セミヨンという選択肢

福岡市は今年(2022年)、ボルドー市姉妹都市を締結して40周年を迎える。


福岡市とボルドー市の交流の歴史は長く、1977年に当時の九州日仏学館館長から両市縁組の話がもち込まれ、その後、九州大学とボルドー大学の姉妹校提携など市民レベルでも交流を重ね、類似箇所が100箇所以上あるということもあり1982年11月に姉妹都市を締結。


2016年にはC.I.V.B公認のワインバーがニューヨーク、上海に次いでオープンし、2022年にはピエール・ユルミック市長をはじめボルドー市から訪問団が来福されるなど、ボルドーワインは福岡市民にとって最も身近なワインといっても過言ではない


40周年を記念して、今年は福岡市内の至る所でボルドーワインのイベントが行われているが、特に盛大に開催されたのがフランス商工会議所主催の「ガラ・パーティ」と、福岡市役所前の広場で開催された「ボルドーワイン祭り」だ。


ガラ・パーティはフランスの食文化と美食が感じられるパーティで、ボルドー市長と福岡市長も参加された。ボルドーワイン祭りは約100種類のボルドーワインと豊かな九州食材のマリアージュが楽しめる祭典で、14日間開催され5大シャトーもグラスで飲めるとあって連日盛り上がりを見せた。


ボルドーワインといえば「格付けワイン」に代表される偉大な赤ワインと、世界三大貴腐ワインの一つに数えられるソーテルヌが圧倒的に有名で、私の職場でもグラスワインで常備している。


また近年、日本でも需要が増えつつあるロゼワインも造られていて、特にクレレは色濃く深みのある味わいでオリジナリティのあるロゼワインだ。カベルネ・フランやメルロで造られる高品質なスパークリングワインも増えてきているし、グラーヴ・シュペリュールのような半甘口など、とにかくバラエティに富んだワインが生産されている。


幸い、私はホテルではもちろんのこと、様々なイベントでボルドーワインをサービスする機会をいただいているが、そんな中で最もお客様の好感を得ていると感じたのがボルドーの白ワインだ。


ボルドーの白ワインといえば、ソーヴィニョン・ブラン主体のワインが圧倒的に人気で、ステンレスタンクを使用したフレッシュで爽やかなカジュアルタイプ(主にアントル・ドゥ・メール)と、樽で熟成させたボリューム感のある複雑な味わいの高品質ワイン(主にグラーヴ)に二分され、それ以外ではセミヨン主体の、(セミヨンの特徴である)オイリーさがアクセントとなったライトタイプのワインもある。


今回ご紹介するワインは、バルサックの名門シャトー・クリマンが、サンセールのパスカル・ジョリヴェから辛口白ワインのアドバイスを受けて、2018年から造る辛口ワインの「2019 アスフォデル」


生産者:シャトー・クリマン

ワイン名:アスフォデル

葡萄品種:セミヨン100%

ワインタイプ:白ワイン

生産国:フランス

生産地:ボルドー

ヴィンテージ:2019

参考小売価格:5,700円

インポーター:ファインズ


私の中で貴腐ワイン生産者が手がける辛口ワインのイメージは、辛口とうたっているものの残糖を多く感じ、厚みのある味わいだがアルコール度数や酸が低く、バランスの悪い物が多いと感じていて正直敬遠しがちだった。しかし、あるフェアをきっかけにこのワインをテイスティングすると、白桃や洋梨、グレープフルーツなどの果実香にディルなどのハーブのニュアンスが爽やかで、口に含むとふくよかな味わいでボリューム感があり、オイリーなニュアンスがまろやかさを加え、キリッとした酸味と余韻に心地よい苦味が感じられる、クリアで新鮮な若々しいワインだった。


セミヨンでこんなフルーティでまとまりのあるワインがあるのかと驚いたし、日本では格付けワインの産地と思われがちだが、現地では「ボルドーこそ造り手の顔が見えるワイン産地」と訪れた生産者が言われていて、その時ソーテルヌやバルサックで辛口の素晴らしいワインが造られていると言われていたのを思い出した。


近年、ボルドーワインの代名詞といわれるトップシャトー達は価格の高騰が続き、コストパフォーマンスの高い新興産地の台頭、消費者の嗜好の多様化などでボルドーワインの人気に陰りが出ている。


海外でも、某世界最優秀ソムリエのワインリストにボルドーワインが1本しか掲載されていないなど、ボルドーワインはかなり苦境に立たされている。


そんな中、決して安くはないもののセミヨン主体の新しいスタイルの辛口ワインが登場してきたのは明るいニュースで、今後のボルドーワインの逆襲の狼煙となることを期待してやまない


特に今年は連日酷暑が続いているので、今の時期ですとすだちをふったヤマメやヴォンゴレビアンコ、フルーツのソースを飾ったオマール海老のサラダ仕立てとの相性は抜群!秋は秋刀魚やカニのバター焼き、冬は牡蠣鍋や水炊き、春は春野菜の天麩羅やテリーヌなど1年を通して幅広いお料理と楽しめる!


是非一度お試し下さい!


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輸入元データ

農法:ビオディナミ(2010年から)、ビオロジック

収穫:手摘み

除梗:全房

平均樹齢:7年〜22年

発酵容器:ステンレス

マロラクティック発酵:なし

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<ソムリエプロフィール>


千々和 芳朗 / Chijiwa Yoshirou


ホテルニューオータニ博多 カステリアンルーム ソムリエ

1979年福岡生まれ。大学を卒業後グランド・ハイアット福岡に入社し、様々なレストランにてソムリエとして研鑽を積み、2019年7月より現職。

JSA日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ、ASI国際ソムリエ協会認定ディプロマ取得。

第一回ボルドー&ボルドーシュペリュールソムリエコンクールファイナリスト

第二回ボルドー&ボルドーシュペリュールソムリエコンクール準優勝



<ホテルニューオータニ博多 カステリアンルーム>


1978年に創業した歴史ある老舗ホテルのメインダイニング。長年にわたりストックされてきたワインや毎月開催されるワイン会やメーカーズディナーを求めて全国からワイン愛好家が集うフランス料理店。