ワインの「ネズミ臭」と発酵食品の共通点
――ワイン・マッコリ・キムチ・ビールを、乳酸菌と香りの研究から考える
調査基準月:2026年9月
はじめに
ワインを飲んだ後に、ネズミの飼育ケージや湿った穀物、米菓、だだちゃ豆のような香りが口の奥に残ることがある。
「ネズミ臭」、日本では俗に「マメ臭」と呼ばれる欠陥的特徴だ。
今回の調査は、ワインだけでなく、マッコリやキムチでも同じような香りを感じ、ビールではそれに似た軽い香りを感じたという体験に、連続性と再現性が見られたことを、出発点としている。
いずれも、口に入れる前より、飲み込んだ後に遅れて強く残るという共通点があった。
公開されている研究を調べると、乳酸菌は、この4つの食品・飲料をつなぐ重要な存在であることがわかる。
ただし、乳酸菌が関わっていることと、同じ臭いの原因物質が作られていることは、分けて考える必要があるだろう。

1.ネズミ臭とは何か
ネズミ臭は、英語では mousy off-flavour や mousiness、フランス語では goût de souris と呼ばれる。
表現には幅があり、ネズミの飼育ケージのほか、クラッカー、米菓、ポップコーン、ソーセージの皮、だだちゃ豆などに例えられる。
こうした香りの表現だけでは、欠陥かどうかは判断できない。
特徴的なのは、口に含んだ後に現れ、不快な余韻として残ることである。
ワインで主な原因とされるのは、次の3物質だ。
略称 | 物質名 |
ATHP | 2-アセチルテトラヒドロピリジン |
APY | 2-アセチル-1-ピロリン |
ETHP | 2-エチルテトラヒドロピリジン |
これらは酸性のワイン中では揮発しにくく、グラスを嗅ぐだけでは気づかないことがほとんどである。
口の中で唾液と混ざり、酸性の度合いが弱まると揮発しやすくなり、口から鼻に抜ける香りとして感じられる。
この性質が、「飲む前は分からないのに、飲んだ後で強く感じる」という現れ方を説明する。
ただし、揮発が唾液に相当程度依存するため、人によって感じやすさは大きく異なる。[1、2]
2.乳酸菌は4つすべてに関係している
乳酸菌は、ひとつの菌の名前ではなく、糖から乳酸を作るさまざまな細菌の総称である。
