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SommeTimes Académie <1> (無料公開)

皆さまこんにちは!ソムリエの佐々木 健太です。


こちらでは、「ワイン教育」に主眼を置き、「基礎」となるワインの知識をより丁寧に、そして使える情報となるよう、一歩進んだ解説をして参ります。



① ソムリエ・ワインエキスパート資格試験(以下、ソムリエ試験)は「2割が理解、8割が暗記」と言われています。具体的に、「理解」が必要とされる分野とは、栽培や醸造です。それ以外の多くの分野は、強引な暗記に頼りがちな傾向が強く、また、それでも点が取れるような仕組みになっています。この「8割の強引な暗記」の部分を、試験後も使える知識となるように、どうにかしたい!と言うのもこのコンテンツの重要なテーマです。また、理解して覚えることで記憶の定着もはかどります。毎回バラバラのテーマにならないよう、ソムリエ試験受験生の勉強のペースに合わせて、このコンテンツも進めていきます。


② 本年度の試験に合格した方、おめでとうございます!!しかし、皆様の知識は急速に、音を立てて今この瞬間も抜け落ちています。先週覚えたA.O.C.が、翌週にはすぐに忘れてしまう、という経験をしたことはありませんでしょうか。なぜこのようなことが起きるのか、それはあなたが覚えたのは「A.O.C.名」であって、場所、品種、造り、スタイル、または生産者までを掘り下げたわけではないからです。単なる暗記→理解へと一歩踏み込むことで、よりワインの世界は広がります。


③ワインの情報は毎年マイナーチェンジを繰り返しています。2~3年、もしワインの勉強を怠ってしまうと、消費者のニーズ、生産者の努力に追い付くことが難しくなります。近年、急速に市民権を得たオレンジワインなどがいい例ですね。さらに、D.O.C.G.の数は合計いくつだっけ?ウルグアイってどこ?ニューヨークでワインを造っているって本当?ハッとしたソムリエ・ワイン愛好家の皆様は、ワインをサーヴする、ワインを楽しむ機会を損失してしまっております。私と共にブラッシュアップしていきましょう。

初回の今回は、「ソムリエ試験の心構え」をテーマに、誰よりも早い試験対策の準備を、皆さんと共に進めていきたいと思います。


① 覚悟を決める

ソムリエ試験に合格するために、いったいどれくらいの期間勉強を継続しなければいけないのでしょうか。私が試験への挑戦を決めた10年程前、「ソムリエになるには最低2年の勉強が必要だよ」と言われました。その当時、私はバーテンダーたった為に、お酒といったらウイスキーとカクテルに傾倒していました。ワインはほとんど置いていなかったお店だったのです。たまにお客様に頂くワインはチリカベ、といった具合でした。そこからおよそ半年後には、試験を突破しておりました。いったいどうやって勉強したのか、実はその間の記憶がほとんどないのです。一つ覚えている感情は、楽しくて楽しくて仕方がなかったということです。この経験をもとに、ワインの勉強について今でも常々思っていることがあります。それは、「成長は短期決戦」ということです。ワインの上達は、そこにかけた時間ではなく、どれだけ「熱中」することができるか、によって決まります。また、生徒さんからは、「今年の合格は難しいかもしれないけど、もしダメだったら来年また受けようと思ってます。」と言われることがあります。このような方の合格率は、著しく低いと言わざるを得ません。今年絶対に合格する、何が何でもソムリエになってやる!と、まずは覚悟を決めることです。


② スタートダッシュが肝心

全国のワインスクールのほとんどは、3月の第1週目に「試験対策講座」をいっせいにスタートします。そこからおよそ半年の勉強期間を経て、8月~9月に実施される1次試験へと臨んでいきます。ワインスクールに通うメリットの一つに、毎週実施される「小テスト」があります。生徒さんの勉強の進行状況を把握するのが目的です。ここに、興味深いデータが残っています。初回~3回目までの小テストの点数で高得点をキープし、クラスの優等生ゾーンに入ることができた生徒さんの合格率(1次試験突破率)は、なんと100%。その一方で、毎回最下位争いをしてしまっている生徒さんの合格率は、およそ10%です。そして、まだ3月の時点にもかかわらず出来上がったこのクラスの構図は、9月の試験日までずっと変わらないことも多いということです。小テストの結果が悪い生徒さんにヒアリングすると、「先週はワインイベントがあって、、、でも次回挽回します」などと言う人がほとんどです。そして、また翌週も同じような言い訳をしてしまうのです。半年かけて勉強をして、試験に臨んでいきますが、あなたの合否は実は3月にすでに決まっているのです。ちなみに、3月の小テストの点数が悪くても、後に挽回し、優等生ゾーンに入っていく方も稀にいらっしゃいます。そのデッドラインは、「ゴールデンウィーク」(4月末~5月初め)までです。この時期までに挽回できないと、合格はほぼ不可能というデータに縛られてしまいます。さらに、「3月からいっせいにスタートする」と申し上げましたが、3月初めの時点で、受験生のワインの知識には差があるはずです。つまり、今から勉強を始めるということは、スタートダッシュ前のスタートダッシュに相当し、皆様の合格をより強固に固めてくれることでしょう。


③ 毎日必ずコツコツと

物事が定着するのには、「3週間の継続が必要」と言われています。隙間時間などを利用して、毎日コツコツと勉強を継続することが重要です。3月、休まずに勉強を継続することができたなら、9月の試験日までの勉強のリズムが出来上がっている証拠です。ちなみに、1年継続できたなら、一生続けられるとも言われています。ソムリエコンクールなどを目指している方は、まずは「1年の継続」を意識して頂くと良いかと思います。つまり、「週末集中型はNG」だということです。平日は時間がとれないから週末にまとめて勉強する、というタイプの方がたまにいらっしゃいますが、私の経験上、また講師の立場から言わせてもらうと、絶対にやめた方がよいでしょう。なぜなら、その勉強方法では定着が生まれないからです。最後に、では毎日の理想の勉強時間はというと、ズバリ「2時間」以上です。おススメは、朝1時間、寝る前に1時間です。そしてこの時間を確保できない方は、ほぼいないはずということです。それでもなお、時間が取れないという方は、ソムリエになるのは諦めたほうが良いかもしれません。ソムリエ試験とは、良いソムリエになるための通過点に過ぎないと言うことを、お忘れなく!


④ 捨てない

例えば、ボルドーのメドック左岸地域には1級~5級まで、全61シャトーが格付けされています。覚えるのが非常に大変にもかかわらず、試験にはあまり出題されないので、この範囲は「捨てる」受験生が多いことで有名です。しかし、メドックの格付けはボルドーの歴史を象徴しており、ボルドーという産地全体の理解には、またボルドーで今何が起こっているのかを話すためには欠かせない範囲です。非常に残念でならないのは、ワインスクールの講師でさえも、「ボルドーの格付けは効率が悪いので捨てましょう」と教えてしまっていることです。そのような方は、いったい何を教えたいのか、私には到底理解できません。また、ボルドーの学習は、試験的にも「最初の山場」ともいえる分野ですから、ここで「捨てる」という方法を覚えてしまった方の、それ以降の成長はありません。もう一度書きます、ソムリエ試験とは、あくまでも通過点です。


⑤ 深い理解を心がける

2018年より、ソムリエ試験は「CBT方式」に変更となりました。「Computer Based Testing」の略で、従来の試験形式との変更点は主に2点あります。1つ目は、パソコンに向かって問題を解いていくということ。そして、より重要な2つ目は、数多くの問題のデータベースから、受験生毎にランダムで問題が出題されるということです。CBT方式に変更前の従来の方式では、ソムリエ試験は「過去問さえやっておけば何とかなる」、と言われておりました。しかし、CBT方式になり「山を張る」という勉強方法が通用しなくなり、より広範囲に及ぶ正確な知識の暗記が求められています。CBT方式への対策に追われるあまり、「深い理解」に時間を費やさず、頭でっかちなソムリエになってしまわないように気をつけましょう。


さて、次回のテーマは「栽培」、本編に入っていきます。基礎から一歩踏み込んだ内容まで、私の視点を踏まえて解説させて頂きます。


最後に皆様、ワインの上達とはまさに「好きこそ物の上手なれ」です!

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