top of page
検索


「甘い」言葉に潜む罠
ワインにとって、「 甘い 」という表現は何を意味しているのだろうか。 これは非常に奥深いテーマであり、長年に渡って、 ワイン販売者と消費者の間や、愛好家同士の間にそびえたってきた、分厚い壁 でもある。 もちろん、「甘い」という表現は、「 美味しい 」と同様に、 最終的には完全に主観 となってしまうものなのだが、それでも(特に販売者、紹介者としては)どこかに線引きをしておかないと、 自身の発言が支離滅裂なものとなりかねない 。実に悩ましい問題だ。 基本的には、 ワインの甘さというのは、糖度と酸のバランスによって確定する 、としておくのが、最もセーフな考え方だろう。 レモネード を思い浮かべていただきたい。 レモン果汁だけでは、その強烈な酸故に、極めて酸っぱい(辛い)状態となるが、そこに砂糖を加えることによって、徐々に辛口から甘口へと向かっていく。 ワインも原理的には同じと考えて良い。 白葡萄品種では、 リースリング を例にすると分かりやすいだろう。

梁 世柱
2021年11月30日


生体アミンとSO2:示された一つの可能性
個で全を語ることは危険であり、一つのソリューションが全てを救うという希望もまた、ただの夢想に過ぎないのではないだろうか。 「ワイン不耐性にようやく光が」(ジャンシス・ロビンソンMW著、小原陽子訳)と題され、オンラインワインメディア「Vinicuest」上で公開された記事(訳...

梁 世柱
2021年11月2日


ラベルに罪はあるのか
ワインのラベルは重要だ。 ブラインドテイスティングでも無い限り、一連のワイン体験の中で 最初 の「楽しむ」プロセスは ラベルを観る ことだ。 ラベルには、そのワインに関する様々な情報が詰めこまれている場合もあれば、文字による情報をほとんど含まないデザインの場合もある。 実は、そのどちらのパターンであっても、 ラベルデザインとワインのスタイルは、同じ方向を向いていることが圧倒的に多い 。経験を積めば、産地と品種が分かってさえいれば、そのワインのスタイル(品質では無い)に対して、ラベルデザインからかなり正確な予測を立てることすらできるようになる。 不思議と思えるかも知れないが、造り手の哲学が反映された(反映させないという形の反映のさせ方も含めて)ラベルに、農産物である葡萄が人の手によってワインへと転じていく過程における、 自然と人の多様な関係性が宿る のは、必然と言えるのではないだろうか。 そもそも、味わうという行為は、舌の味蕾がキャッチした刺激に加えて、触覚が感じとるテクスチャー、嗅覚が感知したアロマ、言語情報による知覚的影響、そして視覚が捉えるイ

梁 世柱
2021年10月12日


ワインと味わいの不思議な関係
多くのワイン愛好家の方々が、特定の状況や場所で「 ワインをより美味しく感じた 」経験をおもちなのではないでしょうか。今回は、その謎めいた現象に迫ってみたいと思います。なお、本稿の内容は、 科学的見地に基づいた内容では基本的にありません 。あくまでも、実体験に基づく「 推測 」になります。一種の思考実験を覗くようなお気持ちで、お読みいただければ幸いです。 まずは、「美味しく感じた」という体験を、2つの大カテゴリーに分けてみます。 1. シチュエーション(状況)によって美味しく感じる。 2. ロケーション(場所)によって美味しく感じる。 の2種に分けることができるでしょう。 シチュエーション 1のシチュエーションに関しては、 「久々に飲むワイン」 「友人や家族、恋人と飲むワイン」 「仕事後に飲むワイン」 「ピクニックで飲むワイン」 などなど、様々な「ワインを美味しく感じる」シチュエーションが考えられます。

梁 世柱
2021年10月3日


ワインは農産物なのか
葡萄は、その生育年に起こる様々な苦難を乗り越えて実り、造り手たちによって多種多様なアプローチで醸造され、熟成され、ワインとして出荷される。 「ワインは農産物」 使い古された枕詞であるが、今でも本当にそうなのだろうか? 実は、世界中で生産されているワインの大部分(生産量ベース...

梁 世柱
2021年9月7日


テイスティングコメントの不完全さ
ワインをよく知っている人が、あまり知らない人に対してワインについて語る際、 専門用語を連呼 してしまうと、それらの言葉を知らない人にとっては、まるで 理解のできない呪文 のような謎の言葉を延々と繰り返される状態になり、多くの人は(せっかくの素晴らしいかもしれない情報が!)全く頭に入ってこないだろう。そこで役に立つのが、 テイスティングコメント だ。テイスティングコメントには、イチゴ、レモン、リンゴといったおそらく誰でも理解できるタイプのものもあれば、 麝香 (*1)のように、大多数の人にとっては 完全に意味不明 なものもある。テイスティングコメントを理解するのにも、 多少の訓練と勉強は必要 だが、基本的にはそれほど難しくはない。これまでワイン教育の現場に深く関わってきた経験上、多少努力すれば 99%の人は問題なく使いこなせるようになる と断言できる。その程度の難易度ということだ。上級者にとっても、初心者にとっても重要で大変便利なこの「 共通言語 」は、世界各国のあらゆるワイン教育機関で採用され、それぞれ微妙なヴァリエーションの違いはあれど、大筋で

梁 世柱
2021年9月3日


西ドイツを襲った大洪水
7月15日、世界に名だたる銘醸地が連なる西ドイツ(ベルギー、オランダの一部も)を、記録的豪雨とそれによって引き起こされた未曾有の洪水が襲った。13日頃から降り注いだ雨は、複数のエリアで例年同時期の約2ヶ月分に相当する降雨量を24時間で記録し、多くの河川を氾濫させた。...

梁 世柱
2021年7月21日


サン=テミリオンの衝撃
2021年7月上旬、世界中の熱心なワインファンに衝撃を与えるニュースが、フランス・ボルドー右岸の銘醸地であるサン=テミリオンから舞い込んできた。

梁 世柱
2021年7月13日
bottom of page