料理とワインのペアリングにおいて、長年「常識」とされてきた組み合わせの中には、様々な研究と検証が進んだ現代においては、既に否定されているものも少なくありません。
このコーナーでは、そんな「元常識」なペアリングの例をご紹介致します。
今回は鉄則とすらされる、「魚には白ワイン」の組み合わせを検証して行きます。
魚には白ワイン?
長い間、魚料理に赤ワインが合わない(らしい)理由は、赤ワインに多く含まれるタンニンが原因とされてきましたが、この点に関しては既に科学的に否定されました。
他の要因に目を向けると、科学的根拠がそれなりに示されているものが2つあります。
より詳しくは、ペアリングの元常識 <2> でも紹介していますので、そちらもご確認ください。
まずは、ワインに含まれる鉄分(正確には鉄イオン)と、魚に含まれる不飽和脂肪酸の反応です。この2つが反応すると「生臭み」が生じる、ということは科学的に解明されています。一般的に赤ワインとロゼワインにはより多く鉄分が含まれる傾向がありますので、確かに理にかなっているように思えます。ただし鉄分は、品種やワインの種類に限らず、葡萄畑や、醸造上の様々な工程で発生しますし、一般的なテクニカルデータでも確認できません。
もう1つは、酸化防止剤としてワインに含まれる亜硫酸と、魚の不飽和脂肪酸の反応です。この反応は、亜硫酸が不飽和脂肪酸を酸化と分解を促進するというところまでは解明されていますが、生臭みとの直接的な関連性は不明なままです。ですが、実体験としては、確かに亜硫酸は低めであった方が良いと感じます。
さて、この2つを組み合わせれば、鉄分と亜硫酸が少ないワインの方が魚に合う、という結果が示唆されているように思えますが、ここにはパラドックスが潜んでいます。
確かに白ワインの方が鉄分は少ない傾向がありますが、亜硫酸は赤ワインよりも多い傾向があります。これは、白ワインには抗酸化作用のあるポリフェノール類の含有量が少ないためです。
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