和食とモルドバワインの親和性

私にとってのライフワークは、海外(国内)のワイナリーを訪問すること、生産者を招いてメーカーズイベントを開催すること、そして料理とワインのペアリングを研究すること。 この1年、それを揺るがす事態に戸惑いながらも、オンライン、時にはリアルの会で、皆様とワインを片手に旅を続けることが叶いました。 あらためてワインラヴァーズの熱い想いを知り、ワインのパワーを日々感じております。 さて、今回のテーマは急速に注目を集めているモルドバワイン。 今回は日本人が江戸時代から好んで食してきた「鰻の蒲焼き」とモルドバ土着品種との出逢いです。

モルドバワインとご縁を戴いたのは2006年。以来5回訪問しております。 日中は強い日差しが降り注ぎ、朝晩はぐっと冷え込む寒暖差。当時、キシナウ空港で目にしたのは免税店ではなくワインを試飲販売するワインブースのみ。 モルドバという国が「ワインカントリー」であることを実感した瞬間です。 農業国家であるモルドバの人々は、素朴で温厚な国民性。日本とは1992年より国交が続いていますが、新日家の方が多いことも肌で感じられます。 ワイン造りの歴史は古く、最初のブドウの樹は紀元前7000年に記録されています。今から5000年前には、各家庭でワイン造りが始められました。 産地はウクライナルーマニアに国境を接し、フランスのブルゴーニュとほぼ同じ北緯46-48度の間肥沃な土壌のため、化学肥料や農薬を使用しない自然な農法で栽培。気温の日変化が大きい大陸性気候で、年間を通して雨が少ない気候に恵まれています。 ワインの製法は、ブドウ本来のポテンシャルを引き出すスタイルで、クセがなく飲み疲れしません。 また、アロマが華やかで酸は穏やか。料理にそっと寄り添う食中酒に相応しいと言えます。 特に、繊細な味わいの和食と相性が良いのが魅力です。 昨年は、2月にモルドバワインと鰻の会、4月以降はオンラインにて様々なジャンルの料理とペアリング研究会を開催しましたが、参加者から寄せられた言葉は「料理と合わせたいワイン」でした。 本題のワインのお話をいたしましょう。 Negre 2016 / Fautor Wineryは、モルドバの土着品種フェテアスカネアグラ(黒い乙女の意)とララネアグラ(高貴な黒の意)のブレンドで、2018年にモルドバベストワインに選ばれたハイエンドの赤ワイン。 2種の黒ブドウには、それぞれ個性があり、わかり易く例えるとメルローピノノワールのような違いがあります。 現在、モルドバで栽培されているブドウ品種は73%が国際品種ですが、近年世界中から土着品種(固有品種を含む)が注目されています。 【Tasting Note】 外観は、輝きのあるルビー色。 ざくろ、ブラックベリー、プルーンなどの熟した果実のアロマとカカオ、スパイスのニュアンスが感じられ、滑らかなタンニンと口当たりが心地よく余韻が長い。 モルドバ土着品種のブレンドの最高峰ワイン。 2018年モルドバベストワイン受賞。国内外28の賞を受賞。 それでは、鰻との相性を見てまいりましょう。 和食の世界には「両味(りょうあじ)」という言葉があり、日本人が好む「甘辛い味」のことです。 鰻の蒲焼きのタレは、まさにこの味で「醤油」と「味醂」などで作られます。 醤油とピノノワールの親和性は、「赤ワイン醤油」という言葉があるほど認知されていますが、煮詰めた醤油にはもう少し重厚な甘さが欲しいところ。 また、鰻に無くてはならない山椒の風味はスパイスと、タレの焦げた香り樽由来のバニラ香と調和します。 2種のブドウをブレンドすることで、互いに味わいを補完しつつ相乗効果を生み出しています。 最後に鰻の食感との相性はどうでしょう。 鰻を舌に乗せた瞬間、ふわっと溶ける特有の食感には「シルキーな舌触り」が重要なポイント。タンニンがざらつくタイプのワインは、その繊細さを消してしまいます。 今回は「鰻の蒲焼き」にフォーカスしましたが、「鰻の白焼き」に合わせるワインは品種も色調もガラリと変わります。 続きはまたの機会に。次回、皆様とお逢いできる日を心待ちにしております。

生産者 : Fautor Winery /ファウターワイナリー ワイン名 : Negre /ネグレ 葡萄品種 : Feteasca Neagra /フェテアスカネアグラ70%、 Rara Neagra /ララネアグラ30% ワインタイプ : 赤ワイン 生産国 : Moldova /モルドバ 生産地 : ヴァルル ルイ トラヤン

ヴィンテージ : 2016 インポーター : ユウ・コーポレーション 参考小売価格 : ¥7,200


【フェテアスカネアグラ Feteasca Neagra】 「黒い乙女」の意味を持つ、赤ワイン用土着品種。 プラックベリーなどの黒系フルーツ、カカオやスパイスの香り、タンニンが豊富で厚みがあり熟成にも向いている。樽との相性もよく、高品質なワインとなる。長期保存に適しているワインも多く、近年は国際コンクールでも評価が高くなっている。

【ララネアグラ Rara Neagra】 「高貴な黒」の意味を持つ、赤ワイン用土着品種。

ストロベリーなどの赤系フルーツとバニラの香り、柔らかなタンニンが酸を包み込み、華やかなワインになる。ルーマニアでは、バベアスカネアグラ Babeasca Neagra と呼ばれる。 【モルドバのブドウ品種】 白ワイン品種 65% 赤ワイン品種 35% 国際品種 73%、コーカサス品種 17%、土着品種 10%

【Fautor Winery】

20世紀後半に作られた家族経営のワイナリー。2017、2018では、モルドバ内全ワイナリーの中で、最も多くの国際コンクールにて賞を受賞。代表するワインNegreは、2018年モルドバベストワインに選ばれた。モルドバ南西部ヴァルル・ルイ・トライヤンに位置し、80mから450mの高低差ある3か所の畑を所有する。Fautorはラテン語で創造者を意味し、醸造家である母親の優しく洗練されたワインが印象的である。


<プロフィール>

秋山 まりえ / Marie Akiyama ステラマリー株式会社 / Stella Marie Co., Ltd. 代表取締役 ステラマリー☆ワイン会主宰 東京都出身の江戸っ子。 総合商社を退職後、2006年に出逢ったモルドバワインが転機となり資格を取得。J.S.A. ソムリエ、WSET® Advanced Certificate 2011年8月より4年間、ワインバーにてソムリエールとして経験を積む。 2015年7月 ステラマリー株式会社 設立。代表取締役CEOに就任。 2015年9月 第1回ステラマリー☆ワイン会を開催。(次回176回目)

2019年7月「ワイナートWinart」にて、日本人女性として初のフランス版ミシュランガイド一つ星を獲得した神崎千帆シェフ(Virtus・パリ12区)とのパリでの対談が連載される。

2020年1月「日刊ゲンダイ」にて、日本人初のフランス版ミシュランガイド三つ星を獲得した小林圭シェフ(Restaurant KEI・パリ1区)のレストラン批評が掲載される。

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