進化する日本のロゼワイン

山梨県甲州市塩山(えんざん)の福生里(ふくおり)。 

98WINEsが位置する玉宮地区福生里(塩山でも最北のエリア)は、勝沼より平均気温が4℃低い。標高650m、南斜面で十分な日照に恵まれたブドウ栽培の適地。ワイナリーはモダンな和テイストの家屋に構えられ、随所にちりばめられたクリエイティヴなアイデアとこだわりが素敵。


醸造室のある「鉄の棟」、敷地の高低差を生かして一部地面に埋まる樽貯蔵庫「石の棟」、店舗と公民館機能をもつ「木の棟」から構成されたコンセプシャルな造りだ。


鉄の棟、石の棟は、葡萄の搬入→醸造→貯蔵のプロセスにおいて南向きであることに加え、製造ラインがグラヴィティフロー(*1)で繋がっていくことを重要視し、方位と既存の敷地の高低差を手掛かりに建物配置が検討された。それぞれの棟には平山さんがワイナリーの設立に関わった人たちと導き出した、粋なアイデアがそこかしこに見てとれる。設計を手がけたのは、山梨を拠点にする建築家、坂野由美子さんのS PLUS ONE。2020年にグッドデザイン賞を受賞している。


この98WINEsは、メルシャンや勝沼醸造などで醸造責任者を務めてきた平山繁之さんが3年前に立ち上げ、2018年産の甲州マスカット・ベーリーAの仕込みを始めた新しいワイナリーだ。


ワイナリー名は98%ということからきているという。単独で100にはならないということを意味しており、2%の余白が98WINEsの大きな魅力なのである。


98WINEsの木の棟


ワインの力を強烈に表現


生産者:98WINEs

ワイン名:SOU/霜

葡萄品種:Muscat Bailey A/ マスカット・ベーリーA

ワインタイプ:ロゼワイン

生産国:日本

生産地:Yamanashi Enzan / 山梨 塩山

ヴィンテージ:2019

ワイナリー販売価格:¥2,900(参考)


身体に染み入るようなワイン造りを目指していて、「食中酒として飲めるワインが全て」と語る平山さんが作るこのロゼは、甲州と韮崎市穂坂町のマスカット・ベーリーAを徐梗せず全房で発酵。マスカットベーリーAを小ロットでマセラシオン・カルボニック(*2)して破砕。プレスして、ステンレスタンクに移動させた後に、さらに甲州の果汁を加え、二度目のアルコール発酵を行う。発酵終了までは一切機械を使わない。


全ての発酵が終了後、シュール・リーの状態で低温貯蔵。4か月後澱引き。無濾過。複雑さを伴った見事な辛口で、アルコール濃度は僅か11%。


サラッとしたフレッシュで瑞々しい味わい。口当たりは軽く、酸味もまろやか。華やかな香りが全体的に強く感じられ、とっても飲みやすい。


遠くに富士山を望む絶景が広がるパノラマを楽しみながら飲めるこのロゼは、日本ワインの明るい未来を感じさせる。


98WINEsの平山繁之さん


(*1) グラヴィティフロー:醸造プロセスの中で液体を移動させる際、酸化や負荷によるショックのリスクが伴うポンプでの汲み上げではなく、重力を利用して自然落下によって移動させる手法。ワインはより繊細なバランス保つことができ、最終的な品質に大きく関与する。


(*2) マセラシオン・カルボニック:葡萄を破砕せずにタンクに積み上げていくと、自重でタンク下部の葡萄から果汁が流れ出て自然に発酵が始まっていく。発酵が始まると、密閉したタンク内が発酵により生成された二酸化炭素で充満する。充満した二酸化炭素により、酸素の供給が遮断されると、潰れていない葡萄の中に含まれる酵素が動き始め、さらなる発酵が促される。また二酸化炭素は「抗酸化」の役割も果たすため、亜硫酸(酸化防止剤)の過剰な添加を嫌うナチュラル・ワインの造り手には、広く採用されている手法でもある。



<ソムリエプロフィール> 矢田部 匡且/ Masakatsu Yatabe 「東京エディション虎ノ門」 ヘッドソムリエ 「エディション」は「ザ・リッツ・カールトン」と並ぶ、 マリオット・インターナショナルにおける最高級グレードのラグジュアリーホテルブランド。上質なラグジュアリーとライフスタイル型を融合させた世界が注目する最先端のホテル。現在、ニューヨークのタイムズスクエア、ウエストハリウッド、ロンドン、マイアミビーチ、バルセロナ、中国の上海、三亜、アブダビ、トルコのボドルムに展開し、2020年にイタリア・ローマと東京で開業予定。