こんにちは。バルニバービの岩崎です。 今回は、ワインスクール講師としての視点からの内容でお送りします。 私は講師になってから、受験クラス以外にも初級クラスを担当させていただいてきました。 (現在は受験クラスと、テイスティングに特化した特別講座を担当しています。) 初心者の方をワインの沼に引きずり込む、もといワインの魅力にどっぷりはまってもらうことを生きがいに教壇に立っている私なりの考えを少しお伝え出来たらと思います。 資格取得に向けて勉強することはもちろん良いことですし、 一度体系立ててワインを学んでおくべきなのですが、 その知識を使わなければ意味がなく、意外とせっかく覚えたことを活用しきれていない方が多いように感じます。 でもそれは、資格取得をゴールにして詰め込み式で勉強してしまう(させてしまう)せいでもあります。 (講師として、日々そこの反省と葛藤はあり…) その中でも各国の州や地方ごとの固有品種は、試験勉強においては覚えるのが大変で毛嫌いされることがよくあります。 ですので、私はよく『飲んで覚えようシリーズ』として、 自分がテイスティングして質が高い(要は美味しい!)と感じた固有品種のワインの具体的な銘柄を生徒さんにご紹介しています。 ネットでワインは探せるとは思いますが、造り手のことまで勉強中の生徒さんが調べるというのは難しいでしょうし、せっかくなら美味しいものを飲んでもらいたいので…。 有名な銘柄や銘醸地のワインばかりでなく、せっかく勉強したなら、その土地の固有品種を飲んでみること。 そうすることでただの文字情報ではなく、愛着をもてたり、その土地のイメージが膨らんだりと、印象に残って覚えやすくなると思います。 それに、資格取得を目指してスクールに来てくださる方は良い意味でもワインの初心者で、そこからいくらでも世界を広げていける方ばかりなので、初期段階で勉強に疲れて、『情報量が多くて混沌としていてなんだか難しい』となってしまうのではなく、『色んなものがあって彩り豊かでなんて楽しいんだ!』と感じてもらうためのサポートが出来たらと思っています。 そして、資格取得後に実務に役立つように経験値を高め、選べるワインの幅を広げていく。 これもワインの教育における重要なことだと思っています。 エキスパートの方だって、ワインの選択肢を広げられるに越したことはないですよね。 じめっと暑い日にキリっと爽やかな白ワインが飲みたいとなったら、 ロワールのソーヴィニヨン・ブランももちろん素敵ですが、 “マルケのヴェルデッキオもいいかも” はたまた “サヴォワのジャケールという手もあるな” と選択肢がたくさん浮かぶとそれだけでもうワクワクしてきます。 これを体感してほしいのです。 誰だって知らないものには手を出せません。 だからこそ、まず勉強した品種から試していけばよいと思うのです。 せっかくワインを学ぶのですから、資格取得がゴールではなく、 その人の『ワインの世界』を広げてもらいたいなと常々思っています。 店舗に立たれる方は、自分のワインの世界を広げてお客様に色々なワインを提案することで、お客様のワインの世界を広げることができます。 日々サービスをされている方にとっては当たり前のことですが、 スクールでの教育からもそんな連鎖を造ることが、ワインの勉強のひとつのゴールなのではないでしょうか。
生産者:Punta Crena /プンタ・クレーナ
ワイン名:Riviera Ligure di Ponente Pigato “Vigneto Ca’da Rena” /
リヴィエーラ リグーレ ディ ポネンテ ピガート “ヴィニィエート カ ダ レーナ”
葡萄品種:Pigato 100% / ピガート100%
ワインタイプ:白ワイン
生産国:イタリア
生産地:リグーリア
ヴィンテージ:2019
インポーター:Monaca
参考小売価格:¥3,730(税抜き\3,400)
さて、今回ご紹介するのはイタリア リグーリア州の土着品種ピガートのワインです。 試飲会でアイテム詳細のデータを見ずにテイスティングをしていて、“はっ!”とさせられたことを覚えています。 個人的な好みとして冷涼感のある爽やかなタイプに惹かれるので、まずその青リンゴのようなフレッシュで清涼感のある香りに反応し、口に含むと意外と厚みがあり、ブドウのエキス感がたっぷりで香りの印象よりも飲みごたえがあります。 ほんのりと苦みと塩気をおびたミネラル感が心地よく余韻へと続いていく。 それこそ教本でしか見たことのなかった『土着品種』が、目の前に素晴らしいワインとして現れたことも印象的だったのだと思います。 リグーリアの地方料理であるジェノヴェーゼにはもちろんぴったりですし、蓼酢を添えた鮎の塩焼きにもこのワインのミネラル感が寄り添うことでしょう。 今年は例年よりも梅雨入りが早いようで、ジメジメした気候は苦手ですが、そんなときにこんなワインを飲めば気分は爽快になります。 どんよりした雨空も、これまで通りにはいかない世の中のモヤモヤも、美味しいワインで晴れやかにしていけると信じて。 ※ピガート種 熟成すると果皮にそばかすのようなものが出来るため、そばかす=ピーガ(リグーリアの方言)から、ピガートという名前が付けられた。 ヴェルメンティーノと同じ品種と言われているが、同族のようなもので同一品種ではない。 (インポーター資料より)
ピガートの畑
【プンタ ・クレーナ社について】
1400年代から Ruffino家はブドウ農園を経営。 その後1800年程からワイン醸造を始めている数少ないリグーリア州の正統派ワイナリー。 またオーナーである Paolo Ruffino氏は、リグーリアの土着品種であるPigato種をミラノ大学の醸造学部と提携して多種のクローンを混合していない Pigato種の苗木をうみ出した。イタリアソムリエ協会のリグーリア支部からも『リグーリア州推薦』とされる。
(インポーター資料より)
<ソムリエプロフィール>
岩崎 麗 / Rei Iwasaki
株式会社バルニバービ 飲料統括
1983年茨城県生まれ。一橋大学経済学部卒業後、様々なシーンをプロデュースできるレストランでのサービスに魅せられ飲食の世界へ。
2012年株式会社バルニバービ入社。現在90を超える店舗のワインリストを監修する。
一店舗一業態、というコンセプトのバルニバービに合わせ、ワインリストも店舗により異なる。誰でもネットで世界中のワインを手に入れられる時代だからこそ、ソムリエというワインのプロフェッショナルの視点でのセレクト、ブランド力や人気の品種にとらわれない提案をモットーとしている。
ワインスクール レコール・デュ・ヴァンの講師も務め、ワインの裾野を広げるべく精力的に活動している。
<株式会社バルニバービ>
1991年創立の飲食グループ。
■バルニバービという名前の由来■
幼い頃、誰もが一度は読んだことのあるスウィフトの「ガリバー旅行記」。その第3篇、第4章に出てくる島の名前、それがバルニバービです。そこには研究所機関が国王の命でいたるところに設けられ、様々な馬鹿げた研究が行われていました。キュウリから逆光合成により太陽エネルギーを抽出する方法、永遠エネルギー、不老不死、蜘蛛に織らせる織物、等々…。これらの研究は絶対机上の論でなければならない、実現は堕落であるといったものでした。ここでスウィフトは当時の頭でっかちの英国の風流を痛烈に批判しているのです。21世紀を目前とした今(バルニバービ設立当時)、スウィフトの提示した「バルニバービの教訓」を踏まえ、机上の空論ではなく、実体(アナログ)を伴った真の飲食ビジネスを推進するべく、あえてこの逆説的ネーミングを引用しました。