2022年9月27日4 分
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのがSommeTimes’ Académieシリーズ。初心者から中級者までを対象としています。今回は、スパークリングワインの世界的スタンダードであるシャンパーニュの醸造フローを学んでいきます。
醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまでも「一般論の範疇」とご理解ください。
試験後に忘れてしまった知識に意味はありません。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「記号」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「何を意味するのか」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。SommeTimes Académieでは、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「リアル」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。
なお、煩雑なシャンパーニュ醸造のシリーズにおいては、なるべく理解を容易にするために、通常のSommeTimes’ Viewではなく、POINTとして要点を押さえていきます。
また、本シリーズでは、あくまでも「シャンパーニュ」の醸造法に関して述べており、「シャンパーニュ製法」「トラディショナル製法」等、他産地で採用されているものとは、規定が異なることが多いので、注意してください。
アッサンブラージュを終えたワインを瓶内二次発酵の段階へと進めるために、ティラージュと呼ばれる作業が行われます。
ティラージュは、リキュール・ド・ティラージュという糖液の添加、オリ下げ剤の添加、ルバンと呼ばれる酵母菌液の添加、そして打栓という4段階の工程に分かれます。
余談ですが、多数の添加物を用いるこの工程はシャンパーニュ製法にとって避けては通れない工程であることから、亜硫酸以外の添加物（例え天然由来のものであっても）を徹底的に嫌うナチュラルワインのエクストリーム派の中には、全てのシャンパーニュをナチュラルワインとしては認めないという意見もあります。
1. リキュール・ド・ティラージュ
POINT
・認可材料：ショ糖、濃縮果汁、MCR、果汁、発酵中の果汁、ワインとなります。
・糖分：テンサイ由来のショ糖、サトウキビ由来のショ糖、濃縮精製ブドウ果汁（MCR）の3種が主流です。
・希釈：リザーヴワインで希釈することが一般的です。
2. オリ下げ剤
POINT
・アジュヴァンと呼ばれるベントナイトが主成分のオリ下げ剤をリキュール・ド・ティラージュに混ぜます。ルミアージュ（次回言及）の際にジャイロパレットを使用する場合は添加が必須とされますが、ピュピトルを使用する場合は必須ではありません。
3. 酵母菌液（ルバン）
POINT
・酵母密度の均質化と添加量は、最終的な瓶内二次発酵によるアルコール濃度の上昇幅と炭酸ガスの生成量に直結するため、極めて厳密な調整がなされます。
4. 打栓
POINT
・スティール製、もしくはステンレス製の王冠を用いるのが一般的ですが、一部のシャンパーニュではコルクで打栓する場合もあります。また麻紐で縛って固定する古典的な方法をフィスラージュと呼びます。
リキュール・ド・ティラージュ、ルバンを添加し、打栓を終えたワインは、瓶内二次発酵の段階に進みます。この工程で生まれる味わいは、シャンパーニュ製法の根幹をなしていると言えるほど重要なものとなります。
POINT
・地下カーヴ：瓶内二次発酵中のワインは、12度以下に保たれる地下カーヴにて行います。この温度以下を必須とする理由は複数ありますが、最も重要なものとしてはMLFを発生させないということが挙げられます。 他には、酸化を極力抑えること、急激な発酵にならないようにコントロールすることなどが挙げられます。
・アルコール濃度の上昇：瓶内二次発酵によって、ワインのアルコール濃度は1.3~1.4%ほど上昇します。この上昇分を計算した上で、最終的に12.5%程度になるように、収穫時の潜在アルコール濃度を含め、原酒のアルコール濃度が厳密に調整されています。
・瓶内シュール・リー：瓶内二次発酵の最中、及び発酵終了後は瓶内で実質的なシュール・リーが行われます。この際に、酵母の代謝によって、アミノ酸、脂質、香気成分が変化し、アミノ酸量にいたっては、一般的なワインの2~3倍にまで増えます。シャンパーニュと旨味が結び付けられることが多いのは、この工程があるからです。
シャンパーニュ製法編最終回となる次回では、ルミアージュからドサージュまでの最終工程を追っていきます。