現在、ポルトガルのDão(一般的な日本語表記ではダン、現地の発音ではダオン)に来ている。
例の如く、海外行脚時のルーティーンとして、現地ならではの食とワインの組み合わせを探っているが、実は想像していたよりも難航している。
ポルトガルは多種多様な料理がテーブルに大皿で運ばれ、それらをシェアするという風習が強く、一品一品に丁寧にワインを合わせる感じではあまり無いようだ。
大皿及び多皿のシェアとなると、いわゆるクラシック・ペアリングとされる鉄板の組み合わせが生じにくいのは、世界のどこでも共通している。
もちろんダオンでも、地元の有名なチーズであるQueijo Serra da Estrela(ポルトガル本土の最高標高となるエストレーラ山脈の麓で造られる、羊乳のソフト〜セミハード系チーズ)と、同じく地元を代表する白葡萄であるエンクルザードの見事な組み合わせなど、特筆すべきクラシックペアリングは存在しているが、フランスやイタリアに比べると、地元料理と地元ワインの関係性が、少々異なるように思える部分が大きい。
そう、ポルトガルの場合、むしろワインの性質が、そもそも「多皿に向いている」万能型になっている、と理解した方が実態に即していると感じるのだ。