合わせから生じる味わいそのものがトスカーナ独自の価値であり、これを保存し継承を促すということである。現にこのような地域料理と地域ワインの融合から生まれる味わいを求めて、世界中から数多くの観光客がトスカーナを訪れている。 このように観光客がイタリア各地を訪れ、地域の食を楽しむことで様々な恩恵がもたらされる。地域経済は活発になり、雇用が生まれ、サステナブルな地域づくりに貢献している例がイタリアにおいていくつも確認できる。イタリアでワインツーリズムに力を入れるワイン生産者が多いのはこういった理由がある。 イタリア各地域の食の豊かさは、地域色豊かなソムリエをも育んでいる。イタリアソムリエ協会が選出しているベストソムリエには、トレントやベルガモといった地域の小都市で活躍するソムリエ従事者が多い。イタリアのソムリエは料理とワインのペアリングを考えるだけでなく、自分が暮らす地域が育んだワインや食の豊かさに誇りをもち、地域の食のアンバサダーとしての役割も果たしている。 このようなイタリアの事例は、日本にとっても大きなヒントとなる。日本はワイン造りの歴史こそ浅いが、日本酒や焼酎などの酒造りは長い歴史をもつ。地域での活躍を目指すソムリエは、まずは 地元の酒文化を知り、郷土料理に郷土の酒という組み合わせに価値をもたせ、加えて様々なワインと地元の料理とのペアリング技術を磨くことで地域を盛り上げれば、サステナブルな地域づくりにも貢献できる だろう。 さて、今回のワインであるが、このようなサステナブル時代にふさわしい1本である。アマローネの伝統的生産者であるマァジ社が今年リリースした、全く新しいコンセプトのワインだ。 ワイン名:Fresco di Masi Rosso/フレスコ・ディ・マァジ・ロッソ ブドウ品種:コルヴィーナ・ヴェロネーゼ70%、メルロー30% ワインタイプ:赤ワイン 生産国:イタリア 生産地:ヴェローナIGT ヴィンテージ:2020 インポーター:日欧商事 参考小売価格:3000円 現在イタリアだけでなく、世界中でサステナブルな世界を実現していくために活発な議論が行われているテーマがある。世界的に肉の消費量を減らしていくべきだとの議論だ。ニューヨークのファインダイニングであった イレブン・マディソンパーク (注5)がコロナ禍にヴィーガン・レストランに転身したことは大きなニュースとなったが、まさにこの流れの象徴的な出来事だ。 このような時代の到来に向けて、フレスコ・ディ・マァジのように ビオロジックでのワイン造り、輸送の負担を軽減する軽いボトル、キャップシールの不採用によるプラスチックゴミの削減、野菜や穀物主体の料理に合う優しい果実味と低めのアルコール度数 、こういった コンテンポラリーなワイン がより重要性を増してくるだろう。 今年の春に、 お茶の名産地 として知られる 福岡県八女市星野村 を訪問する機会に恵まれた。そこで造られる伝統的手法の八女伝統本玉露は、非常に深い味わいで美味しかったが、同時に後継者不足による耕作放棄地が問題となっていることを知った。コロナ禍でティーペアリングを行う店が増え、注目を集めたお茶であるが、茶葉の生産地としてはサステナブルの問題を抱えている場所も多い。 一方で、先日ワインセミナーで東京を訪問した際には建築中だった新しいタワーマンションが完成していた。衰退が進む地域とは真逆の状況である。しかし、アンバランスな日本の状況を嘆いてばかりいても仕方がない。私も含め、いろんな人たちがサステナブルな地域づくりのために動いている。それに最近嬉しい出来事もあった。私が暮らす「ど田舎」から新しいソムリエの芽が出てきたのだ。今はまだDebourrement(萌芽)したばかりだが、地域から芽生えた次世代の成長をしっかり見守り支えていく。それが自分にできる一番のサステナブルかもしれない。 (注1) 北イタリアのモデナにあるミシュラン3つ星レストラン。2016年「世界ベストレストラン50」で世界一に輝く。シェフはマッシモ・ボットゥーラ氏。 (注2) Somme Timesの有料会員向けの記事だが価格以上の価値あり。ご一読を! (注3) ただしすべてのイタリアワインではなく、数十年から数百年単位で長い期間組み合わされてきた伝統的組み合わせに限る。 (注4) トスカーナのキアニーナ牛を豪快に焼き上げたTボーンステーキ。 (注5) ニューヨークにあるミシュラン3つ星レストラン。2017年「世界ベストレストラン50」で世界一に輝く。この年の2位は前述のオステリア・フランチェスカ―ナだった。イノベーティブな料理で世界の美食を牽引していたが、コロナ禍の2021年に世界の食のシステムがサステナブルでないことを懸念しヴィーガン・レストランへと業態変更した。シェフはダニエル・ハム氏。 〈ソムリエプロフィール〉 田上 清一郎 / Seiichiro Tanoue 天草 天空の船 レストランマネージャー・ソムリエ 1977年 熊本県生まれ。 2004年 JSAソムリエ呼称資格取得後、大分、福岡、熊本、九州各地のホテル・レストランで研鑽を積む。 2018年 第12回イタリアワイン・ベストソムリエコンクールJETCUPにて優勝。東京圏、大阪圏以外から初のJETCUPチャンピオンとなる。 2018年 駐日イタリア大使館公認 イタリアワイン大使 拝命 〈天草 天空の船〉 熊本県上天草市に位置する全15室のリゾートホテル。天草の海の幸を提供するリストランテ、プール、エステ、各部屋には天然温泉の露天風呂を備える。ディナータイムには西海岸に沈んでいく絶景の夕陽を見ながらの食事が楽しめる。
- シャンパーニュ・オルタナティブに光を
2022年、実はシャンパーニュ市場に大きな異変が起こっている。 その異変とは、端的にいうと、 「極端な品薄」 だ。 シャンパーニュは基本的に大量生産型のワインであるにも関わらず、品薄という状況が起こったと考えられる理由は、大変 複雑に入り組んでいる 。 全ての要因をカバーすると混乱するだけなので、要点を絞ってなるべく簡潔に説明しよう。 まずは 収量 に関して。 シャンパーニュでは、 基準となる収量上限を10.8t/ha と定めているが、最終的には そのヴィンテージの収量上限は、その年の売上状況をベースに決定 される。 この仕組みは、 シャンパーニュが市場に溢れることによって価値を失うという事態を防ぐため のものであり、平常時であれば 実に上手く機能 している。 しかし、2020年前半は世界中が新型コロナ禍による大混乱に陥り、シャンパーニュの売上が30%弱減少してしまったため、2020年ヴィンテージの収量上限も2019年ヴィンテージ(10.2t/ha)から8t/haへと 約22%減 となった。これはボトルに換算すると、 約7,000万本分の減少 ということになる。 2021年に入ると売上がV字回復したため、2021年の収量上限は10t/haへと上がった。 さて、ここまでの情報を整理すると、 「シャンパーニュの価値」 と、 「収量制限」 というキーワードが浮かび上がってくる。 そして、この二つのキーワードを一つの言葉にすると、 「売れ残らせない」 というシャンパーニュ・マーケティングが 最重要視している要素 が見えてくる。
- 出会い <16> 中国で発見、ピノ・ノワールの好適地
Silver Heights, Jia Yuan Pinot Noir 2019. ¥5,700 中国はかねてからニューワールド新興産地として、大いに期待されてきた。 生産量ベースではすでに世界10位近辺におり、ニュージーランド、オーストリア、ギリシャといった国々を上回り、年によってはポルトガルさえも超える。 当然、日本の生産量は、中国には遥か遠く及ばない。 中国がワイン産地として期待されてきた理由は、主に 2つ ある。 一つはその 圧倒的な国土の広さ だ。 超大量生産型も可能だが、それ以上に、 「あれだけ国土が広ければ、どこかに最高の好適地があるはずだ。」 という期待の方がずっと大きい。 それもそうだろう。超大量生産型ワインはすでに飽和状態だし、そもそもそのコンセプト自体が時代と逆行している。 もう一つの理由は 資本力 だ。 ワイン造りにはお金がかかる。特によりインターナショナルなスタイルでワインを造る場合、ヨーロッパ伝統国やニューワールド各国のワインと対抗するためには、莫大な設備投資が必要になる。 また、ワイン造りそのものの経験にも乏しいため、高額な報酬で、海外からコンサルタントを招き入れることも多くなる。 そして、 それらが実現可能なのが、中国 なのだ。
- テロワールペアリングの真価
ワインに宿るテロワール。 今回は、ペアリングという目線に限定するために、かなり 定義を絞って お話ししていこうと思う。また、現時点での 科学的根拠というものを、相当程度無視 していることもご承知いただきたい。 ペアリング理論におけるテロワールの捉え方は、 「内陸」と「水辺」 に大別した上で、内陸であれば、 平地、丘陵地、山岳地 に細分化し、水辺であれば、 湖畔、川辺、海辺、島 と細分化させると分かりやすい。 不思議なことに、 それぞれに宿ったテロワールの強さは、内陸であれば、平地から山岳地に向かうほど強くなり、水辺であれば、湖畔が最も弱く、島が最も強い 。 厳密にいうと気候や土壌も絡んでくるが、話がややこしくなる上に、そこまでの深い「こだわり」を理解できる消費者もごく稀と言えるだろうから、正直なところ、あまり深く考えない方がテロワールをペアリングの要素として使う際には、はるかに簡単になる。 さて、がっかりするかも知れないが、実は テロワールの要素は、ペアリングの構築において、かなり優先順位が低い 。











