Search Results
空の検索で1008件の結果が見つかりました。
- 「甘い」言葉に潜む罠
ワインにとって、「 甘い 」という表現は何を意味しているのだろうか。 これは非常に奥深いテーマであり、長年に渡って、 ワイン販売者と消費者の間や、愛好家同士の間にそびえたってきた、分厚い壁 でもある。 もちろん、「甘い」という表現は、「 美味しい 」と同様に、 最終的には完全に主観 となってしまうものなのだが、それでも(特に販売者、紹介者としては)どこかに線引きをしておかないと、 自身の発言が支離滅裂なものとなりかねない 。実に悩ましい問題だ。 基本的には、 ワインの甘さというのは、糖度と酸のバランスによって確定する 、としておくのが、最もセーフな考え方だろう。 レモネード を思い浮かべていただきたい。 レモン果汁だけでは、その強烈な酸故に、極めて酸っぱい(辛い)状態となるが、そこに砂糖を加えることによって、徐々に辛口から甘口へと向かっていく。 ワインも原理的には同じと考えて良い。 白葡萄品種では、 リースリング を例にすると分かりやすいだろう。
- ワインの王、王のワイン <ピエモンテ・ネッビオーロ特集:第二章>
過日、とあるワイン初心者の方から質問を受けた。ピエモンテ州の同じ造り手で、DOCGのワイン(Dogliani)よりも、DOCのワイン(Langhe Nebbiolo)の方が高いのは何故か、と。DOCGは最高位格付けでは無いのか、と。 まさに 雨後の筍 。次々と認定され続けるイタリアの最高位格付けたるDOCGは、 既に意味消失して久しい 。それは、ピエモンテ州に限ったとしても同様だ。Barbera d’Asti、Dolcetto di Dogliani Superiore、Erbaluce di Caluso、Ruche di Castagnole MonferratoといったDOCGは確かにどれも注目に値する素晴らしいワインだが、最高位格付けにふさわしい「 品格 」は無い。いや、品格の話をするのなら、最高位に座せるのはピエモンテ州では ネッビオーロしかそもそもあり得ない 。そして、その頂点は当然、 BaroloとBarbaresco だ。 本章では、ピエモンテ州の真に頂点たる2つのDOCGの中から、 Barolo に焦点を当てて、細かく追っていく。各 小自治体( コムーネ )に関しては、コムーネ内にある偉大なクリュと、そのクリュの代表例として、様々な造り手を紹介していく。 筆者はバローロという偉大な産地は、ブルゴーニュと同じように、全てのワインファンにとって、「 憧れ 」の対象となるべきと考えている。この地には、そうなるにふさわしいだけの、数多くの偉大なワイン、偉大な畑、そして偉大な造り手が集まっている。少々長文にはなってしまうが、筆者のありったけの情熱を注ぎ込んで、バローロの魅力を伝えていくので、少々お付き合い頂きたい。 Barolo DOCG 数度の改定は経たものの、現在の規定は 2010年改定時 のものがベースとなっている。 DOCG規定の主要部分は以下の通り。特に、葡萄畑の条件とクリュ名( M.G.A )記載時の規定が2010年に 厳格化 された。 改定前に認定済みの畑に限っては、改定後の規定に該当していなくても問題ないとされた 。 *スタイル* 赤ワインのみ(ロッソ、リゼルヴァ) *葡萄品種* ネッビオーロ100%(認可クローンは、 ミケ、ランピア、ロゼ ) *熟成* 収穫翌年の1月1日から数えて、以下の通りに規定。 Barolo:38ヶ月の熟成、内18ヶ月は樽熟成 Barolo Riserva:62ヶ月の熟成、内18ヶ月は樽熟成 *葡萄畑* 土壌 :粘土質、石灰質を中心としている。 立地 :丘の斜面に位置する畑のみ。谷の低地、平坦な地、日当たりの悪い場所、湿度の高い場所は全て条件を満たさない。 高度 :葡萄畑の標高は、最低170m、最高540mの範囲内。(Barbarescoよりも基本的に標高が高い) 方角 :日当たりに特段優れていること。しかし、北向きの-45°~+45°(要するに真北を向いた畑)は除外する。 植樹 :最低でも3,500本/ha 剪定 :ギュイヨ *最大収量と最低アルコール濃度* クリュ名(M.G.A)記載の有無に関わらず、Barolo、Barolo Riserva共に以下の通り。 最大収量:8t/ha or 約56.0hl/ha 収穫時の最低潜在アルコール濃度:12.5% リリース時の最低アルコール濃度:13.0% *イタリアでは補糖が禁止されているにも関わらず、潜在アルコール濃度とリリース時の最低アルコール濃度に差異があるのは、最終的なアルコール濃度表示に±0.5%の誤差が認められているため。 クリュ名(M.G.A)を記載した場合、Barolo、Barolo Riserva共に以下の通り。 最大収量:7.2t/ha or 約50.4hl/ha 収穫時の最低潜在アルコール濃度:13.0% リリース時の最低アルコール濃度:13.0% また、クリュ名(M.G.A)を記載するワインが、6年以内の若木から造られる場合は、最大収量にさらに厳しい規制がかかり、以下の通りとなる。 3年目若木最大収量:4.3t/ha or 約30.1hl/ha 4年目若木最大収量:5.0t/ha or 約35.0hl/ha 5年目若木最大収量:5.8t/ha or 約40.6hl/ha 6年目若木最大収量:6.5t/ha or 約45.5hl/ha また、特別に良好なヴィンテージに限って、最大20%の収量増が認められ、逆に極めて困難なヴィンテージの場合は、さらに厳しい収量制限が課される。 これらのDOCG規定は、余程熱心なワインファンか、ワインプロフェッショナルにしか必要ではない情報だが、現在Barolo DOCGは非常に厳しい規定のもとに品質管理がなされているということだけは、バローロを正しく知る上で、理解しておくべきだ。 Barolo DOCGの規定(イタリア語原文) Barolo Classico 小都市アルバから南西に約11km行くと、Barolo DOCGのエリアに入る。現在は11のコムーネ(小自治体)から形成され、総面積約2,000ha弱となっているが、徐々にエリアが拡大されてきた歴史がある。 1896年 、イタリア農業省が制定したエリアは、以下の5つのコムーネだった。 ・ Barolo (バローロ) ・ La Morra (ラ・モッラ) ・ Castiglione Falletto (カスティリオーネ・ファッレット) ・ Serralunga d’Alba (セッラルンガ・ダルバ) ・ Monforte d’Alba (モンフォルテ・ダルバ) 1909年 、アルバ農業委員会がさらに以下の3つのコムーネを追加した。 ・ Novello (ノヴェッロ) ・ Verduno (ヴェルドゥーノ) ・Grinzane Cavour(グリンツァーネ・カヴール) 1966年、Barolo DOCの設立 に伴い、以下の3つのコムーネが追加された。 ・Cherasco(ケラスコ) ・Diano d’Alba(ディアーノ・ダルバ) ・Roddi(ロッディ) このように拡大してきたとはいえ、Barolo DOCGを理解するために知っておくべきコムーネは限られていると言える。本特集では、1896年に制定されたオリジナルの5つのコムーネに、1909年組のノヴェッロとヴェルドゥーノを加えた7つのコムーネを、非公式の 「 バローロ・クラシコ 」 と呼称して、全Barolo DOCGの90%以上を生産しているこのゾーンを中心に、話を進めていく。裏を返せば、筆者がクラシコに含めなかった4つのコムーネに関しては、Barolo DOCGに含まれていること自体に疑問があるということだ。
- 出会い <3> 最高過ぎた「師匠の教え」
Shared Notes, Les leçons des maîtres 2019. ¥11,000 ソーヴィニヨン・ブラン の代表的な産地はどこでしょうか? 真っ先に思い浮かぶのは、 フランス・ロワール渓谷のサンセールとプイィ・フュメ 。 緻密なミネラルと、エッジの効いた酸がスタリッシュな産地です。 次は、 フランス・ボルドー か、 ニュージーランド・マルボロ でしょうか。 ボルドーはセミヨンやミュスカデルとのブレンドが基本で、より甘やかな果実味と、まろやかな酸、そして新樽もしっかり効かせる傾向があります。 マルボロも非常に個性的。パッションフルーツやハーブのアロマが全開で、万人受けしやすい味わいと言えます。 他にはどうでしょうか? イタリアの アルト・アディジェ 、オーストリアの ズートシュタイヤーマルク 、オーストラリアの マーガレット・リヴァー などなど、他にも素晴らしい産地が色々ありますね。この品種に関しては、日本の 長野 もかなり良い線行ってると思います。 あれ?何か重要な産地を忘れているような。 ソーヴィニヨン・ブランの話題になったとき、よくこの現象が起こります。
- 栄光は霧の中 <ピエモンテ・ネッビオーロ特集:序章>
目に飛び込んでくる世界が紅葉色に染まり、冬の足音が聞こえてくる頃になると、私はいつもピエモンテに想いを馳せる、そしてネッビオーロが恋しくなる。かすかにオレンジがかった魅惑的なワインのエッジがそうさせるのか、枯葉を思わせる滋味深いアロマがそうさせるのか。でも、その想いはいつも、もどかしさや、やりきれなさによって、少し苦い味になる。 偉大なバローロやバルバレスコが、なぜブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュに比べて、こんなにも過小評価されているのかと。 世界最高の黒葡萄の一つであるはずのネッビオーロが、なぜピノ・ノワールと並び称されていないのかと。 イタリアという国の長い歴史を振り返ってみると、いつの時代も、 肝心な時に一枚岩になり切れなかったことが、イタリアを真の栄光から遠ざけてきた ことがわかる。 そしてそれは、ピエモンテにおいても同じだ。 永劫に続くかのような分断と闘争の果てに、ピエモンテは、ネッビオーロは、いったいどこへ向かっているのだろうか。 今一度、確かめてみたい気持ちになった。 本章から全4章に渡って、ピエモンテ州のネッビオーロを特集する。 序章である本章は、次章以降をより深く理解するための 前段階的内容 となっており、ネッビオーロの歴史とともに、過去数十年間のダイナミックなピエモンテ州の動きを中心に、様々な角度から追っていく。 黒葡萄の王、ネッビオーロ 世界でも屈指の、 気難しい品種 と言われる ネッビオーロ 。この古代品種の名が確認できる最古の文献( nibiol と表記されていた)は 1266年 にまで遡ることができるが、実際はもっと古くから栽培されてきたと考えられている。名前はイタリア語で「 霧 」を意味する Nebbia が語源とされているが、収穫期にピエモンテ州の丘を覆う霧のことを直接的に差しているのではなく、成熟したネッビオーロの果実が、葡萄から自然発生した蝋状の粉によって白く「霧のように」覆われる様子から名付けられたという説の方が信憑性が高いと考えられる。ネッビオーロの同意語の一つである prünent (ピエモンテ州北部のVal d’Ossola近郊での呼び名)も、イタリア語でこの蝋状の粉を意味する pruina を語源としているという説が有力視されている。
- 静的なエネルギーに満ちた野武士の如きチェコワイン
別府さんは、世界中の多種多様なワイン産地をカヴァーしつつも、オーストリア、ポルトガル、そして中央ヨーロッパ諸国に造詣が深く、日本のワインファンにとってはまだまだ謎めいたワイン産地の魅力を伝えるトップエキスパートです。今回は、チェコワインの魅力に迫ります。 ------------------------------------------------------------ 迫力。 チェコ のワインを飲んで常に感じるのは迫力だ。力強さともインパクトとも少し違う、 野武士のような骨っぽさ 。ボディビルダーのようにシェイプされた近代的なワインとは少し違う、 佇まいから伝わる凄み 。それは動的な動きの凄さではなく、 静的な静けさから響いてくる ようだ。少しでも気を抜いたら襲われそうで動けない、 野生の動物に対峙した時のような緊張感 がどこかにある。 そんなチェコのワインが気になって何度か産地を訪問したが、 未だにその味わいの理由はよくわからない 。チェコ最大の産地である 南モラヴィア は国の南東部にあり、 オーストリア国境沿い に位置している。首都のプラハよりもウィーンに近い。オーストリアのヴァインフィアテルとも接していて、特に国境を隔てるような山脈があるわけでもない。しかし洗練の極みとも言えるオーストリアのスタイルと比べると、チェコの味わいの違いは明らかだ。 チェコとオーストリアを隔てたのは、地勢ではない。 歴史 だ。 ドイツやオーストリアといった大国に挟まれ翻弄された歴史をもつチェコだが、15世紀から20世紀にかけての長い間、ハプスブルグ家の統治を受けていた。余談だが、オーストリアを代表する黒品種として知られる ブラウフレンキッシュ は、ハプスブルグ家の影響の濃い中欧の国々(東欧とは呼ぶ勿れ。中欧だ。)には今でも広く植えられている。ハンガリーではケークフランコシュ、チェコやスロヴェニア、クロアチアでは フランコフカ と呼ばれる。 第一次世界大戦後にチェコスロバキアとして独立するも、第二次世界大戦中にナチス・ドイツの侵攻を受け解体。ナチス・ドイツが敗走し、ソ連によって解放されたことでオーストリアとは異なり、共産国としての歩みを進めることになる。民主化は1989年になってからのことだ。 近年、日本でも旧共産圏の国々のワインを目にするようになってきた。ソ連が崩壊し、旧共産圏の国々は西側の投資を受けるようになり、それまでの生産量重視から技術革新を経て輸出向けのワインを作るようになった。 もちろんチェコでもそういったワインは多くある。が、往々にして、それぞれの国や地域のアイデンティティが見つけづらいワインであることも多い。残念ながらそういったワインには迫力や凄みはなく、多くの場合「よくできたワイン」の枠を超えない。「よくできたワイン」は世界中にある。求めたいのは、文化やその造り手なりの強い匂いのする、そこにしかないワインなのだ。 生産者:Dobrá Vinice / ドブラー・ヴィニツェ ワイン名:Muller Thurgau /ミュラー・トゥルガウ 葡萄品種 :Muller Thurgau /ミュラー・トゥルガウ ワインタイプ :白ワイン 生産国 :チェコ 生産地 :South Moravia / 南モラヴィア ヴィンテージ :2019 インポーター :Japan terroir 参考小売価格 :¥3,900 ドブラー・ヴィニツェ は、その点で最良の造り手だ。 飲めば分かる。圧倒的な迫力。 ミュラー・トゥルガウは一般的に日常消費用の気軽なワイン用の品種だと思われているが、どうしてこんなにエネルギーに溢れたワインができるのかと思う。 砂岩をくり抜いた伝統的な洞窟をセラーにし、ジョージアのクヴェヴリをその中に埋めるほどに新しいものを取り入れているが、しかし造っているワインは紛れもなく、そしてどこよりもチェコらしい。静的でかつ何よりも迫力がある。 チェコは大国に挟まれ、常に翻弄されてきた。 この力強さを強く秘めたようなワインは、何よりもその歴史を思わせるのだ。 <プロフィール> 別府 岳則 / Takenori Beppu Wine in Motion代表 WSET®Level 4 Diploma オーストリアワイン大使(Austrian Wine Marketing Board) ポートワイン・コンフラリア カヴァレイロ (Institute dos Vinhos do Douro e Porto) International Personality of the Year 2018 (ViniPortugal) Award of Excellence (Austrian Wine Marketing Board) J.S.A.認定ソムリエ レストラン、インポーター、ワインショップを経て独立。 海外ワイン協会や生産者の様々なプロモーションに携わる。 プロフェッショナル向け、ワインラバー向けのセミナーやウェビナーも多数。
- 再会 <3> 天才と狂人の間で
Nicholas Renard, Lulu 2015. ¥4,700 フランス・ ロワール渓谷 。多種多様な小産地を内包し、葡萄品種のヴァリエーションも豊か。小産地間にも、使用品種だけでなく、明確な味わいやスタイルの違いがあって、 とてつもなく奥が深い産地 です。 ロワール渓谷の中に、イタリアの3州分くらいが詰め込まれている、と言っても良いかも知れません。 この渓谷の世間的なスーパースターは、間違いなく ソーヴィニヨン・ブラン から造られる サンセールとプイィ・フュメ ですが、 シュナン・ブラン にとっても ロワール渓谷は聖地 です。むしろ、フランス内の他の産地や、フランス国外でも成功例がたくさんあるソーヴィニヨン・ブランに比べると、ロワール渓谷にとってのシュナン・ブランの価値はもっと高いのでは思います。 単一の原産地呼称を与えられている「 クーレ・ド・セラン 」を擁し、ビオディナミ農法の世界的なリーダーとしても知られる ニコラ・ジョリー( Savennières )は、シュナン・ブランの王様。 他にも、極甘口から辛口まで幅広く隙のないシュナン・ブランを手がける ドメーヌ・ユエ( Vouvray )、ナチュラル・ワイン界最高の賢人の一人 マルク・アンジェリ( Anjou )、たくましくも瑞々しいワインが魅力的な クロ・ルジャール( Saumur )、繊細で絶妙なバランス感が絶妙な フランソワ・シデーヌ( Montlouis-sur-Loire )など、各小産地に 世界トップクラスの造り手 がひしめいています。
- 葡萄品種から探るペアリング術 <5> リースリング
葡萄品種から探るペアリング術シリーズは、特定の葡萄品種をテーマとして、その品種自体の特性、スタイル、様々なペアリング活用法や、NG例などを学んでいきます。 今回は、 リースリング をテーマと致します。 また、このシリーズに共通する 重要事項 として、葡萄品種から探った場合、 理論的なバックアップが不完全 となることが多くあります。カジュアルなペアリングの場合は十分な効果を発揮しますが、よりプロフェショナルな状況でこの手法を用いる場合は、ペアリング基礎理論も同時に参照しながら、正確なペアリングを組み上げてください。 リースリングのスタイル リースリングの醸造方法は 世界的に一貫性 (シャルドネやソーヴィニヨン・ブランほど多様ではない)が見られますが、 テロワールには極めて敏感 であり、 品種自体の個性も強く出ます 。リースリングの醸造過程で、 新樽が登場することは極めて稀 です。もちろん例外はありますが、バリック熟成をしたリースリングの成功例もまた、極めて稀と言えます。リースリングの大多数は、(産地を問わず)ステンレスタンク、コンクリートタンク、古い大樽といった、 ワインに対して積極的な風味付けをしない容器 が用いられています。また マロラクティック発酵をすることも滅多にありません 。リースリングは酸度が高く(pH値が低い)、酸化にも弱いため亜硫酸を適宜使用することが一般的であり、これらの要素はマロラクティック発酵を阻害してしまうからです。 また、リースリングは 非常に幅広い残糖度のヴァリエーション があることが、良く知られています。 「無条件甘い」というイメージが根強く残っていますが、完全に間違った認識です 。リースリングは極辛口〜極甘口のどの段階でも、テロワールの条件が合っていれば、全く隙のないワインとなります。 リースリングの産地 リースリングを積極的にペアリングに用いていくためには、 どの残糖度のスタイルが、どこで造られているかを把握する ことが何よりも重要です。以下にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。なお、以下に挙げた産地は、筆者がリースリングの 銘醸地 と確信している産地に限っています。どこの産地にも例外的に素晴らしいリースリングを手がける作り手はいるものです。また、辛口が主体の産地でも、僅かに甘口や極甘口が造られていることも多々ありますが、表記しているのはそのスタイルがより多く確認できる産地に限っています。
- 「海近のピノ・ノワール」と「ピノ・ノワールのクローン」
ロンドンでソムリエ業を、ニュージーランドとイタリアでブドウ栽培、ワイン醸造を学んだ後に、北海道余市町でさらに経験を積み、満を辞して北海道北斗市に自らのワイナリーDue Puntiを設立した井坂さんは、冷涼気候に強い拘りをもち、栽培家、醸造家としてクレヴァーな視点から、魅力あるコラムを展開されています。今回は世界の大人気品種であり、冷涼気候品種の代表格、ピノ・ノワールのお話です。 --------------------------------------------------------- オーストラリアの南部に位置する、 ヴィクトリア州のモーニントン半島 。ここはオーストラリア本土の中でも 冷涼 な地域の一つであり、ピノ・ノワール、シラー、シャルドネ、ピノ・グリを中心に、総じてレベルが高いワインが生産されている半島です。ただ、同じヴィクトリア州の産地でも、 ヤラ・ヴァレー ほど知名度はなく、 殆どの生産者のワインが日本に輸入されていない産地 でもあります。 どの畑も海から7kmも離れておらず、バス海流、ポートフィリップ湾、ウェスタンポート湾に囲まれていて、まさに海に囲まれた半島 !というピノ・ノワールにとっては、 珍しい立地 に心惹かれます。 メソ・クライメート、マイクロ・クライメート (*1)と 古代の土壌、標高などの違い がピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・グリージョ(ピノ・グリ)やシラーズ(シラー)といった多様な品種の生育を可能にする、 複雑な区域構成 を創り出していて、産地の歴史は浅いですが、情熱的に品質の高いワインを求める生産者たちのおかげで、 ワールドクラスのワインも数多く生産 されています。 GDD( 有効積算温度 )は1080-1570度(因みに私の栽培している北海道北斗市は平年で約1100度)で、畑によるマイクロ・クライメートとヴィンテージによる気象の差が出やすい産地でもありますが、生育期の降雨量は300mm後半、最も暑い1月の平均気温は約19度と、 適度な雨量と涼しい夏の生育条件が良いピノ ノワールの栽培を可能にしています 。 初めてピノ・ノワールがオーストラリアにもたらされたのは 1830年代 にブルゴーニュから、その中には1971年に正式に登録されたクローン(*2)、Mother Vine 6 ( MV6 )もすでに含まれていた模様で、このMV6は現在もオーストラリアの生産者の中ではその汎用性とクオリティから一番ポピュラーなクローンとなっています。その後1990年台半ばには ディジョン・クローン (*3)がやってきており、「MV6」「D5V12」「D4V2」などオーストラリア独自のクローン(とはいえ起源はブルゴーニュのコート・ドール)が多い中、近年はディジョン系クローンを増やしていっている生産者がおり、今後更に品質に期待ができそうな産地だと感じます。 私にとっては2013年にワイナリー訪問の旅をした思い出の産地でもあり、特に Hurley Vineyard を訪れた際には、 樽からのテイスティングをクローンごとに させていただくという貴重な経験をさせてもらいました。その際のテイスティングノートを振り返ると、シンプルですが、 「MV6」 良い骨格、タンニンもしっかり 「777」 一番強い芳香 「114」 上記2種より、色合いの濃いめの果実の風味と複雑さが出てくる(115も同様) 「115」 エレガントで滑らかなテクスチャー と記していました。同じ醸造方法で造られたワインで、なおかつ同じディジョン系のクローンでも、 クローン番号が違えばそれぞれ味わいに個性があります。マリアフェルド系統 (*4)とディジョン系統のクローンの味わいはさらに違ったものになりますし、とにかくクローンによって栽培における耐病性や管理の仕方、ワインの味わいの変化が激しいのがピノ・ノワールという品種です。そのため新しく植えられるクローンが、その産地の今後の味わいの個性やクオリティに影響しうる、 非常に重要な選択 でもあります。 例えば ドイツ では「 FR52-86 」などのいわゆる 古典的なクローン が、1950年代以降2000年までにピノ・ノワールの全クローンの内90%以上占めてきましたが、大きな房で過密着タイプであることから灰色かび病に極めて弱いため、 房がコンパクトにならず病気に強いマリアフェルド系統 が、1990年以降急速に植えられてきました。2007年以降はワインにした時の味わいをより考慮し、新しく開発されたクローン、例えば「 FR1801 」(ディジョン系とマリアフェルド系をミックスしたような特徴)や「 F105-S 」(従来型の改良クローン)が最も植えられたクローンのようです。ちなみに、 このクローン2種は私の管理する圃場でも将来的に取り入れていきたい、と思っています !灰色かび病に最も弱いディジョン系クローンは、ドイツではいまだに殆ど一般的ではなく、こういったクローン選択もドイツのピノ・ノワールから造られるワインの味わいに少なからず影響していると思います。 冷涼で湿度の高い北海道 で栽培を行なっていく上で、 ディジョン系クローンは最もリスクの高い選択 ですが、 良い果実が収穫できればやはり品質の面では最高な結果をもたらしてくれると信じています 。とはいえ上述した通り、 リスクの分散 の意味でも灰色かび病に強い系統のクローンも植栽しておくことは非常に大切なことだと認識しています。日本の気候を考えて品種やクローンを試していき、ワインの品質や収穫量、また作業の負担を考慮しつつ、どこで折り合いをつけていくのが良いのか、今後つかんでいきたいところです。 ドイツ、日本と話は少し逸れてしまいましたが、今回のワインは パリンガ・エステートのペニンシュラ ピノ・ノワール2018 です。モーニントン半島のピノ・ノワールの魅力を気軽に感じられるワインで、迫ってくる赤系果実の強い芳香があり、しっかりとした酸と赤い果実主体のジューシーさが調和し、軽やかですが骨格もあり芯のある味わい。複雑味はそこまでないタイプですが、この価格なら大満足のピノ・ノワールであり、三方を海に囲まれた特異な産地、モーニントン・ペニンシュラの魅力を十分に楽しむことができます。 生産者:パリンガ エステート 生産国:オーストラリア 生産地:モーニントン・ペニンシュラ ワイン:ペニンシュラ ピノ・ノワール 生産年:2018年 ブドウ品種:ピノ・ノワール インポーター:ヴァイ&カンパニー 希望小売価格:3,900円(税別) *1 メソ・クライメート:中気候(傾斜の向きや、傾斜度、標高の条件等) マイクロ・クライメート:微気候(同じ畑でも、ブドウの仕立て方などの違いによって現れる違い) *2 クローン:選ばれた母木と同じ遺伝的組成を持つため、同じクローンであれば果実は均質化しやすい。同じブドウ品種でもクローンが違えばブドウの特性も異なってくる *3 ディジョン系クローン:1980年代からブルゴーニュで台頭してきたピノ・ノワールのクローン。113, 114, 115, 667, 777等の番号で現在ENTAV-INRA®︎に登録されている *4 スイスからやってきた「10/5」やドイツでは「FR12,13」等が属するクローン。新梢が真っ直ぐ伸び管理がしやすく、病気に強いタイプ <筆者プロフィール> 井坂 真介 / Shinsuke Isaka DUE PUNTI株式会社 CEO 1985 鹿児島県生まれ兵庫県出身 学生時代のレストラン勤務時に飲んだアスティ・モスカートでワインの世界にエントリー。その後インポーターの営業とソムリエ業をそれぞれ大阪とロンドンで、またブドウ栽培・ワイン醸造をニュージーランド、イタリア、北海道余市町で経験。2020年2月北海道北斗市で独立し自社醸造を目指している。 J.S.A.ソムリエ、WSET®︎Advanced Certificate < DUE PUNTI株式会社 > ワイナリー運営のため北海道北斗市に設立(2020年2月)。2021年醸造開始を目標に現在準備中。自社畑は2020年に約1.2ha分を植樹。「品質ファースト」と「広い視野」というDue Punti(2つの点)を指標に自分でも毎日飲みたくなるようなワイン造りを目指す。
- 衝撃のブラインドテイスティング
ホテルニューオータニ博多の歴史あるメインダイニング、カステリアンルームでご活躍の千々和ソムリエは、世界各国の銘醸ワインだけでなく、カジュアルなワインや、日本ワインにも精通するトップソムリエです。幅広い視点から、そしてプライヴェートな体験も交えて展開されるコラムをお楽しみください。 ----------------------------------------------------- 今回は、過去に行ったブラインドテイスティングで、最も衝撃を受けたワインを御紹介します。 このワインに出会ったのは、数年前に博多のソムリエ仲間が10名位集まったある会合での事。 私は、コンクールは別として、普段のブラインドテイスティングでは銘柄や葡萄品種等は気にせず、 グラスの中のワインが、どのようなワインなのかをコメントする よう心がけていて、大人数でする時はいろんなソムリエのコメントや考え方を聞けるのですごく勉強になるし、新たな発見も良くあるのでブラインドテイスティングは率先して挑むタイプの人間だ。 ただ、この時に関しては先輩の悪ふざけによって余興として始まり、会の主催でもあった先輩の自信満々な表情から、デイリーワインではない…レアな生産者のワイン、もしくはなかなか手に入らない国のワイン…または選択肢にないような珍しい葡萄品種から造られたワインとかだろうか…という今思えば非常に痛い先入観をもってしまっていた。 会場の店内は、ブラインドテイスティングにはもってこいと言えるほど明るい照明で、先輩のどや顔と共にワインが登場。 トレイにのった状態でも淡い色調で透明感のあるラズベリーレッドとみて取れたので、色素の薄い葡萄か冷涼な山地のワインか…と思いを巡らせていた。 香りを嗅いだ瞬間にラズベリーやレッドチェリー等の赤系果実の香りが感じられ、クリーンで程よい濃縮感があり、空気に触れさせると香りが広がりグリーンペッパーやセージの香り、オークのニュアンスはそれほど強くなくエレガントな印象。 味わいは、しっかりとしたアタックにドライで酸味のバランスが良く、アルコールのボリューム感も中程度。適度なタンニンがありコクのある構成のミディアムボディ…余韻に赤い果実の香りがあり、更にスパイシーな香りも感じられる。調和が取れていて心地よいワイン。 といったコメントをしながら、 これは間違いなく ピノ・ノワール だと直感で感じた。 グラスの中からワインが「さぁ!私の産地を当てなさい!」と言ってきているようで、 「この葡萄ってあれですよね?」 と私が探ると、他のソムリエも、 「問題は産地ですよね。国から行きます?北?南?」とコメントしてきたので、 ブルゴーニュなのか…?なんにせよ美味しいワインだ! と思っていると先輩より、「そろそろ良い?」 と言われたので、 「ヨーロッパです。」と反則的な広範囲を答えると、 「ヨーロッパのどこ?」との返事が返ってきました。 やっぱりブルゴーニュか…にしては軽やかかな….分からん…と思っていると、やがてイランシー、ジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニーなど銘醸地の名前が出てくるようになり、鉄っぽさある?紅茶のニュアンスは?と自問自答し、当たる自信は無かったが「コート・ドールかコート・ド・ニュイ」と答えて結果発表。 生産者:ティミオプロス ワイン名:ナウサ・ジューヌ・ヴィーニュ・ド・クシノマヴロ 葡萄品種:クシノマヴロ100% ワインタイプ:赤ワイン 生産国:ギリシャ 生産地:ナウサ ヴィンテージ:2018 参考小売価格:1,700円(税抜) インポーター:ラシーヌ 私のテイスティング能力の低さはおいといて、とにかくコストパフォーマンスの高さに驚愕。 「 ギリシャ にこんなエレガントな素晴らしいワインがあるのか!」と叫んでいた。。。 恥ずかしながら当時の私にギリシャワインという選択肢は無かったが、今ではその先輩には感謝しかない。 それ以降は グラスワインとして使用 するなど、その魅力に取り憑かれてしまった。 クシノマヴロ (黒い酸)は名前の通り、酸味をしっかりと感じ、穏やかなタンニンと豊かな果実味のある品種で、もっとタンニンが強く凝縮感のあるワインが多いと思っていたが、このワインは少しだけ若い 全房 を混ぜる事でフレッシュさとハーブ感を与えエレガントで爽やかなワインに仕上げている。 コルドン・ロワイヤ (広く普及している剪定方法の一つで、高品質型の剪定の一つとされる)で仕立てられ、 ビオディナミ農法 で自然酵母を使用と、随所に拘りがうかがえる。 中ぶりのバルーン型のグラスで香りを楽しみながら、これから博多では鍋が楽しまれる時期になるので、ぜひご家庭で、もつ鍋やすき焼き、寄せ鍋等と合わると美味しくいただけると思います。 ワイン好きな友人などを招いてブラインドで提供すると、盛り上がる事間違いなしの一本です! <ソムリエプロフィール> 千々和 芳朗 / Chijiwa Yoshirou ホテルニューオータニ博多 カステリアンルーム ソムリエ 1979年福岡生まれ。大学を卒業後グランド・ハイアット福岡に入社し、様々なレストランにてソムリエとして研鑽を積み、2019年7月より現職。 JSA日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ、ASI国際ソムリエ協会認定ディプロマ取得。 第一回ボルドー&ボルドーシュペリュールソムリエコンクールファイナリスト 第二回ボルドー&ボルドーシュペリュールソムリエコンクール準優勝 <ホテルニューオータニ博多 カステリアンルーム> 1978年に創業した歴史ある老舗ホテルのメインダイニング。長年にわたりストックされてきたワインや毎月開催されるワイン会やメーカーズディナーを求めて全国からワイン愛好家が集うフランス料理店。
- 再会 <2> 南アの絶対王者
Mullineux, Syrah 2016. ¥4,700 南アフリカは今、猛烈な勢いで新しいワインが続々と登場しています。当然、 新陳代謝 もおこるので、新しい生産者に注目が集まる一方で、馴染みの銘柄が少し軽視されがちにもなります。新しいもの好きの筆者もその例に漏れず、ニュースターばかりを試している間に、かつて大好きだったワインと、少し距離が空いてしまうことがしばしばあります。 マリヌー との2年ぶりの再会は、そんな流行りを追いかけてばかりいる日々を、猛烈に反省する出来事となりました。 栽培を担当する クリス・マリヌー 、そして醸造を担当する アンドレア・マリヌー は、南アフリカが世界に誇る最強の夫婦です。
- 出会い <2> ピエモンテのライジングスター
Nicholas Altare, Langhe Nebbiolo 2019. ¥4,900 イタリアの ピエモンテ州 といえば、なんといっても ネッビーロ という黒葡萄から造られる、 バローロとバルバレスコ が有名です。イタリアに数多くある最高の赤ワインの中でも、頭ひとつ抜けた存在といえるワインですが、2つほど難点があります。 1. 安くはない 2. 飲み頃の判断が難しい 偉大な産地のネッビオーロを、古典的なタッチで造るとどうしても超長期熟成型になりますし、多少最近風のタッチが加わったとしても、まだまだ若い間は固さが残りがちです。ワインショップでパッと買ってきて気軽に飲むには、残念ながら、なかなか難しいワインなのです。 ならば、ちょっと広い範囲で見れば近所のエリア(ランゲ地区)にある畑で栽培されたネッビオーロから造られた「 ランゲ・ネッビオーロ 」というワインはどうでしょうか?
- 再会 <1> シャンパーニュ最上?のクリュ
Philipponnat, Clos des Goisses 2011











