銘酒・而今が示す、日本酒の新たな価値

三重県名張市にある木屋正酒造が醸す銘柄「而今」は、当代随一の人気銘柄として、極めて高い評価を得ている日本酒。


酒蔵の創業は1818年。造り酒屋であった「ほてい屋」を、木材屋を営んでいた初代大西庄八が譲り受け、「木屋正」と改めた。木屋正酒造は長らくの間「高砂」と「鷹一正宗」の二銘柄を醸造し、地元を中心に販売してきたが、徐々に業績が悪化し、廃業の危機も間近に迫っていた。


転機となったのは2003年。理系エリートとして大手メーカーで技術職についていた6代目蔵元の大西唯克氏が、家業を引き継ぐ決意を固め、蔵に戻ってきたのだ。そして大西唯克氏は、2年間先代の杜氏と仕事をした後の2005年、自らが杜氏となり、「而今」銘柄を立ち上げた。


今でこそ1200石(1石 = 一升瓶 x 100本)の規模にまで成長した而今だが、発足当時の生産量は僅か30石。搾りたての而今が入った酒瓶を片手に、酒屋に営業周りをする日々が続いた。


惰性で造っていた酒から、名張の地を表現したアルティザナルな酒へ


徹底的に妥協を許さない完璧主義者。そのような印象を周囲に与える大西唯克氏が醸した而今は、瞬く間に人気銘柄へと駆け上がった。


華やかで鮮烈な香り、アタックの濃厚な甘味、とろりとした独特のテクスチャー、長く力強い余韻へとシームレスに続く旨味。「而今節」とでも表現したくなるような特異な個性を纏った而今の味わいは、極めてセンセーショナルで、魅惑的なものだった。


大西唯克氏は、極めて優れた造り手であると同時に、稀代のヴィジョナリーでもある。成功にあぐらをかくことは一切なく、利益を設備投資へと回し、モチベーションの高いチーム造りを行い、徹底した品質向上に邁進し続けてきただけではない。日本酒の魅力を細部まで見つめ直し、新たな価値創造も同時に行ってきた

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