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プロのシャンパーニュの楽しみ方!

こんにちは、恵比寿にあるワインショップ、WINE MARKET PARTY店長の沼田です。


今回ですが、少しだけ勉強になる「プロのシャンパーニュの楽しみ方」と、最近「珍しい飲み比べ」をしたのでレポートしたいと思います。


皆様はシャンパーニュを飲む際に何を見て飲んでいますか?


「ラベル?」

「生産者?」

「ブドウ品種?」

「ヴィンテージ?」

「地区?」

「特級村?」


色々な楽しみ方があると思うのですが、ここではさらに一歩だけ突っ込んだシャンパーニュの楽しみ方をご紹介していきます。


もちろん上記6つも大切、見るべき部分ではありますが、私自身は、それに加えて、

『原酒の年号』

『デゴルジュマン(*1)の時期』

『ドザージュ(*2)の量』

『瓶内二次発酵が王冠か、コルクか』

を確認して、考えながら飲んでいます。



⓵『原酒の年号』

ラベルに年号の入ったシャンパーニュはその年の葡萄で造られていますが、ノン・ヴィンテージのシャンパーニュの場合、その中に何年の原酒が入っているか、気にした事はありますか?


大手メゾンなどの場合、大体3年~4年分の原酒をブレンドして造られており、ベースとなる原酒が70%~90%入り、リザーヴワインと呼ばれる、ベースの原酒よりも古い原酒が10~30%%入る事が一般的です。


リザーヴワインの量は生産者や年によって変わるのですが、例えば、2015年のベースとなる原酒が70%だとすれば、2014年、2013年、2012年のリザーヴワイン(ベースより古ければ全てリザーヴワインと呼ばれます)が30%、という形です。


古いリザーヴワインが入れば入るほど熟度も高く、色合いも濃くなり、味わいにも複雑さが出てきます。


最近は裏ラベルに細かく年号の記載をしてくれる生産者も増えてきましたが、大手メゾンでは書いてくれているのは稀、フィリポナなどはスタンダードクラスから「ベースの年号」と「リザーヴワインの%」等が記載されているので、写真を撮っておけば、同じ物なのかどうかの確認もできます。


いつも同じ生産者を飲んでいるのに「あれ?前回飲んだ時と微妙に味わいが違うかも?」、なんて思った時はベースの年号が切り替わっているかもしれません。


謎解きをしているようで、ちょっとワクワクしませんか?


これでヴィンテージ・シャンパーニュと同じような楽しみ方がノン・ヴィンテージでもできますよね(私だけ?)。



⓶『デゴルジュマンの時期』

出来立て、リリース仕立て、日本に届きたてのシャンパーニュを休ませずに飲むと、色々な要素がバラバラに感じる事がよくあります。


「泡立ちが強い」「酸が強い」「リキュール(*3)が馴染んでいない」「樽熟成した原酒の香ばしさが強い」など、バランスが悪い事が多いのですが、デゴルジュマン後1年半~2年ほど経つと、良い意味で球体に近くなり、全てが馴染んでいきます


もっと時間が経つと香ばしいウェハースや栗きんとん、カラメルのような雰囲気となり、「熟成シャンパーニュ」として楽しく飲めると思います。


最近はデゴルジュマンの時期を裏ラベルに記載する生産者も増えてきたので、そのあたりを気にしながら買ってみるのも面白いのではないでしょうか?


大手メゾンでは記載が無い事も多いのですが、売れ残っている方がデゴルジュマンからの時間が経過し、美味しくなっている事があるので、私はワインショップや酒屋を巡っている時に気にするようにしています。


そこまで回転しないマグナムボトルやロゼ・シャンパーニュが狙い目だと思います。


仕入れる側、売る側としては、インポーターさんに入荷した時期やデゴルジュマンの時期を確認して仕入れて、一つの売り文句にしています。


勿論「若くて泡立ちが強い方が好き」という方もいるので、ここはお好みで。



⓷『ドザージュの量』

近年は温暖化も進み、以前よりもしっかりと熟した葡萄が収穫されるようになったシャンパーニュ地方。


世界の流行と共にリキュールを添加しないノン・ドゼなどの極辛口のシャンパーニュも多くリリースされてくるようになりました。


その葡萄、その土地本来の個性を味わえるノン・ドゼやブリュット・ナチュール(0~2g/L)を買い、より深くその土地を知るも良し。


エクストラ・ブリュットやバランスの取れたブリュットを飲んで、食前~食中に楽しむも良し。


苺や木苺などをグラスに入れて、ドゥミ・セックやセックといったほんのり甘いシャンパーニュをプールサイドで楽しむのもアリだと思います(私みたいな昭和世代だと)。



⓸『瓶内二次発酵が王冠か、コルクか』

※今回のコラムでのメインはココ。

「瓶内二次発酵をコルクってどういう事?」と思われている方も多いと思います。


一般的に、シャンパーニュの瓶内二次発酵は「王冠」で行っていますが、完全に密閉され、泡立ちも力強く残り、味わいもフレッシュ。


二次発酵が終わった後、完全に密閉された王冠のまま置いておくと、酵母の香りは多少強くなりますが、酸素と触れ合って味わいの変化する「熟成」は緩やかです。


ですから、シャンパーニュはデゴルジュマンをした後、製品になってからが熟成、と、私は捉えています。


勿論、「リリース直後が一番美味しいから、すぐに消費してくれ」といった生産者も多くいますが、私は、デゴルジュマンから2年程経過し、樽や泡立ちが落ち着き、果実とリキュールがうまく馴染み、角が取れて成長したシャンパーニュが好みです。


瓶内二次発酵をコルク」で行うシャンパーニュは、王冠などが普及していなかった時代に行われていた古いシャンパーニュの製法。


コルクを打栓し、麻紐で結って二次発酵をさせ、終わった後はその紐と解いて自分の手で澱引きをするという、手間の掛かる造り方。


王冠と違うのは、二次発酵時にコルクを用いる為、「酸素をうまく取り込みながら二次発酵する」イメージです。


その為、熟成感のあるゴールドの色合いとなり、しっかりと酸も乗りながら、乳酸を感じさせるような円やかさも感じます、もう少し進んでいると優しいシェリーのような独特の風味も感じられます。


シャンパーニュとして出来上がった時点から美味しく飲めて、王冠二次発酵のクリーンなシャンパーニュとは一味違う、旨味のある味わい。


さて、この瓶内二次発酵をコルクで行っているとわかる点はどこでしょうか?


それはボトルの瓶口です。



写真左側の王冠がはまるタイプのボトルが一般的ですが、右側の瓶口のように王冠のはまらない形状のボトルを使用している生産者が稀におり、そういったシャンパーニュはほぼ上記に書いた通り、色合いが濃く「熟成感」が出ています。


こういったボトルを使っている有名な生産者ですと、今は無きアラン・ロベールや、ボランジェのRD、アルフレッド・グラシアンのミレジム、ラリエのウヴラージュ、フルーリーのミレジム、ジャン・マルク・セレックのパルティシオンなどが二次発酵時にコルクを使うボトルを用いています。


これは「この生産者のこのキュヴェはコルク栓二次発酵」と前以て知っていないと、『キャップシールを剥いてみるまでわからない』ので、普通に気にしていないとそんな所を見ないかもしれません。


圧倒的に出会う確率も低いので、シャンパーニュ好きであっても知らない、気にして飲んだ事が無い、という方もいるのではないでしょうか。


私は何気なく開けたシャンパーニュがこの瓶口の時『うぉ~、コルク栓瓶内二次発酵キター!』と、一人で盛り上がっています(笑)



さて、ここまで書いたところで、ある程度味わいの違いはわかっていただいたと思いますので、私が実際に飲み比べたシャンパーニュを簡単にご紹介します。


長くなってしまったので簡単に・・・。



★ボネール コレクション ブラン・ド・ブラン トリロジー 2008年 3本セット

生産者:ボネール

ワイン名:コレクション ブラン・ド・ブラン トリロジー 2008年

葡萄品種:シャルドネ100%

ワインタイプ:泡(シャンパーニュ)

生産国:フランス

生産地:シャンパーニュ地方/アヴィーズ

ヴィンテージ:2008

インポーター:㈱恵比寿ワインマート

参考小売価格:3本セット ¥33,800円


ボネールは1932年に特級クラマン村に設立された生産者(RM)。


現当主、ジャン・ルイ・ボネールの奥様マリーは、元々ブージー村にて「ポール・クルエ」を運営、さらにマリーの姉は「アンドレ・クルエ」を営む生粋のシャンパーニュ一家。


栽培にはリュット・レゾネを採用し、豊富なリザーヴワインを用いた正統派ながらも贅沢なワイン造りを行っています。


このトリロジーは輝かしい極上ヴィンテージとなった2008年に特別なコンセプトで仕込まれたキュヴェ。


本拠地である特級クラマン村の最上の区画から選りすぐられたシャルドネを使用し『ステンレスタンク』『樽』で原酒を別々に熟成。


さらに『ステンレスタンク熟成』させた原酒を用いて『瓶内二次発酵をコルク』で行ったキュヴェを加えたブラン・ド・ブランの3本セット。


デゴルジュマンはどれも2017年4月、ドザージュも全て2.5g/Lというシャンパーニュです。



●Grand Cru Vintage 2008 ♯1

ステンレスタンクで温度管理された状態により9か月間熟成。

岩塩のようなミネラル感と凍らせたレモン、ライムの皮を感じさせる爽やかなブラン・ド・ブラン。


●Grand Cru Vintage 2008 ♯2

発酵後、205リットルのオーク樽を用い1年間の熟成を経て仕込まれたキュヴェ。

程良く香ばしい樽の風味、バターやナッツのような雰囲気を持ち、マーマレードのような少し厚めの果実味も感じる。


●Grand Cru Vintage 2008 ♯3

♯1と同じく、ステンレスタンクで9か月熟成された後、コルク栓による瓶内二次発酵&熟成を行って仕上げられたキュヴェ。

ほのかにシェリーのような酸化の要素のある風味がシャンパーニュに厚みを与え、頬を刺す酸味が心地よい1本です。

皆様の手元にも、同じ瓶口のシャンパーニュがあるかも?しれませんね。



とても楽しい飲み比べでした。


『原酒の年号』

『デゴルジュマンの時期』

『ドザージュの量』

『瓶内二次発酵が王冠か、コルクか』


そんな部分を気にしながら飲むのも、シャンパーニュの楽しみ方の一つ。


シャンパーニュ好きの方々と、早くワイン会などが気軽にできるようになると良いですね。


それでは。


(*1)デゴルジュマン:瓶口にゆっくりと集められた瓶内二次発酵の名残である澱を抜く工程。現在は一般的にこの工程は機械化されており、-27℃に液体に瓶口を浸して澱を凍らせたのち、抜栓して澱を弾き出す。ア・ラ・ヴォレという手作業の場合は、凍らせないが、熟練を要する作業となるため、安定性に欠ける傾向がある。


(*2)ドサージュ:シャンパーニュを最終的に打栓する前にリキュール(*3)を加えて甘味を調整する工程。


(*3)リキュール:門出のリキュールとも呼ばれ、多くの場合は、ワイン1ℓに対して、500~750g程度のサトウキビ由来の糖を加えたものが使用される。



<ソムリエプロフィール>

沼田 英之 / Hideyuki Numata

WINE MARKET PARTY 店長


1978年東京生まれ。

ホテルのレストラン、バーで経験を積み、イタリアのトスカーナへ留学。

帰国後ホテルのフレンチレストランでソムリエとして従事し、フランスワインを勉強する為、2008年にフランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。2012年より姉妹店であるWINE MARKET PARTY店長として働く。飲食店へのワインリスト制作、料理研究家の方向けのワイン講師、企業向けのワインセミナー、個別のワインサロンなども多数行っている。



<WINE MARKET PARTY (ワインマーケット・パーティー)>

恵比寿ガーデンプレイスにあるワインショップ。100坪ある店内は常時1,200種類以上のワインを揃え、世界中のワイン、食品、雑貨、書籍などを取り扱う。

併設している姉妹店フランスワイン専門店ラ・ヴィネにはマニアックなフランスワインを含め1,000種類近いワインが並ぶ。

計2,000種類以上のワインが揃う、日本屈指の大型ワインショップ。

テイスティングコーナーも併設しており、常時25種類以上のグラスワインが楽しめる。





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