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  • 甘口ワインだけでフレンチのコースを通してみた!

    こんにちはRestaurant Re:の苅田です。 今回は少し趣向を変えて、甘口ワインだけでフレンチのコースを通してみた! こんな〇ouTubeのような少し実験型の記事にしてみようかと思います。 なんでこんなことをやろうと思ったかというと。以前、フランス、ボルドーにある甘口ワインの聖地ソーテルヌ(*1)の有名な作り手(どこのシャトーだったか忘れてしまったのですが)のオーナーの記事で、「食文化の変容によって甘口は消費量が減りつつあるが、 ソーテルヌはダークチョコレート以外何でもあう !」と言っていたのが印象的で、その時は「コマーシャル的に言っているのでは?」と思ったものですが、それから試すことなく何年も時が過ぎ。 そもそも、多くのレストランでペアリングがある現代。甘口1本でコースを通す人もいないだろうし、それでも、甘口をペアリングの流れの中で有効に使うという可能性を考えると、やってみても面白いだろうと始まったわけです。 せっかくなので、クラシックなソーテルヌと最近よくデザートワイン代わりにつかう甘口の日本酒を糖度別で2本、合計3本で検証してみます。あくまで料理を合わせるということではなく、通常のコースにどんな形であっていくかを検証するスタイルです。 お酒は以下の通りになります。 ①日本酒1  長野県 伴野酒造 Beau Michelle 9%  半甘口 アルコール低めでお米の甘みと酸味をしっかり引き出し、甘酸っぱい飲み口は日本酒嫌いキラーとして当店でも活躍中。 ②日本酒2  長野県 伴野酒造 Beau Michelle 11%  極甘口 ➀のお酒を貴醸酒(*2)にして、しっかり甘口に仕上げたタイプ、アルコールが少し高く、濃厚な甘みと生酛づくりから複雑身がある。 ③ワイン  フランス ボルドー地区 ソーテルヌ Chateau Coutet 2001年 14% 極甘口 貴腐ワインの代表格 20年近くの熟成を経てしっかりとした甘さと熟成感、両方味わえます。 左から順に①〜③ それぞれのお酒の詳細は最後に書かせていただきますので、ご興味がある方はそちらも合わせて読んでください。 さてコースは私が勤めております、東京中目黒【Restaurant Re】。日本の食材や食文化をフレンチの技法で再発見することをコンセプトにコースを提供しております。それでは参りましょう。私の感覚で相性を◎〇△×で表現しておりますので、ご参考までに。 アミューズ フォアグラのテリーヌ 生八つ橋風 フォアグラとリンゴとスパイスという組み合わせ。下に自家製の生八つ橋の皮、シナモンではなくティムールペッパーというフルーティーなネパールの胡椒を練りこんだもの。その上にリンゴのソース、フォアグラのテリーヌ、リンゴのカットと山椒のフタバと組み合わせ。フォアグラの上品な脂は甘口とよく合わせます。さっそく好結果になりそうです。 ① 〇 さわやかなリンゴの感じにマッチ。フォアグラには少し弱い印象。 ② 〇 リンゴよりフォアグラの深みとしっかりした甘みがマッチ。 ③ ◎ フォアグラの脂とマッチかつ、食事のスパイス感がソーテルヌの熟成したフレーバーともGOOD! 前菜 三陸産ムールマリニエール 柚子風味のノーザンルビーのソテー 三陸産の大粒のムール貝を白ワイン蒸しに、クチナシの実で色と香りをつけ、柚子でソテーしたノーザンルビー(ピンクのジャガイモ)と合わせてさっぱりと。スープもおいしい一品。 ① ◎ 爽やかな酸味で切れ味よく、優しい甘さが柚子の風味を増長してくれる。 ② ✖️ 甘みが強く食事の風味をマスキングしてしまっている印象。 ③ ◎ ➀と同じく柚子の風味と増長させつつ、海のミネラル感やクチナシの実の風味が熟成したソーテルヌと意外とマッチ。 前菜 紅富士サーモンの炙り 梨とフェンネルのサラダ 落花生のレムラードソース 富士山の伏流水で育てたブランド鱒の炙り、さっぱりした和梨とフェンネルのサラダ、ローストした落花生を使ったレムラードソースが適度なコクを与える。 ① ◎ 適度な酸味が全体的にマッチし、落花生と合わせると南部せんべいのようなおいしさに。 ② △ 合わなくはないけど後半甘さが強すぎる印象。 ③ 〇 全体的には➀のほうがあっていたが、ローストした落花生のソースとは抜群で、ワインの熟成感からくるナッツ感と相まってデザートのようにも感じた。 温菜 リードヴォーのフリカッセ グリーンマスタードと水晶文旦のソース ようやくお肉が出てきました!仔牛の柔らかい胸腺肉をクリーム煮にして、水晶文旦とハーブの風味の聞いたマスタードで酸味を感じる仕立てに。 ① 〇 やはり柑橘と愛称がいいようです。文旦の風味ととてもマッチ。  ② ◎ お肉自体とマスタードソースのバランスがいい。それ単体がソースのようなイメージ、ミルキーさが増して、文旦味のハイチュウのような味わいに。 ③ ◎ 文旦の柑橘フレーバーが少しスパイスを入れたオレンジマーマレードのような味わいになり、マスタードの酸味が熟成感とマッチ。 魚料理 鹿児島県産コモンハタのポワレ サフラン風味ののっぺ汁ソース ととまめのアクセント 白身魚でもうまみのあるコモンハタを焼いて、新潟ののっぺ汁をイメージしたソース。サフランで香りをつけた魚介のスープに銀杏、インゲン、黄色ニンジンなどをこまかく切って、いくらに火を入れて食べるととまめと紫蘇のスプラウトをアクセントに。 ① 〇 適度な酸味と甘さが全体の味わいに同調して、香り物をブーストしてくれる印象があります。今回は紫蘇のフレーバーが立っていました。 ② ✖️ 甘さがオーバーになってしまう。 ③ △ 悪くはないが、後半ソーテルヌが勝ってしまう。 メイン まるみ豚のフィレのロースト 柚子胡椒ガストリックソース 栗とかぼちゃのピュレ 柔らかくローストした、九州宮崎のまるみ豚のフィレ。酸味を効かせた柚子胡椒風味のお肉の出汁のソースに、濃厚さのある栗とかぼちゃを使ったピュレ。ブラックオリーブを乾燥させてパウダー状にし、一緒にソテーした赤チコリと春菊、ジロール茸が苦みとうまみを添えます。 ① 〇 お肉単体やお野菜のソテーとは悪くないが、ソースや栗のピュレなどのパワーに負けてしまう。 ② 〇 かぼちゃと栗のピュレの濃厚さにはマッチするが、お肉や野菜の部分とは味わいが強すぎるかもしれない。 ③ ◎ お肉単体とも相性がいいし。ガストリックソースやカボチャピュレには適度な甘さと複雑味がコクをあたえ、きのこともワインの熟成感がちょうどいい。 デザート サツマイモのミルフィーユ たき火仕立て ミルフィーユとはMille=千、Feuille=葉っぱという意味。薄くスライスしたサツマイモのチップを落葉千枚に見立てた、たき火をイメージしたミルフィーユ。火の形を摸したキャラメルとチョコレートのエスプーマの中には洋ナシのコンポート。アイスはたき火のようなスモーキーな香りの京番茶をつかったアイス。ここに洋ナシの割合が50%を超えるカルヴァドス・ドンフロンテを目の前でフランベして香りと一緒に召し上がっていただきます。 ① 〇 控え目な甘さが全体をすっきりさせてくれる。アイスやエスプーマに溶けて寄り添う印象。 ② ◎ ようやく本領発揮、しっかりした甘さがデザートにコクをあたえる。 ③ ◎ スモーキーな感じと熟成感がよく合い、複雑さをきわだせてくれる高い満足感。 【総括】 さて、終了です。全体の印象としてはほとんどのお料理とはNGと思うものはありませんでしたが、繊細な魚料理は難しい印象でした。ここは、甘さを控えたほうよさそうです。 お酒の種類では特にソーテルヌの受け幅は広く。あながち先の(有名シャトーオーナーの)セリフは、コマーシャルではなかったことが証明されました。特に熟成していたのがまた、よかったかもしれません。少しまとめます。 ⅰお料理の味わい、濃度とワインの甘さのレベルを合わせることで幅広い相性を模索できる。 ⅱⅰを踏まえたうえで、柑橘のフレーバーや強いハーブの香りと甘みは相性がよく引き立たせることができる。 ⅲ 熟成したお酒を使うと、料理に含まれるスパイス香、メイラード香、スモーク香などと同調しそこに甘みが加わるのでより複雑なペアリングとなる。 ⅳ濃厚な甘さのお酒は食事と合わせるのが難しいが、しっかりはまると足し算や引き算ではなく掛け算のような新しい味わいを作り出すこともできる。 注意事項 : 甘口は少量での満足度が高いので量があまり多く飲めませんでした 。これは アルコール度数の強弱よりも、甘みの濃厚さ が重要なようです。逆をいえば、 たくさん飲めない人を少量のアルコールで満足させることができる 武器ともなりえます。 ワインを飲みなれてない人や歴が浅い人はおのずと、レストランでも甘いお酒を最初や早い段階でたのむ傾向があるように思います。 コース前半の繊細なお料理の時に、とにかく重い赤!濃くて渋いやつ!と注文されると、料理と合わせるなら最初は白やロゼ、オレンジワイン、日本酒でもいいし、赤しか飲まれないなら軽めのものを先に召し上がって後から重いワインをいかがでしょうか?などとソムリエは勧めると思いますが。 最初から甘口と言われた時もおなじような感じで、なるべく甘さが控え目のものを出そうと、ほのかに残糖があるリースリングなどで対応していました。しかし今回のことで、甘口のお酒が結構受け幅の広いことが実感でき、なんだったら、甘口だけでペアリングが可能なのではないかと思ってしまいました。(多分やりませんけど笑) 私は意地悪なので、ペアリングをお出しする際、ワインを先にだして、お客様がこれあうのかな?という顔から料理と飲んで、すごくいい!という顔に変わるのを見るのがすきです(笑) ペアリングを考える際、「安定性、意外性、ストーリー性、メッセージ性」などを意識してチョイスしますが、デザートでないタイミングでの甘口のお酒、お客様を驚かせる武器になりそうです。 濃いめの味付けになりがちなご自宅でのご飯にも(うちだけかもしれませんが、、、)甘口のお酒の出番は意外と多いかもしれません。ワインは苦手だといっていたお子様がおいしいと言って一緒に飲んでくれるかもしれませんよ?ぜひ皆様お試しくださいませ! 【ワイン、日本酒詳細】 ① 生産者:伴野酒造 酒名: Beau Michelle/ボーミシェル 品種:―――― タイプ:半甘口 アルコール度数:9% 生産国:Japan /日本 生産地:長野県佐久市 ヴィンテージ:(2019年)表記なし 参考価格:¥1,100(500ml) 創業明治34年の老舗酒屋、日本酒本来のうまみを表現することにこだわり、穏やかな味わいの「澤乃花」という日本酒が主力。このボーミシェルはもろみに音楽を聞かせながら(そうすると味わいがまろやかになるのだそう)仕込み9%の低アルコールの甘酸っぱい日本酒。香りはお米と和梨のようなさわやかな香り。飲むとマスカットのような軽やかなフルーツ感と和梨の風味、甘さと酸味の軽快なバランスが素晴らしくキレもいい。日本酒が苦手という人キラーの1本! ② 生産者:伴野酒造 酒名: Beau Michelle BLISS/ボーミシェル ブリス 品種:―――― タイプ:極甘口 アルコール度数:11% 生産国:Japan /日本 生産地:長野県佐久市 ヴィンテージ:2019年 参考価格:¥2,500(500ml) ➀のボーミシェルの貴醸酒バージョン、ヨーグルトやはちみつ思わせる香り、11%とは思えないくらいのとろみのある口当たり飲みごたえ。ほのかな柑橘の味わい、濃厚な甘さ。 ➀に比べてかなり濃厚でアフターまで甘さがしっかり残る。ロックやソーダ割もいいかもしれない。 ③ 生産者:Château Coutet/シャトー クーテ ワイン名: Château Coutet/シャトー クーテ 品種:セミヨン ソーヴィニヨンブラン タイプ:極甘口 白 アルコール度数:14% 生産国:France/フランス 生産地:Sauternes(Barsac)/ソーテルヌ(バルザック) ヴィンテージ:2001年 参考価格:¥5,800(350ml) インポーター:フィラデス 購入したのが以前なのでお値段は参考までに、説明不要のソーテルヌ1級シャトー。ソーテルヌを名乗れるバルザック村の代表的な貴腐ワイン。香りは、コンポートにしたオレンジやスパイス、バニラやナッツはちみつと複雑な香り、味わいもしっかりしたあまさながら、酸味もしっかりありバランスがよく、ローストしてキャラメリゼしたヘーゼルナッツの香りがアフターに残る。 (*1)ソーテルヌ:世界三大貴腐ワイン(極甘口ワイン)の一つ。セミヨンを主体に、ソーヴィニヨン・ブランとミュスカデルがブレンドされる。長期熟成能力も非常に高く、熟成することによってやや甘みが和らぎ、ナッティーな熟成香と、蜂蜜のニュアンスが強まる。最も有名なソーテルヌは、シャトー・ディケム。 (*2)貴醸酒:日本酒を作る際、通常をお水を入れる工程で水の代わりにお酒を入れることで、アルコールに変わるはずだった、お米の糖分を残し甘さを残す日本酒の製法。「再醸仕込み」「醸醸」「三塁醸酒」などの別名がある。 <ソムリエプロフィール> 苅田 知昭 / Tomoaki Karita Restaurant Re: 支配人兼シェフソムリエ 1982年栃木県日光生まれ。 臨床心理学を専攻するものの大学時代のアルバイト先の研修旅行でジュヴレシャンベルタンのドメーヌに連れていかれワインをはじめとした飲食、飲料の虜に。株式会社シャノアールにてコーヒー業界から飲食に入るが、カフェインに極端に弱いことが発覚しワインの道へ。イタリアンバル、カフェ、パティスリー、ビストロと様々な業態の立ち上げ。飲料を担当。 飲食以外のジャンルを経験する為、株式会社KDDIの常駐営業として人材育成を担当後、中目黒cuisine francaise NARITA YUTAKA 支配人兼シェフソムリエとして飲食業界に復帰。 現Restaurant Re: 支配人兼シェフソムリエ 。 2018年 JSA シニアソムリエ 取得 営業の傍ら、毎月、若手ソムリエや飲食人、インポーターを集めた勉強会を開催。近年はワインだけでなく、日本酒や焼酎の酒蔵の方も招き、情報提供、普及に尽力している。 <Restaurant Re:> 東京中目黒、目黒川沿いにあるフレンチレストラン。八重桜の季節には満開の桜を見ながら食事を楽しむこともできる。 日本各地の和の食材を使い、昔ながらの食材や地方の食文化が再発見できるフレンチ。 シャンパーニュやブルゴーニュのボトルワインが充実していながら世界各国の豊富なグラスワインの数は都内屈指。ペアリングではワインはもちろん、日本酒、焼酎、紹興酒と幅の広さも定評がある。

  • 葡萄を知る <3> ピノ・ノワール:Old World編

    第三回の主役は ピノ・ノワール 。前編として、Old Wolrd編をお届けします。ピノ・ノワールもシャルドネと同様に「テロワール」、「農業」、「醸造」、「熟成」から非常に大きな影響を受ける。しかし、シャルドネに比べると遥かにはっきりと、葡萄品種そのものの個性も備えているという点が大きく異なる。基本的には冷涼気候に適した品種とされているが、ある程度温暖な地でも栽培されており、そのテロワールを忠実に再現する特性から、温暖地でも興味深い表現が見られる。また、葡萄の収量(凝縮度)が最終的なワインの特性に(品質にも)如実に反映されるため、ほぼ一貫して高級品に使用される葡萄は低収量であることが多い。温暖地と低収量が組み合わされた場合、シラーとも類似性が多々見られるようになる。

  • ブドウ畑をワインで描写する画家

    皆さま、いかがお過ごしでしょうか? 私が日本に帰国してから、1年以上が経ちました。 ご愛読いただいております皆さまへの感謝の気持ちを忘れずに、本日もヒロミワールドへいらしてくださる皆さまの為に、コラムを全力でカスタマイズさせていただきました。 さて、今回ご紹介させていただく葡萄は リースリング という白ブドウです。「そんなん誰でも知ってるわー」とざわつかれるかもしれません。 ソムリエの勉強をし始めた頃は、どちらかというと苦手な品種で、しかも(リースリングに関連した事は)覚える事が多すぎて、頭を抱えていたのですが、このブドウを選んだ個人的な理由は、以下の通りです。 ① 極甘口、半甘口(半辛口)、辛口、そしてスパークリングと変化するので楽しく深い。 ② 以前の職場でリースリングを扱う事が多かった(NYではリースリングは人気がある)。 ③ 出産後(私本人の)味覚が変わり、低アルコールで、甘みと酸を感じるワインを以前よりも好んで飲むようになった。 ①と②に関しては、何もリースリングでなくても、 シュナン・ブランやソーヴィニヨン・ブラン を始めとして、他にもたくさん広範囲のスタイルをカバー出来る品種はありますし、③はワインベースの軽いカクテルや、涼しい産地で生産される軽いワインもあるのに、というお声もあるかもしれませんね。 特にリースリングの本場である ドイツ は、ニューヨークでのソムリエ修行時代、とにかく覚えるのに苦労した、私にとっては苦手なワイン産地だったのです。おそらく、同じような苦手意識をもっているのは、私だけではないと思います。 英語と似ているようで理解不可能なドイツ語、成熟度に基づいた独特の格付けなど、難解でとっつきにくいドイツのワイン法(*1)、曲がりくねった河川沿いに集中する複数の産地、おまけに、長い数列で(暗号のように)表現される情報(*2)。 これらをNYのソムリエスクールで、1週間という期間の間に頭に入れるのは、限界がありました。しかしながら、悔しいことに、当時のソムリエ勉強中のクラスメイト達は、(さすがアメリカは移民の国!)、フランス語やドイツ語をスラスラとあっさり読めて覚えてしまうのでした。 当時私は、NOBUレストラン・トライベッカで、朝から深夜までフルタイムで忙しく仕事をしていましたし、新しい引き出しに記憶を収納するにはリミットがありました。苦手な産地が翌週に控えた試験に出てくるとあって、ストレスでどんどん私は撃沈していったのを良く覚えています。 ですが、試験日は待ってくれないので、先ずは、ドイツにある13の生産地帯を覚えることから始めました。そして、発音しやすいモーゼル(*3)とラインガウ(*4)に、(小学校の頃から得意な)試験勉強の山をはりました。 当時はポケットにフラッシュカードを入れて、職場でお手洗いに行く隙に、一つでも多くの単語を覚えました。(こらっ!給料ドロボウ!) 実は、米国のソムリエ試験のブラインド・テイスティングに必ずといっていいほど頻繁に登場したのが、ソーヴィニヨン・ブランとリースリングだったのです。当時、香りだけで、この2品種に関しては、どこの産地かほぼ当てられるくらい、上司に鍛えられていたのは良い思い出です。 さて思い出話はここまでにして、ソムリエ修行中、甘くないドイツワイン理論の迷路をさまよっていた私を救ってくれたのが、今回紹介させていただくモーゼルです。 モーゼルはご存知かもしれませんが、 2007年の8月1日まではMosel-Saar-Ruwerとして知られておりました。 その美しくピュアで軽やかな、 低アルコールリースリング で高く評価されており、葡萄の樹が驚異的な生命力を発揮する、 急勾配のスレート土壌 (*5)の斜面に畑がある事でもよく知られています。もちろんこの 急斜面の葡萄は全て手摘み 。ウィリー走行世界チャンピオンでも、ここでは出る幕ありません。 様々な色のスレート板岩 このワインが造られるモーゼルのピュンデリッヒ村は、荒々しくうねるモーゼル川北部の中流域と下流域の境界線にあります。ここの地質はとてもユニークで、 何億年も前の火山活動により形成された、長く起伏のある崖 が特徴的です。 生産者 : Clemens & Rita Busch / クレメンス & リタ ブッシュ ワイン名 :Riesling Marienburg Falkenlay Großes Gewächs / リースリング マリーエンブルク・ファルケンライ グローセス・ゲヴェクス 葡萄品種 :Riesling / リースリング ワインタイプ :白ワイン 生産国 :ドイツ 生産地 :Mosel / モーゼル ヴィンテージ :2014 インポーター :Firadis 参考小売価格 :6,450円 ワイン画像 :©︎Firadis ご紹介させていただく造り手のクレメンス・ブッシュは、ドイツのワイン専門誌「アイヒェルマン」で、 最高位である5つ星生産者 に選ばれ、歴戦の辛口批評家から、「この偉大なリースリングはモーゼル及び、ザール・ルーヴァ―を代表すると言っても過言ではない。クレメンスのワインは、ドイツを語る上では決して外すことのできない必需品である。」と、この上ない程の評価を得ています。(私は個人的に評価の数字などは気にしないんですが、本当にすごいんです!) モーゼルのカビネット(*1を参照)は、 世界で最も繊細なワインの1つ ですが、彼の近年のワインは、(温暖なヴィンテージが続いた影響もあり) より豊かなスタイル を表現しています。 そして力強い G.G.(グローセス・ゲヴェクス) は、モーゼル屈指の偉大なワインで、彼のワインはその力強さと繊細なタッチから、(私的にアートで例えるなら)まるで ヨハネス・フェルメールの作品 を思い起こさせます。 貴腐菌を発生させるという非常に重要な役割をもつモーゼルの朝霧 さて、この現当クレメンスは1974年より祖父のクレメンスからワイン造りを学び、現在16haの畑を所有している5代目で、1984年に妻のリタと共にブドウ園を継承し、同時期に有機農法に取り組み始め、最近ではビオディナミ農法に移行しました。ドイツのワインメーカーの間では、その丁寧な畑仕事、(品質のために)高収量を放棄する強い意志などから、 ビオディナミのパイオニア として、まさにお手本となっています。 クレメンス・ブッシュのHPでは、彼の畑の写真を見ることができます。まさに必見です! ワイナリーのHPへ マリエンブルク という葡萄畑のお話をしましょう。 強いミネラル感、というモーゼルらしさを葡萄に宿す、 スレート板岩の3つの主要な色(青、赤、灰色) はすべてこの畑の中に含まれていますが、村から川を渡った斜面に沿って広がるさまざまな区画では、スレート板岩の構成が大きく異なるにもかかわらず、1971年にドイツ政府は、官僚的な決定でこれらすべての区画を1つのブドウ園名である“マリエンブルク”にまとめました。 クレメンスは現在も、この間違いを正すことに彼のキャリアを捧げており、ワインのラベルに、丘の中腹のさまざまなテロワールを基にした独創的な区画名を掲げています。(Fahrlay、Falkenlay、Rothenpfad、Felsterrasse、そしてRaffes) ボトルのカプセルの色は、各区画の土壌を構成する、重要なスレートの種類と同じ色(青、灰色、または赤)になっています。 “Falkenlay”という区画名が付けられたこのワインには、標高110-150Mに位置する南向き急斜面の葡萄が使用されており、その名に含まれる“Falken = 鷹”は、今日もこの場所を囲む石の間の隙間に巣を作る鷹が由来となり、この区画のスレート板岩は灰色であることから、“Lay = 灰色”という言葉も合わせられています。 このワインはシンプルに お刺身やお寿司 とは鉄板の相性を誇りますが、 鰹節ベースのお出汁 にもとても相性がよく、それを使った 厚焼き玉子や焼豆腐、もんじゃ焼き (もちろんお好み焼きも!)、 ブリの塩焼きや照り焼き といった和食とも最高です。洋食だと ウニカルボナーラ などは寒いこの時期、とても楽しめますよ! なお、健康思考に切り替えた近年の私は「良薬は口においしい」をモットーにワインを選ぶようになり、そんな私には、「お口に含んだ瞬間に心ときめく樹齢 90-100年のリースリング!」は最高のお薬です! (*1)以下のカテゴリーに分かれる。 カビネット :低いアルコールの軽快なスタイル。熟したぶどうを使用。半辛口〜半甘口。 シュペートレーゼ :遅摘みした完熟葡萄を使用する。より厚みのあるスタイル。半甘口。 アウスレーゼ :さらに遅摘みにした完熟ぶどうを、しっかりと選果して使用。甘口。 ベーレンアウスレーゼ :過熟させた葡萄と貴腐葡萄から作られる豊潤でスタイル。甘口〜極甘口。 アイスヴァイン :マイナス7度以下という条件で氷結した葡萄をそのまま圧搾し、濃縮された果汁を用いて作るワイン。極甘口。 トロッケンベーレンアウスレーゼ :貴腐葡萄のみから造られる、非常に凝縮したワイン。 世界三大貴腐ワインの一つ 。極甘口。 (*2)ドイツワインのラベルに記載される、公認検査番号。消費者にとっては、全く意味の無いものである。 (*3)ドイツを代表する産地として知られるが、その真価は極甘口から辛口まで幅広いスタイルにおける、隙の無さと言える。歴史的に残糖のあるスタイルの方が有名だが、辛口も素晴らしい。 (*4)半辛口から辛口のリースリングで知られる、ドイツの銘醸地。ふくよかで力強い味わいが特徴。 (*5)粘板岩。泥岩や頁岩が圧縮されることによって生成され、石英といった様々な鉱物を含む。葡萄畑においては、「熱を蓄える」という非常に重要な役割をもち、ドイツの中でも特に寒い地域では、リースリングが限界的な生育条件を満たすための、欠かせない要素の一つとなっている。 <ソムリエプロフィール> 木山 ヒロミ/Hiromi Kiyama CEO / DH Dumont 1975年、大阪生まれ。1995年、渡米。 ニューヨークNobu Restaurantで11年勤務。20代の後半からワインの独学を始め、マスターソムリエ/酒サムライのRoger Dagorn氏と出会い、ソムリエになる事を決断する。 その後、ニューヨークで数々のミシュラ ンフレンチレストラン、日本食レストラン、ホテルで勤 務。2014年の出産後、育児初期はパートタイムでソムリエ や、コンサルタント業をしながらヨガ講師を目指していたが、奇才のCesar Ramirez(Chef’s table at Brooklynfare)に出会い、世界で最も予約困難な三つ星店で勤務。再び、ソムリエに戻るチャンスを得る。 2019年9月、日本へ帰国。夫とDH Dumontを設立。 2020年春、大阪にオープン予定のビンテージウイスキーとワインの1号店。 ニューヨークでの職歴: Nobu NYC、Adour by Alain Ducasse、Corton、15East、Tocqueville/Union Square Hyatt、Public Restaurant、Chef’s table at Brooklyn Fare アメリカでのコンクールと経歴: Sommelier Competition&Achievements: The Sommelier World Cup “USA VS South Africa” : 7th finalist 2010 USA Sud de France Sommelier Competition: 2nd runner up 2010 Ruinart Challenge Competition-Court of Master Sommeliers in NYC: 1st runner up 2011 Sochu Competition USA: Semi Finalist 2011 American Sommelier Association: Viti Vini/Blind Tasting Court of Master Sommelier: Certified Wines of Portugal ‘Academia do Vinho’ Level 3-Advanced course SSI international Kikisake-Shi

  • 10 Best Wines (スペイン/リベラ・デル・デュエロ)

    リベラ・デル・デュエロ 。 リオハやプリオラートと並び、スペインの 三大赤ワイン産地 の一角でもあります。 標高800mを越える一帯に開かれた産地であり、 夏には摂氏40度近辺まで上昇し、冬には-20度近くまで冷え込むという、 非常に極端な気候が特徴の一つです。 土壌は主に石灰質の上に粘土という、ヨーロッパ伝統産地の中でも「エレガント系」の組み合わせと言えます。 葡萄品種は、現地では Tinta del Pais と呼ばれる テンプラニーリョ が75%以上である必要があります。 トップワインは単一品種であることも多いですが、他にブレンドされる品種がある場合、伝統的にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、マルベックであることは、スペインの銘醸地の中でも、一際「 インターナショナル風 」の印象が強くなってしまっている主たる要因でしょう。 しかし実際には、標高の高さ、寒暖差の大きさ、土壌のタイプ、主葡萄であるテンプラニーリョの性質も合わせ、 エレガントさこそが本来の特徴 です。 ではSommeTimes厳選の10 Best Wines in Ribera del Dueroをご紹介いたします。 自社畑の半分は樹齢60年を越え、醸造所は最新技術で固めた現代的なワイナリーがティント・フィグエロ。低価格帯からトップ・レンジまで隙がなく、緻密なワイン造りのヴィジョンが見事に反映されています。トップワインのTinusは、樹齢90年以上の単一畑に育つテンプラニーリョのみから造られ、力強さとエレガンスが同居した見事なワインです。 1992年設立と若いワイナリーでありながら、明確なテロワール主義のヴィジョンと確かな技術で、瞬く間にトップワイナリーの一つとなったヴィーニャ・サストレ。複数の単一畑ワインをリリースしていますが、トップワインであるPesusが圧巻です。85%のテンプラニーリョにカベルネとメルローをブレンドし、フレンチオーク100%というスタイルは、極めて完成度が高く、インターナショナル派の大傑作の一つと言えます。 伝説的なマウロ・ペレスの跡を継いだ銘醸として名を馳せるのがヴィーニャ・ペドローサ。樹齢20年以下の若木から作られる最もベーシックなCepa Gavilanのクオリティにも驚かされますが、トップワインであるPeréz Pascuas Gran Seleccionの圧倒的な酒質が凄まじいです。若い時は濃厚なワインでもありますが、繊細さもしっかりと兼ね備え、スペイン御家芸の超長熟ポテンシャルも桁違いです。 ヴェガ・シシリアで30年間も醸造長を務めた、スペイン最高の醸造家の一人であるマリアノ・ガルシアが興したワイナリー。ヴェガ・シシリアとは本質的にワインのスタイルが異なる点も非常に興味深く、アールトのモダンで洗練されたテクスチャーとダークな果実味は、高樹齢の葡萄からくる凝縮感としなやかさを華々しく表現しています。 リベラ・デル・デュエロで三代に渡り家族経営を続けてきたエミリオ・モロは、規模を順調に拡大しつつも、その徹底的な品質主義を低価格から超高価格まで貫いている、この産地屈指の優良生産者。そのワイナリーとしての総合力こそ評価されるべきポイントではありますが、トップワインのClon de la Familiaは、間違いなくこの地指折りの極上ワインです。 今回ご紹介するワイナリーの中では、最も歴史が浅く(2010年設立)、最も若い造り手であるのが、ドミニオ・デル・アグイラ。ホルヘ・モンソンはDomaine de la Romanée-Contiの高名なベルナール・ノブレに師事した後に、リベラ・デル・デュエロに戻り、次はヴェガ・シシリアで働きました。まさに「華麗」な職歴を誇る彼が生み出したのは、この地に新世代の猛烈な旋風を巻き起こすかのような衝撃的ワイン。トップワインのCanta La Perdizは樹齢100〜150年の「自根」の区画から造られ、驚くほどの軽やかさと華やかな芳香を放つ大傑作ワイン。 標高1000mを越えるアタウタ村に拠を構えるドミニオ・デ・アタウタは、リベラ・デル・デュエロの数多い銘醸の中でも、特異な存在。アタウタ村に残るプレ・フィロキセラの超古木(当然、自根)は、極端に降雨量が少なく、昼夜の寒暖差が激しい過酷な環境を生き抜き、独特の個性をもつに至っています。ワイナリーはその特性を無理に味付けすることなく、ワインへと転化させることを信条としています。わずか1樽というトップワインのLa Rozaは、この畑の極度に乾燥した砂質土壌でしか生まれ得ない、驚くべき飛翔感と真円のテクスチャーが印象的な、リベラ・デル・デュエロの最高傑作の一つ。 ドミニオ・デ・アタウタと同じく、アタウタ村に拠点を置くドミニオ・デ・エス。トップワインのLa Divaは、樹齢140年の自根の区画から作られ、やはりこの地ならではの、独特の軽やかさが魅力的なスーパーワイン。今回ご紹介した2つのワイナリーを含めた複数の優秀なワイナリーの功績により、アタウタ村がリベラ・デル・デュエロにおける特級畑の筆頭格と目されるようになりました。 この地における最高価格を誇る銘醸中の銘醸が、ドミニオ・デ・ピングス。デンマーク人のピーター・シセックが率い、そのカルト的人気と、ロバート・パーカーJrによる高得点が嫉妬を呼び込み、パーカー風味に仕上げられたインターナショナルスタイルの非伝統的ワインを揶揄されもしましたが、実際のワインはそんな印象とは大きくかけ離れています。2000年からビオディナミに転換し、さらに高まったエネルギー感と長大な余韻は、まさにグラン・クリュ!醸造技術で作られたワインではなく、紛れもないテロワールのワインであることは、明確です。旗艦的ワインはワイナリーの名を冠したPingusですが、たった1樽だけ生産される、Ameliaという極めてレア(そして大変高価)なワインもあります。 スペイン最上のワインとして、古くから知られるヴェガ・シシリアのウニコ。もはや語り尽くされたと思われているワイナリーですが、実はかなりの秘密主義としても知られていて、未だにその全貌が明らかになっていない、神秘的な存在でもあります。なぜこんなにもウニコが凄いのか、その理由はありきたりの予想で答えるしか無いように思えます。ヴェガ・シシリアが有するウニコの原料となる畑は、まさに奇跡的な完全性を備えた、グランクリュ中のグランクリュに違いないということでしょう。

  • 誰も知らない偉大な産地(無料公開)

    大都会のハイセンスが反映されたスタイリッシュなワイン。世界最大の大都市であるニューヨーク市を有するニューヨーク州のワインと聞けば、随分とバイアスのかかったイメージが先行するだろう。マンハッタンを悠々と闊歩する成功者たちが、昼間にテラス席で優雅に楽しむワイン。そんな光景すら、容易に想像できてしまうかもしれない。 しかし、実際のニューヨーク・ワインは、そのようなイメージとは大きくかけ離れている。 マンハッタンからほど近いロング・アイランドにも中規模のワイン生産エリアが存在しているものの、世界市場から見たニューヨーク・ワインとは、主にフィンガー・レイクス産を意味している。フィンガー・レイクスはマンハッタンから車で約5時間の距離にある。ニューヨーク州は非常に大きな州であり、フィンガー・レイクスは、ニューヨーク州北西部の、カナダとの国境にほど近いエリアに位置しているのだ。これほどまでに距離が離れているのに、マンハッタンとの繋がりを求めるのは無粋というものだ。 フィンガー・レイクスは、空を覆い尽くすような超高層ビル群とも、けたたましいタクシーのクラクションとも、ハイウェイの異常な渋滞とも、地下鉄の構内に鳴り響く様々な音楽とも、舌打ちしながら観光客の間を早足ですり抜けていくニューヨーカーとも無縁の、どこまでも朴訥とした素朴さが魅力のワイン・カウントリーである。 そんな「ど田舎」にあるフィンガー・レイクスに、今世界のワイン市場が大きな期待を寄せている。 右下に位置するオレンジ色の部分がマンハッタンのあるニューヨーク市 Finger Lakesの歴史 始まりのとき フィンガー・レイクスに最初に葡萄が植えられたのは、1829年。牧師であったウィリアム・ボトウィックが牧師館の庭に葡萄を植樹したと記録されている。当時、アメリカ全土で高アルコール濃度、低品質かつ低価格な穀物系スピリッツの流通により、アルコールへの強度の依存が社会的問題となっていた。ボトウィック、そして同時期にワイン作りを開始したサミュエル・ウォレンという二人のキリスト教徒は、アメリカで消費される酒類の中で、ワインの比率を上げ、高アルコール濃度酒類への依存から脱却するきっかけとして、多大なる貢献を果たした。 当時、植えられた葡萄の中でも、特に重要だったのは、フィンガー・レイクスの厳しい気候に順応したカタウバ種(セミヨンとアメリカ系ラブルスカ品種の自然交配種)と、イザベラ種(不明のヴィニフェラ品種とアメリカ系ラブルスカ品種の自然交配種)であったとされている。 ハイブリッド品種を使用していたため、ヨーロッパのワインとは大きく異なる味わいであった原初のニューヨーク・ワインだが、ローカル消費、教会での儀式用の消費等もあり、生産量は大きく伸びていった。しかし、1919年に禁酒法が発令されると、アメリカ中のワイナリーと同じく、フィンガー・レイクスのワイン産業も、壊滅の危機に瀕した。 ヴィニフェラ革命 禁酒法によって負った痛手を引きずったままだったフィンガー・レイクスで、再興への狼煙をあげたのは、ウクライナから移住した一人の葡萄栽培学者だった。1951年にニューヨークに渡ったコンスタンティン・フランクは、1957年頃からにヴィニフェラ品種を植樹し始め、1958年にはケウカ湖の南西部に約78haの土地を取得し、葡萄畑を開墾した。二度の世界大戦を生き抜き、苦難に満ちた人生を歩んだフランクが、59歳にして初めて得た、自らの夢を託した畑であった。1962年には、東部アメリカ初のヴィニフェラ品種に注力したワイナリー「ヴィニフェラ・ワイン・セラーズ」を設立。 これまで、育てやすい自然交配系ハイブリッド品種を用いて、カジュアルなローカル消費向けのワイン産地として成長してきたフィンガー・レイクスが、世界基準の品質を生み出せる可能性のある産地として、大きく前進した歴史的瞬間である。また、フランクは自らのヴィニフェラ品種栽培に関する知見を、惜しみなく共有したことでも知られており、フィンガー・レイクスでヴィニフェラ品種の栽培を試みる若者たちの背中を力強く押し続けた。 成長と躍進 1976年、有名な「パリスの審判」と時を同じくして、ニューヨーク州で「ファームワイナリー法」が施行された。禁酒法時代の名残であった「生産量の95%以上を卸業者に販売」という規制が撤廃され、小規模生産者がレストランやワインショップに直販することが可能になった。また、同じタイミングでワイナリーの登録申請料が大幅に引き下げられたため、多くの葡萄農家が、自らワイン造りもするようになった。また、このファームワイナリー法は、ニューヨーク州以外のワイン産地にも多大なる影響を与え、1976年以降から現在に至る、アメリカ国内におけるワイナリー設立ブームの直接的かつ決定的なきっかけの一つとなった。 この力強い流れの中で、フィンガー・レイクスの成長にとって欠かせない存在となった、いくつかの重要なワイナリーが誕生した。1979年には、ハーマン・J・ウィーマーが設立され、1984年には酪農家であったウィルドリック家が葡萄を植樹し、後のフォックス・ラン・ワイナリーとなった。1990年には、1940年代からフィンガー・レイクスで葡萄栽培をしてきたワグナー家が、ラモロー・ランディングを設立、同じく1990年にはアンソニー・ロードが、1998年にはレッド・ニュート・セラーズが、2000年にはレヴィーンズが設立された。そして2009年、近年のフィンガーレイクス躍進の立役者とも言える、フィンガー・レイクス出身のマスターソムリエであるクリストファー・ベイツが率いる、エレメント・ワイナリーが設立された。 革新を進める第三世代 ヴィニフェラ革命によって、可能性を切り開いたコンスタンティン・フランクを第一世代とするなら、70〜80年代にかけてフランクを追従した生産者は第二世代にあたる。そして時代は今、第三世代のワイン造りへと大きな転換期を迎えている。第二世代の造り手は、ワイン造りをブームに乗った「生活の手段」として行っていた者も少なくない。そして彼らの多くは、農家からワイナリーへの転身組だったため、手探りな部分も非常に多かった。当然、資金的な余裕も無く、近代的な革新はスローペースなままだった。しかし、そんな第二世代のもとで育った若者たちは、インターネットが一般化した時代の恩恵を受け、超高速化した情報社会に慣れ親しんできた。マンハッタンを含む国内の大都市圏や、海外の大都市へのアクセスも容易になり、世界最先端のワイン市場をダイレクトに感じ取る機会にも圧倒的に恵まれた。多くの若者は、フィンガー・レイクスの外へ飛び出し、世界中の銘醸地で研修を重ねる中で各々が得た知見を、同世代の同郷の仲間たちと分かち合った。 1829年にフィンガー・レイクスに初めて葡萄が植樹されてから、180年以上の時を経てようやく、フィンガー・レイクスのワイン産業は、世界の最前線と繋がったのである。 極めて強い影響力を誇ったロバート・パーカーJrの嗜好に、ワイン産業全体が振り回されていた時代は、ビッグ・ワインを造るのが非常に難しいフィンガー・レイクスにとって、まさに不遇の時であったが、近年の世界的な食のライト化傾向に伴った、低アルコール濃度で軽やかなワインを好む嗜好の変化は、フィンガー・レイクスにとっては、強力な追い風となっている。 自宅の裏手にある小山で頁岩の地層を見せてくれた、マスターソムリエのクリストファー・ベイツ Finger Lakesのテロワール 現代的ワインの理想郷 温暖な夏と非常に寒い冬という気候特性は、葡萄が成長する夏場に熱ストレスを与えずに継続的かつ長期的な成長を促し、冬の寒さの間にしっかりと葡萄を休ませることができる。年間降雨量は約550mm〜800mmの間であるが、冬場の降雪と積雪もあるため、葡萄にとっては十分すぎるほどに水分に恵まれた産地である。 フィンガー・レイクスのマイクロ気候にとって、最も重要な役割を果たしているのは、水量の多い湖だ。「レイク・エフェクト」とも呼ばれるこの湖の効果は、夏には涼しい空気を葡萄畑に送り込み、冬には暖かい空気を送り込む。これは、巨大な水塊は水温が大きく変動しにくいことに起因する。湖に沿って、東西のなだらかな斜面に開墾された葡萄畑は、積算温度こそやや低いものの、日照量は問題ない。このレイク・エフェクトの恩恵を最大限に受けられるのは水量の特に多い湖の周辺であることから、フィンガー・レイクスの葡萄畑は、セネカ湖、ケウカ湖、カユガ湖の周辺に集中している。 フィンガー・レイクスという産地は、温暖な夏と厳しい冬、温度調整の役割をする巨大な湖、東西に開けた十分な日照量という組み合わせによって成立しているのだ。 フィンガー・レイクスの畑の多くは、湖のすぐ側に拓かれている しかし、過酷な環境に弱いヴィニフェラ品種にとって、フィンガー・レイクスの気候は、限りなく限界点に近い。そして、この点こそがフィンガー・レイクスのワインが、世界中の銘醸地に対して決定的に優位に立てる重要な要素である。地球温暖化の影響で年々変容してきているヨーロッパの伝統産地に比べ、現時点でのフィンガー・レイクスは、かつての伝統産地がそうであったように、限界点だからこそ生まれる緊張感のある味わいが徐々に、しかし明確に、出始めている。現代人の一般的なワイン嗜好(特にミレニアム世代)は、極端に冷涼産地の味に傾きはじめているため、まさにフィンガー・レイクスのテロワールは、世界中の生産者が喉から手が出るほど欲する要素が詰まっている、と言っても過言ではない。 冬には大量の雪が積もる バナナ・ベルト なんとも気の抜けた珍妙な名前であるが、セネカ湖の南東湖岸エリアは、フィンガー・レイクスでも最も温暖なマイクロ気候であることから、こう呼ばれている。他エリアでは栽培の難しい品種の成功も期待されている注目のエリアである。 特別な土壌 フィンガー・レイクスという地は、古代の氷河の動きによって生まれた。氷河がこの地に進出し、覆い尽くした後に去っていったことによって、湖も含めた現在の地形が形成されたのだ。土壌としては、頁岩(Shale=けつがんと読む)、石灰岩(Limestone)を含む沈泥土壌(Silt=泥の中で粘土よりも粒が大きく荒い)が中心となるが、エリアによって様々なヴァリエーションが見られるため、隣り合った畑でもテロワールが大きく異なることも多い。 これらの土壌組成物の中で、フィンガー・レイクスならではの個性を宿した最も重要なものは、頁岩である。頁岩は泥岩の一種であり、薄く層状に重なり、脆く割れやすい。より分厚く、やや頑丈に変成したものは粘板岩(スレート)と呼ばれる。頁岩と粘板岩は共に類似点の多い土壌であるが、若い産地であるフィンガー・レイクスにとって、割れやすい頁岩は、葡萄の根が地中深くまでより早く伸びることを促すため、極めて大きな役割を果たしている。フィンガー・レイクスのワインは、他のニューワールド産地に比べ、ミネラルの表現が際立って豊かである。その秘密が、まさにこの頁岩にあるのだ。 ミルフィーユ状に重なった頁岩 割れやすさが利点となる頁岩 Finger Lakesの葡萄 コンスタンティン・フランクは、20年ほどに渡って、約60種のヴィニフェラ品種を試験栽培した。葡萄栽培学者であったフランクにとっても、1957年の時点では、彼の地は未知そのものだったのだ。最初に植えられたリースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・ノワール、シャルドネは、冷涼気候に適応するだろうという、「経験則に基づいた勘」によって選定された。後にフランクは、ルカツィテリ、クリミア、フェテアスカといった、自身の故郷でもある東ヨーロッパの固有品種も植樹している。 長年に渡って、様々な実験と検証が繰り返された結果、最初期から重要視されていた冬の極寒期への耐性(リースリング、カベルネ・フラン等が該当)に加え、晩冬と初春の霜害を回避できる萌芽(Bud Break)の遅さが鍵となることが判明している。 しかし、近年はフィンガー・レイクスも地球温暖化の影響を受け、この条件にも変化が生じている。全体的に暖冬気味になったことにより、低温耐性の重要度が下がった一方で、暖冬の影響で萌芽が早くなったことにより、霜害のリスクが高まってきたのだ。萌芽が早いシャルドネ等は、今後難しくなる可能性も考えらえるが、低温耐性は高くないが、萌芽が遅く晩熟な、シラーやマルサンヌといった葡萄は今後大きな可能性を秘めているだろう。 好適品種 リースリング フィンガー・レイクスの気候条件、頁岩土壌と極めて相性の良い、最重要品種。端正な辛口から、極甘口まで幅広いスタイルで造られる点は、似たような気候と土壌(スレート)をもつドイツのモーゼルと酷似している。しかし、フィンガー・レイクスのリースリングは、モーゼルほど酸もミネラルも強靭ではなく、程よい柔らかさと優しさを備えており、食事と楽しむためのワインとしては、より高い汎用性を誇っている。 総じて非常に品質が高く、ドイツ、オーストリア、フランスのアルザス、オーストラリアのクレア・ヴァレー及びイーデン・ヴァレー、カナダのオンタリオと並ぶ、最高品質のリースリング産地として、確固たる地位を築きつつある。 ゲヴュルツトラミネール フランクが最初に植えた葡萄品種の一つ。その個性的な風味から、セールス的には苦戦してきたものの、根強く生き残ってきた。しかし、温暖化の恩恵を強く受けた品種でもあり、近年はより華やかに力強く進化。優れたゲヴュルツトラミネールを産出する産地は世界的にも希少であり、フランスのアルザス、ドイツ、イタリア北東部の南チロルと並び、最高品質の産地となる期待がもてる。 シャルドネ 萌芽の時期が早い品種であるため霜害のリスクはあるものの、より冷涼なエリアを選べば、シャルドネも大きく花開く可能性を秘めている。しかし、糖度の上がりきらないフィンガー・レイクスでは、全面的に樽を使用するのは難しい。より抑制の効いたスタイルでこそ、この地ならではのシャルドネの個性が活かせるだろう。 ピノ・グリ 徐々に見直されてきた品種の一つ。収量の調整次第では、多産型のカジュアルワインにも、充実した味わいの本格派にもなれるため、生産者のフィロソフィーがダイレクトに反映される。 カベルネ・フラン 極寒期への耐性が際立って高く、萌芽が遅く、カベルネ・ソーヴィニヨンほどの日照量も必要としないカベルネ・フランは、フィンガー・レイクスにおけるヴィニフェラ栽培の初期から変わらず、最も重要な黒葡萄である。特に近年は、栽培技術の向上と温暖化の影響が合わさって、格段に品質が向上。世界的に見ても、この品種単一で味わいのバランスを取れる産地は非常に珍しく、フランス・ロワール地方のシノンを思わせる風味は、特筆に値する。長期熟成能力も高いため、今後この品種から更に卓越した品質のワインが次々と登場するだろう。 ピノ・ノワール フランクが最初に植えた「ガメイ・ボジョレー」という品種は、ガメイではなく早熟型のピノ・ノワールクローンの一種であったことが後に判明したため、結果的にピノ・ノワールはフィンガー・レイクスでも最も古くから栽培されているヴィニフェラ品種の一つとなった。不運なことに、フィンガー・レイクスの成長期がロバート・パーカーJrの全盛期と同じタイミングにあったことから、世界的な濃醇化を続けたピノ・ノワールのスタイルを実現することがテロワールの条件上難しかったため、大きく出遅れてしまった。現在ではむしろ、低アルコール濃度で、軽やか、この産地特有の成熟期間の長さによってしっかりと熟したフェノールのおかげで充実した味わいになるピノ・ノワールは、現代的嗜好と完全にマッチしており、非常に大きな注目が集まっている。 シラー フィンガー・レイクスの未来を担うと期待されている重要品種。冷涼気候と長い成熟期間という利点を活かした、抑制の効いた端正なスタイルが特徴。限界的生育条件ならではの、独特の緊張感も備えており、今後磨きがかかれば、唯一無二の個性をもった最高のシラーの産地となる可能性を大いに秘めている。 ブラウフランキッシュ 現地ではLemberger(レンベルガー)と表記されることもあるオーストリアの高貴品種ブラウフランキッシュは、フィンガー・レイクスのテロワールに完全に適応した好適品種の一つ。葡萄自体の知名度の低さから、長年に渡って多産型ロゼワインの原料にされることが多かったのが残念だが、近年は本格派の赤ワイン用として、再注目されている。 ゲヴュルツトラミネールのポテンシャルは非常に高い ***** 後編では、 Finger LakesのAVA(原産地呼称)の解説 Finger Lakesを代表する造り手たちのストーリー 等々をお届け致します。

  • 10 Best Wines (スペイン/プリオラート)

    10 Best Winesのコーナーでは、世界各国の産地やエリア(時に同一品種で複数の産地)から、 特に優れた生産者とその代表的なワインをご紹介いたします。 第一弾は、スペインの プリオラート です。 スペインを代表する産地といえば リオハ ですが、 カタルーニャを代表する産地はプリオラート です。 (歴史的諸々もあり、分けて考える方がリスペクトだと思います) そのワイン造りの歴史は12世紀頃からと、比較的古い産地でもあり、 フィロキセラによって一度は壊滅してしまいますが、 1989年ヴィンテージを「 4人組 」と呼ばれた生産者集団が、 5つのラベルに分けてリリースしたことをきっかけに、 近代は大きな復興を遂げ、スペイン(カタルーニャ)の 最高位格付け産地 の一角となっております。 葡萄畑の標高は100m〜700m超と非常に高低差の激しい産地でもあり、 標高と斜面の向きが複雑に絡みあい、 多様性に溢れるワインが造られています。 プリオラートの主役はなんと言っても赤ワインです。 主要葡萄品種は ガルナッチャ ですが、より酸の強い ガルナッチャ・ペルーダ や、近年では カリニェーナ の注目も高まっています。 ( カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ をブレンドするワインもあります) 主要な土壌は リコレッリャと呼ばれるスレート岩盤土壌 。 ワインに濃い色調、高アルコール、力強い骨格を与える土壌です。 元々暑く乾燥した産地ですが、温暖化の影響も強く、近年はより日照量をセーブできる北向き斜面の畑にも注目が集まっています。 ではSommeTimes厳選の10 Best Wines in Prioratをご紹介いたします。 プリオラートの中でも、まだまだマイナーな生産者ですが、 Clos i Terrasses(Clos Erasmus)で栽培を担当してきた経験を存分に活かし、ビオディナミ農法に心血を注ぐ、生粋のテロワール主義者です。 ナチュラルに、クリーンに磨き上げた酒質は白眉。 トップ・キュヴェのLa Rodedaは生産量僅か1樽という希少品ですが、 プリオラートの真髄を体現した凄いワインです。 バルビエ家のレネ・バルビエJr、ペレス家のサラ・ペレス。 「4人組」の家系同士の結婚によって生まれた、 プリオラートの未来を担う重要なワイナリー。 レネJrもサラもそれぞれの実家では、慎重に改革を進めていますが、 このプライベートプロジェクトでは、よりナチュラルに、 そしてクリエイティヴ精神も全開にしています。 レネ・バルビエほど、Down to Earthなレジェンドはなかなか居ません。 底知れぬ優しさと大らかさ、どこまでもリラックスしたカジュアルさが、 レネを多くの人々の中心に自然と置いていくようです。 代表作のClos Mogadorは、カベルネやシラーもブレンドするという、 インターナショナル・スタイルを現在に於いても堅持している逸品です。 近代プリオラートの歴史そのものであり、歴史的な味わいであり、 その保存という一点に於いても、このワインの存在意義は計り知れません。 スペインを代表する醸造家の一人であるラウル・ボベが、 プリオラートにもたらした影響は巨大です。 完璧主義的な精密な醸造と、豊富な経験、類稀なるセンスが合わさり、 驚くほどエレガントで優美なプリオラートの表現を生み出しました。 まさに、プリオラートの正当進化系の教科書的ワインであり、 隙のない品質は驚異的。 プリオラートの古参組の一つであるMas Doix。 そのワインはまさに古典的の一言に尽きます。 プリオラートらしさ、旧世界らしさ、その強靭なミネラルと、 独特の土っぽさ、そんな古典の魅力がぎっしりと詰まった銘醸中の銘醸です。 特に樹齢100年超えのカリニェーナから造られる代表作の1902は、 プリオラートにおけるこの品種の偉大な可能性を早くから提示してきた、 極めて重要なワインであり、その品質も極上。 4人組の一角であるダフネ・グロリアン率いる銘醸。 ダフネはその名声に満足することは無く、次々と改革を断行してきた、 4人組きっての革新派。 いち早くオーガニックとビオディナミに取り組み、 近年では一部のワインにアンフォラも用いています。 プリオラート近代クラシックの中でも、最も変化してきたワインであり、 洗練に洗練を重ねたその酒質は現在、凄まじい領域に突入しています。 Mas Martinetと言えば、旗艦的ワインであるClos Martinetが最も有名ですが、 遥かに凄いワインがあることは、あまり知られていません。 ガルナッチャから造られるEls Escurçonsと、カリニェーナもブレンドしたCami Pesserolesの二つのワインです。 共に醸造にアンフォラと大樽を取り入れて造られるキュヴェであり、 独特の滋味深さと奥行きを携えた酒質は、 一度味わうと決して忘れられない大傑作。 全プリオラートの中でも、最も異質なワインであり、 最もピュアなワインであり、最も評価の分かれるワインでもあります。 若きドミニク・フーバーは、アルコール度数が14.5%を超えることが当たり前のプリオラートにあって、13%代でも平然とワインを造ります。 「テロワールが偉大なら何もする必要はない」と、 醸造技術や醸造手段による「味付け」を完全に拒絶し、 純真無垢なテロワールの味わいをそのまま瓶詰めします。 高標高、高樹齢の最高の畑から生み出される二つのトップ・キュヴェは、 ガルナッチャのLes Manyes、カリニェーナのLes Tossesとそれぞれ明確に異なる個性を表現しています。 プリオラートの中で、最も過小評価されている造り手がCellers de Scala Deiです。 大きなワイナリーであるScala Deiが作るベーシックなキュヴェの印象が強いからかも知れません。 しかし、Scala Deiには、プリオラートの頂点に座す異次元のトップ・キュヴェが二つああります。 St. AntoniとMasdeuです。 共に、12世紀に修道士によって開墾された、プリオラート最古の畑です。 斜面に畑があることが多いプリオラートですが、この二つの畑は、 山の中腹に切り開かれた、平坦な畑。 そして土壌もリコレッリャではなく、石灰を含む赤土の粘土質土壌。 これは大変興味深い事実です。 最古の畑が、後に開かれる畑とは、あらゆる面で全く異なっているのですから。 St. AntoniにもMasdeuにも、パワーを求めてはいけません。 ここにあるのは、究極のフィネスと、無上の飛翔感です。 プリオラートの筆頭とも言える存在は、やはりこの高名なレルミタでしょう。 現在ではその価格はとてつもなく高騰し、 なかなか飲む機会に恵まれない神秘的なワインになってしまいました。 パーカーの高得点のせいか、濃厚なパワフルワインという、 思い込みが先行してしまっている節もあるレルミタですが、 全く違います。 レルミタは、プリオラートの太陽と土と風がもたらす、力強さ、奥深さ、エレガントさの全てが、完璧なバランスで共存した神格的なワインです。 間違いなく、スペイン全土はもちろんのこと、世界最高の赤ワインの一つです。

  • 【リースリングの聖地ドイツのグランクリュは、本当に世界最高か?】

    リースリングが大好きだ。 そうアツく語るプロが非常に多いことには、当然いくつもの理由がある。 葡萄品種の明確な個性 スタイルの多様性 高貴品種の名に恥じぬ品質 料理との幅広い相性(特に魚介類に対する無敵ぶりは圧巻) コストパフォーマンスの高さ これらはプロが熱狂する理由の最たるものだ。 でも、一つだけ違和感がある。 リースリングの品質に関して、どれだけの人が理路整然と語っているのだろうか。 今回はなるべく分かりやすい「格付けという記号」を用いて、その品質の真価に迫ってみよう。 ボルドー左岸に高名な格付け(*1)があるように、ブルゴーニュに広域から特級までの格付け(*2)があるように、リースリングの産地においても、格付けが存在するケースがある。 最も良く知られた格付けは、フランスのアルザス地方(*3)のものだろう。 51というアルザスの特級畑の数は、正直なところ多すぎると感じるし、実際にワインを味わっても、特級畑としての格にふさわしいか少々懐疑的なものも少なからず含まれてはいるが、中には明らかに他とは隔絶した品質を誇るワインも存在する。 アルザス屈指の名門であるトリンバックの旗艦ワイン「Clos Sainte Hune」は、特級畑Rosackerの中心部にある石垣に囲まれた区画から生み出される、リースリングという葡萄の世界最高峰のワインの一つだ。 平地から丘へと広がるアルザスの葡萄畑 リースリング銘醸地の一つであるオーストリアはどうだろうか。 端正な辛口スタイルで知られるこの地のリースリングであるが、格付けという分かりやすい「記号」の導入はまだまだ進んでいない。 オーストリア屈指の産地であるヴァッハウ(*4)には、ヴィネア・ヴァッハウという強力無比な生産者団体があり、その団体が主導し、ようやく単一畑の認定が始まったが、どこまで客観性が保たれた認定となったのかには、疑問が残る。 しかし、ヴァッハウではLoibenbergやKellerbergが(他にも多数)、少し離れたカンプタール(*5)では、HeiligensteinやGaisbergといった畑が、昔から「特別な畑」として認識されてきた歴史がある。 ヴァッハウの美しい段々畑 さて、長い前振りは程々にしておいて、本題に入ろう。 リースリングの聖地、ドイツはどうだろうか。 あえて、聖地という言葉を用いたのは、ドイツという国のリースリングにおける歴史もあるが、やはり低価格から高価格まで、辛口から極甘口まで、どの価格帯、どのスタイルにおいても、圧倒的な完成度を誇るそのワインそのものへの、私なりのリスペクトだ。 ドイツが本気を出したら、他のどの国がどれだけリースリングで頑張っても、遠く及ばないのでないか。とすら時々本気で思ってしまうほど、この国のリースリングは飛び抜けている。 「記号」の話に戻そう。 ドイツにも「ブルゴーニュ・モデル」(*2を参照)に準じた格付けが存在していることは、まだあまり知られていない。葡萄の糖度によって定めれた全く別尺度の格付けの方が、遥に有名だからだ。 ドイツにはVDP(ドイツ高品質醸造所連盟)という、ヴィネア・ヴァッハウも真っ青な、超強力な生産者団体があり、全ドイツの最も優れた生産者のほとんどが加盟しているVDPが提唱した、4段階の「自主的」な格付け(*6)は、現在非常に多くのドイツワインのラベルに見受けられるようになった。 注目すべきは、この最上位格付けの畑から造られ、厳格な規制を突破した辛口ワインのみに与えられるGroßes Gewächs(グローセス・ゲヴェクス)というワインである。 この通称G.G.は、聖地ドイツの誇り高き造り手たちが、世界の辛口ワインブームに遅れをとるまいと、ありったけの気概を込めて作った格付けであるはず(と言っても、20年以上の前の出来事なので)なので、それは当然、リースリングから造られる辛口ワインとして、世界最高でなければならないという使命を背負っている。 果たして、実際はどうなのだろうか? 結論から言うと、全てのG.G.がその名にふさわしいワインかと問われると、「そうでもない」と答えるだろう。 しかしそんなことは、ブルゴーニュに行っても、ボルドーに行っても同じなのだから、さしたる問題ではない。 重要なのは、G.G.の中に、王者の風格に満ちた圧倒的なワインが存在しているどうか、だ。 そしてその問いには、心から「Yes」と答える。 今回ご紹介するワインは、 全ドイツでも頂点の一角である至高の造り手DönnhofのG.G.「ヘルマンスーレ」。 傾斜角40-60度という急斜面にもなる、ナーエの葡萄畑 リースリングらしい白い花(というか巨大な花束!)から始まり、 朝露に濡れた川辺の石、 様々なハーブと花の蜜が交錯するオーガニック農園、 とだんだん妄想トリップして行ってしまうような、奥深い芳香に圧倒される。 口に含むと、岩清水の如き澄み切った果実味と酸が折り重なる中心部に、 巨大なミネラルが王様のように鎮座している。 あぁ、これは間違いない。 リースリングの頂だ。 こんな桁違いのワインが、 たったの12,000円なら、何一つ文句は無い。 ブルゴーニュの低い格付けのワインが、このワインと同価格帯とは。 つくづくワインの世界とは、知れば知るほど、奥深く沼にはまっていくミステリアスなものだと、痛感した。 生産者: Dönnhoff / デーンホフ ワイン名: Hermannshöhle Riesling Grosses Gewächs  / ヘルマンスーレ・リースリング・グローセス・ゲヴェクス 葡萄品種 :Riesling / リースリング ワインタイプ :白ワイン 生産国 :ドイツ 生産地 :Nahe / ナーエ ヴィンテージ :2018 インポーター :Jeroboam 参考小売価格 :12,000円 (*1)第五級から第一級までの格付けとして広く知られている。格付けである以上、下から上へと段階的に品質が明確に上がるべきであるが、現代においては第一級シャトーの頂点たる品質は揺るぎないものの、第二級以下は玉石混交となっている。 詳細はこちら (*2)より広い範囲から狭い範囲へと格付けが上昇するシステムは、「ブルゴーニュ・モデル」と呼ばれ、世界中で採用されている。実際に、広域から特級畑までの品質は、段階的に(ほぼ)比例関係で上昇していくと考えることができるため、非常に分かりやすい。 詳細はこちら (*3)フランスの北東部に位置し、ドイツとの国境地帯でもあることから、(歴史的に戦争等の様々な事情もあり)フランスの中にあっても、非常にドイツ文化の影響を色濃く残す特殊な地域。葡萄品種やワイン造りにおいてもドイツの影響が極めて強く、アルザスの象徴的な葡萄品種としてリースリングが筆頭に挙げられる。 詳細はこちら(英語) (*4)ドナウ川沿いの段々畑の美しさが良く知られる産地。主要品種はリースリングとグリューナー=ヴェルトリーナーであるが、地場品種であるノイエブルガーや、ゲルバー・ミュスカテラーの素晴らしさも捨てがたい。 (*5)知名度ではヴァッハウに劣るが、オーストリア最高峰の名産地。迫力のあるワインは、この地ならではの個性。 (*6) 格付けの下から順に Gutswein(グーツヴァイン) Ortswein(オルツヴァイン) Erste Lage(エアステ・ラーゲ) Große Lage(グローセ・ラーゲ) 産地によっては、エアステ・ラーゲが無く、グローセ・ラーゲに統合されている。 <ソムリエプロフィール> 梁 世柱 / Seju Yang La Mer Inc. CEO 1983年大阪生まれ。2003年にNYに移住後、様々なレストランにてソムリエとして研鑽を積む。 2011年starchefs.comよりRising Star NYC Sommelier Award受賞。 2012年Zagat SurveyよりZagat 30 under 30 NYC Sommelier Award受賞。 同年、Wine Enthusiast紙より、America’s 100 Best Wine Restaurant Award受賞。 世界最大のソムリエ激戦地での連続受賞は日本出身のソムリエとして唯一の快挙となった。 2012年に日本帰国後は、ミシュランガイド三ッ星店も含め、都内のレストランでシェフ・ソムリエを歴任。 2017年、オーストラリアにて開催されたSomms of the Worldに、World’s 50 Best Sommeliersの一員として招聘。 2018年、La Mer Inc.設立。代表取締役社長兼CEOに就任。 ワインジャーナリストとしてワイン専門誌に多数寄稿。

  • SommeTimes Académie <3>(おすすめのワイン入門書 Vol.2)

    Vol.2ではおすすめのワイン入門書をさらに3冊ご紹介いたします!

  • SommeTimes Académie <2>(おすすめのワイン入門書 Vol.1)

    皆さんあけましておめでとうございます!! ソムリエ・ワインスクール講師の佐々木健太です。

  • SommeTimes Académie <1> (無料公開)

    皆さまこんにちは!ソムリエの佐々木 健太です。 こちらでは、「ワイン教育」に主眼を置き、「基礎」となるワインの知識を より丁寧に 、そして 使える情報 となるよう、一歩進んだ解説をして参ります。 ① ソムリエ・ワインエキスパート資格試験(以下、ソムリエ試験)は「 2割が理解、8割が暗記 」と言われています。具体的に、「理解」が必要とされる分野とは、 栽培や醸造 です。それ以外の多くの分野は、強引な暗記に頼りがちな傾向が強く、また、それでも点が取れるような仕組みになっています。この「8割の強引な暗記」の部分を、 試験後も使える知識 となるように、どうにかしたい!と言うのもこのコンテンツの重要なテーマです。また、 理解して覚えることで記憶の定着もはかどります 。毎回バラバラのテーマにならないよう、ソムリエ試験受験生の勉強のペースに合わせて、このコンテンツも進めていきます。 ② 本年度の試験に合格した方、おめでとうございます!!しかし、 皆様の知識は急速に、音を立てて今この瞬間も抜け落ちています 。先週覚えたA.O.C.が、翌週にはすぐに忘れてしまう、という経験をしたことはありませんでしょうか。なぜこのようなことが起きるのか、それはあなたが覚えたのは「A.O.C.名」であって、場所、品種、造り、スタイル、または生産者までを掘り下げたわけではないからです。 単なる暗記→理解へと一歩踏み込む ことで、よりワインの世界は広がります。 ③ワインの情報は 毎年マイナーチェンジを繰り返しています 。2~3年、もしワインの勉強を怠ってしまうと、消費者のニーズ、生産者の努力に追い付くことが難しくなります。近年、急速に市民権を得たオレンジワインなどがいい例ですね。さらに、D.O.C.G.の数は合計いくつだっけ?ウルグアイってどこ?ニューヨークでワインを造っているって本当?ハッとしたソムリエ・ワイン愛好家の皆様は、ワインをサーヴする、ワインを楽しむ機会を損失してしまっております。私と共にブラッシュアップしていきましょう。 初回の今回は、「ソムリエ試験の心構え」をテーマに、誰よりも早い試験対策の準備を、皆さんと共に進めていきたいと思います。 ① 覚悟を決める ソムリエ試験に合格するために、いったいどれくらいの期間勉強を継続しなければいけないのでしょうか。私が試験への挑戦を決めた10年程前、「ソムリエになるには最低2年の勉強が必要だよ」と言われました。その当時、私はバーテンダーたった為に、お酒といったらウイスキーとカクテルに傾倒していました。ワインはほとんど置いていなかったお店だったのです。たまにお客様に頂くワインはチリカベ、といった具合でした。そこからおよそ半年後には、試験を突破しておりました。いったいどうやって勉強したのか、実はその間の記憶がほとんどないのです。一つ覚えている感情は、 楽しくて楽しくて仕方がなかった ということです。この経験をもとに、ワインの勉強について今でも常々思っていることがあります。それは、「 成長は短期決戦 」ということです。ワインの上達は、そこにかけた時間ではなく、どれだけ「 熱中 」することができるか、によって決まります。また、生徒さんからは、「今年の合格は難しいかもしれないけど、もしダメだったら来年また受けようと思ってます。」と言われることがあります。このような方の合格率は、著しく低いと言わざるを得ません。今年絶対に合格する、何が何でもソムリエになってやる!と、まずは覚悟を決めることです。 ② スタートダッシュが肝心 全国のワインスクールのほとんどは、3月の第1週目に「試験対策講座」をいっせいにスタートします。そこからおよそ半年の勉強期間を経て、8月~9月に実施される1次試験へと臨んでいきます。ワインスクールに通うメリットの一つに、毎週実施される「小テスト」があります。生徒さんの勉強の進行状況を把握するのが目的です。ここに、興味深いデータが残っています。 初回~3回目までの小テストの点数で高得点をキープし、クラスの優等生ゾーンに入ることができた生徒さんの合格率(1次試験突破率)は、なんと100% 。その一方で、 毎回最下位争いをしてしまっている生徒さんの合格率は、およそ10%です 。そして、まだ3月の時点にもかかわらず出来上がったこのクラスの構図は、9月の試験日までずっと変わらないことも多いということです。小テストの結果が悪い生徒さんにヒアリングすると、「先週はワインイベントがあって、、、でも次回挽回します」などと言う人がほとんどです。そして、また翌週も 同じような言い訳 をしてしまうのです。半年かけて勉強をして、試験に臨んでいきますが、 あなたの合否は実は3月にすでに決まっている のです。ちなみに、3月の小テストの点数が悪くても、後に挽回し、優等生ゾーンに入っていく方も稀にいらっしゃいます。そのデッドラインは、「 ゴールデンウィーク 」(4月末~5月初め)までです。この時期までに挽回できないと、合格はほぼ不可能というデータに縛られてしまいます。さらに、「3月からいっせいにスタートする」と申し上げましたが、3月初めの時点で、受験生のワインの知識には差があるはずです。つまり、 今から勉強を始めるということは、スタートダッシュ前のスタートダッシュに相当 し、皆様の合格をより強固に固めてくれることでしょう。 ③ 毎日必ずコツコツと 物事が定着するのには、「 3週間の継続が必要 」と言われています。隙間時間などを利用して、毎日コツコツと勉強を継続することが重要です。3月、休まずに勉強を継続することができたなら、9月の試験日までの 勉強のリズムが出来上がっている証拠 です。ちなみに、1年継続できたなら、一生続けられるとも言われています。ソムリエコンクールなどを目指している方は、まずは「1年の継続」を意識して頂くと良いかと思います。つまり、「 週末集中型はNG 」だということです。平日は時間がとれないから週末にまとめて勉強する、というタイプの方がたまにいらっしゃいますが、私の経験上、また講師の立場から言わせてもらうと、 絶対にやめた方がよい でしょう。なぜなら、 その勉強方法では定着が生まれない からです。最後に、では毎日の理想の勉強時間はというと、ズバリ「 2時間 」以上です。おススメは、 朝1時間、寝る前に1時間 です。そしてこの時間を確保できない方は、ほぼいないはずということです。それでもなお、時間が取れないという方は、ソムリエになるのは諦めたほうが良いかもしれません。 ソムリエ試験とは、良いソムリエになるための通過点に過ぎない と言うことを、お忘れなく! ④ 捨てない 例えば、ボルドーのメドック左岸地域には1級~5級まで、全61シャトーが格付けされています。覚えるのが非常に大変にもかかわらず、試験にはあまり出題されないので、 この範囲は「捨てる」受験生が多いことで有名 です。しかし、メドックの格付けはボルドーの歴史を象徴しており、ボルドーという産地全体の理解には、またボルドーで今何が起こっているのかを話すためには欠かせない範囲です。非常に残念でならないのは、ワインスクールの講師でさえも、「ボルドーの格付けは効率が悪いので捨てましょう」と教えてしまっていることです。そのような方は、いったい何を教えたいのか、私には到底理解できません。また、ボルドーの学習は、試験的にも「 最初の山場 」ともいえる分野ですから、 ここで「捨てる」という方法を覚えてしまった方の、それ以降の成長はありません 。もう一度書きます、 ソムリエ試験とは、あくまでも通過点 です。 ⑤ 深い理解を心がける 2018年より、ソムリエ試験は「CBT方式」に変更となりました。「Computer Based Testing」の略で、従来の試験形式との変更点は主に2点あります。1つ目は、パソコンに向かって問題を解いていくということ。そして、より重要な2つ目は、数多くの問題のデータベースから、受験生毎にランダムで問題が出題されるということです。CBT方式に変更前の従来の方式では、ソムリエ試験は「過去問さえやっておけば何とかなる」、と言われておりました。しかし、CBT方式になり「山を張る」という勉強方法が通用しなくなり、 より広範囲に及ぶ正確な知識の暗記 が求められています。CBT方式への対策に追われるあまり、「深い理解」に時間を費やさず、 頭でっかちなソムリエになってしまわないように 気をつけましょう。 さて、次回のテーマは「栽培」、本編に入っていきます。基礎から一歩踏み込んだ内容まで、私の視点を踏まえて解説させて頂きます。 最後に皆様、ワインの上達とはまさに「 好きこそ物の上手なれ 」です!

  • テロワールって何?

    テロワールの味、テロワールのワイン 、と言った表現は、 ワインの世界において、非常に頻繁に用いられます。 今回はそのお話を、できるだけソフトにしてみたいと思います。 まず、テロワールとは?という問いにお答えいたしましょう。 テロワールは大きく分けて以下の要素に分解できます。 1. 天候的要素 (日照量、有効積算温度、降雨量、降雨時期等々) 2. 地形的要素 (標高、平地or斜面、斜面なら傾斜角度と方角) 3. 地質的要素 (何質土壌か) 4. 人 (主に葡萄品種の選択、畑の区画分けにおいて重要な役割) 1〜3は大前提として自然が決めます 。 ここに対して人が介入できる余地は非常に限られています。 1の天候的要素に関しては、 人は何も手出しすることができません 。 一部の畑では、斜面を形成するように開墾して2の地形的要素に手を加えたり、 土壌改良(改造)を行い、3の地質的要素を変化させるケースもあります。 人が関係する4の要素は、実は 非常に重要 です。 フランス・ブルゴーニュ地方を例に見ていきましょう。 1〜3は元からそこにあった、ただの自然環境です。 そこに人が入り、長年の研究により、 ピノ・ノワール、シャルドネ という「 葡萄品種 」を決めました。 さらに、主に修道院がワイン造りの主体を担っていた時代に、ブルゴーニュの有名な畑の数々が「 線引き 」され、細かく区画分けされていきます。 つまりテロワールというものは、 その 自然環境に最適な葡萄品種を「人」が決め、その自然環境x葡萄という組み合わせの効果が最大化する範囲を「人」が決める ことによって、ようやく成立するのです。 ここまでが「テロワールの味」の範囲です。 しかし、それだけではワインになりません。 「人」がさらに関わる部分があるからです。 それがこの二つの要素です。 ①栽培 ②醸造 ①の栽培に関しては、 1. 農法 (慣行農法、減農薬農法、オーガニック農法等) 2. 収量 ( 葡萄の凝縮度 に直結する) 3. 収穫時期 ( 葡萄の糖度、フェノール類の熟度、酸度 等々に関連) に関して、人が重要な決断を下し、 それらは必ずワインに多大な影響を与えます。 ②の醸造に関しては、人が関与できる範囲が非常に広いことが特徴です。 この①と②を合わせて「 人の味 」とします。 さて、長い前置きが終わりましたが、 本題です。 「テロワールの味」と「人の味」のバランスです。 この二つの要素は、実はシーソーの様な関係にあります。 例えば、特級畑のモンラッシェ。 地球上で最も偉大な葡萄畑の一つですが、 テロワールの味があまりにも強烈なため、 「誰が造っても結局モンラッシェの味」という現象が頻繁に起こります。 シーソーが極端に テロワールの味に偏っている パターンです。 一方、村名格のピュリニー=モンラッシェになると、 「誰が造っているのか」によって、大きく味わいが異なります。 これは、シーソーが 人の味に偏っている パターンです。 歴史的な価値観を尊ぶのであれば、テロワールの味こそがワインにとって最も重要だと言えるでしょう。 確かに、人の味に偏りすぎると「なんでもあり」になってしまう側面もあるからです。 しかし、「美味しい」という極めて主観的な感覚は、 テロワールの味とも、人の味とも、なんら決定的な関連性は見られないのです。 つまり、私なりの結論としてはこうなのです。 ワインの文化的側面も楽しみながら飲みたいのであれば、テロワールの味と人の味は、少々気にした方が楽しいです。 文化や歴史は気にせず、ただただ美味しいワインを楽しみたいのであれば、自分の感覚に素直であれば良いだけです。

  • ワインリストからワインを選ぼう

    レストランに行っても、なかなかワインリストから上手にワインが選べない。 そんな悩みを抱えていませんか? もしお店に「気の利いた」ソムリエが居るなら、 ソムリエに聞くのがベスト です。 その際のポイントは、 1. 予算を伝える 2. 抽象的でも大丈夫なので、好みを伝える の2点です。 1は必須、そして2を恐れる必要はありません。 専門家とは本来、人助けのために存在しているものです。 ドクターに相談するつもりで遠慮なく聞いてみて下さい。 しかしお店に必ずソムリエがいるとは限りません。 そんな時にどうやってワインを選べば良いのか。 ワイン選びの重要ポイントをご紹介いたします。 まず、ワインを選ぶ時に 1. 名前重視 2. 中身重視 かで変わります。 名前重視の場合は、それを選べば良いだけですので、知ってる名前を見かければ、そのワインをオーダーしましょう。 中身重視の場合ですが、 ワインの値付けのカラクリを知ると、成功率が格段に上がります。 重要なポイントとしてまず挙げられるのは、 「 生産国の平均賃金と物価と生産量 」 です。 ワイン生産とは、非常にコストがかかるものですので、人件費と物価が安く、生産量が多ければコストが劇的に下がります。 では、以下に主要生産国生産地域からコスパ優秀部門を三ツ星評価で紹介致しましょう。 【三ツ星】 チリ全域 アルゼンチン全域 ポルトガル全域 スペイン全域 【二つ星】 イタリア(バローロ、バルバレスコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを除く) ドイツ全域 フランス(ブルゴーニュ、シャンパーニュ、ボルドーの上位格付シャトーを除く) ギリシャ全域 南アフリカ全域 オーストリア全域 カナダ全域 ジョージア全域 【一つ星】 フランス(シャンパーニュ、コート・ドール以外のブルゴーニュ) イタリア(バローロ、バルバレスコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ) オーストラリア ニュージーランド アメリカ合衆国(カリフォルニアの一部銘柄を除く) 中国 【圏外】 フランス(ブルゴーニュのコート・ドール) フランス(ボルドーの上位格付シャトー) アメリカ(カリフォルニアの一部銘柄) スイス 日本 コスパ・ランキングを少し気にしながらワイン選びをすると成功率が上昇します。 もう一つの側面は、 「 需要と供給 」の関係です。 ワインの価格を決める要素として、 生産国や生産地域の平均賃金、物価、生産量というお話をいたしましたが、 ワインという飲み物は 非常に市場原理に影響を受けやすい ものですので、 需要が供給を上回ると、価格がどんどん上昇 していきます。 その最たる例は、 フランス・ブルゴーニュのコート・ドール です。 名高い特級畑の数々や、村や畑、生産者のスタイルによって、様々な表情を見せ、またそれらが緻密に体系化されていることもあり、マニア心をこれ以上なくくすぐるワインです。 しかし残念なことにブルゴーニュの生産量は(特に生産者単位で区切ると)けっして多くありません。 中国を始めとするアジア圏の新興ワイン消費国からの需要拡大に、立て続けの不作も相まり、今では村名でも1万円を超える価格となってしまいました。 一方、同じフランスの銘醸地としては、ボルドーやシャンパーニュが有名ですが、共に一生産者あたりの生産量が多いため、一部銘柄を除いて極端な値上りはしていません。 (ボルドーに関しては、有力な評論家の引退もあり、上昇傾向は落ちつくと思われます。) さらに別の視点から見てみましょう。 アメリカ合衆国の例をあげます。 平均賃金、物価共に高い国です。 最も人気のカリフォルニア州の中でも、需要が集中するのは ナパ・ヴァレー 。 ワインは高値でも売れるため、地価もどんでもない金額になりましたから、ワインは平均して高価です。 同じカリフォルニアの中でも、ソノマのエリアは少し価格が控えめ。そして、よりマイナーなエリアはかなりお買い得ワイン出てきます。 オレゴン、ワシントン、ニューヨークといったアメリカのその他の産地も、需要はナパ・ヴァレーに遠く及びませんので、価格は控えめです。 最後にまとめますと、 もしワインリストにナパ・ヴァレーのカベルネと、ワシントンのカベルネがほぼ同じ価格でオンリストされていた場合、 高い可能性でワシントンの方が高品質、ということです。 銘醸産地になるには、品質は当然必須。 信頼のブランドですから、対価も高くなります。 しかし、マイナー産地の面白さを、冒険気分でリーズナブルに体験するのもまた、ワインの素敵な楽しみかたです。

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