ワインの世界において、「ヴィンテージ」という言葉は、主に3通りの使われ方がある。
1. ヴィンテージワイン、というように熟成を意味する使い方。
例:今日は記念日だし、ヴィンテージワインでお祝いしようか?
2. 2013年、のように特定の収穫年を意味する使い方。
例:2015年のボルドーは、○○○なヴィンテージだった。
3. (生産者が)その年の収穫作業や、収穫の開始を意味する言葉として使う場合。
例:もうそろそろ今年のヴィンテージだな。
今回は、2の使用法、つまり特定の年を意味する記号としての使われ方と、我々消費者側がどのように接していくのが良いかを考察していく。
グレート・ヴィンテージ
まず、グレート・ヴィンテージ、バッド・ヴィンテージという言葉が何を意味してきたのかを整理しておく。
1980年代後半頃から、アメリカのワイン評論家ロバート・パーカーJr.が影響力を増し始めたことによって、ヴィンテージの優劣という価値観に、変化が生じた。
それまでは、グレート・ヴィンテージとはつまり長熟型のヴィンテージであり、赤ワインであれば酸とタンニンの構造が強固であることなどが条件となっていた。
ロバート・パーカーJr.は、温暖で果実味の凝縮度は高かったが酸が少し緩かった1982年ヴィンテージのボルドーを、世紀のグレート・ヴィンテージとして高評価したことに象徴されるように、それまでの常識とは違う方向にグレート・ヴィンテージの指標を見出した。彼の絶大な影響力がピークに達していた1990年代~2000年代までは、熟度が高く、アルコール濃度が高く、濃縮した味わいのヴィンテージがより偉大なヴィンテージとみなされる傾向が生じた。