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SommeTimes’ Académie <18>(ワイン概論14:赤ワイン醸造2)

一般的な赤ワインの醸造フローを学ぶシリーズの第二弾となります。なお、日本のワイン教育においては、醸造用語としてフランス語を用いるのが今日でも一般的ですが、SommeTimes’ Academieでは、すでに世界の共通語としてフランス語からの置き換えが進んでいる英語にて表記します。また、醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまでも「一般論の範疇」とご理解ください。


試験後に忘れてしまった知識に意味はありません。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「記号」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「何を意味するのか」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。SommeTimes’ Académieでは、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「リアル」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。SommeTimes’ Viewをしっかりと読み込みながら進めてください



④ 主発酵(Alcoholic Fermentation)

梗、破砕を経て得たマスト(果汁、果皮、果肉、種子等の混合物)を様々な発酵槽に入れ、野生酵母(天然酵母、自然酵母、自生酵母、土着酵母、と様々な呼び方がありますが、どれも同じ意味)を利用した発酵の場合は発酵が始まるのを待ち、培養酵母を使用する場合はこのタイミングで添加します。ワインの発酵を担う主体となる酵母はSaccharomyces cerevisiae(サッカロミセス・セルヴィシエ)。この段階で、マストに含まれる糖分が、酵母の働きによってアルコールと二酸化炭素に分解されます。


発酵槽の主要なタイプは以下の通り。

1. セメント・タンク(中〜極大のサイズが一般的)

2. 樹脂タンク(小〜中のサイズが一般的)

3. ステンレス・スティール・タンク(中〜極大のサイズが一般的)

4. 木桶(中〜大のサイズが一般的)

5. 木樽(小〜中のサイズが一般的)

6. コンクリート・エッグ(中サイズが一般的)

7. 土器(小〜中サイズが一般的)


SommeTimes’ View

発酵槽は、それぞれに異なる利点があるため、木樽発酵=高品質という考えは極めて短絡的です。また、岩を削ったものや、牛革といった今では非常に珍しい発酵槽もありますが、衛生面での問題が大きく、古いから良いという考え方もまた危険です。少し感覚的ではありますが、ステンレス・スティール・タンクが最もクリーンでやや冷たい味わいに、コンクリート・タンク、コンクリート・エッグ、セメント・タンクは十分にクリーンに仕上がりますが、味わいには少し厚みと温かみが出ます。土器は衛生管理が難しく、十分にクリーンに仕上がる場合もあれば、極端に汚染された味わいになることもあります。味わいは、ニュートラルとされることもありますが、独特の滋味深い温かみが宿ると言えます。木桶、木樽を使用した場合は、より酸化的な発酵になりますので、酵母や微生物の代謝が促進され、複雑な味わいになると基本的には考えて大丈夫でしょう。しかし、その複雑な味わいが最終的にバランスの取れた味わいになるには、葡萄そのものに力強さが必要です。「樽の味しかしない」ようなワインは多々存在しますが、それらは葡萄に力が足りないか、樽の使い方が過剰(故意にそうしてるケースも多い)のどちらか、あるいは両方が原因となります。

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