京都から東京に戻り、はや一年。
思えば東京に戻って早速足を運んだのが、ラヴニールというインポーターのG.パクネスの試飲会でした。
ウイエ(*1)してるシャルドネに、していないサヴァニャン、プールサールもいい!そしてヴァンジョーヌ(*2)!!
彼女の作るヴァンジョーヌは深いコクと甘みに柔らかい酢酸、奥行きがあるのに、それを全く感じさせないアルコール感が最高に美味しい!
叶う事なら全ていただきたいのですが、ここ数年の人気もあり当然割り当てです。笑(文句ではありません!むしろ生産者さんが評価されている事に嬉しく思っています!)
(*1)ウイエ:熟成中の補酒のこと。酸化をコントロールするための重要な工程。
(*2)ヴァンジョーヌ:ジュラ地方の特産ワイン。発酵が終了したサヴァニャンを、ウイエをせずに、樽に入ったまま放置することによって、強い酸化的特徴が生じる。驚異的に長命なワインとしても知られている。
何としても飲みたいし、ゲストの皆さんにも飲んでもらいたい…。
目の前にある、この間取ってきた干し椎茸の香りを嗅ぎながら、彼女のヴァンジョーヌへの抑えられない欲求が限界に達したので、「自分で作ってみよう!」と思いたちました。その実験報告を、今回はさせていただきたいと思います。
Marutaに戻ってから、半分趣味のようにフィールドワークにハマっています。
勝手に自然界の師匠と呼ばせて頂いている葉山の長谷川さん(さかな人代表)に低山地帯の可能性を見に同行させて頂いたことで更にその可能性を感じてしまい、嬉々として地面を見つめて徘徊する事に息子よりも童心に帰り楽しむ日々を過ごしています。
そして待ちに待った季節がやってきました。
春の野草や新芽など、優しい苦味のある食材達に至る所で出会うことができます。
更に梅の花が散り、桜の花が咲き始める頃にはアミガサタケ、桜が散る頃にはハルシメジ、GW明けにはヤマドリタケモドキやタマゴタケ…想像しただけで益々ヴァンジョーヌが欲しくなります!!!
もう我慢できません。
で、レシピというか試した内容ですがG.パクネスのサヴァニャン・ウイエを200mlと冒頭の半野生化していた(全長10cm)椎茸をシェフが乾燥させていたのでそちらを一つ拝借し、真空パックをして経過観察してみました。
1日目
15℃に設定したセラー内で一晩置いてみました。
お!ヴァンジョーヌ好きには欠かせないきのこの香り(マツタケオール)を感じる!!
旨味のグアニル酸はまだ入っていない為、酸味と馴染みが悪く酸味が気になる。
2日目
シェフに聞いたところ、椎茸の旨味を移すには5℃前後に冷蔵して置いたものを、出汁を取るときに最適な温度の60℃に温める事でグアニル酸を抽出できるそうなので、冷蔵庫で半日冷したのち、湯煎で60℃にして二十分ほど温めたのち、セラーで一晩置いてみました。
3日目
きのこ臭が強く入り、旨味由来の甘みが飲んでから1.5秒後程で感じるようになることで、初日に感じた酢酸の酸味が穏やかになりだいぶ良い感じになってきました。
4日目
もう少し酸化させたいので、ボトルに移してコルクをしてセラー保存。
5日目
だいぶ馴染んできて、個人的には好きなアフターの余韻ですが、きのこ臭ではなく椎茸臭を感じるくらいの香りが入ってしまい、シェフには嫌いといわれてしまいました。笑
6日目(イマココ)
セラーでコルクをしたボトルに入れて酸化をさせているが、どうにも後半部分のボリュームに欠けるため、ラタフィア(*3)を1滴。
だいぶまとまった気がするものの、G.パクネスのヴァンジョーヌには勿論及ばない。でも、他のきのこや海藻を使ったコンブチャを入れるなど、素材を変えて挑戦したいと思う程個人的にはワクワクしています。
(*3)ラテフィア:糖度が非常に高い葡萄ジュースにブランデーを添加して作られる、リキュールの一種。
注)勿論貴重なワインを台無しにする恐れもあるので、自己責任でお願いします。
今回思いつきでやってみましたが、更なる可能性を感じてしまい楽しみが増えました。
真面目な話、料理とワインを合わせる時のエラーを極力少なくする際のトレーニングや、ワインでは中々に難しい日本酒のような超ブーストさせるペアリングの可能性が広がるなど、なぜペアリングするレストランに在籍しているときに気づかなかったのかと少し後悔しました。
勿論おすすめはしませんが、もし実践されたもの好きの方がおりましたらその際にはぜひ結果を外山に教えて下さい。
次回ヴァンジョーヌを作ろうvol.2 もしかしたらあるかもしれないので
みなさんよろしくお願いします。
そしてラヴニールさんのパクネスのリリースレター、今年も心待ちにしています。
今回使用したワイン
※勿論そのままで飲んですごく美味しいワインです!
個人的には抜栓後コルクをして10日ほどセラーに入れた時が最高に好きです!!
生産者:Les Granges Paqueness / レ グランジュ パクネス
ワイン名:Les Pierre Savagnin Ouillé / レ ピエール サヴァニャン ウイエ
葡萄品種:サヴァニャン
ワインタイプ:白ワイン
生産国:フランス
生産地:ジュラ
ヴィンテージ:2019
インポーター:ラヴニール
参考小売価格:¥5,500 (税別)
<ソムリエプロフィール>
外山 博之
Maruta
1981年 埼玉生まれ 都内を中心にバーテンダー、サービスマンとして勤務後、 2012年Grisマネージャー就任。ナチュラルからトラディショナルまで幅広いセ レクトのワインを中心にしたペアリングとそのアルコールの構成要素を表現し たノンアルコールペアリングが好評を得る。
2019年よりシェフのJacob kearを中心としたレストランプロジェクトの京都 LURRA°にドリンクディレクターとして加わり、2020年のミシュラン一つ星獲得に貢献。
2021年 3月より調布のMarutaへ戻り、庭のハーブなどを用いたドリンクの開発など、新しいドリンクの提供の形を考案中。