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レジェンドの息子 <Elias Musterの挑戦>
ワイナリーの継承 というのはとても難しい。 そもそも子供世代が 大変な農作業 を伴うワイナリーを引き継ぎたいとも限らないし、親が造っていたワインの 品質を維持 できるとも限らない。 ワイン造りに 「人」が深く関わってくる 以上、 変化は避け難い ものだ。 さらに、一般消費者だけでなく、ワイン業界に携わる人々も、代替わり後の品質に関しては、 問答無用という厳しさ で接することも多い。 そういう私も、 ポジティヴとは言い切れない世代交代を何度も目にしてきた し、代替わり後にそのワインを全く購入しなくなったことも何度もある。 特に、 親がレジェンド級の造り手であった場合、後継者にかかるプレッシャーは相当なもの だ。 優れた造り手であった両親のもとに生まれた子供を、無条件で 「サラブレッド」 と表現したくなる気持ちはわかるが、 現実はそう甘くない 。 もちろん、この難しさを誰よりも理解しているのは、 造り手本人 だ。

梁 世柱
2024年8月3日


Advanced Académie <39> ブルゴーニュ・クリマ・ランキング Saint-Aubin
ブルゴーニュにおける葡萄畑のランキング企画となる、Advanced Académieの本シリーズ。 ご存知の通り、ブルゴーニュには超広域Bourgogneから始まりGrand Cruに至るまで、多階層の格付けが存在していますが、同階層内でも優劣が生じます。 本シリーズでは、以下のような形で、すべての特級畑、一部の一級畑(単一としてリリースされることが多いクリマ)、一部の村名格畑(特筆すべき品質のものを抜粋)をランキングしていきます。 SS:最上位の特級畑クラス S:平均的な特級畑クラス(一部の一級畑も該当) A:特級畑に肉薄する最上位の一級畑クラス(一部の特級畑も該当) B:際立って秀逸な一級畑クラス(一部の特級畑も該当) C : 秀逸な一級畑クラス(一部の村名格畑も該当) D:平凡な一級畑クラス(一部の村名格畑も該当) 一部のクリマに関しては、生産者による品質の落差が大きいため、(A~S)のようにランクを跨いだ評価となります。 第11回は Saint-Aubin をテーマと致します。 Puligny-MontrachetとChassagne-M

梁 世柱
2024年8月2日


エネルギーの螺旋 <ラドヴァン・シュマンが目指す真なる調和>
スティリア地方訪問では、オーストリア側にあるワイナリーを中心に巡ったが、一軒だけ、 スロベニア側の造り手 を訪ねた。(オーストリアの)シュタイヤーマルク地方は、 南側の境界線が全てスロベニアとの国境に接している 。 シェンゲン協定によって、すでに形だけの国境となっているため、一応関所はあるが、往来を阻まれることはない。 それでも、すでに世界的なスター産地となったシュタイヤーマルク地方と、スロベニア側のシュタイエルスカ地方の間には、 あまりにも大きな格差 が形成されている。 元々は一つのスティリアであった事実がまるで無かったかのように、ワインの評価や人気は大きくシュタイヤーマルクがリードしているし、国境を超えてスロベニア側に入ると急に、 家屋の質 も変わる。 資本主義国家と、旧社会主義国家の違い が、矢継ぎ早に目に飛び込んでくるのだ。 より包括的にスティリアを捉えるために、シュタイエルスカ地方でも取材を重ねたい思いはあったが、時間の制約上、残念ながらそれは叶わなかった。 そして、唯一訪問することができた Schumann(シュマン)...

梁 世柱
2024年7月30日


出会い <64> 古代型ワインの妙
Atipico, Under the Plum Tree 2023. ¥5,800 人類最古のワインカテゴリーは何なのか。 とても興味深い疑問だが、考古学である以上、どのような見解にも頻繁に 「おそらく」 という枕詞がついて回る。 しかし、少なくとも 白ワインが最も古いカテゴリーではない 、という見解は極めて信憑性が高い。 現時点で見つかっている考古学的証拠からは、 紀元前3500年頃 に、 最初の白ワインらしきもの が現代の イラン で造られ始めたと考えられている。 また、 紀元前460年 に、「医学の父」とも呼ばれる古代ギリシアの ヒポクラテス が、 白ワインを患者に処方したと記録 しているため、確定に限りなく近い証拠という意味では、白ワインの最古の記述はヒポクラテスの処方記録となるだろう。

梁 世柱
2024年7月28日


新時代のサスティナブル茶園 <AMBA Estate>
NYでサーヴィスを学んだ私は、徹底した分業制というシステムこそが、絶対的に正しいと信じるようになっていた。 ソムリエである私が、皿を下げたり水を注いだり、裏に回って皿洗いをしたり、ワイングラスを磨いたり、トイレ掃除をしたりすることは、メキシコなどから文字通り命懸けで越境し、...

梁 世柱
2024年7月27日


感性の世界 <オーストリア・シュタイヤーマルク特集:Part.2>
私は常に、 理性 でワインを探究してきた。 気候、土壌、地勢、葡萄品種がもたらす影響を マトリックス化 することによって、神秘のヴェールに覆われた テロワールを観測、分析可能なものとし 、そこに 栽培、醸造における人的要因も加え 、ワインに宿った特有のアロマ、フレイヴァー、ストラクチャーの根源に理路整然とした態度で向き合ってきたのだ。 ワインに対してそのようなアプローチを取り続けた理由は、単純化すれば 「理解したかったから」 の一言に尽きるが、 【結果には、すべて原因がある。】 というガリレオ・ガリレイの言葉を、幼い頃にその出自もコンテクストも知らずにどこかで聞きかじったまま、長い間盲目的に信じ込んできたのも一因と言えるだろう。 しかし、一般的にクラシック、もしくはオーセンティックと呼ばれるカテゴリーから探究範囲を大きく広げた結果、 様々な在り方のワイン との出会いを通じて、 私はこの世界に理性だけでは理解することができないワインが存在していることを認めざるをえなくなった。 理性でワインを探究してきたからこそ、その限界を知ることが

梁 世柱
2024年7月25日


Not a wine review <3>
Rockland Distilleries, Ceylon Arrack. (免税店価格:約4,900円) 一週間に渡って、ワインジャーナリストにとっては無縁の国を訪れた。 スリランカ だ。 半分はヴァケーションも兼ねた旅であったが、紅茶の 世界三大銘茶 とされるスリランカの茶産地 「ウバ」 (他の二つはインドのダージリン、中国のキームン)を訪れることが、この旅の目的。 未知の異国故の様々な小トラブルにも見舞われつつ、腹を下す覚悟をしながら(日本の衛生感覚ではありえないような)ローカル店でスリランカカレーを堪能したり、アーユルヴェーダ(インド・スリランカの伝統医療だが、スパの一環としても楽しめる)でリラクゼーションの深淵に没入したり、激しくバウンスするジープに揺られながらサファリで40頭近い象の群れに遭遇したりと、ワインジャーナリストとしての旅では決して味わえない非日常を過ごすことができた。 ウバでの体験はまた別稿にてレポートさせていただくが、今回のレヴューシリーズで紹介したいのは スリランカのアラック 。

梁 世柱
2024年7月21日


Corn & Wine
夏の旬食材 には、なぜか心が躍る。 個人的には、季節としては冬の方が好きなのだが(暑さと虫が苦手という理由で)、食材に関しては完全に夏派だ。 土用の丑の日に養殖 うなぎ (天然物の旬は10~12月だが、個体によっては猛烈に泥臭いことも)を楽しむ人、6~7月にかけて鱧や 若鮎 を楽しむ人、夏の太陽をたっぷりと浴びたエネルギッシュな 野菜 を楽しむ人。 人それぞれ夏食材の楽しみ方があると思うが、私が最も夏を感じる食材は、 とうもろこし だ。 蒸したりゆでたりして、とうもろこしの自然な甘味を味わっても良し、香ばしく焼き上げてかぶりついても良し、天ぷらにして食感の妙を堪能しても良し。 様々な調理法で楽しむことができる旬のとうもろこしだが、筆者が一番好きな食べ方は、 すり流し だ。

梁 世柱
2024年7月12日


SommeTimes’ Académie <64>(フランス・ロワール地方:Touraine地区)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回は フランス・ロワール地方 について学んでいきます。 フランスの銘醸地産ワインが高騰するなか、日常に寄り添うフランチ・ワインの産地として、ロワール地方の価値は一層高まっています。 ロワール地方シリーズ第4回は、シュナン・ブランの銘醸地として知られる 「Touraine地区」 と致します。 シュナン・ブラン この品種の歴史を紐解くと、最古の記述は 1496年 にまで遡ることができます。 トマ・ボヒエ なる貴族が、ロワール渓谷の古城群でも際立って名高い シャノンソー城周辺 に葡萄畑を開墾し、アンジュから葡萄を持ち込んだとの記録があり、この 「アンジュの葡萄」 は、シュナン・ブランであったと確実視されているため、少なくとも1496年以前から、ロワール渓谷にシュナン・ブランが根付いていたことが確認できます。

梁 世柱
2024年7月11日


ロゼ界のライジングスター、ロザリア。
ロゼワイン の歴史はかなり興味深い。 その 原初の姿 は、我々が知る 現代のロゼワインとは似ても似つかぬもの だったからだ。 最古の記録は 3,000年以上前の古代ギリシャ 。当時、 「ワインは水で薄めて飲む」 ことが上品とされていた。 白葡萄と黒葡萄を混醸して造った非常に薄い赤ワインのようなものを、さらに水で割る ことによって、ロゼワインらしきものとなっていたのだ。後に、赤ワインと白ワインらしきもの(現代のオレンジワインに近かった可能性が高い)に分けられるようにはなったが、数百年、いや、ひょっとすると数千年ほど、水で薄めたワインを飲んできた文化圏で、タニックな赤ワインや白ワインが市民権を得るには随分と時間がかかったようだ。

梁 世柱
2024年7月10日


再会 <64> 飲み頃観測の難しさ
Rall, AVA Syrah 2020. ¥11,800 ワインの飲み頃予測に、完璧な方程式は無い。 産地(もしくは特定の葡萄畑)と葡萄品種だけで予測が成り立つなら簡単だが、実際にはヴィンテージ、造り手の特徴(特に収穫時期と醸造関連)、輸送環境、管理状況などの様々な変数が関わってくるため、 極めて複雑なマトリックス となってしまう。 ワインファンなら、せっかく手にしたボトルを最高の状態で楽しむために、飲み頃予測に「神の数式」が存在すれば、と願うのはいたって普通の思考だと思うが、 百戦錬磨のトップ・プロフェッショナルであっても、本当の意味での正確無比な予測は100%に限りなく近いほど不可能 と言える。 私自身も、この法的式の探究には真摯に取り組んできた一人だが、正直に申し上げると、私は数年前に諦めている。

梁 世柱
2024年7月7日


Advanced Académie <38> ブルゴーニュ・クリマ・ランキング Beaune
ブルゴーニュにおける葡萄畑のランキング企画となる、Advanced Académieの本シリーズ。 ご存知の通り、ブルゴーニュには超広域Bourgogneから始まりGrand Cruに至るまで、多階層の格付けが存在していますが、同階層内でも優劣が生じます。 本シリーズでは、以下のような形で、すべての特級畑、一部の一級畑(単一としてリリースされることが多いクリマ)、一部の村名格畑(特筆すべき品質のものを抜粋)をランキングしていきます。 SS:最上位の特級畑クラス S:平均的な特級畑クラス(一部の一級畑も該当) A:特級畑に肉薄する最上位の一級畑クラス(一部の特級畑も該当) B:際立って秀逸な一級畑クラス(一部の特級畑も該当) C : 秀逸な一級畑クラス(一部の村名格畑も該当) D:平凡な一級畑クラス(一部の村名格畑も該当) 一部のクリマに関しては、生産者による品質の落差が大きいため、(A~S)のようにランクを跨いだ評価となります。 第10回は Beaune をテーマと致します。 Louis Jadot、Bouchard、Joseph...

梁 世柱
2024年7月4日


美の真理 <オーストリア・シュタイヤーマルク特集:Part.1>
調和こそ美の真理であり、調和無き美は存在しない。 クラシックか、ナチュラルか。 探究を拒む人々によって二極化された世界観に興味を失ってから、随分と時が経つ。 固定された価値観の中で話をするのなら、私が探し求めている テロワール・ワイン は、 そのどちらでもなく、どちらでもある からだ。 美の対は破壊 であり、極端なクラシックもナチュラルも、極めて破壊的となり得るのだから、そこに美が宿らないのは必然である。 美とは理性的であると同時に、感性的でもある。 ワイン的表現をするのであれば、 理性的な美とは、天地、葡萄、人の総体 を意味し、 感性的な美とは、極限まで純化されたエネルギー となる。 理性的な美 は、 分析によって客観視 することができるが、 感性的な美は、極めて主観的 なものだ。 だからこそ、美の真理へと到達するためには、私自身が理性的かつ感性的であらなければならない。 シュタイヤーマルク地方 オーストリアの シュタイヤーマルク地方 を訪れた理由は、 テロワールという美の真理を追い求めていたから に他な

梁 世柱
2024年7月1日


出会い <63> 環境のアロマ
Marzagana Elementales, Vita 2022. ¥8,000 ふと疑問に思った。 きっかけは、焼肉店でたらふく食べた後の、自分の衣服だった。 美味しかった記憶がすぐに蘇ってくるような、焼肉の匂いが染み付いていた。 そんなことは当たり前、と誰もが思うだろう。 そう、 香りは揮発 し 、染み付く のだ。 生育期の葡萄畑 を歩き回り、その畑から造られたワインを飲む、という経験をしたことがある人であれば、 畑とワインのアロマの間に明らかな共通性を感じたことがある のではないだろうか?

梁 世柱
2024年6月30日


ハプスブルグ風カジュアルペアリング
前回のペアリング研究室 では、西〜中央ヨーロッパ料理の粋と言える オーストリア料理 と、その象徴的な料理の一つである ヴィーナー・シュニッツェル の話をした。 今回もその流れのまま、もう一つの代表的なオーストリア料理である ヴィーナー・サフトグーラーシュ(ウィーン風ビーフグラーシュ) の話をしよう。

梁 世柱
2024年6月29日


SommeTimes’ Académie <63>(フランス・ロワール地方:Centre Nivernais地区:後編)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回は フランス・ロワール地方 について学んでいきます。 フランスの銘醸地産ワインが高騰するなか、日常に寄り添うフランチ・ワインの産地として、ロワール地方の価値は一層高まっています。 ロワール地方シリーズ第3回は、ソーヴィニヨン・ブランの殿堂として知られる 「Centre Nivernais地区:後編」 と致します。 今回は、Centre Nivernais地区の SancerreとPouilly-Fum é(以降PFと表記)に関して、より深く学んで行きます。 全体像 『サンセールは春のようで、プイィ=フュメは夏のようだ。』 故キット・スティーヴンスMWは、SancerreとPFの違いをこう詩的に表現しました。

梁 世柱
2024年6月27日


再会 <63> Johannes Zillinger Part.2
Johannes Zillinger, Numen Rosé SL 2020. 偉大なロゼの探求 。 私が長年取り組んできた研究テーマの一つだ。 夏に、よく冷やしてカジュアルかつリーズナブルに楽しむ。 そのシチュエーション自体は私も楽しんでいるのだが、それだけ、となると流石に違和感を隠せない。 白ワイン、赤ワイン、スパークリングワインなら、カジュアルなものから、徹底してシリアスなものまで当然のように幅広く存在し、マーケットでもしっかりと棲み分けがなされている。 オレンジワインもおおむね同様の形となりつつある。 しかし、 ロゼだけはシリアスなものが極端に少ない 。

梁 世柱
2024年6月23日


オーストリアの大定番
ヨーロッパのワイン産出国は数多く訪れたが、カジュアルな食(ガストロノミーの話になると、国や地域ではなく、レストラン単位の話になる)の美味しさが際立っていると個人的に感じる国の2トップは、 オーストリアとポルトガル だ。 オーストリア料理 、と聞いてもイメージできる人は少ないかも知れないが、多民族国家であった ハプスブルグ王朝時代に、多種多様な食文化が融合し、磨き上げられた 結果、非常にバランス感に長けた料理体系として発展したという経緯がある。 言うなれば、 西〜中央ヨーロッパ料理の粋 、とも言えるのがオーストリア料理なのだ。 さらに、オーストリア料理は温かい料理が、 ちゃんと「温かく」提供される 、という日本人(アジア人)には特に嬉しい特徴もある。 さて、オーストリア料理の中でも、最も象徴的なものとされる料理の一つが、 ヴィーナー・シュニッツェル 。

梁 世柱
2024年6月23日


Not a wine review <2>
伝統深い飲み物が他文化との交流によって変化 する、という現象は 現代のトレンド なのかも知れない。 中には、極めて ワイン的な変化をした一部の日本酒 のように、(ワインとその文化に対する) 憧れやコンプレックスが根底にある としか思えないものもあるため、全てを手放しで称賛することはできないが、新しい価値観が創造されること自体は、実にポジティヴな動きだと思う。 しかし我々は、この「新しさ」が 革命 なのか、 進化 なのか、を冷静に判断すべきではなかろうか。

梁 世柱
2024年6月22日
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