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日本酒のマメ臭
マメ臭 とは、正式には ネズミ臭 と呼ばれる 欠陥臭 に対する、日本独自の 俗称 だ。 この俗称には、日本人らしい「寛容さ」が現れていて、マメ=豆という、欠陥とは直接的には繋がりにくいイメージの言葉として定着してきた。 海外ではマメ臭に関連した一般的な表現として、 「ネズミの死骸」や「腐った牛乳」 といった強烈な腐敗臭を連想させる言葉が用いられる。 つまり、 肯定的な要素は皆無 であるということだ。 マメ臭は、発酵中もしくは熟成中に、過剰に酸素にさらされたときに起こると考えられている細菌汚染の一種で、現時点での研究では、 乳酸菌 が主因である可能性が高いとされているが、酵母菌のブレタノマイセスとの関連を指摘する研究結果も報告されている。 この乳酸菌が主因という説が間違いないのであれば、実は現在一部の特殊な日本酒に起こっている現象の説明にもなりえるのでは、と筆者は考えている。 過去回帰 のムーヴメントは、何もワインにだけ起こるのではなく、現在日本酒の世界でも大きなうねりとなりつつある。

梁 世柱
2022年9月7日


地産地消の新解釈
地元で採れた作物を地元で食べ、地元で造られた酒を地元で飲む。 このことが「当たり前」だった時代は、随分と昔のことだ。 文明が生まれ、都市が形成されたころには、すでに都市部(もしくは大きな集落)への生活必需品の短距離輸送(といっても原始的な「手運び」であるが)は始まっていた。 やがて、車輪の発明によって輸送距離が伸び、船の発明によってさらに伸び、航空輸送が一般化した頃には、流通網は地球規模にまで発展した。 それでも長らくの間、何かしらの形で生き残ってきた 「地元消費」の文化 には、特に名前はついていなかったのだが、現在で言うところの 「地産地消」 という名称によって、地元消費文化が リブランディング されたのは 1970年代 のこと。アメリカ・カリフォルニア州でシェ・パニーズと言うレストランをオープンした アリス・ルイーズ・ウォーターズ が、地産地消のパイオニアと考えられている。 オーガニック栽培をした地元食材を大切にする というアリスの哲学は、やがて 環境問題やスローフードムーヴメント とも結びつき、現在の 多角的側面をもつ地産地消 へと発展して

梁 世柱
2022年8月6日


シャンパーニュ・オルタナティブに光を
2022年、実はシャンパーニュ市場に大きな異変が起こっている。 その異変とは、端的にいうと、 「極端な品薄」 だ。 シャンパーニュは基本的に大量生産型のワインであるにも関わらず、品薄という状況が起こったと考えられる理由は、大変 複雑に入り組んでいる 。 全ての要因をカバーすると混乱するだけなので、要点を絞ってなるべく簡潔に説明しよう。 まずは 収量 に関して。 シャンパーニュでは、 基準となる収量上限を10.8t/ha と定めているが、最終的には そのヴィンテージの収量上限は、その年の売上状況をベースに決定 される。 この仕組みは、 シャンパーニュが市場に溢れることによって価値を失うという事態を防ぐため のものであり、平常時であれば 実に上手く機能 している。 しかし、2020年前半は世界中が新型コロナ禍による大混乱に陥り、シャンパーニュの売上が30%弱減少してしまったため、2020年ヴィンテージの収量上限も2019年ヴィンテージ(10.2t/ha)から8t/haへと 約22%減 となった。これはボトルに換算すると、 約7,000万本分の減少 と

梁 世柱
2022年7月19日


SDGsはボジョレーヌーボーを肯定するのか
SommeTimesでは、たびたび SDGsとワイン産業の関連性 について取り上げてきた。 その中で、 とある疑念 が筆者の中で蓄積し続けてきた。 それは、 ワイン産業は本質的には農業である 、という観点から生じた疑問であり、あらゆる産業だけでなく、地球の環境保全と人類の関係性にも複合的に対応した SDGsとはどうしても交わりきれない部分があるのでは 、という仮説だ。 なお、 本ショートジャーナルの趣旨は、SDGsを否定することでも、検証の対象となるボジョレーヌーボーを否定することでも、特定の生産者を非難することでもない 。 むしろ筆者は、SDGsに関して 「何もしないよりも、何かをした方が絶対に良い」 という立場を取っている。 どうか、誤解なきよう。 *SDGsそのものに関しては、今更説明の必要もあまり無いとは思うので、復習も兼ねて、 外務省のパンフレット をお読みいただければと思う。 SDGsとボジョレーヌーボー SDGsが掲げる17の目標の中で、直接的にワイン産業と関連しているものは限られるが、関連性の高いものから、一つずつ実情と照らし合わ

梁 世柱
2022年7月9日


クラシックの行方
筆者にとって過去2年半は、新型コロナ禍による混乱だけではなく、別のショッキングな出来事が続いていた。 そう、それは クラシック・ワインの消失危機 だ。 なるべく話をコンパクトにするために、フランスに限った話にとどめておくが、 2018、2019 、そして 2020年 というヴィンテージがリリースされてきたこの2年半、なんとも煮え切らない思いを抱えることになった。 2018年はフランスのほぼ全土で酷暑の年となり、ワインにも異常な性質が立ち現れた。 多くのブルゴーニュ・ルージュは、まるでニューワールド・ピノのような味わいになった。 多くのブルゴーニュ・ブランから、酸が消え去った。

梁 世柱
2022年6月25日


暗記の時代は終わったのか
ソムリエやワインエキスパート、WSET等のワイン関連資格試験にチャレンジしたことのある人なら、 理不尽なほどの膨大な暗記 に苦しんだ記憶があることだろう。 終わりの見えない暗記によって、ワインが嫌いになってしまった人も少なくないはずだ。 中には、「重箱の隅をつつくような知識」が本当に役に立つのかと激しい疑問を覚えながら、苦行を乗り切った人もいるだろう。 それに、 せっかく暗記した知識が、霞のように消えていく虚しさ も、多くの人が味わったに違いない。 暗記に意味がないとは決して言わない。それだけの奥深い世界が広がっていることを実感すること自体には、確かな意味があるからだ。 検索エンジンや電子書籍が高度に発達する前は、一流のワインプロフェッショナルとはつまり、「 歩く百科事典 」的な人のことを意味している側面があった。 驚異的に詳細な情報を、大量に記憶したワインプロフェッショナルこそが、尊敬の対象だったのだ。 しかし、時代が変わった。

梁 世柱
2022年2月2日


「甘い」言葉に潜む罠
ワインにとって、「 甘い 」という表現は何を意味しているのだろうか。 これは非常に奥深いテーマであり、長年に渡って、 ワイン販売者と消費者の間や、愛好家同士の間にそびえたってきた、分厚い壁 でもある。 もちろん、「甘い」という表現は、「 美味しい 」と同様に、 最終的には完全に主観 となってしまうものなのだが、それでも(特に販売者、紹介者としては)どこかに線引きをしておかないと、 自身の発言が支離滅裂なものとなりかねない 。実に悩ましい問題だ。 基本的には、 ワインの甘さというのは、糖度と酸のバランスによって確定する 、としておくのが、最もセーフな考え方だろう。 レモネード を思い浮かべていただきたい。 レモン果汁だけでは、その強烈な酸故に、極めて酸っぱい(辛い)状態となるが、そこに砂糖を加えることによって、徐々に辛口から甘口へと向かっていく。 ワインも原理的には同じと考えて良い。 白葡萄品種では、 リースリング を例にすると分かりやすいだろう。

梁 世柱
2021年11月30日


生体アミンとSO2:示された一つの可能性
個で全を語ることは危険であり、一つのソリューションが全てを救うという希望もまた、ただの夢想に過ぎないのではないだろうか。 「ワイン不耐性にようやく光が」(ジャンシス・ロビンソンMW著、小原陽子訳)と題され、オンラインワインメディア「Vinicuest」上で公開された記事(訳...

梁 世柱
2021年11月2日


ラベルに罪はあるのか
ワインのラベルは重要だ。 ブラインドテイスティングでも無い限り、一連のワイン体験の中で 最初 の「楽しむ」プロセスは ラベルを観る ことだ。 ラベルには、そのワインに関する様々な情報が詰めこまれている場合もあれば、文字による情報をほとんど含まないデザインの場合もある。 実は、そのどちらのパターンであっても、 ラベルデザインとワインのスタイルは、同じ方向を向いていることが圧倒的に多い 。経験を積めば、産地と品種が分かってさえいれば、そのワインのスタイル(品質では無い)に対して、ラベルデザインからかなり正確な予測を立てることすらできるようになる。 不思議と思えるかも知れないが、造り手の哲学が反映された(反映させないという形の反映のさせ方も含めて)ラベルに、農産物である葡萄が人の手によってワインへと転じていく過程における、 自然と人の多様な関係性が宿る のは、必然と言えるのではないだろうか。 そもそも、味わうという行為は、舌の味蕾がキャッチした刺激に加えて、触覚が感じとるテクスチャー、嗅覚が感知したアロマ、言語情報による知覚的影響、そして視覚が捉えるイ

梁 世柱
2021年10月12日


ワインと味わいの不思議な関係
多くのワイン愛好家の方々が、特定の状況や場所で「 ワインをより美味しく感じた 」経験をおもちなのではないでしょうか。今回は、その謎めいた現象に迫ってみたいと思います。なお、本稿の内容は、 科学的見地に基づいた内容では基本的にありません 。あくまでも、実体験に基づく「 推測 」になります。一種の思考実験を覗くようなお気持ちで、お読みいただければ幸いです。 まずは、「美味しく感じた」という体験を、2つの大カテゴリーに分けてみます。 1. シチュエーション(状況)によって美味しく感じる。 2. ロケーション(場所)によって美味しく感じる。 の2種に分けることができるでしょう。 シチュエーション 1のシチュエーションに関しては、 「久々に飲むワイン」 「友人や家族、恋人と飲むワイン」 「仕事後に飲むワイン」 「ピクニックで飲むワイン」 などなど、様々な「ワインを美味しく感じる」シチュエーションが考えられます。

梁 世柱
2021年10月3日


ワインは農産物なのか
葡萄は、その生育年に起こる様々な苦難を乗り越えて実り、造り手たちによって多種多様なアプローチで醸造され、熟成され、ワインとして出荷される。 「ワインは農産物」 使い古された枕詞であるが、今でも本当にそうなのだろうか? 実は、世界中で生産されているワインの大部分(生産量ベース...

梁 世柱
2021年9月7日


テイスティングコメントの不完全さ
ワインをよく知っている人が、あまり知らない人に対してワインについて語る際、 専門用語を連呼 してしまうと、それらの言葉を知らない人にとっては、まるで 理解のできない呪文 のような謎の言葉を延々と繰り返される状態になり、多くの人は(せっかくの素晴らしいかもしれない情報が!)全く頭に入ってこないだろう。そこで役に立つのが、 テイスティングコメント だ。テイスティングコメントには、イチゴ、レモン、リンゴといったおそらく誰でも理解できるタイプのものもあれば、 麝香 (*1)のように、大多数の人にとっては 完全に意味不明 なものもある。テイスティングコメントを理解するのにも、 多少の訓練と勉強は必要 だが、基本的にはそれほど難しくはない。これまでワイン教育の現場に深く関わってきた経験上、多少努力すれば 99%の人は問題なく使いこなせるようになる と断言できる。その程度の難易度ということだ。上級者にとっても、初心者にとっても重要で大変便利なこの「 共通言語 」は、世界各国のあらゆるワイン教育機関で採用され、それぞれ微妙なヴァリエーションの違いはあれど、大筋で

梁 世柱
2021年9月3日


西ドイツを襲った大洪水
7月15日、世界に名だたる銘醸地が連なる西ドイツ(ベルギー、オランダの一部も)を、記録的豪雨とそれによって引き起こされた未曾有の洪水が襲った。13日頃から降り注いだ雨は、複数のエリアで例年同時期の約2ヶ月分に相当する降雨量を24時間で記録し、多くの河川を氾濫させた。...

梁 世柱
2021年7月21日


サン=テミリオンの衝撃
2021年7月上旬、世界中の熱心なワインファンに衝撃を与えるニュースが、フランス・ボルドー右岸の銘醸地であるサン=テミリオンから舞い込んできた。

梁 世柱
2021年7月13日
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