オレンジ色の夢の続き <オレンジワイン特集前編>

オレンジワインは、過去からの手紙を収めたタイムカプセルのような存在だ。そこには、センチメンタルな美しさと儚さがあり、時空を超えたノスタルジーがある。近代的醸造技術が発した同調圧力は、強引な都市開発が古民家を破壊し尽くすかのように、そこにあったはずの確かな価値を、文化と伝統の墓場へと放り込んだ。しかし、地中深くに埋められた古典美は、志高き英雄達によって掘り起こされ、再興の道のりを力強く一歩一歩踏みしめながら、進んできた。


改めて向き合おうと思う。オレンジワイン再興の物語と。そして、その夢の続きと。


名称と色

オレンジワインというカテゴリー名は、2004年イギリスのワイン商であるDavid A. Harveyによって考案された。オレンジワインに関する最古と目される歴史をもつジョージアでは、歴史的に「アンバーワイン(琥珀色のワイン)」という意味をもつKarvisoeri ghvinoという呼称が用いられてきたため、正にジョージアスタイルのオレンジワインをアンバーワインと呼ぶことも多いが、単純に「カテゴリー名」としての機能を考えた場合、圧倒的な認知度を誇るオレンジワインの明確な勝利と言える。歴史と文化へのリスペクトという点を鑑みても、このカテゴリー名称論争に意義はあまり無い。カテゴリー名とは、共通言語としての役割を与えられた記号である。つまり、より多くの人に伝わる言葉こそがその役割を最も的確に果たしている。


オレンジという言葉につられて、色から判断した否定的意見も非常に多く見られるが、この点に関しては、あまりにも短絡的であると断ずるしかない。真っ白な白ワインも、真っ赤な赤ワインも存在していないのに、なぜオレンジワインにだけは「オレンジ色」であることを求めるのか



暫定的定義

世界的に認められるオレンジワインの明確な定義は、まだ確立していない。しかし、総体としての暫定的定義であれば、十分に有効と言える段階までは、オレンジワインへの理解が進んできているのも事実だ。本稿においても、現実点(2021年)での暫定的定義を、筆者なりの視点から、解説も含めて項目ごとに纏めておく。



*使用葡萄*

白葡萄、及びグリ色葡萄


解説:グリ色葡萄を除外した場合、北イタリア・フリウリ州の伝統的なラマート(詳しくは後述)から発展した数々のワイン(グリ色葡萄を醸し発酵したワイン)が、カテゴリー不明となる。現時点では、このタイプに限定したカテゴリーを新たに生み出すよりも、オレンジワインの定義の中に含めた方が分かりやすい。



*醸造法*

葡萄の果皮(場合によっては種や茎も)を果汁に浸漬させた状態で、24時間以上発酵する


解説:グリ色葡萄のオレンジワインと、ロゼワインの境界線や、非常にライトなスタイルを考えた場合、24時間というラインが妥当と考えられる。また白ワインの醸造でも非常に一般的なコールド・マセレーション(発酵が始まらない低温に維持した果汁に、果皮を漬け込む工程)は、「発酵していない」という点が極めて重要なポイントとなり、白ワインとオレンジワインを明確に隔てている。

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