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英語でワイン <1>

本稿より数回に渡って、英語でのワインコミュニケーションに関して新たな「Study」を開始する。


第一回となる本編は、何よりも重要な「心構え」から。


なお、本内容はよりワイン業界関係者に向けた内容となるが、海外旅行の際などプライヴェートでも役に立つ部分も大きいため、あらかじめご了承いただきたい。



0. 筆者の経験

筆者は19歳で単身渡米し、それから10年間をアメリカの東海岸(そのほとんどはニューヨーク)で過ごした。帰国子女の多い特殊な高校に通っていたとはいえ、私の英語力が最初から高かったわけでは全くない。当然、最初の数年は思い出したくもないような苦労をたくさんしたものだ。


今当時を振り返ってみると、若かりし頃の筆者に何よりも足りていなかったのは、英語力そのものではなかったのだと、確信している。


ニューヨークのレストランには、(今は厳しくなったので、そうでも無くなったようだが)必ずと言って良いほど、バックヤードで不法移民が働いていた。


その多くはメキシコ系移民で、英語力なんてものは皆無に等しい。日本で生まれ育った我々には想像もつかないほどの貧困の中で、彼らは皆、まともな教育も与えられてこなかった。


文字通り「決死の覚悟」で越境してきた彼らは、小さなアパートに数人で住み、朝から晩まで働き、時折メキシカンバーでコロナビールとタコスを片手に踊り、その収入のほとんどを母国にいる家族の元へと送金していた。


同じ職場で働いていたそんな「アミーゴ」たちの中には、立身出世したものもいれば、レストランで最も重要な裏方を任される存在になったものもいれば、ストレスで心が壊れてアルコール中毒から抜け出せなくなったもの、さらには(不法移民であったことから保険がなかったため)闇医者にかかって重大な医療過誤になり、感染症で若い命を落としたものもいた。


私はそんなアミーゴたちから、かけがえのないレッスンを多く受けたと思っている。


中でも何よりも驚嘆すべきは、英語力などゼロに限りなく近い彼らが、我々とコミュニケーションをとっていたことだ。


スペイン語なまりの超初歩的な英単語と、スペイン語そのものを(なぜか)駆使して、アミーゴたちは懸命にコミュニケーションをとり、レストラン・オペレーションの土台をしっかりと支えていた。


世界的にみても非常に高度な英語教育を受けているはずの日本人にはできないことが、アミーゴにはできていたのだ。


その違いがどこにあるのか。答えは明白だ。

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