運命の別れ時かも、サルデーニャ

最近思う。


もしかしたら、イタリア、サルデーニャ島のワインは未完の大器なんじゃないかって。


よく比較されるシチリアはメディアにも頻繁に登場し、レストランでもしばしば目にする。彼らは独自のキャラクターを身につけ、まるで華のある個性派俳優のようだ。それに対してサルデーニャワインは少々地味で、「自分不器用ですから」オーラが付きまとう。周囲の目を全く気にしないのは、一体なぜなんだ。


今気になってしょうがないサルデーニャについて調査すべく、サルデーニャ人二人が切り盛りするお店にてインタビューを敢行。その内容を紹介したい。


店に通されると並ぶのはPane carasau (パネカラザウ)と生ハム、サラミ。Pane carasauはセモリナ粉で作った生地を薄くのばして一回焼く。すると生地がぷくーっと膨らむ、それを2枚に割ってまたまた香ばしく焼きあげたもの。現地ではチーズとサラミと一緒に食べる。

カラザウはパリパリという意味があり、これに味がついたものはPane Guttiatuと呼ばれている。もはやこれはサルデーニャの国民的スナックで、一度食べ始めると手が止まらない。サルデーニャではポテチが売れないというのも納得だ。ちなみに皿替わりに使われているのはコルク板。サルデーニャはポルトガルに次ぐ、コルクの生産地でもある。


Pane carasau (パネカラザウ)


次に用意されたのはPesce a Scabecci(白身魚のエスカベッシュ)。

よく使用される魚はイワシ。ヴィネガー、ハーブ、柑橘のエッセンスが特徴的。サルデーニャ風は、特に爽やかなミントやウイキョウが効いていて心地よい。少し酸と塩気が強めなのは、よく汗をかく温暖な島の環境に由来するものらしい。

良く冷やしたVermentino di Galluraが呼んでいる。


サルデーニャのソウルフードといえばFregola(アサリのフレーゴラ)。

直径約2mmの粒粒パスタ。ロースト具合の違いから、色合いのグラデーションと触感がおもしろい。ゆでてアルデンテになった状態で、アサリの旨味を染み込ませていく。そして仕上げはサルデーニャの特産品Bottarga(ボッタルガ)、ウマいにきまってるじゃないか。

イタリアでは大皿でボンっと提供。どうやらサルデーニャの子供たちは一番最後にとるらしい。一番底の方にあるアサリの出汁がとことん染み込んだ部分を奪いあうそうだ。そういえばサルデーニャにはVernaccia di Oristanoという有名な酸化熟成ワインがあるな。意外にイケるかもしれない。


Fregola(アサリのフレーゴラ)


締めはPecorino sardo DOP。羊の乳で作った塩気旨味たっぷりのチーズ。実はPecorino Romanoと呼ばれる有名なチーズもロマーノとは名ばかりで、ほとんどがここサルデーニャで作られているらしい。Pecorino alla piastra(鉄板で表面を溶かし、焼き上げたペコリーノ)にSapa di miele(煮詰めたワインを加えた蜂蜜)をかけて食す。そういえばサルデーニャのあの赤ワイン、Cannonau di sardegnaを忘れてはならない。


なぜこんなに美味しいワインと食事がありながら、サルデーニャワインは日本であまり見かけないのだろうか。こう質問を投げかけると、サルデーニャ人の友人が語ってくれた。

自分たちのおじいちゃん世代は、サルデーニャの説明をしたがらない。かつては観光客が来ることさえ嫌っていた。それはサルデーニャが島国で、様々な民族から侵略を受けてきた歴史が心の奥底に刻まれているからかもしれない。ビジネスに関してもクローズしていて、外交が苦手な民族性。そもそも外側に自国のものを売りたいとも思っていない。もともと生産量はさほど多くないから、島内で十分消費できる。大酒飲みのサルデーニャ人は、ビールも大好き。サルデーニャビールIchnusa(イクヌーザ)も8割は島内消費される。


でも少しずつ変化は起こっている。CaphiceraカピケーラやSidduraシッドゥーラは今風の凝縮感がありつつ、Vermentinoのアロマを最大限に引き出した作り方をしているし、Palaパーラ、Argiolasアルジオラス、Sella moscaセッラモスカも土着品種を大事にしながら、新しい試みにどんどんチャレンジしている。今やワイナリーの世代交代もどんどん進み、外へ外へと彼らの意識は向いてきている。今が運命のわかれどき。土着品種が注目を浴びる今日この頃、サルデーニャがこの風に乗って世界に進出するのか、それとも島に残るのか、今後も注目していきたい。



生産者:Siddura /シッドゥーラ

ワイン名:Maia /マイア ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ・スーペリオーレDOCG

葡萄品種:Vermentino /ヴェルメンティーノ

ワインタイプ:白ワイン

生産国:イタリア

生産地:サルデーニャ州ガッルーラ地区

ヴィンテージ:2019

参考小売価格: 4,900円


取材協力

tokidoki Slow Coffee & Wine Therapy

@ tokidoki_nishinomiya


<ソムリエプロフィール>

塚元 晃 / Akira Tsukamoto

レストラン相楽 / マネージャー兼ソムリエ

アカデミーデュヴァン大阪校 / 講師


International A.S.I. Sommelier Diploma取得

第7回イタリアワイン・ベスト・ソムリエコンクールJETCUP 優勝

イタリア共和国駐日大使館公認イタリアワイン大使

Wines of Portugal Japanese Sommelier of the year 2016 第3位

第2回ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン ソムリエコンクール2018 優勝

現在も世界中のワインと出会うべく勉強中


<レストラン相楽>

港町・神戸の多様な文化を、世代や国籍を超えて相楽(あいたの)しめるように。そして近隣の方々からも必要とされるコミュニティとなるよう、目利きされた兵庫・神戸の商品を提供し、神戸を切り口に多様な食文化を楽しめる発信基地を目指す。

レストラン 相楽 | THE SORAKUEN 旧:相楽園会館 | 神戸を代表する日本庭園 相楽園に佇む迎賓館 (the-sorakuen.jp)