シャンパーニュにおけるグレートヴィンテージの考察 ①

ワインに関して良く言われるのが、グレートヴィンテージとオフヴィンテージの違い。

世界中を取り巻く天候や気候によってその年の出来を判断し、ワインと共に語られていく。 


勿論、私たちソムリエもこの評価を参考にし、ゲストから頼まれたワインをセラーから出すまでに、今までの知識と経験からグラスの形状や提供温度を導き出し、その溝を埋めるかのように情報をアップデートし記憶に刻んでいっていると思います。


シャンパーニュでも、近年では1990年, 1996年, 2002年, 2008年というように語り継がれる程のグレートヴィンテージがあり、実際数々の素晴らしいシャンパーニュに出会う事が出来ました。


正直、評価には諸説があり、生産者やワイン評論家がおっしゃっている事がソムリエの根幹にあるので、異論を唱えるつもりは全くございません。ただ、今回私の中でモヤモヤしているヴィンテージがあったので少し自論も含めてご紹介を。


"1995年"と"1996年"のヴィンテージシャンパーニュに関して


言わずもがな、1996年は素晴らしいヴィンテージです。この年は-20℃まで下がる地域があるほど冷え込んだ2月を迎えましたが、6月には最高の開花を迎え、9月の雨を乗り切り素晴らしい状態で収穫を迎える事が出来ました。Chardonnayの品質が特に優れていた年であり、酸の成熟度から1928年以来の、20世紀で最も偉大なヴィンテージになると期待されています


続いて1995年。4月〜5月に遅霜の影響でダメージを受けた地域もあったが、6月16日の開花以降順調に成熟してゆく。暑い夏と少ない雨によって酸の乗った熟度の高いブドウを収穫出来た年であり、古典的なヴィンテージとなりました。


1996年と1995年、どちらもブドウの成熟に関して素晴らしい状態であるのは間違いないですね。


現時点で20年以上経っているヴィンテージシャンパーニュですので、すべてを比較する事は難しいのですが、1996年はSALON(サロン)やPascal Doquet(パスカル ドケ)等、シャルドネが素晴らしい生産者に関しても"刺すような酸味"が抜けておらず、元々のブドウのポテンシャルが高くない生産者に至っては、酸味と熟成感がどちらも激しく主張しており、違和感を感じてしまうものさえありました


逆に、1995年飲み頃のピークが長く、私が在籍していたL'orgueil(オルグイユ)で感じた印象と現在抜栓して提供している印象に特段のズレが生じず、安心してアプローチ出来る印象があります


特にAndre Beaufort(アンドレ ボーフォール)の1995年は私の人生の中でもTOP 5に入る程感動した事を今でも覚えています。


その時のコメントを走り書きですが、記載しておりましたのでご紹介させて下さい。


" 輝きのあるゴールデンイエロー。粘性が強く果実の凝縮度が伺え、きめ細かい泡が規則的に続いている。

パティスリーに入ってきたようなフルーツフレーバーに甘いバニラ、バターやナッツの混在した状態。熟成からくるモカフレーバーも心地良い。抜栓直後から開いており親しみやすく、液体としての完成度が非常に高い。

力強い凝縮度の高いアタック。上品な酸と果実の甘さが鼻を抜ける。中盤からアフターにかけては芯のあるしっかりとした酸が骨格をつくり長い余韻につなげている。

勿論、今から楽しめる1本だが、10年後の変化が楽しみで仕方ない"


いやぁ…これを飲んだ時は正直カミナリが落ちたような衝撃を受けました。


Andre Beafortは元々個人的に好きな生産者でありましたが、パックヴィンテージでも飲み頃を捉えるのが非常に難しかったのです。


これは単に熟成の年数だけではなく、素晴らしいヴィンテージと素晴らしい生産者が組み合わさる事で、無限の可能性がある事を再認識出来た一例だと考えております。


その他にもシャルドネ100%のシャルル エドシックのブラン デ ミレネール1995であったり、王道のドンペリニヨン1995であったり、予想を遥かに越えてくる素晴らしいシャンパーニュに幾つも出会ってきました。


ワインは嗜好品ですし、ヴィンテージ一つで語れない事も多いと思います。

生産者の想いや保管状態等、あらゆる要因が重なって一つのワインが何年もの間熟成の時を経ているので、ゲストが(自分も)ワインを飲む際、最高の瞬間になるようソムリエも研鑽していかなければいけないですね。


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余談ですが、先日、お客様に提供したシャンパーニュが思いの他香りと味わいのズレが大きく…私の中でも納得出来なかったのでゲスト了承の下カラファージュしてみたら、ことのほか素晴らしい液体に変化し大満足でお帰りになられた事例がありました。


と、同時に様々な概念にとらわれず向き合って本当に良かったなぁと思った瞬間でもありました。


マニアックではありますが、可能性が感じられたので引き続きデータをとっていこうと思います。


もし、シャンパーニュのカラファージュに興味がある同志がいましたら、今度検証しましょう!未来の可能性に乾杯!!



< Andre Beaufort >

生産者:Andre Beaufort / アンドレ ボーフォール

ワイン名 : Grand Cru "Ambonnay" Millesime Brut / グラン クリュ アンボネイ ミレジメ ブリュット

葡萄品種:Pinot Noir, Chardonnay / ピノ ノワール, シャルドネ

ワインタイプ:Champagne / シャンパーニュ

生産国:France / フランス

生産地:Champagne / シャンパーニュ

ヴィンテージ:1995年

アルコール度数 : 12.0%

インポーター:Terra Vert

参考小売価格:¥40,000前後(2017年当時)


1969年よりシャンパーニュで一早くビオロジックを導入。一切の農薬を排除した葡萄栽培と瓶内2次発酵も天然酵母のみで行うなど、独自の手法から生まれる個性派なシャンパーニュメゾン。アンボネイに1.6ヘクタールとオーブ県のポリジィに4.5ヘクタールの畑を所有。


<ソムリエプロフィール>

安藤 修 / Osamu Ando

キンプトン新宿東京 / KIMPTON SHINJUKU TOKYO

Beverage Manager / Hotel Head Sommelier


1987年 東京生まれ。

2006年 日本大学文理学部体育学科 卒

サーヴィスの楽しさに開眼し、スポーツ関係のキャリアを諦め現在に至る。

ビバレッジに興味を持ったきっかけは、意外にもワインではなくコーヒー。

“Streamer Coffee Company”のラテア―トに感動し、本格的に学び始め、2014年にはレストラン業界では数少ないAdvanced Coffee Meister ( No.0101 ) を取得。

様々なレストランにてサーヴィス、ソムリエとして研鑽を積む。