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「フェミニン」はNG
多様性を尊重する、というのは実に厄介なものだ。 世界の集合意識を無視し続けると、気付いた時には自分が、今の時代にとって大切な価値観から、どんどんズレていってしまう。 そして、そのズレを「強いものイジメ」の現代社会は、どうやら決して許さないようだ。 政治家や著名人が、「ズレ」た失言をしてしまい、懸命に築き上げてきたキャリアを棒にふることすら、もはや珍しいことではなくなった。 この現象は、我々ワインに生きるものたちにとっても、決して対岸の火事ではない。 ワインの味わいや性質を表現する際に、慣習的に用いられてきた言葉の中には、すでにズレてしまっているものが少なからず存在しているからだ。

梁 世柱
2024年8月20日


テロワール表現のスイートスポット
今回のオーストリア訪問では、世界各国から集結した複数名のMWやMSを含むトップワインプロフェッショナル達や、現地のトップ生産者達と、ひたすら一つのテーマに関する議論が繰り返された。 どのようなプロセスによって造られたワインが、客観的かつ論理的に観測可能な形で、テロワールを最も精密に表現しているのか、というテーマだ。 私からこの議題をもちだしたこともあったが、多くは極々自然発生的に会話がこの議論へと繋がっていた。 つまり、今最先端でワインを追求しているプロフェッショナルたちの関心が、大いにこのテーマに対して集まっている、ということだ。

梁 世柱
2024年6月8日


洗練されたナチュラルワインの是非
イタリア行脚の後半は、一人でイタリアとスロベニアの国境沿い(歴史的に非常に深い理由があるが、文字通り一つの町が2つの国に分断されている)にあるゴリツィアへ来ている。 一人旅、特にど田舎の産地では、(筆者は運転免許をもっていないので)移動面で大変な苦労を伴うが、造り手と葡...

梁 世柱
2024年2月23日


2024年トレンド予想と課題
2023年の国内ワイン市場を襲った価格高騰は、2024年には更なる構造改革を市場に迫ってくる可能性が高い。 超高級ワイン(仮に、一本2万円以上としておく)の中でも、有名産地や有名銘柄に関しては、これまでとほぼ変わらず、高騰による売れ行きへの影響はミニマムに収まると考えられるが、それ以下の価格帯に関しては、難しくなるケースもさらに増えるだろう。

梁 世柱
2024年1月8日


時代遅れのNew and Old
オールドワールド、ニューワールド。 ボーダーレス社会の現代では、ともすれば問題視されかねないこの言葉を日常的に使っているのは、おそらくワイン関係者だけである。 そして本来は、「大航海時代以前からワイン造りを(産業レベルで)行っていたか否か」に基づいて定義付けられていたはずの言葉は、ワイン市場がグローバル化し続ける中で、その意味を拡張させてきた。 原初の定義であれば、純粋な歴史的事実に基づいた、単純な地理的区分けであるため、現代でも当然通用して然るべきだ。 しかし、拡張された定義が今、大きな誤解の温床となっている。

梁 世柱
2023年12月16日


自由と責任
ワイン造り、ワイン輸出入、ワイン販売、そしてワインを飲むこと。 自由意志の元に行われるそれらの行為には、どのような責任が付随しているのだろうか。 人類が科学と兵器を手にし、真に地球の支配者となって以降、ヒトが他のあらゆる動植物よりも優れた存在たるための「理性」は、自由と責任は表裏一体である、という普遍の真理によって守られてきた。 理性は動物的な感情や本能を制御し、尊重の精神を育む。 尊重の精神をもったヒトは、無意味に何かを壊したり、奪ったりはしない。 尊重の精神をもったヒトは、やむを得ず犠牲にしてしまったものごとに対して、責任を取ろうと行動する。 儒教文化で言うところの、「徳を積む」行動は、ヒトがヒトであるために、本来欠かせないはずのものだ。 しかし、高度経済成長期の真っ只中にいた人々は、本当に徳を積んでいたのだろうかと、疑問が湧く。 自らが謳歌した自由と成功と成長の裏にある、ヒトとしての責任を、どれだけの人々が意識しながら日々を過ごしていたのだろうか。 結果だけを見て判断するなら、少なくとも私が生きているワイン産業に限った話をするのなら、不十分

梁 世柱
2023年11月4日


ワインスタンドの直汲みワイン
「善く国を治める者は、必ずまず水を治める。」 古代中国の春秋時代、斉の宰相であり、良く知られた法家でもあった管仲が残した言葉だ。 私は今、北アフリカのリビアに思いを馳せている。 9月10日、リビア東部を襲った地中海熱帯様低気圧(通称、メディケーン)は、沿岸都市デルナにある、老朽化した2つのダムを決壊させ、推定死者数1万人超と考えられる、未曾有の大災害を引き起こした。 東西で政治的分断が起きているリビアでは、避難指示の伝達網も機能しておらず、何よりも政治の基本である治水を、後回しにしてきた。 その決定的怠慢が、多くの人々の命を奪うことにつながったのは確かだが、そもそもなぜメディケーンがそこまで破壊的な威力をもつに至ったか、そして、国土の90%が砂漠であるリビアを襲ったのかは、別の問題だ。 そう、メディケーンが凶暴化した理由として可能性が高いものの一つ(ハリケーンの激化は、実際にはかなり複雑な要因によって起きていると考えられている。)とされているのは、地中海の海水温の上昇、つまり地球温暖化である。 さらに、気候変動が偏西風を不規則に変化させた結果、メ

梁 世柱
2023年9月24日


テロワールの縦軸と横軸
ワインをより深く理解していく上で、テロワールというコンセプトを無視することは、決してできない。 どれだけ技術が発展しても、その技術をいかに駆使しても、ワインの原料となる葡萄が農作物である以上、気候、土壌、地勢、ヴィンテージ、及びそれらの要素と葡萄品種の相性からの影響を、完全に避けることはできない。 『りんご』を例にしよう。 りんごは名産地として知られている東北、中部地方はもちろんのこと、北海道でも沖縄でも栽培されている。 栽培に関する様々な知識、技術、そして必要であれば適切な農薬を用いれば、栽培そのものが絶対的に不可能となるケースは多くない。 ただし、高品質なりんごが育つことと、単に育つことは異なる。 この動かざる現実に対して発生するコンセプトこそが、テロワールだ。

梁 世柱
2023年9月7日


呼称資格の価値と、守られるべき権威
ワインには様々な呼称資格認定試験がある。 日本においては、日本ソムリエ協会が認定しているJ.S.A.ソムリエ、J.S.A.ワインエキスパートに加え、近年ではWSETが認定している呼称資格も認知度が高まっている。まだまだ極一部だが、Court of Master Sommelier(C.M.S.)の呼称資格に挑む人も増えてきた印象だ。 J.S.A.ソムリエ、J.S.A.ワインエキスパート、WSET Level 3、C.M.S. Certified Sommelier辺りの資格になると、かなりの長期間に及ぶ勉強や訓練を経ないと、合格まで辿り着けない。 世の中には、一夜漬けで余裕の突破を果たせるような難易度の呼称資格認定試験が山ほどあるが、それらに比べると一般的なワインの資格が、随分と難しい部類に入るのは間違いないだろう。 最上位の呼称資格を除いて、特別な才能を求められるような類のものではないが、少なくとも努力は必要だ。 そして、その難しさも、求められる努力も、呼称資格の価値を高めるための、極めて重要な要素である。 しかし近年、不正行為によって、呼称資

梁 世柱
2023年8月19日


味が変わる=悪、なのか
去年と味が違う。10年前の方が良かった。30年前は全てが素晴らしかった。 ワインというのは、何かにつけて、味わいの変化が否定的にみなされる事が多い(その逆もあるが)飲み物だ。 もちろん、そう言いたくなる気持ちも分からないではない。 ビールに関して、「昔のキリンの方が良かった」なんていう意見は滅多に聞かないし、ウォッカやジンもそうだ。 我々が日常的に口にするアルコール飲料の中に、本質的には味わいが変化しないタイプのものが数多くあるからこそ、一部の「変わるもの」に対して、時に過敏に反応してしまう。 少し例外が見え隠れしてくるのは、ウィスキーや日本酒などだろうか。 ウィスキーはブレンドマスターの交代や、原酒の過不足、熟成樽の変更などによって、どうしても味わいが変わるし、日本酒も代替わりなどによってスタイルが全面的に刷新されることが多い。 これらの「変わることがある」アルコール飲料に共通しているのは、その変化が「人的要因」によって引き起こされている点と言えるだろう。 そして、人的要因による変化なのであれば、それは批判の対象となっても仕方ないとは思う。..

梁 世柱
2023年8月12日


ワインとAI Part.3
本シリーズでは、AIの進化が、ワインの世界に携わる人々にどのような影響を与え得るのかについて、実際にGoogle Bardでコマンド入力を行いながら検証していった。 Part.1では、AIがもっともらしいウソをつく「ハルシネーション」と、その問題点について、Part.2では、AIが苦手とする曖昧さへの対応と、現状での問題点に関して考察してきた。 そして、最後となるPart.3では、一般的な人の反応や対応に着目しつつ、AIとの比較を行なっていく。 まずは、消費者目線から考えていこう。 実は、消費者にとって、「ハルシネーション」や「曖昧さへの不対応」は、さほど問題にはならないことが多いのでは無いだろうか。

梁 世柱
2023年7月18日


ワインとAI Part.2
生成系AIは「正解」してこそ価値がある。 Part.1では、「ハルシネーション」と呼ばれる、AIが「もっともらしいウソ」(事実とは大きく異なる内容や、文脈と関連性の無い内容)を生成してしまう現象と、その問題点について考えていった。 しかし、現在の主流技術となっている大規模言語モデル(膨大なテキストデータを用いてトレーニングされた、自然言語処理モデル)が、この先も急速に洗練されていくのは間違い無いため、ハルシネーションの解決は時間の問題と言えるかも知れない。 さらに、Facebookを運営する米IT大手のMeta社で、チーフ・AIサイエンティストを務めるヤン・ルカン氏(AI研究の第一人者として知られる)は、2023年6月13日に、「生成AIは既に過去のものであり、最悪だ。人には常識があるが、機械には無い。我々はこの技術を捨て、JEPA(抽象的なアイデアの概念化を可能にすることを目指す、新たな予測アーキテクチャー)を採用する。」と語った。

梁 世柱
2023年6月16日


ワインとAI Part.1
OpenAI社のChatGPT、Google社のBard、Microsoft社のBingAI。 文章生成AIや対話型AI(以降、統一して生成系AIと表記)などと呼ばれるこれらの新技術は、私のようなワインプロフェッショナルが聖域と信じて疑わない領域に、いよいよ足を踏み入れようとしているのだろうか。 現代人の必須ツールとなって久しい検索エンジンは、すでにGoogleやMicrosoftなどによって、生成系AIとの統合が進んでいる。 今後さらに、SiriやAlexaといった、音声認識・ヴァーチャルアシスタントアプリケーションとも統合されていくのは間違いないだろう。 そして、生成系AI、高機能検索エンジン、進化した音声認識アプリケーションが高次で統合された時、私はいよいよ聖域が荒される可能性があると感じている。 「高次で」と書いたのは、現状ではまだ不完全な部分があまりにも多いからだ。 生成系AIもまた、プログラムの一種であることには変わらない。 つまり、他のあらゆるプログラムと同様に、望んだレスポンスを正確に得るには、「正しいコマンドをインプットする」必

梁 世柱
2023年6月7日


温暖化対策 <葡萄畑>
気候変動が世界各地に襲いかかって久しい。 ワイン産地においても例外はほぼ無く、何かしらの変化が生じている。 特にヨーロッパ伝統産地では、ティピシティ(その場所で造られるワインに生じる古典的かつ典型的特徴)が失われるというのは、最も恐れていることだ。 中には特定の産地と特定の葡萄にとって、温暖化が好意的に働いていると考えられるケースもあるが、温暖化の恩恵などという表現には、人のエゴが入り過ぎている。 しかし、難局を打開する工夫ができるのもまた、人間の凄さである。 このまま無対策でいれば、ブルゴーニュの好適品種がピノ・ノワールではなく、シラーになるかも知れない。そんな未来が絶対に訪れないように、造り手たちは日々悩みながら葡萄樹と対話を繰り返し、様々な対策を行っている。 今回は、葡萄畑でどのようなことが行われているか、について解説していこう。

梁 世柱
2023年2月8日


2023年のトレンド予測
ワイン産業という大海には、時折巨大な波が発生する。 その始まりはさざなみ程度のものであっても、集約を繰り返しながら、徐々に勢力を増していくものがあるのだ。 現代において、その特別な波を導いているのは、潜在的集合意識だろう。 最終的に世界中を巻き込むような大波へと成長するさざなみは、世界各地で同時多発することが多いからだ。 これは、極一部の圧倒的な影響力の元に導かれていた時代とは、明らかに異なる現象でもある。 言い換えるなら、『多様性の時代ならではの、潜在的集合意識の存在』となるだろう。 そして、潜在的集合意識に導かれた波は、いくつかのトレンドとなり、世界を駆け巡っていく。 本稿では、2023年をどのようなトレンドが導いていくのかを予測して行こう思う。 まず、ワイン造りという大きな括りで言えば、オーガニック(もしくはビオディナミやパーマカルチャーなど)とサスティナビリティ(SDGs)の両立が、極めて重要なテーマとして取り組まれていくことはほぼ間違いないと言える。これは、オーガニックだけではSDGsへの取り組みとして不足しがちな一方で、サスティナビリ

梁 世柱
2023年1月21日


捨てる神あれば拾う神あり
物価高が世界を襲っている。 生産、物流、消費という流れは一方通行の大流であり、何かしらの理由で一度堰き止められてしまうと、なかなか元通りにはならない。 長引く新型コロナ禍による生産体制の滞り、ロシアのウクライナ侵攻による世界的なエネルギー不足とエネルギー価の爆発的な高騰、輸入産業を直撃する極端な円安。先行きの見えない不安が高まる中、消費も冷え込みがちだ。 こうなると、物価が維持されるために重要なスケールメリットも機能不全に陥る。 まるで、血栓ができた動脈のように。 そして、海外での生産、超長距離の輸送、輸入産業という、自力ではどうしようもできない要素が揃いに揃ったワイン市場は、物価高の影響を甚大に受けている。

梁 世柱
2023年1月11日


現地で飲むワインは本当に美味しいのか
「現地で飲むワインは美味しい。」 SommeTimesではさまざまな角度から度々この現象の真偽に迫ってきたが、今回はまた別の、「保存環境」という視点から見ていこうと思う。 というのも、筆者はこの3ヶ月間で北ギリシャ、南アフリカと立て続けに現地訪問を行ったが、現地の方が美味しいという感覚を一切覚えなかったからだ。 むしろ、同じワインであれば、日本の方が美味しいと感じたことも多々あった。 これまでの検証(記事1、記事2)では、どちらかというと微生物学的要素に対する仮説や、ワインを飲む環境に主眼をおいて検証を行ってきた。確かにそれらの要素は、ワインの味わいに十分なレベルの影響を及ぼし得るが、今回検証する「保存環境」というのは、もっと根源的なものであり、より初心者向けの内容ともなる。 この保存環境において、特に大きな影響を及ぼす要素は3つ。 温度、直射日光、湿度である。 最後の湿度に関しては、そこまで極端な環境というのはそうそう無い(そもそも、人が快適に過ごせる湿度帯は限られている。)上に、かなりの長期保存をしない限りは、その影響も小さい。理想は75%前

梁 世柱
2022年11月2日


日本酒のマメ臭
マメ臭とは、正式にはネズミ臭と呼ばれる欠陥臭に対する、日本独自の俗称だ。 この俗称には、日本人らしい「寛容さ」が現れていて、マメ=豆という、欠陥とは直接的には繋がりにくいイメージの言葉として定着してきた。 海外ではマメ臭に関連した一般的な表現として、「ネズミの死骸」や「腐った牛乳」といった強烈な腐敗臭を連想させる言葉が用いられる。 つまり、肯定的な要素は皆無であるということだ。 マメ臭は、発酵中もしくは熟成中に、過剰に酸素にさらされたときに起こると考えられている細菌汚染の一種で、現時点での研究では、乳酸菌が主因である可能性が高いとされているが、酵母菌のブレタノマイセスとの関連を指摘する研究結果も報告されている。 この乳酸菌が主因という説が間違いないのであれば、実は現在一部の特殊な日本酒に起こっている現象の説明にもなりえるのでは、と筆者は考えている。 過去回帰のムーヴメントは、何もワインにだけ起こるのではなく、現在日本酒の世界でも大きなうねりとなりつつある。

梁 世柱
2022年9月7日
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