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  • 天と地と人と <コンテンポラリー・アメリカ 最終章>

    信念と勇気。コンテンポラリー・アメリカに感銘を受けるたびに、ワインの向こう側にある造り手の強靭な意志に、手放しの称賛を贈りたくなる。精緻に彫琢され、華々しくラグジュアリーな魅力に満ちた至高のビッグワインは、確かに敬服の念に堪えない存在であるが、筆者の心が強く揺さぶれるワインは、 優れた審美眼と観察眼によって最適解を導き出した先に現出する、テロワールの最も輝かしい姿を表現したものである 。

  • カリフォルニアの宝石「ピゾーニ」

    このコラムでは、私が 粋 (Iki=生=活)と感じるワインを色々と紹介させていただきたいと思っております。 カリフォルニアでピノ・ノワールの生産者であれば、皆一度はそれに挑戦してみたいと思うであろう畑がある。 「 Pisoniピゾーニ 」の名前を聞いたことがあるだろうか? カリフォルニアワインって聞くと、「あの濃いワインね」みたいなイメージを浮かべる人が多いと思う。突き抜けるような強烈さと濃厚さを持ち味に、世界中のワインファンを魅了してきた。赤ワインならば弾けるような果実味が楽しめ、カベルネ・ソーヴィニョンはあれだけ重くてアルコール度が高いのに、不思議と口当たりがよく、タンニンがきめ細やか。白のシャルドネなら、バターやバニラ、ナッツの風味がとてもトロっとリッチで、一口でカリフォルニアワインとわかる、という感じだった。 しかし、昨今、食事が軽くなるにつれ、加えてナチュラルなワインの台頭などもあり、 世の中の時流が劇的に軽快なタッチのワインにシフトしてきている中、近年のカリフォルニアワインも右へならえと、多くのワインがそんな傾向にある 。あのカリフォルニアワインが、若干アルコールが低く、且つ軽快なノリに向いてきているのだ。中には、ブラインドテイスティングでカリフォルニアとわからないようなモノまで存在する。良し悪しの問題ではなく、こうした潮流だということだ。 そんな中、 未だにパワフルで濃厚、ブレずにハッキリとしたカリフォルニアンスタイルなワインを造り続けている生産者がいる 。その1人が「 ピゾーニ・ヴィンヤード&ワイナリー 」で、彼らには世間の流れはあまり関係ないのだ。そうしたワインが好きな愛好家から、カリスマ的存在として高い人気を得ているわけだから。アルコール濃度が低めで軽快なスタイルに世の中が向いている中、それとは真逆のタイプのワインを、今回はあえて紹介する。 これは、ピゾーニのワインの始まりから、今に至るまでの成功のお話しです。 サンフランシスコから南へ約200km、モントレー郡 サンタ・ルシア・ハイランズ は、1991年に認定されたAVA。海からの距離は約28km、モントレーの中でも 標高が高く、年間降水量はかなり少なく、朝は霧、午後の日差しは強いながらも、海からの涼しい風が強く日中意外と涼しい地 。これらのおかげで生育期間が長い。また寒暖の差により、酸を保ちながらも豊かな果実味をもたらすエリアとして、カリフォルニアを代表するピノ・ノワールの産地。 ここで ゲイリー・ピゾーニ 氏がワイン用ブドウ栽培を始めたのは、 1980年代前半 のこと。この辺りで100年近くに渡り農業に携わってきたファミリーで、ゲイリーの父が放牧用に購入した海抜400mの痩せた土地は、平地にレタスやブロッコリー、アスパラガスのような野菜の栽培をしており、元々ブドウは植えられていなかった。そして斜面には何も植えられておらず、父親を説得しその未開の地でブドウ栽培を始めたのだという。そこには井戸もなにもなく、掘り続けてようやく6回目で水が出たそうで、その井戸を掘り当てるまでは、毎日毎日、来る日も来る日も車で水を運び畑に蒔いていたのだそうだ。実に粋である。 まず最初に彼が始めたのは、 幾つかのブドウ品種を実験的に植えた こと。周囲にワイン用ブドウを植えている人はおらず、この土地にそうした前例もなく、この土地に何が合うのかわからなかったからだ。そもそもブドウがこの土地にマッチするのか確信すらないままブドウを植えた。そして試行錯誤の末、徐々に成果がうまれ、ブドウ栽培にかなり向いている土地だと確信できるようになってきた。その中で、最も向いているのではないかと最終的に彼が辿り着いたブドウ品種が、「 ピノ・ノワール 」だったという。そうしたさまざまな労力を費やし、ブドウ栽培家として徐々に知られるようになり、遂にはカリスマ的存在となった。サンタ・ルシア・ハイランズの気候に、彼が植えたブドウ品種が見事にマッチし、そのうち噂となり、評判となり、彼の栽培したブドウにはファンがついた。それは、 彼がつくるブドウには言い知れぬ何かがあったに違いないと、容易に想像がつく 。今ではブルゴーニュの言い方をすれば「グラン・クリュ」のような扱いにまで至っている。事実、今や人気ブドウ畑となり、ブドウの枝泥棒が来るらしく、対策として「トラップヴィンヤード」として、ピゾーニ畑の周囲にピノ・ノワールの葉に似たブドウ樹を植え、彼らに備えているのだとか。人気者というのも大変なのだ。 皆がその枝を欲しがるのもわかる。彼が植えたのは、単なるピノ・ノワールではなく、今では大きな声でいえなくなってしまった、なんと「 ラ・ターシュ 」の苗木だった。ブルゴーニュの、さらにはコート・ドール / ヴォーヌ・ロマネ村で植えられている、誰もが憧れるワイン。その「ラ・ターシュ」のクローンを植えたのだった。 おさえておくこととして、「ピゾーニ」とは人の名前であり、ゲーリー・ピゾーニ氏が植樹した畑の名前である。また、つくられたブドウを 約10軒にも満たない名うてワイナリー に供給するブドウ栽培家でもある。そして、それまでブドウのみの生産だったこのワイナリーも 1998年からワイン醸造をはじめ 、今は自らのワイナリー「ピゾーニ・ヴィンヤード&ワイナリー」で醸造されたワイン「ピゾーニ」をつくる醸造家でもある。 ピゾーニの畑で収穫された葡萄は、常に約10軒のワイナリーにしか供給されない。これは、ピゾーニから収穫されるブドウには限りがあり、とても需要を賄い切れないからである。だから空きが出ない限り、どんなに欲しくてもピゾーニのブドウを供給されることはない。まるでスクリーミング・イーグルのメーリングリスターのキャンセルを待っているようなもので、いつになったら自分の番になるやら、ということである。ピゾーニ畑のブドウを供給されるワイナリーはラッキーといえ、供給されるワイナリーには、 ピーター・マイケル、コスタ・ブラウン、パッツ&ホール など名だたるワイナリーが連なり、これからのワイナリーが契約をやめない限り、次の番は回ってこない。ピゾーニのブドウを供給されたければ、彼らに自分がつくるワインのサンプルボトルを送り、テイスティングしてピゾーニ・ファミリーに納得してもらう必要がある。 ピゾーニには、ピゾーニ畑か葡萄を供給された約10軒のワイナリーからリリースされるピゾーニと、ゲイリー・ピゾーニが自ら造るピゾーニが存在する。ピゾーニが自ら造るピゾーニは、ピゾーニの中のピゾーニとして、他の生産者のピゾーニと分けるために、ファンたちの間で「 ピゾーニ・ピゾーニ 」と呼ばれている。 実はピゾーニ畑は、最初に植樹した時よりも拡大している。ゲーリー・ピゾーニ氏が1982年、最初にブドウの樹を植樹した 当時5.5エーカーだった畑は現在35エーカー にまで至り、一番初めに植樹した「 オールドブロック 」から始まり、ブロックは 12 まで増えた。もし今後さらに畑を増やすということがあれば、供給されたいワイナリーにとって朗報なのだが、果たして。。 それぞれの畑にブドウを植樹したタイミングは違い、樹齢も異なる。殆どの生産者にブドウを供給している畑は、最も大きいブロック「 ビッグ・ブロック 」という名の畑。それ以外は、( ポール・ラトー の例外の除き)基本的にピゾーニ本人が自分のワインを醸すための畑となる。 生産者 :Pisoni Vineyards & Winery / ピゾーニ ヴィンヤード&ワイナリー ワイン名 :Pisoni 葡萄品種 :ピノ・ノワール ワインタイプ :赤ワイン 生産国 :アメリカ 生産地 :California / カリフォルニア州 ヴィンテージ :2017 インポーター :ilovecalwine / アイラブカルワイン 参考小売価格 :¥18,000 1998年にピゾーニが自分の造ったワインをリリースした時には、個人的にかなり興奮した。一体どういったワインになるのか、「ピーター・マイケルのムーラン・ルージュ」のように?それとも・・・かなり興味津々で、仕上がってきたワインはやはり 期待通りの強烈な仕上がり 。嬉しかった。その後毎年のようにナイスな仕上がりが続き、初リリースから10年後の2008年にロバート・パーカーがアドヴォケイト誌でピゾーニ・ピゾーニに100点級の高得点をつけたことは有名。今ファーストヴィンテージから数えて20年が経ち、2018年がリリースされるに至ったが、この20年間、全く変わらぬスタイルかといえば、さすがのピゾーニであっても、ずっと全力豪速球なストレートを投げるようなワインを造り続けているわけではない。 徐々にスムースで少し軽快なスタイルへとシフトしているようにみえる 。もちろん他の生産者と比較すれば、力強いカテゴリーに入ることには違いないが。 現在、ゲイリーは引退ぎみで、優秀な2人の息子が中心となりワイナリーを仕切っている。そこに、若干の味わいの変化が生まれたのかもしれない。主に長男マークが栽培、次男ジェフが醸造を担当し、ナイスなチームワークのワイナリーだと思っている。 ピゾーニファミリー 丁寧に収穫されたブドウは除梗され、フレンチオークの新樽約70%で約1年間熟成後、清澄や濾過せずにボトル詰めされる。生産量は600ケースほどで、日本への割当ては年によって異なるが、2017年は84本のみ入荷。 ブラックベリー、ブラックラズベリーなどの完熟した黒系果実のニュアンスと、ギュっと詰まった感じがとても印象的。そこにスミレや下草、ドライハーブのような香りとややセイバリーさが加わり、タバコやスパイス感があって複雑。 飲めば骨格がしっかりとして凝縮し、それでいてきめ細かいテクスチャーが心地よい。裏側に上質な酸味が感じられ、それがバランスをとっているのだろう。 とてもエネルギッシュなワインで、飲むとこちらが元気になる。まるでゲイリー・ピゾーニご本人のような感じのワインで、人柄って味わいに出るモノだなと感心する、笑! 是非、牛肉や鹿肉のような肉に、黒コショウなどを使ったシンプルな濃いソースで食べていただきたい。それだけで口の中が複雑に満たされることと想像する。 葡萄が土壌成分を吸い上げ、ワインの味や香りにはそれが踏襲されるという神話は、ワインラヴァーをそそるロマン性がある。 そのロマンを壊すような話しをすると、感じ取れるワインの香りや味わいには、土壌成分を吸い上げたことよりも、むしろクローンや酵母、それから醸造など人の関与によるところが多いということを、有識者は知っている。クローンは味を大きく左右する大切なファクターであるが、そのクローンが秀逸だからといって、別の土地で真価を発揮するとは限らない。また、植えられた土地の気候風土により、オリジナルとは異なる個性を発揮することもわかっている。 実際にピゾーニの畑から造られるワインの味わいとラ・ターシュが似ているかどうかといえば、そう感じる人は少ないだろう。しかし、それとはまた違ったなんともいえない個性を感じてならないし、ピゾーニの畑から造られるワインには、多くの飲み手の心をつかんで離さない、言い知れぬ魅力があると思えてならない。 私はこれまでに何度か、アカデミー・デュ・ヴァンの自分の講座などで、ピゾーニをテーマに講義を執り行ってきた。少しでもピゾーニの個性に近づき、それを紐解こうという意識で挑んできた。 ①垂直比較→ピゾーニ・ピゾーニの年号違いで比較する ②平行試飲→ピゾーニ・ピゾーニを含むピゾーニ畑を生産者違いで比較する(同一年で) ①は年号による個性の違いが感じとれると共に、経過年数による経年変化があるが、ここに共通項があれば、ピゾーニの個性に一歩近づけるのではないか。 ②のテイスティングを行って感じる味筋の共通した部分がもしあれば、それがもしかしたらピゾーニ畑に由来したものなのか。また、他の生産者のピゾーニと比べ、ピゾーニ・ピゾーニのワインには、いつも強烈な完熟したブラックベリーのような果実味を感じる。これは、ピゾーニ・ピゾーニの個性といえるのか。 ①②のテイスティングを通じで共通する部分として、受講者と藤巻の意見を総合すると、黒系果実とスパイスが感じられ、コシの強さのような、パワーともいえる芯のあるスタイル、という部分があった。それはもしかしたら、ピゾーニ畑からくるものなのかとも思う。でも、この言い知れぬ魅力は、まだ奥が深くて、それについてわかったとは思っていない。それだけに、これからも同様のテイスティングを続けていきたいと考えている。 割当制で、日本への輸入もまだ極めて少ないワインだが、是非皆様にも一度入手していただき、チャレンジしていただきたい1本。 ※ イキ(粋=活=生)なワインとは自分的に、 粋(イキ)=「イカしている」「BadassとかCool(ヤバイ,渋い,やんちゃな)」ワイン 活(イキ)=「活力のある」「活気に満ち溢れた」「活き活きとした」ワイン 生(イキ)=「生き生きとした」「生の」「今の」「旬の」情報またはワイン のことをいう <ソムリエプロフィール> 藤巻 暁 / Akira Fujimaki 1966年新潟生まれ。東急百貨店本店和洋酒売場に勤務。アカデミー・デュ・ヴァン講師。大学在学中からワインに魅せられ、ワイン産地を周遊。その後飲食店やワインバーでの勤務を経て現職。

  • どう違う?イタリアとオーストラリアのサンジョヴェーゼ

    この仕事をしていると必ず聞かれるのが、「得意なワイン産地はどこですか?もしくは苦手な国は?」と言う質問。 東京でソムリエをしている以上あまり知識が偏るのは問題なので、まんべんなくどの国もお話しできるようにしてはいます。しかしながら、まったくお恥ずかしい話ですが私、イタリアワインが苦手です。実は数多の店で働いた事はあるのですが、イタリアンで働いた経験はヘルプで2~3か月しかなく、お客様にイタリアワインをサービスする経験がほぼありませんでした。更には、まったくの個人的な理由ですが、毎日ワインを商売にしているとプライベートでワインを飲むときもついつい仕事モードになる為、あえて家やプライベートでは(知識不足なので)、逆に何も考えずに飲めるイタリアワインを飲み、リラックスしていました。 しかしながら最近イタリアンでのワインアドバイザーとして働く機会を頂き、初のイタリアン勤務となってしまいました。そうなると苦手なんか言っていられなくて猛勉強。 そこでせっかくなのでイタリアワインのお話をと思ったときに、あるセミナーでの出来事が思い出されました。 何年か前にオーストラリア大使館で現代のオーストラリアの最新事情のセミナーがありまして、講師はこのセミナーの最適任者 ネッド グッドウィンMW (*1)。 ご存知の方はいらっしゃるとは思いますが、オーストラリア人で日本在住者初のマスターオブワインになられた方なのですが、そのワインに対する考え方に当時の自分は非常に感銘を受け、共通の友人がたまたまいた事で、何度かセミナーに参加した時も自分のことを覚えてくれていたり、メールでアドバイスを頂くこともありました。 ただ、セミナー等では当然まっとうなことをおっしゃっているのですが、やはり日本では過激と評価されるようで、時折目が覚めるようなコメント(実はそこが好きなのですが)をされることがありました。さて、当然ながらその時のセミナーでもある発言があったのですが、今回思い出した発言がまさに今回の記事のテーマです。 セミナーも終盤で参加者から質問を受けることになったのですが、あるイタリアンに努めている方が「最近オーストラリアワインでイタリアの葡萄品種が使われたワインがありますが、例えばサンジョヴェーゼを使ったワインはキャンティ(*2)に比べて違いが伝えづらく割高で売りづらい。何かセールスポイントはありますか?」と。 ネッドの性格を知っている方も会場にはいたので、一瞬会場が凍り付く質問でした。この質問をされた方には本当に申し訳ないのですが、これに対するネッドの回答は、「 何を言ってるんだ!美味しいか美味しくないかをアピールすれば良いじゃないか! 」でした。 質問された方からすれば「え?」という感じでしょうが、実はネッドのワインに対する考え方を知っている方には納得の回答で、 品種や国、産地などにとらわれず純粋に味に対する評価やアピールをするべし と、何度もネッドは話していました。 僕もそうは思うのですが、実際この質問を自分がされたら度胸もないので(笑)おなじ回答はできませんし、自身も明確な違いが判っているわけではないです。そこで今回は出来るだけ細かく2か国のイタリア系品種を飲み比べ、あの日うやむやになっていた自身の回答を探したいと思います。 比較のポイント ・ あくまで、どちらが優れているかでは無く、違いのみ表す。 ・ 金額やレベル、状態はなるべく近いもので比較する。 ・ それぞれに相性が良いと思われる料理やシチュエーションも比較する。 今回のワイン ① 生産者:ISOLE e OLENA イゾレ エ オレーナ ワイン名: Chianti Classico /キャンティ クラッシコ 葡萄品種 :Sangiovese, Canaiolo / サンジョベーゼ、カナイオーロ ワインタイプ :赤ワイン 生産国 :イタリア 生産地 :Toscana / トスカーナ州 ヴィンテージ :2015 インポーター :ジェロボーム 参考小売価格 :¥3,300(税別) ② 生産者:Ravensworth レイヴェンスワース ワイン名: Regional Sangiovese / リージョナル サンジョヴェーゼ 葡萄品種 :Sangiovese / サンジョヴェーゼ ワインタイプ :赤ワイン 生産国 :オーストラリア 生産地 : New South Wales / ニューサウスウェールズ ヴィンテージ :2019 インポーター :kpオーチャード 参考小売価格 :¥3,100(税別) まず、ワインのチョイスですが、サンジョヴェーゼを選びました。 なるべくナチュールな果実味が先行したタイプではなく、葡萄品種の味わいが感じられる典型的な物を選びました。 ① のワインはイタリアの キャンティ・クラッシコ です。ワイナリーの イゾレ・エ・オレーナ は1950年設立のワイナリーです。ワインメーカーのパオロさんはイタリア国内では優れたワインメーカーとして知られており、本来白葡萄も入った4品種のブレンドが基本のキャンティにおいて、 サンジョヴェーゼの割合を増やし、熟成に耐えられるキャンティ・クラッシコを生み出す 、まさにサンジョヴェーゼの魅力を最大に味わえるワインと言えます。今回は最新のヴィンテージでは味わいの真価が図れないため、少しこなれた2015年の物を用意しました。 ② のワインは今話題のオーストラリアワインです。モダンオーストラリアワインの伝説的な存在である、 クロナキラ のワイナリー責任者を務めた醸造家 ブライアン マーティン が造るサンジョヴェーゼです。 比較の前に、少しお話を。 そもそも何故、シラーズやシャルドネで有名なオーストラリアで、サンジョヴェーゼ等のイタリア品種が使われるようになったのでしょうか? 移民が多い国として知られるオーストラリアですが、1950年代にヴィクトリア州にイタリア移民が移り住み、最初はタバコ栽培などを行っていましたが、1970年ころからブドウ栽培を始めました。当初はシャルドネやリースリングを植えていたようですが、80年を超えたあたりから、サンジョヴェーゼやネッビオーロを植え始めたようです。 当初は単純にイタリア移民が植えたからという理由で使われていたのでしょうが、今回の レイヴェンスワース のように 土壌にあった葡萄を選んだ結果イタリアの葡萄品種が最適だった 、という事が今の理由と思われます。 では比較に移ります。 製法 ① 自社畑の葡萄を使用。15日間のマセラシオン(果皮を果汁に漬け込むこと)。ステンレスタンクでの発酵。4000リットルの大樽で1年熟成。 ② 葡萄は有機栽培(認証無し)の物を使用。1000リットルの大樽で野生酵母による発酵を行います。228-500リットルフランス古樽で熟成。酸化防止剤はごく少量。スキンコンタクトは長期。エッグタンク(*3)も使用しています。 香り ① サワークリームとレッドチェリー。ドライのハーブ。なめし皮や肉 ② さわやかなチェリーや赤い花の香り。香りの伸びは長い。 味わい ① タンニンは中より少し強め。酸味ははっきりしている。後口に心地よい渋さやタンニンが残る。 ② タンニンは控えめで中程度。口に残るタンニンや渋さは無い。酸味も十分だが、柔らかい美味しい酸味。果実のフレッシュさが丁度よく全体的にバランスの取れた味わい。 相性の良い料理 ① まさしく王道のイタリア料理。特にミートソースのパスタやハーブを加えたステーキやビーフシチューはベストと思います。 レストランでは、同様にクラシックな味わいの濃い味付けの煮込みやステーキが間違いないと思います。イタリアンレストランにはおいていてほしい一本。 ②家庭では煮物や鍋物も良いと思います。焼肉や焼き鳥も悪くないですが、赤ですが爽やか な味わいが魅力なので、焼き魚なども良いと思います。鮭のムニエルなども。 レストランですが、現代風の油脂を抑えたフレンチやイタリアンには最適なワインと思います。またはフレッシュなハーブや野菜を使う東南アジア料理。 総評 今回の2本はあくまで僕の好みや考えで選んだものなので、イタリアのサンジョヴェーゼは間違いなくこの味わい。同じくオーストラリアのサンジョヴェーゼはこれと言うわけではありません。しかしながら、今までもそれぞれの国のサンジョヴェーゼをテイスティングした中での経験から今回改めて思うのは、 イタリアのサンジョヴェーゼはやはり本来もっている葡萄のタンニンをある程度しっかり感じるくらい出す ようです。また、 ドライハーブの香り は良いものであればあるほどハッキリと感じる傾向にあります。 逆にオーストラリアは タンニンは感じますが、控えめ。ハーブのニュアンスは感じてもドライではなくフレッシュなタイプ 。酸味も印象的に感じます。 結果同じ葡萄ではあっても明らかな違いがあったように思います。 どちらも良い部分はあり、イタリアはドライハーブやタンニンの存在がクラシカルなイタリア料理には最適な相性を見せますし、オーストラリアはそのフレッシュな味わいは新鮮な食材を使う現代料理との良い相性を見せると思います。 さて、最初のオーストラリアのイタリア品種のアピールの仕方ですが、通常のメイン料理との相性を勧めるのではなく、フレッシュなパスタや魚料理との相性をお勧めするか、 サンジョヴェーゼのタンニンやハーブのニュアンスをネガティブに捉えている方への入門編にお勧めするのはアリ かと思います。 現在オーストラリアではサンジョヴェーゼだけでは無く様々なイタリア品種を使ったワインが生み出されていますが、どれも素晴らしい味わいです。機会があれば別の品種で同じ試みをして見たいとは思います。 さて、今回の比較で自分なりの答えは見つかりましたが、出来れば「美味しいという事をアピールしよう!」という回答が出来るくらいの威厳は持ちたいと思います。(笑) (*1) MW:イギリスに拠点を置くマスター・オブ・ワイン協会が認定する最上位資格。ワイン業界の慣例で、敬称として名前の後にMWとつける。日本人の取得者は、日本在住の大橋健一MWと、イギリス在住の田中麻衣MWの2名のみ。 (*2)キャンティ:イタリア・トスカーナ州の赤ワインで、イタリアでも最も有名な赤の一つとして知られている。主要品種はサンジョヴェーゼ。通常のキャンティのゾーンからはカジュアルなワインが多く造られ、キャンティ・クラッシコのゾーンからは、本格派のしっかりとしたワインが多い。 (*3)エッグタンク:文字通り、「卵形」のタンク。コンクリートエッグと呼ばれるコンクリート製のタンクは、その形状からタンク内で自然な対流が生じ、澱が攪拌されることによって自然な旨味が宿るという特殊な効果をもつタンクとして大きな注目を集めた。非常に高価なタンクでもある。最近は、ステンレス製のエッグタンク等も登場し、バリエーションが増えている。 <ソムリエプロフィール> 山根 宏士 / Hiroshi Yamane フリーワインアドバイザー(現リストランテ大澤ワインアドバイザー兼マネージャー) 1976年北海道生まれ。札幌の星付きフレンチでキッチンからこの業界をスタート。以後ソムリエに転身し札幌でも伝説的なビストロ「わいんや」を立ち上げる 東京に移住後は「オーバカナル」「ブラッスリーオザミ」「アロッサ渋谷」「W.W」「ARGO」 等の様々なジャンルのレストランでソムリエ、マネージャーとして研鑽を積み現在に至る。 現在近々行われるプロジェクトに備え武者修行中 JSA認定シニアソムリエ WSET Level 3 オーストラリア公社認定 ワインオーストラリア A+Level 2

  • スクリューキャップってどうなの?

    スクリューキャップ=安価なワイン というイメージをお持ちの方は、非常に多いのではないでしょうか? 実際には、 2万円前後で販売されているような高級ワインにもスクリューキャップは採用されています 。 今回は改めて、スクリューキャップってどうなの?という疑問にお答えしたいと思います。 まずはスクリューキャップの利点を挙げていきましょう! 1. 誰でも簡単に開けられる 2. 簡単に栓を閉めて再保存できる 3. 一瞬で抜栓(開栓)できる 4. ワインオープナーが不要 5. ブショネのリスクがほぼゼロになる(ブショネの原因であるTCAが栓をする前のワインに直接感染する可能性はゼロではない) 6. 保管場所の湿度を気にしなくて済む(コルクは乾燥の問題がある) 特に、簡単に開けれて簡単に閉めれる。というのは最大の利点でしょう。 スクリューキャップならではの「速さ」もまた、シチュエーションによっては魅力的です。 ブショネの可能性はゼロではありませんが、確率的にはコルクとは比べものにならないくらい低いです。(宝くじを当てるような確率) コルクにとって乾燥は大敵ですが、スクリューキャップには全く関係ありません。 ちなみに筆者は、 レストランでスクリューキャップのワインを頼んだ際には、ホストテイスティングをしません 。(温度管理が甘そうなお店ではテイスティングします) では次に、不利点を挙げていきましょう! 1. ロマンティックじゃない 実はこれしかありません。 キャップシールを切り、ワインオープナーのスクリューをねじ込み、テコの原理を利用して抜栓する。 この一連の所作は、 ある種の儀式的な側面 もあり、ワインを飲むという気分を大いに盛り立ててくれます。 つまり、ロマンティックなんです。 でも、ワインにロマンは求めない、美味しければそれで良い、ブショネのリスクがほぼ無い方が安心する、という筆者のようなリアリストにとっては、不利点ですらありません。 最後に、スクリューキャップの熟成能力に関してお話致します。 基本的に、スクリューキャップはコルクに比べて、 熟成スピードが鈍化します 。 これは 一長一短ですので、良し悪しで判断すべきではない でしょう。 しかし、熟成を前提としていない早飲みタイプのワインの場合、利点の多さでスクリューキャップの圧勝と言えるのではないでしょうか? スクリューキャップ=安ワイン、というのはとんでもない誤情報です。 利点をしっかりと知った上で、個人の好みで判断すれば良いでしょう。

  • Chianti Classicoのサブゾーンを解き明かす

    イタリアが世界に誇る銘醸中の銘醸、 キアンティ・クラッシコ 。広大なゾーンが認められている通常の キアンティ と異なり、限定された集中的なエリアであるキアンティ・クラッシコ(以下、 クラッシコ と表記)は、平均的品質、価格共に、広域キアンティやその他のキアンティに連なるサブエリア( Rufinaを例外として )とは明らかに一線を画している。 さらにクラッシコでは、既に 有機栽培率が総栽培面積の40%を超えて おり、着実な品質向上を遂げている一方で、クラッシコ外のキアンティ・ゾーンでは、有機転換率は緩やかな上昇に留まっている。このことは、クラッシコ外のエリアでは大量生産型のワインが多く、品質の向上よりも、安定した収量の確保が優先されることに大きな要因がある。 サンジョヴェーゼの本質的な繊細さは、ビオロジック、もしくはビオディナミ栽培でこそ真価が発揮される。 これは、筆者の経験上間違いないと断言できる。つまり、近年ますます、クラッシコと、その他のキアンティの品質的格差は(例外は存在するが)広がっていると言って差し支えは無いだろう。 そんなクラッシコが、近年腐心しているのが、 テロワール・ワインとしての更なる進化 である。 クラッシコに拠点を置く造り手たちの間で、 テロワールの精緻な表現こそが、真に偉大なワインへの唯一の道である という認識が、強まってきた。それは、国際市場への訴求力や一部の評論家の嗜好を意識したワインメイキングとの決別でもあり、葡萄の過熟を避け、樽の過剰な使用を控え、テロワールの声を忠実に再現することに心血を注ぐ、という意思決定でもある。 しかし、 クラッシコ内のテロワールの違いを、サブゾーンをベースにして理解することは、一筋縄ではいかない難題 でもある。 2021年3月15日に、 Consorzio Vino Chianti Classico が主催したプレスイベント「 キアンティ・クラッシコの産地を360度俯瞰する 」では、ワインジャーナリストであり、ワイン産地のマッピングにより「マップマン」としても知られる アレッサンドロ・マスナゲッティさん 、キアンティ・クラッシコ・アンバサダーの 宮嶋勲さん のガンダンスの元、8つのサブゾーンの違いを、詳細な360度マップや、テクニカルデータと共に、深堀りしていった。 以下は、プレスイベントでの新たな発見に、筆者のこれまでの見地を加えた、現時点での筆者の見解である。 サブゾーンだけでテロワールを理解することが難しい理由は、大きく分けて2つある。 1つは、 境界線の不正確さ 。現在制定されている 8つのサブゾーンは政治的境界線であり、テロワールの境界線とは必ずしも一致していない ため、同一のサブゾーン内でも大きくテロワールが異なってしまうことが多い。標高、土壌組成、日照量、積算温度等、非常に多くの変数がこの項目に含まれる。 2つめは、 品種、栽培、醸造の多様性 にある。主要品種である サンジョヴェーゼ だけでも 100種を超えるクローン があり、さらに補助品種である カナイオーロ、コロリーノ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ の使用割合によっても、大きく味わいが変動する。有機比率の高いクラシコであるが、栽培方法は非常に大きな影響を与える。醸造に関しても、 樽のサイズや新樽比率も含め、様々な変数が生じる。 これら2つの要因の中に含まれる 多種多様な変数の組み合わせは、無限に存在する とも言えるため、テロワールの体系的、論理的理解の大きな妨げになっている。 難解なテーマではあるが、少しでも深い理解の手助けとなるように、これらの変数をなるべく簡略化しながら紐解いて行こう。 1. 土壌組成 クラシコにおける土壌組成は主に以下の6種に分かれる。 Galestro(石灰質の瓦礫土壌) Alberese(石灰質の泥灰土) Pietraforte(石灰質の砂岩土壌) Tufo or Tufa(石灰質の粘土砂質土壌) Argilla(粘土質土壌) Fluvial(沖積土壌) これらの主要な土壌タイプは、3つの視点から見ると、整理しやすいだろう。しかし、あくまでも「傾向」であるため、絶対的な指標とはなり得ない点に注意すべきだ。 ① 石灰の割合が多くなると、より強い酸がもたらされる。 ② 粘土の割合が増えるほど、ワインの重心が低くなり、砂の割合が増えるほど、重心が高くなる。 ③ 沖積土壌や粘土質土壌はより肥沃なため、ミネラルが控えめになり、岩石や砂の多い土壌は痩せているため、ミネラルが強くなる。 2. サブゾーン 現在のサブゾーンは以下の8つである。 東部: Greve in Chianti Radda in Chianti Gaiole in Chianti 西部: San Casciano in Val di Pesa Barberino Tavarnelle (2019年1月にBarberino Val d`ElsaとTavarnelle Val di Pesaが統合) Castellina in Chianti Poggiobonsi 南部: Castelnuovo Berardenga なるべく簡略化して述べると、(起伏の多い土地であるため、多少の語弊は不可避であるが)キャンティ山脈に近い 東側は標高が高く、斜面が多く、冷涼なエリアとなる 一方で、 西側は標高が下がり、平地が多く、温暖 となる。単純に理解するなら、 東側はアルコール濃度が低めになり、酸が高い のに対し、 西側はアルコール濃度が高く、酸が低い 。となるが、 これらの差異はかなり微細なもの とも言える。南部の Castelnuovo Berardenga に関しては、東部と西部で上記の性質の差が生じる傾向がある。 3. テロワールの境界線 1と2の要素を統合して考えると、現在の8つのサブゾーンでは、不都合が多々生じてしまう。今後、より正確な理解が進んでいく余地は大きく残されているものの、現時点では、以下の5つのエリアに分けた方が理解しやすい。 ① 東部 石火質を含む土壌が主体となり、標高も高い東部では、重心と酸が高く、アルコール濃度が低く、ミネラル感に富んだワインとなる。クラシコの中でも、最も繊細で優美なワインが生まれるエリアとも言える。 ② 中央部 土壌に石灰質を含みつつも、やや標高が下がる中央部では、中庸の魅力に溢れたワインが産出されている。また、このエリアに含まれる Panzano in Chianti という小エリアでは、有機栽培率が90%を突破しており、高い品質のワインが多い。バランス感覚に優れた最も優等生的なワインが生まれるエリアとも言える。 ③ 西部 土壌は粘土の割合が増え、標高も低い西部では、重心と酸が低く、アルコール濃度が高く、ミネラルにはやや欠けるものの、おおらかな果実味が主体となる。迫力のある力強いワインが生まれるエリアだ。 ④ 北西部 このエリアは沖積土壌が多くなり、他のクラッシコのエリアとはかなり個性が異なる。中央部と同様にバランスに優れたワインが生まれるが、より丸みを帯びた上品な味わいが特徴と言える。また、クラシコの中でもより温暖なエリアとなる。 ⑤ 南部 南部は東側と西側で微妙に個性が異なってくるが、Tufoと砂質土壌の割合が多い点が特徴的。温暖なエリアでもあり、土っぽさを伴った味わいと丸みのある果実味、軽やかで華やかなアロマが得られる。 4. 人的要因の考慮 上記の5つのエリアごとの基本的な特徴をベースに、 葡萄品種、栽培方法、醸造方法 の選択という 人的要因 を加えていくと、最終的なワインの性質におおよその予測を立てることも可能になるだろう。主要品種であるサンジョヴェーゼは100種を超えるクローンが存在しているため、クローンの種類まで要素に含めてしまうと、非常に理解が難しくなってしまう。まずは、他の側面に集中してしまう方が得策だ。 ① それぞれの補助品種の役割 ・ Canaiolo(カナイオーロ) は最終的なワインに、 フレッシュな酸 をもたらす。 ・ Colorino(コロリーノ) 色調の濃い品種であるため、主に 色の調整 のために使用される。 ・ Cabernet SauvignonとMerlot はインターナショナル風味に仕上げるために用いられてきた側面が強く、ブレンドに僅かにでも含まれると、キアンティ・クラシコ本来の味わいから遠のいてしまう。 これらの中で、最も重要な補助品種は、ワインに明確にフレッシュな酸をもたらす カナイオーロ である。 ② 栽培方法による違い キアンティ・クラシコの主要品種であるサンジョヴェーゼは、栽培方法に非常に敏感な品種である。ここも、複雑で奥深い要素であるが、端的に言うと、慣行農法、ビオロジック農法、ビオディナミ農法の順に、果実味とアロマが開放的になり、伸びやかさが増していく。 ③ 醸造方法の違い ・発酵槽はステンレス・タンク、セメント・タンク、樽の順に最終的なワインにマイルドな質感をもたらしていく。 ・熟成においては、樽のサイズが小さくなり、新樽比率が上がるにつれて、重厚な味わいをもたらす。 ④ 要素を統合して大まかな傾向を導き出す 例えば東部のエリアで、カナイオーロを補助品種として15%ほど使用し、栽培はビオロジック農法で行い、醸造と熟成を大樽で行ったとする。 東部の特徴である、低めのアルコール濃度(13.5%前後)で酸とミネラルに富み、カナイオーロがフレッシュな酸を足し、ビオロジック栽培により開放的なアロマがあり、大樽はワインの繊細さを維持する。 という典型例が浮かび上がってくる。 左から順に Montefioralle, Greve in Chianti Val delle Corti, Radda in Chianti Riesine, Gaiole in Chianti Felsina, Castelnuovo Berardenga(東側) 左から順に Mori Concetta, San Casciano in Val di Pesa Isole e Olena, Barberino Tavarnelle Pomona, Castellina in Chianti Borgo Scopeto, Castelnuovo Berardenga( 西側) Gran Selezzioneへの期待 同一のサブゾーン内で、テロワールの差異が大きく生じるというのは、何もクラッシコに限ったことでは無い。 人が決めた境界線は、往々にして自然の境界線とは異なるもの だ。しかし、クラッシコ内のサブゾーンの違いが非常に分かりにくいことは、間違いない。 テロワールをベースとしたサブゾーン制定のモデルケースである ブルゴーニュやボルドー にあって、クラッシコに欠けているものは何なのだろうか。 それは、象徴的存在、である。 つまり、 ブルゴーニュにおける特級畑、ボルドーにおける第一級シャトー のように、そのエリアの特性を代表し、象徴となる偉大な畑やスタイルが、クラッシコにおいてはまだ確定していないのだ。 そこで期待されるのが、 2014年 から導入されたクラッシコの 最上位格付け である Gran Selezione(グラン・セレジオーネ) だ。 Gran Selezioneは、その規定で「 自社畑であれば、単一畑でも複数の畑から選りすぐった葡萄でも構わない 」と定めている。自社畑と定められている以上、単一畑のみが認められると、実質的にモノポールしか認められないということになる。この場合、一つの畑に対する複数の造り手によるアプローチを比較検証した上で、テロワールの真価を図るという手法を非常に困難なものにしてしまう。Gran Selezioneは複数の畑のブレンドも認めているため、そのエリアの総体的なスタイルとしての洗練度を図る余地(ボルドーのように、比較的広範囲の畑の総体的特徴をワイナリー単位でまとめて評価する)が残されているのだ。これは 非常に高く評価できるポイント である。 長期熟成型であるGran Selezioneは、リリースされているワインのほとんどが、いまだにテロワールの真価を発揮できる段階に至っていないため、正確な検証を行うには、しばしの辛抱が必要だ。 いつかの未来に、Gran Selezioneの中でも際立って優れたワインが判明してきた時、今はまだ薄い霧に包まれているクラッシコ・サブゾーン毎の総体的、象徴的個性が、明確になる日が来ることを期待して、辛抱強く待っていようと思う。

  • ハイブリッド・ソムリエ

    0. ハイブリッド・ソムリエとは ハイブリッド :生物学で異なる種類などを掛け合わせた交雑種 ソムリエ :レストランで従事し、ワイン全般を含めた飲料に対しての専門性の高いウエイター とここでは位置付けておきたいと思います。  ハイブリッド・ソムリエ :状況の変化に対応し、外的要素(世の中の流れ)に対応しながら、専門性とニーズを掴みながら他業種の良さを取り入れワイン脳(ソムリエ脳)を活用できるソムリエのことを指す。 1.「きっかけ」 「緊急事態宣言のような経済が止まっている状態でも、勉強はやって当たり前。 飲食に関連する全ての生産者の為にも、ソムリエはもっと売っていかないといけない。 売ることによって社会貢献となる事だってある。」 尊敬する大越ソムリエから言われた 2020年に最も心に残っている言葉だ。 果たして、世界中のどれだけのワインビジネスをやっている人達が、この期間にワインを売れただろうか? 又、生産者へも還元できるビジネスに繋げることができただろうか? 2.「2020年」 勿論、教育は大切だ。 僕も2020年4月頃、Sommetimes Directorでもあるヤンさんの企画のZoomを使用したオンラインセミナー“ソムドラ”で毎日、勉強させて頂いた後、自らのクライアント先のスタッフのソムリエ資格対策講座の雑学と、毎日Zoom漬けの勉強ざんまいの幸せな時間を過ごさせてもらっていた。 僕の取っていた行動はスキルアップと教育という観点から言うと申し分ないと思いますが、 生産者や取引先のワイン会社、そしてレストランのオーナーの観点からすると、どうだろうか? 2020年4月ごろ、国内の様々な街場のレストランは存続のために必死にテイクアウトやECサイトを始め、シェフたちはメニュー作成に走り、カレーやチーズケーキといったようなテイクアウトの流れが全国的に見えたのではないだろうか? あの不動の三ツ星のカンテサンスでも、2種類のケーキを出した事は衝撃でした。 サービススタッフは、テイクアウト商品を梱包し、ソムリエは自宅待機だったのではないだろうか? と当時の私の分析では、そのケースが高い気がしてならない。 3.「100年に一度の出来事だからこそ、変革が生まれる。」 このような出来事の中で生き、今まで以上に考える時間が増えて、自分自身のソムリエとしての考え方が大きく変わる。 “ これまで通りではいけない ” 私は2018年からフリーランスのソムリエとして、レストランやホテルの開業時のワインリスト作成や、スタッフ教育とインフラを整えたりと主にBtoBを行ってきたが、2020年を振り返ってみると飲食店やホテルの取引先の卸し業者さんと一緒で、大きなダメージを受けました。 (ギリッギリやっていけてる感じ。汗) 変化を受け入れよう。 そして、今できるベストは何なのか。。。 4.「時代の背景と共に求められるソムリエ像」 生産者やインポーター、小売にジャーナリストという観点は外して頂き、 国内の市場でホテルや飲食店に従事しているソムリエを対象として、 ざっくりとしていますが、35歳の僕の視点から考察してみます。 1990年代 1995年の田崎真也さんの世界一というニュースを筆頭に、この時代に活躍していたのは 現在の 60代 である。 いわゆる王道のフランスやイタリアの銘醸地を熟知しており、得意分野でもある。 現在のようにネットによる情報が、当時には全くと言って良いほどなく情報戦という意味では、若い時に一番苦労されたのではないだろうかと、先輩方のお話から見えてくる。 また、バブル時代を経験しており、1962年 ホテルオークラ、1966年 マキシム・ド・パリ東京1974年 銀座レカン、1984年 トゥールダルジャンの開業と日本のフレンチレストラン全盛期とも取れ、名だたるグランメゾンで王道のフランス料理などが供され、今じゃ飲めないような銘醸地のグランヴァンが沢山空いていた時代。 2000年代 2000年の 石田博 さんの世界3位というニュースを筆頭に、この時代に活躍していたのは 現在の 50代 のソムリエである。 現在の60〜70代のソムリエからの教育や流れから、同じくフランスやイタリア、又はアメリカに特化したソムリエは多いと感じる。 知識としては、より細かく畑ごとのアペラシオンや生産者の個性を探求できているソムリエが、仕事ができているとされていたのではないだろうか。 2010年代 森ソムリエや大越ソムリエ という業界をリードするような現在の 40代 が頭角を現してきた時代と読む。 料理業界から見てスターが多い世代にも感じられる。 国内のコンクールが頻繁に行われるようになり、勉強しなきゃいけない国やエリアが増えてきた時代。 クラシックにナチュラルワイン、世界中に広がるワイン産地といったような情報を敏感に捉え、ワインに対しての“こだわり”という部分で、各レストランが差別化を図ろうとしていくような流れがあり、コアなメッセージを発していく事がお店のPRであり売りであったような時代になったのではないかと推測する。 また、現在の40代は30代のタイミングで2008年に日本にミシュランが上陸してきた時に、様々なジャンルが評価されるようになり、イタリアワインの専門家、オーストリアワインの専門家、ギリシャにジョージアなど、専門をもつ事による他者との差別化を測れるソムリエが重宝されてきた。 同時に日本食の世界的な人気と合わせて、日本酒を扱うソムリエも増えてきて、ペアリングでも活発に日本酒を取り入れた世代のソムリエとも言える。 2013年のAsia’s 50 Best Restaurantのスタート後、イノベーティブというジャンルもこの時期に定着。 シェフ達も世界中を周り、色々な物にインスピレーションを受け、様々な創作料理があるような状況になっていく。 レストランなので、勿論ソムリエも影響を受け。ナチュラルだからとか、クラシックだとか、国別を問わないワインセレクトになっていくのも 必然的とも言える。 2017年〜 2017年の 岩田渉 さんと2020年の 井黒卓 さんと 30代 のソムリエが立て続けに全日本最優秀ソムリエコンコールを制覇。 どの職業でもそうだと思いますが、現時点での一番の働き盛りである。 現役の40〜60代までの先輩方にしごかれ、コンクールでも、国内ではスカラシップという制度ができて階段的に教育が整い始め、様々な海外研修や最新情報もタイムラグなしにネットでキャッチできる時代。 情報戦という意味では、いわゆる恵まれた時代ではないかと思う。 銘醸地ワインの価格の上昇により扱えなくなってきたワインが増えてきた、という観点ではマイナスであるが。。。 「20年前は、もっとDRCが安かったんだよ。」とよく教えてもらえる世代。 そして、情報がボーダレスに入ってきて、あらゆる国のワインが日本で飲めるようになり、ワールドワイドに様々な国のワインが扱え、ニッチなサブ・リージョンを語れるソムリエが評価が高いように思える。又、様々なワインに柔軟に向き合える世代とも感じられる。 20代のソムリエ 2019年の 高松亨 さんのMaster Sommelier取得。当時、世界最年少が一番記憶に新しく、 Master of WineでなくMaster Sommelierに進路を寄せていた国内のソムリエ達に一石投じた出来事だと思う。 (CMSの端くれだけど僕だってそうだ。)笑 インターネットによる情報やクリエーションが更に進化し、速度を速め時代が激しく動く昨今で、これから頭角を現していく世代の戦い方や、時代に求めれるソムリエ像に目が離せない。 文章の中に 1972年の赤玉ポートワイン「金曜日はワインを買う日」。 1987年の日本国内でのボジョレー・ヌーボーのスタート。 2003年インポーターのラシーヌ社の設立。 2012年の逆輸入ソムリエ ヤンさん(ソムリエ界の黒船)の到来。 などといったトピックスを省略している事をどうか許して欲しい。 海外や小売りのマーケットまでの話を入れてしまうと記事が書き終わらないので(汗) 5.僕が思うハイブリッド・ソムリエ 世代別や時代の流れによって求められるソムリエスキル、レストランでの役割なども変わっていくのは、当然であると感じます。 現にコロナウイルスが蔓延している2020年は、世界のレストラン従事のソムリエは、ネットでのワイン販売も含めて、経済を動かすという意味では、思いっきりビハインドした事は間違いないだろう。 先手必勝、ナンバーワンでなくオンリーワン 「日本のワインシーンで8番ライトの位置を掴む。」 ライト前のポテンヒットを打つ存在になりたい。 でも、8番ライトでもレギュラーに食い込む。 ←ここが一番重要。 関西に行った時だけ僕に優しくしてくれる岩田さんと飲みながら、僕がよく話している言葉だ。 僕みたいに諦めの悪い中年のビジネスライクなソムリエは考えて欲しい。 ①ソムリエとして競争に勝てなくても生き残る(商売の上手くいく)方法を。 ②そして、他業種と比べてのソムリエの強みと弱みを。 ①、②を考えながら、コロナウイルスという外的要因に対応してゆく事により 生まれる何か。。。 ハイブリッド・ソムリエ後半編に続く。。。 次回、2018年に受けた衝撃!! ドリンクビジネス界のボスキャラ 乞うご期待ください。 6.最近のワイン 生産者:Bodegas Cota 45/ ボデガス・コタ 45 ワイン名:UBE Milaflores/ ウベ・ミラフローレス 葡萄品種:Listan[Palomino]/リスタン[パロミノ] ワインタイプ:White/ 白 非酒精強化ワイン 生産国:Spain/ スペイン 生産地:Andalucía/ アンダルシア ヴィンテージ:2019 インポーター:ウミネコ醸造株式会社 希望小売価格:3,500円 【Producer’s Profile】 醸造家 ラミロ・イバニェス氏 オーストラリアとボルドーで経験を積みスペイン・アンダルシアに戻る。 【WINE】 異なる樹齢のぶどう畑で栽培されるパロミノ・フィノ100% UBEシリーズは非酒精強化ワイン。生物学的熟成ワイン。 【Viticulture&Wine making】 土地の代表的な土壌アルバリサで昔のマンサニーリャ(*1)スタイル、フロール(*2)の元で2ヶ月熟成、そのまま600ℓのボタで合計9ヶ月熟成。アルコール添加なし。Alc12% Sanlucar de Barramedaの近く沿岸沿いのMiraflores La Alta, Miraflores La Bajaの 区画のぶどうを使用。 海岸沿いで栽培されるリスタン種は内陸部(Jerez de la Frontera)に比べ、フロールが出やすい。 沿岸部の特徴:ワインは柑橘やパンの匂いをもつ。 内陸部の特徴:カレーやバラのニュアンスをもつ。 【Recommendation】 まず初めに純粋に好きなタイプのワイン。 低アルコール(12%)スッーとした柑橘に、ほのかな煙のような優しい香りに、シェリー特有の食欲が沸く香ばし2アロマ。 口に含むとスレンダーな酸味が柑橘の優しい果実味を抑えシャープに纏まっていく味わい。 余韻も軽やかながらも、優しく海を思わせるマンサニーリャの香りが鼻から抜けていく。 世界のマーケットでも、差別化できるカテゴリーという事で、トップソムリエにピックアップしてもらえる、ここにしかないオンリーワンの存在であると感じる。 ワインリストには勿論入れたいワインだ。 ここにしかない個性に乾杯!! (*1)マンサニーリャ:辛口タイプのシェリーの中でも、サンルカール・デ・バラメッダ周辺で熟成されたもののこと。海の潮をより強く感じさせる風味が特徴的。 (*2)フロール:産膜酵母の集合体が発酵槽の上部に集まって膜となることで、独特の軽い酸化のニュアンスと風味が生まれる。基本的には醸造学上ではエラーではあるものの、シェリーやフランスのジュラ等では、産地の伝統的なスタイルを決定付ける要素となっている。 〈ソムリエ プロフィール〉 石原 大輝 / Daiki Ishihara 1986年 沖縄生まれ バーテンダーからキャリアをスタートして福岡と東京のレストラン、そして地元の沖縄に戻りホテルやレストランでシェフ・ソムリエやマネージャーとして研鑽を積む。 2018年 Le Monde [Freelance Sommelierとして独立] 、J.S.A. Senior Sommelier取得。 2019年 A.S.I. Diploma取得。 2021年3月 自身がオーナーを務めるDowntown Donuts(ワインが飲めるドーナツ屋さん)を沖繩にオープン予定。 〈Le Monde〉 Freelance Sommelier、Beverage consultantとして活動。 沖縄のレストラン、ラグジュアリーホテル、鮨屋、ステーキショップやワインショップという様々なジャンルの店舗のワインリスト作成、ペアリングの提案、スタッフ教育にマネージメントなどを行う。沖縄のレストランやドリンクシーンをワールドクラスにする事を理念として日々奮闘中。 Mail address: ishihara_vin@icloud.com

  • ど田舎的ソムリエライフ

    熊本市内の学校に通っていた学生時代、ある運動部に所属していた。その競技は天草でも活発に行われていて強豪校も多く、特に天草出身の選手には大きな身体的特徴があった。体が大きな選手には強さだけでなくバネと柔軟性があり、体が小さな選手には速さだけでなくトリッキーな上手さがあった。味方にいると頼もしく、敵に回ると厄介、そんな身体能力の高い選手が多かった。時は流れ、天草に移住し、気がついてみるとそんな身体能力の高い若者たちはあまり見当たらなくなっていた。かつての強豪校だった学校は廃校になっている。考えられる原因はふたつ。 少子化と過疎化 である。 田舎で働くソムリエはただワインを扱うだけでなく、業態により違いはあるものの、基本的にいろんな仕事をしなければならない。ソムリエだけの専門職をやっている者はごく一部であると思う。田舎の小さなホテル勤めの私もソムリエやレストランサービスだけをやっているわけではなく、ドアマンのように玄関に立ちゲストを迎え、ベルマンのようにゲストを客室へと案内し、時にはホテルのロゴ入りハイエースを乗り回してゲストの送迎もするし、チェックアウトの際には精算業務も行い、本当に人手が足りないときは客室の清掃も行う「何でも屋」である。ソムリエ業務もひとりで行っているのでワインの購入、管理、陳列などの力仕事もすべて自分で行っている。こんな時に学生時代に遭遇した身体能力の高い男性スタッフがもっと多ければといつも思っているが、残念ながら都会へ憧れて島を出て行ってしまう若者は後を絶たない。道の駅の鮮魚店に並んでいるピチピチのお魚さんと、街の駅の交差点に並んでいるピチピチのお姉さん、田舎育ちの若者にどちらが魅力的に映るかは言わずと知れている。 さて本題のワインの話であるが、今回はイタリアワインのテキストを開いてみよう。最初にイタリア20州の地図が載っていることが多い。モリーゼ州ってどこだっけ?そもそもワインを造っている?なんていう疑問を浮かべながら、ページを進めると歴史や地理の情報が載っている。 そして主要ブドウ品種の一覧。 主要品種だけで100種類以上 ・・・それから州ごとの解説に入り、最後に DOP 一覧。 400 を超える産地がずらり・・・さらに 170 を超える IGP の一覧は、まるで子供の頃にノートに書いていたファミコンのパスワードのようである。 そう、イタリアワインを活字だけで理解しようとするのは、いくらワイン愛好家であっても非常にハードルが高い。しかもここ 10年から20年の間にイタリアワインのDOPの数は大幅に増えており 、その情報量の多さから資格取得を目指す人達にとっては大きな壁になっていると思われる。 その無機質な活字だらけのイタリアワインに魂を吹き込むのが、我々スペシャリストの役割であると思っている。 これはイタリアだけに限らず日本でも同じことが言えるが、まずは 地理的表示 (注1)の認証を得るとはどのようなことかを考えてみたい。一部 生産国の地理的表示とワインの品質には相関関係がある場合もある が、 基本的に地理的表示はワインの品質を保証するものではなく、ワインの原産地を保証するものである 。しかし、生産者の立場で考えれば、何の認証も受けていなかったワインにある日、自分たちが住んでいる地域の名称が与えられれば、品質を顧みずワインを造り続けるものはあまりいないだろう。とりわけ地元愛が強いイタリアだとなおさらだ。 地理的表示を与えられるとは、 自分たちが住んでいる地域が肯定されること であり、自分たちのワイン造りに価値が与えられることである。DOPが増えたということは自分たちのワイン造りに価値を与えようと取り組み続けた生産者たちの結果であり、ワインを学ぶ側にもそれらひとつひとつについて正しく理解していく姿勢が求められる。ワインだけにとどまらず、様々な農作物に地理的表示が与えられれば地域の農業に、また農業に従事することに対し、より価値が生まれ労働者の都会への一極集中を防ぎ、農業だけでなくアグリツーリズモなどの観光産業の発展にも寄与していることはイタリアにおいて様々な研究がなされており、こういったイタリア型の地方創生は少しずつ日本でも導入が始まっている。 イタリアは日本と同じように第二次大戦後は高度経済成長を経験するが、ヴァッレ・ダオスタとの州境にある人口700人のピエモンテの小さな村、カレーマでも若者たちは村を出て、トリノにあるフィアットの工場などに働きに出ていってしまう。ただでさえ生活するのに大変な山岳地帯だが、なおさら過疎地域のワイン造りは過酷だ。雪に埋もれないよう棚仕立てのブドウ畑は機械も入れない。しかしこの地のワインには他の産地にはない個性があった。ピエモンテでも最も早くDOCを獲得したほどだ。独自にセレクションされた プニェット (注2)と呼ばれる ネッビオーロ から、 山のネッビオーロ特有の優美なワインが生まれる 。一時存続の危機もあったが、濃いワインの流行が去り、ランゲと一線を画すこの地のワインはいつしか価値へと変わり世界中で売れるようになった。 カレーマの棚仕立ての葡萄畑 過疎化の進むカレーマの様子 地理的表示を名乗る生産者側には、その意義を感じさせる製品や作物を作っていく責任が生じるが、その責任を果たし、そのプロダクトに価値が生まれれば、わずか人口700人の過疎地の村でも世界中にその名が知られていく力が地理的表示にはある。 いつかカレーマを訪問して産地を見てみたいと思っているのだが、同じように考えているのは私だけではないはずだ。そしてこの考え方はソムリエの働き方にも通じると感じている。現状では学びを求めるソムリエは都会へ出て行く傾向にあるが、それは都会でソムリエとして働くことに価値があるからだ。様々な労働環境を整備し直し、眠っている財産を呼び起こし、課題は山積みだが、 田舎でソムリエとして働くことにもっと価値が生まれれば、ソムリエの仕事はきっと今よりも面白くなる 。 生産者 :Produttori Nebbiolo di Carema / プロドゥットーリ・ネッビオーロ・ディ・カレーマ ワイン名 :Carema Riserva / カレーマ・リゼルヴァ ブドウ品種 :ネッビオーロ100% ワインタイプ :赤ワイン 生産国 :イタリア 生産地 :ピエモンテ州カレーマDOC ヴィンテージ :2015 インポーター :テラヴェール 参考小売価格 :4200円 (注1) ある商品の品質や評価が、その地理的原産地に由来する場合に、その商品の原産地を特定する表示である。条約や法令により知的財産権のひとつとして保護される。 (注2) ランゲ地区のネッビオーロではランピア、ロゼ、ミケといったクローンが有名であるが、プニェットはカレーマ地区でセレクションされたネッビオーロの一種。 〈ソムリエプロフィール〉 田上 清一郎 / Seiichiro Tanoue 天草 天空の船 レストランマネージャー・ソムリエ 1977年 熊本県生まれ。 2004年 JSAソムリエ呼称資格取得後、大分、福岡、熊本、九州各地のホテル・レストランで研鑽を積む。 2018年 第12回イタリアワイン・ベストソムリエコンクールJETCUPにて優勝。東京圏、大阪圏以外から初のJETCUPチャンピオンとなる。 2018年 駐日イタリア大使館公認 イタリアワイン大使 拝命 〈天草 天空の船〉 熊本県上天草市に位置する全15室のリゾートホテル。天草の海の幸を提供するリストランテ、プール、エステ、各部屋には天然温泉の露天風呂を備える。ディナータイムには西海岸に沈んでいく絶景の夕陽を見ながらの食事が楽しめる。

  • ペアリングの実践 <4>

    今回は、より 質感のあるスープ を題材に、 酸味、風味、質感 の3つの要素を用いながら、攻略していきます。

  • やばいぞソムリエ

    【ある日のSNS】 このコラムを書いているのは2021年2月9日、緊急事態宣言が延長されコロナ禍のまっただなかである。レストランは時短営業を余儀なくされ、ワインを通じたリアルコミュニケーションを19:00以降、楽しむことも御法度とされている。そしてレストランは勿論の事、小売店、インポーター、農家、魚屋、肉屋等々、数えきれないほどの飲食業、また関連業界の人々が日々頭を抱えている。 そんな中SNS上のあるメッセージが私の目に飛び込んだ。 「酒販店様、飲食店様向けに以下のテーマについて無償でセミナーを開催いたします。」 ・動画編集(スマホ) ・YouTube開設・運用方法 動画の活用はYouTubeにとどまらず、 Facebook、Instagram、Twitterと様々なSNSに利用可能です ぜひ動画の力でまだ見ぬお客様へ みなさんの声を届けてください 新たな企画を生み出すきっかけとしてください 私が本当にお世話になった みなさんにできる 唯一の恩返しです たくさんの方たちからのご連絡お待ちしています ヘレンベルガー・ホーフ 代表 山野 高弘 これを見たときに何故か「これやっ!」「これは絶対会いにいかなあかん!」と、まるで神様のお告げのように何かが下りてきたのか、すぐにシェフと若手サービススタッフと伺わせてください、ってメッセージを送っていた。 【 (*1) 山野高弘名言集】 今回受けてきたセミナーの中で印象的な言葉を紹介したい。 ・コロナ禍は2〜3年続く。覚悟を決める。 たとえみんなのマスクがとれたとしてもお客様の消費行動の方法、考え方は元どおりには戻らない。このままレストラン、会社を潰すのか?嫌なら何かやるしかない。 ・もうGoogleらない!検索はYouTubeで 動画は圧倒的に記憶に残りやすく、人の心を動かす。 しかも我々の子供世代はYouTube大好き。勉強、ゲームの攻略法、サッカーのドリブルまでもYouTubeで学んでいる。これからYouTubeと共に育った世代がどんどんでてくる。 ・「もの」ではなく、「こと」を売る時代。もはや情報には価値はない 我々が言うのもなんだが、ワインはだいたい美味しい。ワインの情報もすぐに調べられる。何を買うよりも、 誰からどう買う のかが大事である。 消費者は 体験、経験 を求めている。 これって我らソムリエ、考え方改めないとやばいんじゃない!? 【ソムリエあるある(自分への戒めを含む)】 ・インプットとアウトプットの割合がいびつ 私がコンクール、資格取得にひたすら取り組んできた弊害かもしれない。通常の社会生活を営むうえで、インプットとアウトプットは50%50%でバランスよく保たれるべきなのに、コンクールでの結果、資格試験の合格を求めるがあまり、インプット(勉強)にあまりに膨大な時間を割いてしまっている。その結果、知識を得たはいいが発信する意識、機会に欠けている。 ・広報活動が苦手 強い現場主義(とにかくお客様とお話するのが大好き、接客しながらワインを販売したい)が邪魔をして、それ以外の販売活動、PR活動、営業活動に対しての意欲、技術が乏しい。 その結果、自分自身が発信拠点となれていない。 【これからのソムリエが動画を使ってする事は何?】 ・あるジャンルでトップを目指す 自分の武器をもう一度考え直そう。自分が最も得意なジャンルを見つめなおし、研いでいく作業を。 ・伝えたい人に伝える ただただ投げるだけじゃ、その労力に見合わない。 注目を集めることも大事だが、そのうえで何に誘導する、どこに着点(目的地)をもっていくか、それをよく考えること。 ・お客様、視聴者の事を考える。誰のどんな問題を解決するのか。 フォロワー、チャンネル登録数の増加よりも、お客様との繋がりの濃さをつくること。 自分の存在価値よりもお客様に有益な何かを伝える。←これ特に大事かなーって思います。ソムリエは、自己満型の自己アピールに走りがち。 ・批判されてなんぼ それは初めて見られている、たくさんの人にみられている証拠。 健全な目的さえブレていなければ問題なし。 ・最大の極意“続けること” 頑張る姿、熱量を配信し続けていると必ず誰かが振り向いてくれる。 どの道のプロフェッショナルも必ずおっしゃる言葉はこれ。「継続は力なり!」 【追記】 「みんなー、コロナおわったからうちのレストランに帰ってきてー」って、そんな甘い話が有るわけがない。コロナ禍が終息した時に、お客様が戻ってくるのは、きっと厳しい状況下でもあがいていた人の所だと思う。 一応、最後にワインの話を少しだけ。今回のおすすめワインはオーストリアのブラウフレンキッシュ、ハインリッヒさんがつくります。ペアリングで大活躍のハインリッヒさんの赤ワイン。甲殻類のスープやタコのラグーなど、なんか白ワインじゃしっくりこないし、でもピノノワールじゃないんだよなー、って感じた時、私はよく使用します。 ワインの説明は是非YouTube「ドイツワイン王子のドイツワイン最高!」を見てください。 ハインリッヒさん 醸造所紹介 - YouTube 生産者:Heinrich/ハインリッヒ ワイン名:Burgenland Leithaberg /ブルゲンランド ライタベルグ 葡萄品種:Blaufränkish /ブラウフレンキッシュ ワインタイプ:赤ワイン 生産国:オーストリア 生産地:ノイジードラーゼー ヴィンテージ:2016 参考小売価格: 6,000円 (*1)山野高弘 プロフィール ワインインポーター ヘレンベルガー・ホーフ(株) 代表取締役社長 受賞:Riesling Fellow ~リースリング・フェロー~ (ドイツ政府機関公認の国際的な称号。アジア初、初の親子受賞、世界最年少受賞。受賞時世界で16名のみ) 愛称:リースリング王子、ドイツワイン王子、ドイツワインの伝道師、造り手さんからは親しみを込めて「タカヒ~ロ~」と呼ばれている。 <ソムリエプロフィール> 塚元 晃 / Akira Tsukamoto レストラン相楽 / マネージャー兼ソムリエ アカデミーデュヴァン大阪校 / 講師 International A.S.I. Sommelier Diploma取得 第7回イタリアワイン・ベスト・ソムリエコンクールJETCUP 優勝 イタリア共和国駐日大使館公認イタリアワイン大使 Wines of Portugal Japanese Sommelier of the year 2016 第3位 第2回ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン ソムリエコンクール2018 優勝 現在も世界中のワインと出会うべく勉強中 <レストラン相楽> 港町・神戸の多様な文化を、世代や国籍を超えて相楽(あいたの)しめるように。そして近隣の方々からも必要とされるコミュニティとなるよう、目利きされた兵庫・神戸の商品を提供し、神戸を切り口に多様な食文化を楽しめる発信基地を目指す。 レストラン 相楽 | THE SORAKUEN 旧:相楽園会館 | 神戸を代表する日本庭園 相楽園に佇む迎賓館 (the-sorakuen.jp)

  • Advanced Académie <5> ハイブリッド品種の是非

    ハイブリット品種とは、特定の目的のために 人工的に交配された品種 のことだ。様々な農作物において、現代では当たり前の技術であり、それがリンゴや柑橘や野菜であれば、特に違和感なく食している人が大多数だろう。しかし、ワイン醸造用葡萄としてのハイブリッド品種は、すこぶるイメージが悪い。

  • 躍動するロワールの注目株

    星付き有名シェフの下で働く若い料理人が才能を見込まれ、みっちり修業した後に自分のレストランをオープン。 その新店、試してみたくなりますよね。 しかし、有名店で働いていたと言っても実は単に下働きしてただけだったり、師匠のコピー料理だったりで、残念ながら期待外れということもしばしば。 一方で「当たり」に出会った時の喜びもまた格別。 玉石混交の中からダイヤの原石を発見した時の喜び。これはレストラン選びでもワインでも同じではないでしょうか。 今回も一期一会、そんな当たりクジの一例をご紹介です。 生産者 :ピエール・オリヴィエ・ボノーム ワイン名 : トゥーレーヌ・ソーヴィニョン 葡萄品種 : ソーヴィニョン・ブラン ワインタイプ :白ワイン 生産国 :フランス 生産地 :ロワール地方 ヴィンテージ :2019 インポーター :ラシーヌ 参考小売価格 :2500円 ティエリー・ピュズラ 。 筆者がナチュラルワイン(当時はビオワインという言葉が一部マニアの間で広がり始めたところ)に接する機会をもち始めたころ(かれこれ20年ほど前か)、「 ロワールの若き鬼才 」というようなサブタイトルで盛んに紹介されていたのを記憶している。 今では彼のワインはますます円熟味を増し、若き鬼才どころか押しも押されぬ ロワールの重鎮 と言ってもいい地位を占めている。 そのティエリーの畑に2003年の収穫作業を手伝いに来た18歳の少年が ピエール・オリヴィエ・ボノーム 。多くの人員が作業に動員されていたであろう中から、なぜか二人は意気投合し正式にピエール・オリヴィエはティエリーの下でワイン造りを学ぶこととなる。 若きピエール・オリヴィエは旺盛な好奇心と並外れた体力を武器に急速にティエリーのワイン造りのノウハウを吸収し、わずか6年後の 2009年 にはティエリーのドメーヌ( ル・クロ・デュ・テュ・ブフ )とは別にネゴシアン部門「 ピュズラ・ボノーム 」を立ち上げることとに。 ティエリーと協調しながら本格的にワイン生産に取り掛かり、5年間の共同歩調を経た後、ティエリーは自身のドメーヌでのワイン造りに専念することを決意。2014年からは晴れてネゴシアン「 ピエール・オリヴィエ・ボノーム 」として一本立ちするに至る。 彼のワインは何度か口にして(以前このコラムでも別の銘柄を取り上げている)おり、いつも大いに楽しませてもらっている。 今回取り上げるトゥーレーヌ・ソーヴィニョン。 冷涼なロワール地方で栽培されるソーヴィニョン・ブランというと、まず頭に浮かぶ一般的なイメージはシャープな酸と硬質なミネラル。 しかし彼のソーヴィニョンは口に含むと予想に反してピーチ、メロン、アプリコットの芳醇な果実が拡がり、ソフトな酸が追従。なるほど、 シュール・リー (*1)を取り入れているのがうなずける。 上品と濃厚の間にある紙一重、絶妙のバランスの上に見事にピンポイント着地。上質なブドウ、完熟したブドウを厳しく選果していることがその味わいから見て取れる。 あるいは近年の温暖化の影響でロワールはもはや冷涼な気候ではなくなってきているのか、とも推測できそうなまろやかさ。 それにしてもこのクオリティで希望小売価格2,500円。 今年度のコストパフォーマンス大賞決定。 いや今年はまだ数カ月しかたっていないか。 月間MVP決定。2021年コストパフォーマンス大賞候補ノミネート決定。 飲食店の時短営業が続く昨今、家飲みワインとして強く、強くオススメ。 偉大な師匠のDNAを受け継ぎ、さらに独自の境地を切り開いていって欲しい。今は若手注目株と目されているピエール・オリヴィエ・ボノームだが、何年か経つとロワールの巨匠と呼ばれるようになるのかも。 20年前の師匠がそうだったように。 (*1)シュール・リー:白ワインの醸造においては、発酵後すぐに澱引きを行うのが一般的であるが、シュール・リー製法では、澱を残したままにしておくことによって、酵母から様々な風味や旨味を引き出す。ロワール地方のミュスカデがこの製法では最も知られているが、世界中でも局所的に採用されるケースがある。日本の甲州も、長年に渡ってシュール・リーが広く採用されてきた。 <ソムリエプロフィール> 長谷川 憲輔 / Ken Hasegawa 1969年 大阪生まれ 1990年 大学でフランス語を専攻。フランス、ボルドー大学留学中にワインの世界に触れる。 1992年 ワイン業界入り。商品開発、バイヤー、小売りなど流通全般に携わる 2006年 ふとしたきっかけでシンガポールに渡ることになり、ソムリエとして日本料理店に勤務 2010年 ふとしたきっかけで著名なシェフ、アンドレ’チャンに見いだされ、レストラン・アンドレの開店に伴いシェフ・ソムリエ就任。シンガポール歴代首相をはじめ、多くのVIPを接客。シンガポール未輸入のユニークなワインをフランスから直輸入し、自由な発想で組まれたペアリングは高い評価を得る。 ミシュラン・シンガポール二つ星獲得、World’s 50 Best Restaurants にて14位、Asia’s 50 Best Restaurantsにて 2位ランクインに貢献。 2017年 大阪に戻りフリーランスとして、ワインにとどまらず飲食業界を幅広くサポートする活動を開始 F&B Adviser to Restaurant MUME(台北) F&B Adviser to TAKAYAMA(京都) F&B Director to GOOD NATURE STATION(京都) その他、イベント企画、セミナー、講演など多数。飲食業界の発展を願いつつ活動中。

  • 百花繚乱の多様性 <コンテンポラリー・アメリカ 第三章>

    コンテンポラリー・アメリカという新たな潮流の勢力が増すほどに、直近の主流であるビッグワインは、無慈悲な批判の対象となることも多い。しかし、カリフォルニアを中心に洗練を重ねたビッグワインは、 一つのスタイルを達成するための栽培上、醸造上の方法論の確立という意味において、究極的に完成度の高いものだ 。事実、ビッグワインが隆盛を極めるにつれて、数多くの批評家たちから満点を勝ち取るワインが激増した。満点を取ったワインの総数という客観的な事実だけを見れば、その中心となってきたカリフォルニアは、世界で最も優れたワイン産地(筆者自身は点数制の意義には懐疑的だが)とすら表現しても違和感はないだろう。正確に数えたわけではないが、おそらく世界一と思われる満点獲得総数を達成できた要因が、 スタイルと方法論の圧倒的な練度 にあることは間違いない。

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