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Advanced Académie <15> ビオディナミ・前編

SommeTimes Académie <16> 農法2でも簡潔に触れたが、本稿と次稿では、二回に渡って、ビオディナミ農法の詳細を追っていく。


理由は釈然としないが、結果だけを見る限り、ビオディナミ農法の効果は信じるに足る。現在、世界の最も優れたワインの多くがビオディナミ農法によって造られており、ビオディナミ採用以前と以後では、それらの偉大なワインの品質に、大きな変化が一貫して認められてきたからだ。その効果の理由がどこにあるのか、良く言われている「ビオディナミの真の効果は、畑仕事の厳格化にある」というのは真実と断定できるのか。なるべく丁寧におっていこう。


提唱者ルドルフ・シュタイナー

ルドルフ・シュタイナーは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、オーストリアとドイツで主に活動した人物である。彼の肩書は、哲学者、教育者、科学者、神秘思想家、人智学者と幅広く、一貫性にも欠けるように思えるが、「哲学的アプローチによって、物質世界と精神世界を繋ぎ合わせる」という神秘的思想を掲げ、ある種の精神科学とも言える「人智学」を提唱した。実は、シュタイナーが農業に関心をもったのは、晩年に差し掛かった頃だった。後に、ビオディナミ農法の礎となる、全8回に渡る講義「農業再生のための精神的基礎」を行ったのは、1924年。シュタイナーの死からわずか一年前の出来事であった。つまり、シュタイナーは自らが提唱した新たな農業の在り方の行く末、その効果を見届けぬまま、この世を去ったということだ。



神秘か現実か

ビオディナミ農法は、一歩間違えると神秘的な話に終始してしまい、「宗教的」とすら揶揄されてしまう。本稿では、できる限り神秘的な内容は簡潔に述べ、現実的な範囲に留めるように努めていく。

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