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- 未来のワインリストを考える(前編)
2022年2月、 Wine spectator誌のRestaurant Awards (ワインリスト賞)にエントリーするため、ワインリストのスペルチェックやメンテナンスを行っておりました。 Wine spectator’s Restaurant Awardsは、1981年にスタートした、40年以上の歴史を持つAward。 毎年10ヵ国以上、約2,800のレストランからのエントリーがあり、申し込むには、以下の必要書類を全て英語での提出を求められます。 1. 現在のレストランのリスト(※ホテルなど複数のレストランがあるような施設でも1レストランのリストに限られる。) 2. レストランのディナーメニュー 3. レストランのレターヘッドに、ワインの保管条件、在庫、価格、さらにこちらのワインプログラムに関係があると思われる情報を記載。 4. レストランの写真(最大3枚)※オプション 5. ワインディレクター、又はソムリエの顔写真 ※オプション これらを記載した後、オンラインでも紙面での郵送でも、どちらからでも申し込める。 審査後は3段階で評価されます。 【評価】 Award of Excellence 90種類以上のアイテム数をセレクトしており、価格も含めてレストランのテーマにあった厳選された高品質な生産者のワインを品揃えしている。目の肥えたワイン愛好家を満足させるのに十分な選択肢を提供。 Best of Award of Excellence 350種類以上のアイテムをセレクトしており、優れたプレゼンテーションとともに幅広い産地からのワイン、トップ生産者ワインのヴィンテージ毎の品揃え。サービスチームやレストランにしっかりコミットメントしており、ワイン愛好家のディスティネーションにふさわしいワインリスト。 Grand Award ワインプログラム品質に妥協のない情熱的な献身を示すレストランに与えられる、最高の賞。1,000種類以上の品揃えがあり、トップ生産者ワインのヴィンテージ毎の品揃え、成熟したヴィンテージワインのコレクション。お食事のメニューともしっかりと調和が取れており、最高レベルのワインサービスを提供するレストラン。 ( ※2021年の評価で97レストランが受賞。日本国内ではゼロ。) その他、受賞したレストランは毎年の8月号のWine Spectatorに掲載されまして、 以下の情報もHP上で記載してもらえます。 1. Wine Director/やSommelier 2. ワインリスト(エリアやタイプも含めた)強み 3. セレクションの数やトータルのストック数 4. 読者のための3段階の価格帯カテゴライズ 5. 持ち込みについて 6. 料理のタイプと価格 Restaurant Awardにエントリーするにあたり、ベンチマークすべきレストランが必要と判断し、NYを始めとするいくつかのレストランをいくつかリサーチしました。 Eleven Madison Park (NYの三つ星であり、Grand Awardを保持している。) Chef: Daniel Humm Wine Director: Watson Brown 2021年5月、肉や魚を使わない植物性ベースのコースを提供する。と発表。 5,000種類、22,000本のストック数。世界最高峰の圧巻のワインリスト。 酒精強化や甘口まで含めると、グラスで飲めるワインが70種類以上。 ワインリストの並び順で見てみますと、ハーフボトルから始まり、スパークリングワインよりも先に NY Wineのページが先に記載されている。 (※フランスの地方のレストランでも、地元で作られるワインからページが構成されることが多い。) NY WineのページではFinger LakesのHermann J. Weimer(ハーマン・J・ウィーマー、輸入元 GO-TO WINE)を中心にバックビンテージなどを揃えている。 世界中のワインが集結している印象。 ※梁世柱さんが言う、見るべきワインリストとしても知られているレストラン。 Per Se (NYの三つ星であり、Grand Awardを保持している。) Owner: Thomas Keller Wine Director: Michel Couvreux 1,900種類、9,000本のストック数。 フレンチ・ランドリーを合わせて2つの三つ星をもつ唯一の米国人オーナーシェフの経営するレストラン。 酒精強化や甘口まで含めるとグラスで飲めるワインが35種類以上。 とにかく見やすいリストであった。 シャンパンを例に例えると、 マルチヴィンテージやヴィンテージなどの大きなカテゴリーがあり ①生産者→②キュヴェ名→③畑名→④格付けという順で表記されている。 例)Jacques Selosse, Extra Brut, “ Les Carelles,” Le Mesnil-sur-oger, Grand Cru, (02,2020)NV ※国内外の多数の有名レストランやホテルのワインリストを見て感じたのは、上記の番号順で統一されているレストランが少ないという点。意外にみんなバラバラだったりするもので、シャンパーニュやフランスワインは「生産者」から表記していたのに、ニューワールドになると「②キュヴェ名」からスタートさせているなど。 また、デゴルジュマンの表記まで記載されているのは、ワインに詳しいお客様にとってはかなり有益な情報だと思う。スタッフに無駄な質問もしないで良いし、悩む時間が減るのは有り難い。 Per Ceの統一感は凄く参考になりました。 Geranium (コペンハーゲンの三つ星であり、Grand Award) Owner Chef: Rasmus Kofoed Wine Director: Soren Ledet 3,450種類、11,500本のストック数。 2021年のWorld’s 50 Best Restaurants No.2、 2022年からは「ミートフリー」と公表している。 シェフのラスムス・コンフォード氏は、ボキューズドールでも、1位、2位、3位を全て受賞した唯一のシェフ。 共同経営のマネージャー兼ワイン・ディレクターのソーレン・レドット氏はMaster Sommelier Candidate, Advanced Sommelier CMS。 今一番行ってみたいレストランの一つ。 王道を進みながら、シェフ、ソムリエともにコンペティションやMSに挑戦などを行いながら、このワインリストの完成度には憧れを抱きます。 全てのDRCワインを合わせるとその数なんと50種類以上!!! ぜひ、ご覧頂きたい。 【新カテゴリー?】 数カ所のワインリストを見て、「Sustainable Wine[selections]」というタイトルでアイテムを纏めているレストランがあったことにも気づいた。 どのようなワインが並んでいるのか見てみよう。 Champagne Waris-Larmandier White Alice et Olivier de Moor Domaine Tempier Zind Humbrecht Yellow Jean François Ganevat Orange Gravner Radikon Rose Lucy Margaux Red Frank Cornelissen Dard&Ribo *カリフォルニアのレストラン Brennan’s [Grand Award] 「Sustainable selections」というカテゴリーから一部抜粋。 日本でいう「ナチュラルワイン」、と言われる分類に入ると思われるワインがラインナップ。 さらに、世界のレストランをリサーチして気づいたことは、 ①世界を牽引するレストランがヴィーガンやミートフリーという方向に進んでいる。 ②そもそも、資金力が違う? ③ワインリストの左側にBIN Numberが記載されている。 (国内では、私がネット上で見る限りではコンラッド東京ぐらいでした。) ※MSではテキストブックに記載されているセオリー。 ④sustainableのカテゴリーがあった。 以上のような要点も含めて、オーナーやシェフ、経営に食のトレンドと様々な影響を受けるであろうワインセレクション。現場のソムリエ視点で、「未来のワインリスト」について考えていきたいとおもいます。 前編の最後に、sustainableカテゴリーに属するワインをレヴュー。 アレクサンドル・バンがやっぱり好きです。 生産者:Alexandre Bain アレクサンドル・バン ワイン名:Pierre Precieuse/ ピエール・プレシューズ 葡萄品種:Sauvignon Blanc / ソーヴィニヨン・ブラン ワインタイプ:White / 白 生産国: France / フランス 生産地:Loire / ロワール地方 ヴィンテージ:2018 インポーター:野村ユニソン 希望小売価格:5,500円(税込) 以下、有名なAOCに対するお話や、テロワール哲学に情報はインポーターのHPからご覧ください。 http://unison-wine.com/vignerons/alexandrebain/ 1日目(6月12日)満月2日前 アプリ:When Wine Tastes BestではNo 開けたての、最初にグラスに注いだ時のテンションに生命力を感じる。 集中したレモンやグレープフルーツの薄皮のような苦味を連想させるような香りに、口に含むと力強いアタック。 引き締まった酸に力強い余韻。 全体的に硬い印象。過去のヴィンテージのものよりも、ストラクチャーがしっかり感じられ、以前まで受けていた「丸みのあるネクターのような柔らかさはない。」 2日目6月13日)満月1日前 アプリ:When Wine Tastes Bestで前日に続き同じくNo 小慣れた印象へ。 ラフランスのような香りと、小石のような鉱物っぽいニュアンスを受ける。 口の中のストラクチャーは全体的に開いてきましたが、まだまだ硬く力強いです。 飲み頃はいつなのか? 個人的な印象としては、後10年寝かせられるストックスペースと資金力をつけたいです。笑 石原在庫、残り1本。涙 私のエビデンスのない感覚的なテイスティングコメントが誰かのお役に立つのかどうかはわかりませんが、ご参考になれば幸いです。 ちなみに2022年5月某日、京都『KOKE』のシェフソムリエ大山さんにペアリングで提供して頂きました同じワインは、最高に飲み頃で美味しいと感じました。笑 ワインって一生分からない生き物だから面白い。 エビデンスないですけど、ワインって注ぐ人によって味が変わるって本当なんですよ。 〈ソムリエ プロフィール〉 石原 大輝/ Daiki Ishihara 1986年 沖縄生まれ バーテンダーからキャリアをスタートして福岡と東京のレストラン、そして地元の沖縄に戻りホテルやレストランでシェフ・ソムリエやマネージャーとして研鑽を積む。 2018年 Le Monde [Freelance Sommelierとして独立] 、J.S.A. Senior Sommelier取得。 2019年 A.S.I. Diploma取得。 2021年3月 自身がオーナーを務めるDowntown Donuts(ワインが飲めるドーナツ屋さん)が 沖 繩 市 にオープン。 〈Le Monde〉 Freelance Sommelier、Beverage consultantとして活動。 沖縄のレストラン、ラグジュアリーホテル、鮨屋、ステーキショップやワインショップという様々なジャンルの店舗のワインリスト作成、ペアリングの提案、スタッフ教育にマネージメントなどを行う。沖縄のレストランやドリンクシーンをワールドクラスにする事を理念として日々奮闘中。 Mail address: ishihara_vin@icloud.com
- 再会 <16> ピラジンの何が悪いのか
Latta, Cabernet Franc “Benovolent” 2021. ¥5,500 ワインプロフェッショナルと一口に言っても、様々なタイプの人がおり、当然のようにそれぞれ異なったフィロソフィーをもっている。 私自身は基本的には非常にオープンなタイプだが、ある特定の考え方に対しては、頑なな態度を見せることも少なからずある。 例えば、ブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュ、バローロ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、リオハ、プリオラートといった世界最高峰の銘醸地に対して、全くリスペクトをもっていないタイプのワインプロフェッショナルとは、どうも馬が合わない。 意外といるものだ。カリフォルニア至上主義とか、ゴリゴリのナチュラル至上主義とか、なかなかに偏った人たちが。 ワインの世界は広いから楽しいのに 、と何とももどかしい気持ちになる。 それが本人の「好み」なのであれば、何の問題も無いのだが、ワインのことを他者に伝える立場として、「カリフォルニアのピノ・ノワールは、ブルゴーニュよりも遥かに優れている。」なんて堂々と発言してしまうのは、流石にどうかと思う。 それと同じような、というか、少し程度は下がるが、 「カベルネ・フランから青い風味がしたら、低クオリティ。」 なんて言い放つ人にも、なかなか困ってしまう。
- SDGsはボジョレーヌーボーを肯定するのか
SommeTimesでは、たびたび SDGsとワイン産業の関連性 について取り上げてきた。 その中で、 とある疑念 が筆者の中で蓄積し続けてきた。 それは、 ワイン産業は本質的には農業である 、という観点から生じた疑問であり、あらゆる産業だけでなく、地球の環境保全と人類の関係性にも複合的に対応した SDGsとはどうしても交わりきれない部分があるのでは 、という仮説だ。 なお、 本ショートジャーナルの趣旨は、SDGsを否定することでも、検証の対象となるボジョレーヌーボーを否定することでも、特定の生産者を非難することでもない 。 むしろ筆者は、SDGsに関して 「何もしないよりも、何かをした方が絶対に良い」 という立場を取っている。 どうか、誤解なきよう。 *SDGsそのものに関しては、今更説明の必要もあまり無いとは思うので、復習も兼ねて、 外務省のパンフレット をお読みいただければと思う。 SDGsとボジョレーヌーボー SDGsが掲げる17の目標の中で、直接的にワイン産業と関連しているものは限られるが、関連性の高いものから、一つずつ実情と照らし合わせながら検証していく。 目標1【貧困】 ボジョレーは決して裕福なワイン産地ではなかった。ワインの価格から考えれば、フランスの中でも底辺近くに位置していた産地とも言える。そんな産地にあって、 危機に瀕していた多くの農家を救った のが、ボジョレーにあるいくつかの巨大ワイナリーであることは、紛れもない事実だ。そして、大量の販売が見込めるボジョレーヌーボーが、多くの零細農家を養ってきたのも間違いない事実である。現在、産地としての名声が数十年前よりかは遥かに高まった中で、以前の「救い」が「継続的搾取」に変化していないとは言い切れないと思うが、この辺りは「視点」によって意見が異なるため、一方的な意見を押し付けるのはナンセンスだろう。(巨大ワイナリーに葡萄を提供して得る対価に、農家自身が満足しているのであれば、他人が口出しをするようなことではない。) 少なくとも、貧困を防ぐという取り組みにおいて、ボジョレーヌーボーは確かな実績を残し続けている。 目標6【水・衛生】 気候変動の本格化によって、旱魃が深刻化しているワイン産地は、世界各地に少なからずある。そのような産地では、飲み水を含む人の生活用水よりも、葡萄栽培に優先して水が使われた場合、極めて深刻な問題となる。しかし、平均年間降雨量が700mmを超え、降雨期も一年を通してある程度分散しているボジョレーにおいては、水の過剰使用が問題になることは、今のところ無いだろう。フランスを含む、ヨーロッパ伝統国では、灌漑に関する規制がすでに緩められているが、現状ではあくまでも「緊急時」に限った規制緩和である。
- ミネラルって言葉、簡単に使ってない?
ソムリエあるある。テイスティングコメントで困ったときの「ミネラルの香りがします」。(特にワイン勉強したての初心者に多く見られる。)なんのこっちゃわからない香りをミネラルの香りと逃げるのはどうなんだろうと最近よく思う。そこで我々が何をミネラルと表現しているのか理解するために、まずはミネラルを示すワードをピックアップしてみた。 香り部門 石灰 火打石 貝殻 鉱物 海、磯 鉄 スモーク 味わい部門 塩味 噛み応え(テクスチャー) いったいこれらは何に由来しているのか? ルーロやコシュ・デュリ(共にブルゴーニュ・ムルソーの有名生産者)の マッチを擦ったときの香り は、 還元的な硫黄化合物とこうばしい樽香が調和したときの奇跡の産物 であろうし、 貝殻などの香りはシュール・リーと呼ばれる製法、長期の澱との接触 によって生まれている。ただこのように説明できるものは極めて例外的で、ミネラルと表現されるものの多くが、テロワール、気候条件、ブドウ品種、土壌、栽培、醸造のどこに由来するものなのか、 論理的に説明できないものばかり だ。 特に皆様に認識していただいていただきたいのは、 土壌とワインのミネラル感が直接的に結びついているものではない ということ。いまだに石灰質土壌にブドウが植えられているから、石灰の香りがしていると信じているソムリエは少なくない。 アレックス・マルトマン 著 「Vineyards, Rocks and Soils」(2018) では以下のように述べられている。 1. 根は固体や岩石や土壌の複雑な成分を吸収しない。 2. 地質学的物質は一般的に味は無く、どんな場合でも無臭である。 どうやら 土壌の中のミネラルと、ワインの中に感じるミネラルには 直接的な相関関係はなさそう だ。 それなのに我々がミネラルという言葉を使いたくなるには、何かの要因があるはずだ。 私たちがとある香りを、ミネラルと定義づけられる香りだと認識する場合、それはその物質の香りと同様の香りを含んでいる可能性はある。特定のワインではスモーキーな香り(火打石)に寄与するベンジルメルカプタンや、石灰に寄与するカリウムやマグネシウム系成分が少なからずあるのかもしれない。ただ鉱物に香りや味があることは、化学的には確認できていないし、ワインのアロマホイール(※2022年JSAソムリエ教本)にはそれ様の香りは記載されていない。 ではどのようにミネラリティを表現すればいいのだろうか。 そこで我々がミネラルの香り、味わいがします、と発言するときの傾向を分析してみた。 ① フルーティな、野菜っぽい、オークが効いた、花のような、スパイシーな、といった表現とは一切関係がないものを表現するとき。 ② 酸の引き締まった質感を表現したいとき。 ③ 「フルーツを超えたもの」で、口の中に感じるワインの余韻を長くするものを表現するとき。 ④ 軽やかでフレッシュで透明感のあるスタイルのワインと伝えたいとき。 ⑤ ワインの還元的要素をポジティブに伝えたいとき。 上記を分析すると我々は文字通りミネラルが入っていると思っているわけではなく、石や、岩、金属、そしてミネラルを想起させる詩的な特徴について言及することによって そのワインのスタイルを表現するときに頻繁に用いている と思われる。 とすると、シュール・リーや還元を示すワードは別として、 我々はミネラルという言葉を使用する場合はミネラルそのものに言及するべきではなく、Fruity, Floral, Spicy, Earthy, Pungent, Oxidizedなどを含め、Mineralityと前述の各要素の強弱や構成割合、関連性をコメントしながら、そのワインの本質に迫っていくのが正しいテイスティングな方法ではなかろうか 。 上記を意識しながらギリシャ、サントリーニ島の白ワイン、アシルティコをテイスティングしてみた。 生産者:Domaine Sigalas/ドメーヌ・シガラス ワイン名:Santorini Assyrtiko/サントリーニ アシルティコ 葡萄品種:Assyrtiko /アシルティコ ワインタイプ:白ワイン 生産国:ギリシャ 生産地:サントリーニ島 ヴィンテージ:2021 参考小売価格: 5,200円 外観 中程度からやや濃いレモンイエロー。 ワインの脚はグラスの縁をゆっくり流れ、粘性はかなり強い。 若々しく輝きのある外観だが、秘めたる凝縮感を感じる。 香り 第一印象は強く華やかだが、若さからなのか、抜栓したてからなのか、少し抑制がきいている。 強いフルーツ香は熟した柑橘、マイヤーレモン、マンダリンオレンジ、そして木なりフルーツは若々しい青リンゴ、洋梨。 華やかな香りはフレッシュレモングラス、レモンの花、オレンジの花のよう。 若干のカルダモンや白胡椒、フレッシュオリーブオイルのようなオイル香、かすかな砂岩のようなミネラル香がよいアクセントになっている。第一アロマが支配的で、フローラルな香りが華やかさを際立たせる。 味わい アタックはかなり強い。おそらく熱を伴う高いアルコール感と、果実の密度によるものであろう。横に広がるボリューム感がすばらしい。飲んだ時には香り同様のフルーツの熟した印象。オイリーなテクスチャー、フルーツの熟度や高いアルコール感は力強い、豊かなボディを作り出す。 酸は非常にしっかりと感じられる。クリスピー、マウスウォータリングな酸が口中を引き締め、余韻に繋がっていく。そしてオレンジピールのような心地良い苦味と、かすかな塩味がさらに余韻を引っ張る。 結論 フルーツの熟度やアルコールの高さ由来の、口中でもたらされる豊かで広がりのある味わいがあり、凝縮感、味わいがコンパクトに詰まっていて、密度の高さが感じられる。 味わいにエネルギッシュな活力を感じ、余韻の心地よい塩味はギリシャの青い海と太陽を連想させる。ブドウが育った環境の産地特性を完璧に表現した、クオリティーの高いワインである。 ミネラリティについて ギリシャサントリーニ島の クルーラ仕立て (地表近くにとぐろを巻くように仕立てる方法)でつくられたアシルティコは強い酸味とミネラリティが特徴というのが、普遍的な評価である。今回ミネラルの表現を絡めたテイスティングには絶好のアイテムと考えたのだが、ただただ余韻に感じられる塩味ばかりにフォーカスするとこのワインの本質を表現しきれない。 一般的にミネラリティを強く感じるワインの傾向として下記があげられる。 ① フレッシュで柑橘系のニュアンスがあることが多い。 ② 酸が強い。 ③ オークを使うことでミネラリティがマスクされる。 ④ 赤ワインよりも白ワインで顕著である。 確かにこのワインは上記の条件を満たしているのだが、透明感のあるエレガントなミネラリティなスタイルのワインといわれるとそうではない。確かに余韻の塩味は特徴的ではあるが、本質は温暖な気候、豊富な日照量に起因するエネルギッシュなワインであるということ。ミネラリティという一言を主張しすぎるとダメなワインな典型的な例だと思う。 最後に ミネラリティとは、実際のワインがもつ香りや味わいなどの官能的特徴の組み合わせによってなりたっている。そのうちのいくつかは、品種と場所の組み合わせに由来するし、農法や醸造方法も影響しているかもしれない。土壌からグラスまでの道のりは私たちが想像しているよりもはるかに複雑なものだと認識しておく必要がある。 これで安易に「ミネラルの香りがします」は使えなくなったな。 <ソムリエプロフィール> 塚元 晃 / Akira Tsukamoto レストラン相楽 / マネージャー兼ソムリエ アカデミーデュヴァン大阪校 / 講師 International A.S.I. Sommelier Diploma取得 第7回イタリアワイン・ベスト・ソムリエコンクールJETCUP 優勝 イタリア共和国駐日大使館公認イタリアワイン大使 Wines of Portugal Japanese Sommelier of the year 2016 第3位 第2回ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン ソムリエコンクール2018 優勝 現在も世界中のワインと出会うべく勉強中 <レストラン相楽> 港町・神戸の多様な文化を、世代や国籍を超えて相楽(あいたの)しめるように。そして近隣の方々からも必要とされるコミュニティとなるよう、目利きされた兵庫・神戸の商品を提供し、神戸を切り口に多様な食文化を楽しめる発信基地を目指す。 レストラン 相楽 | THE SORAKUEN 旧:相楽園会館 | 神戸を代表する日本庭園 相楽園に佇む迎賓館 (the-sorakuen.jp)
- 奥深く粋な、スイスワインの世界
SommeTimesでは、私が粋(Iki=生=活)と感じるワインを色々と紹介させていただきたいと思っております。 以前の SommeTimesのコラム (オンラインサロンにアーカイヴがありますが、Web版でも特別掲載中)でも、スイスワインの話題をとりあげたことがありました。その時紹介したのは、“ プティット・アルヴィン ”というスイスを代表するブドウ品種でした。それに対して今回紹介したいのは、 “ アミーニュ ” というちょっとマイナーなブドウ品種。でも知っていて損はないです。 何故なら「 日本人の舌に合っている 」って思うから。 それから日本の食事にも。 今回はスペシャルレポートとしての掲載のため、ある程度必要なことは書きますので少し長くなります。あまり聞いたことのない品種についてですが、ワインがお好きな方でしたら、必ずや面白がってくださると信じて書きましたので、ぜひ楽しみながら読んでください。 ワイン生産国、スイス この話しをする前に、スイスワインの簡単なおさらいを。 スイスは人口860万人、国土は九州よりちょっと大きいくらい。ヨーロッパのほぼ中央に位置し、平地は国土の1/3しかない。スイスワインの歴史は古く、その始まりは紀元前にも遡るといわれる。スイス国民にとってワインはなくてはならないアルコール飲料で、生産量もそこそこ多い。スイスワインの中には、リリース価格1本が10万円級のワインだって存在する。 日本は世界的に見ても、様々な国のワインが入手できるワイン輸入先進国。それなのに、そんな日本においても、スイスワインは殆ど見ない。「スイスにもワインってあるの?」という日本人が殆どだろう。ワインのプロでも、スイスワインを口にしたことがないという人間に沢山会った。むしろ話題にすらならない。一度飲んでもらえたらその良さを感じていただけるワインが沢山あるのに、目に触れる機会がない。それをとても残念なことだと思ってきた。 まぁ確かにほぼ流通してないのだから、機会が限られるのも仕方ない。ただよく調べてみれば、日本にもわずかながら輸入されており、かなり厳選した優良な(または面白い)ワインが入ってきている。 例えば、 ・メゾン・カレーのピノ・ノワール:Domaine de La Maison Carree ・アンリ・クルション:Domaine Henri Cruchon ・ヴァレンティンのワイン:Vinigma ・ウイユ・ド・ペルドリ:Oeil de Perdrix ・新進気鋭のサンペロ:Clos de Tsampehro ・マリー・テレーズのワイン:Chappaz ・「スイスのロマネ・コンティ」と呼ばれているようなワインもあるし:Weingut Gantenbein ・上記のGantenbeinと産地・スタイル・価格が共通したようなワインもある:Weingut Donatch ・ルイ・ボヴァール: Domaine Louis Bovard ・レイモンド・パコとそのお子さんのワイン:Domaine La Colombe ・シャトー・ラ・バティ:Chateau La Batie ・そして今回のジェルマニエ:Jean Rene Germanier キリが無いのでこの辺で(記載は順不同)。 このレポートを読んで、是非ネットでポチっとして欲しい。 もちろん日本未入荷の凄いワインだってある。 では、なぜ生産量はそこそこあって優良ワイナリーも沢山あるのに、ここまで日本でスイスワインが流通せず、且つ知られてないのか。実は これは日本だけの話じゃなく、世界中で同様の状況にある 。なぜって、 スイスで生産されてるワインの殆どをスイス人が自分たちで飲み干してしまっているから (笑)。そもそもスイスは、世界でも有数のワイン消費国なのだ。その一人あたりのワイン消費量は世界で大体5番目くらい。しかも自国のワインだけでは足りず、消費量の65%を海外からの輸入ワインに頼っているというのだから、どれだけ飲むのか想像には難くないだろう。 それに、 スイスには海がない 。おまけに 山岳地帯 なので、 流通においてかなり難しい環境が揃ってしまっている とわかる。以上のことから、生産者からしてみれば、スイス国内で消費してくれるのだから、大変な思いまでしてわざわざ外の国に運ぶ必要がない。輸出されているワインは、その生産量の2%足らずだという。なるほど、これでは日本に回ってくるはずもないわけだ。そんな状況だから、まだまだスイスワインを楽しんでいる人は少数派。ということでスイスワインを先取りしてみてはいかがか?! スイスの生産地 さて、肝心のスイスワインだが、ワイン大国に四方を囲まれているのだから、その品質も悪いわけがない。面白いのは、その隣接するワイン大国に、文化や言葉はもちろん、ワインのスタイルもかなり影響を受けているという点。西のフランス語圏には最も有名なヴォー州とヴァレー州があり、南のティチーノはイタリア語圏、北のエリアにはドイツ語圏があり、それぞれ仕上がるワインには、どこかその隣国との共通点を感じさせられる。 このようにいくつかの産地があって、それぞれに異なる固有のスタイルを生み出しているから実に面白い。 各産地をみてみよう。 スイスにワイン産地は幾つかあれど、まずおさえなければならない産地は ヴォー州とヴァレー州 (添付地図左下)だろう。両方 フランスに隣接してる産地 だけど、ヴォー州が湖の影響を強く受けている産地なのに対して、ヴァレー州は山あいの産地という違いがある。スイスのワイン産地の特徴として、圃場(ほじょう)のほぼ全域が山あいの斜面にあるため、機械化は不可能な条件下でつくられている場合が多いが、この2つの産地もその例に漏れない。 ヴァレー州は、全体には赤ワインの生産量の方が多い産地(特に ピノ・ノワール )。そしてブドウ栽培面積5,000haはスイス最大のAOCであり、スイスワイン総生産量の3分の1がヴァレー州で生産されている。夏は暑く冬は寒い、そして昼夜の寒暖差も激しく、スイスアルプスで最も高い山があったり、4000m級の山々も50を超えるほど存在する。その理由(気温と山)からヴァレー州は州全体でみれば“スイス国内でも一番降雨量の多い”地域の一つなのだとか。 しかし、これって不思議じゃないですか?!だって降雨量が多い産地なのに、スイス最大のワイン生産地って?! これはなぜかといえば、先述した、降雨量が多い話しはあくまで州全体の平均のことであって、実はブドウ畑があるローヌ渓谷沿いの標高約700mの傾斜地は“ 特殊な微気候 ”になっていて、雨が少なく乾燥しているという。ヴァレー州には凄い山々があるわけで、そうした山々の降雨量は多いだろう。しかし湿気を帯びた空気は山頂を通過して乾燥し、ブドウの成熟を促進する有名な暖かい風“ フェーン ”が吹くことで、ブドウはかなりの恩恵を受けている。おかげで霜のリスクがなく、このブドウ栽培エリアに限り晴天が多い上、年間降雨量は600mm未満で、なんと「 その部分だけがスイスで最も乾燥している 」。成長期に2,000時間以上の日光を浴び(フランスのボルドーとブルゴーニュが丁度2000時間といわれてるので、それよりも若干多いくらい)、昼夜の寒暖差もあってゆっくりと果実を成熟させられることから、ブドウ栽培に適する理想的な区域となっている。 その上、多様性に富んだ土壌から、幅広いブドウ品種とユニークなワインを産み出す。 ジャン・ルネ・ジェルマニエ 今回は、そのヴァレー州のワイナリーをご紹介する。 「 ジャン・ルネ・ジェルマニエ (Jean Rene Germanier)」はスイスを代表するトップワイナリーであり、120年以上の歴史をもつ。現在3代目のJean-Reneとその甥のGillesが主となりワイナリーを運営している。 純粋なもの造りへの飽くなき探究心のもと、最先端の革新的製造技術、自然への愛情により、ワインを芸術的な領域にまで高めている 。そして醸造から瓶詰めまでの作業には細心の注意をはらいつつも、あまり介入はしないという主義。またSDGsが騒がれる遥か以前から、 サステイナブルなワイン造り に取り組んできたパイオニアでもある。 何より造られるワインを飲んで欲しい。この珠玉のワインはなんとラッキーなことに日本にも少量が輸入されている。 シャスラでも、プティット・アルヴィンでもないブドウ品種。 ジェルマニエは様々なブドウ品種を植えている。とりわけスイスワインを語る上でなくてはならないブドウ品種“シャスラ”は、当然ジェルマニエでも造っていて、もちろん飲んで欲しいワインではあるが、シャスラはあまりにも多くが語られているのでここでは割愛する。 前回のコラム で紹介した品種“プティット・アルヴィン”は、個人的にジェルマニエを代表するワインだと思っているので、もしまだの方はお試しいただきたいし、そのコラムも読んで欲しい。で、今回紹介したいのが“アミーニュAmigne”というブドウ品種。世界でも珍しい品種で、このはなしを皆さんにぜひ聞いて欲しい。 カメレオンのような品種? このアミーニュはとても面白い品種。実は“ カメレオン品種 ”と呼ばれている。 ドライな辛口タイプから極めて甘いワインまで、変幻自在に味わいを表現することができる のだから。こうしたブドウ品種が他に何かあるのかって考えても、オーストリアの“グリューナー・ヴェルトリーナー”とか、あと少しくらいしか思いつかない。しかもこの品種、殆どココでしか造られていない。 アミーニュの全栽培面積は 世界でわずか40ha強 。極めて希少なブドウ品種で、 ほぼすべてがスイスのヴァレー州にしかない のだとか。そのうちの約30haがヴェトロ村。これを栽培する生産者はほんの数軒で、その半分以上をジェルマニエが造っている。つまり、このブドウ最大の生産者ということだ。と同時に、アミーニュの発展に尽力した生産者だともいえる。 文献によれば、アミーニュは古代スイスの品種で、おそらくローマ人によってヴァレーに持ち込まれたとされていようだが、それほど注目をされることがなく今に至る。数件の生産者しかいないのだから、それもそのはずだ。ただここへ来て徐々に、ヴァレーの忘れられた地場品種の大切さを重視しようとする機運が高まっているとも聞く。そんな中、地域の伝統を重んじるジェルマニエの理念と取り組みは、忘れかけられたこの地の歴史あるブドウ品種を再発見することに貢献してきた。アミーニュは、その最たる例といえる。 スイスには200を超える地場品種があるといわれ、多彩な個性をうみだすことに成功しているが、アミーニュはどうかというと、バラ房で通気性がよいため、腐ることなく樹の上にぶら下がったまま乾燥し、水分が抜けた状態を保ち、年を超えた1月まで収穫を待つこともしばしば。こんなに晩熟させる例は他になかなか無い。干し葡萄化したいわば“ パスリヤージュ ”のような状態(ヴァレーでは flétris フレトレ、枯れた、と呼ばれる)を作り、アルプスの強い日差しを浴びることで糖分が高まり、仕込まれたワインには複雑な芳香をもたらす。これをどのタイミングで収穫するかによって、出来上がったワインは面白いほど違ったスタイルに変幻するのだ。ここがアミーニュの真骨頂だと思う。 また最近のDNA検査では、シャンパーニュ地方の品種プティ・メリエPetit Meslierと密接に関連していることが明らかになっている。 これによりシャルドネの親グーエ・ブランGouais Blancの家族ということが判明した。 3つのタイプ アミーニュは、さまざまな甘さのレベルでそれぞれ素晴らしいワインとなるが、2005年までは法的な表示の区別がなかった。 現在ヴェトロ村のアミーニュのラベルには蜜蜂(Abeilles=Bee)マークが示され、その蜜蜂マークの数で甘み(残留糖度)を示していることになっている。 それは3段階になっていて蜜蜂の数が多いほど甘くなる。 写真のように蜜蜂の数で甘みの度合いを表示 ------------------------------------------- 甘み標記の基準は以下の通り 1 Abeilles (sec「辛口」)=残糖8g/L以下 2 Abeilles (moelleux「中甘口」)=残糖9〜25g/L 3 Abeilles (doux「極甘口」、またはfletris「枯れた」またはliquoreux「甘い」)=残糖25g/L以上 ------------------------------------------- Amigne de Vetroz 2 Abeilles 生産者:Jean Rene Germanier / ジャン・ルネ・ジェルマニエ ワイン名:Amigne de Vetroz 2 Abeilles / アミーニュ・ド・ヴェトロ ・ドゥ・ザベイユ 葡萄品種:Amigne / アミーニュ ワインタイプ:白ワイン 生産国:スイス 生産地:Valais / ヴァレー州 インポーター:やまきゅういちスイスワイン 参考小売価格:¥4,400 今回ご紹介するワインは真ん中の“2 Abeilles”なので中甘口(微甘口)となる。収穫時期を違えることと、発酵をコントロールすることにより残糖の量を調整して甘みを決める。ジェルマニエのアミーニュは、ヴェトロの丘にある数区画のブドウ畑から収穫される。2 Abeilles のブドウは、糖度 100〜150°Oe(エクスレ) の間に収穫される。スチール製とステンレス製の槽で残糖度がおよそ 15g/l になるまでアルコール発酵され、その後瓶詰めまで、バトナージュを施されつつ、これらの槽の中で澱の上で熟成される。 樹にぶら下がったまま枯れる(乾燥し完熟する)ヴェトロのアミーニュの房 (ちなみに、ジェルマニエにおける辛口は、 アミーニュ・ド・ヴェトロ グランクリュAmigne de Vetroz Grand Cru の名称でリリースされており、9 月の末にブドウの収穫が行われる。その後、コンクリート槽とステンレス槽で温度コントロールのもと、全ての糖分がアルコールに変換されるまで発酵される。 極甘口は“ ミティス・アミーニュ・ド・ヴェトロ MITIS Amigne de V ét roz” という名称でリリースされており(日本未入荷)、糖度約 150°Oe に到達する 1 月まで、ブドウの樹にぶら下がったまましなびていくのを待つ。150°Oe はドイツTBAの基準くらい。それから残糖度が約 120 g/l になるまでアルコール発酵される) 写真のワインは“MITIS” 極甘口のワインで参考商品(日本未輸入)のハーフボトル テイスティングノート 辛口のタイプはヴィンテージにより強い酸を感じる場合もあるが、紹介している“半甘口タイプ”にそれはなく、ある程度の酸があってもそれに相応しい甘みが覆ってくるためとてもバランスが良い。適度なコクがあってリッチ、丁度みりんのようなとろみ。 香りには完熟したネーブルやマルメロ、みかんの外皮、甘くなった洋梨のような香りと蜜っぽさ、あとは菩提樹の茶などがあったり、なんとも口溶けがよく、トロッとしたオイリーなテクスチャー、優しさと奥ゆかしさ(この辺りが実にヴァレーの白ワインぽい)、デリケートなタンニンが微かな苦みの余韻を伴う。 こんなワインのフードペアリングとして 最初に「日本人の舌に合う」と書いたけど、実際どういうことなのか? まず日本食といっても幅が広すぎる。でもこのワインにはあまり鉄分を感じないため、その意味で日本の食材にマッチすると思っている。それに、口に含んだ時の柔らかさと中庸さも日本の家庭料理全般に上手く合ってくれるだろうし、昨今飲み手がドライ志向に向いている中で、こういった半甘口も逆に面白いと思っている。優しさと奥ゆかしさも日本の風土に根付いた料理に良いのでは。(最近驚いたことに一つに、CIVCシャンパーニュ委員会の報告で、日本で今急激に売り上げを伸ばしているのがドゥミ・セックなのだとか。一見日本人の志向が辛口に傾いているように見えるが、そういう面だけではないという表れともいえる。) 具体的には、肉じゃがみたいなのでもいいし、脂の乗った魚、米(ごはん)、みりんを使った料理、京風っぽい料理、揚げ物、スパイス系、中華系、などあげたら枚挙にいとまがない。 カツレツとかえびマヨ、それから豆腐(に塩をかけてオリーブオイル)にこのアミーニュをぜひ試して欲しい。意外に思えるフードペアリングとして納豆とか。何しろ汎用性の極めて高いワインであることは間違いがない。 もちろん日本食だけではないけど。。 どうでしょう?! 世界中にはその場所にしか何故か生息せず、プロも聞いたことがないような“地場品種”っていくらでもあるけど、その正体は、あまり特徴がないとか、一般に受け入れられにくい味すじだったり、そのうち忘れられる場合が殆ど。しかしアミーニュはどうか?? とても興味深い。 様々なタイプに変幻し、豊かで果実味に満ち溢れ、しかも人を虜にするようなアロマ。他の地場品種でここまで長く語りができるブドウ品種は殆ど思いつかない。 ※ イキ(粋=活=生)なワインとは自分的に、 粋(イキ)=「イカしている」「BadassとかCool(ヤバイ,渋い,やんちゃな)」ワイン 活(イキ)=「活力のある」「活気に満ち溢れた」「活き活きとした」ワイン 生(イキ)=「生き生きとした」「生の」「今の」「旬の」情報またはワイン のことをいう <ソムリエプロフィール> 藤巻 暁 / Akira Fujimaki 1966 年、新潟生まれ。ワインバーを併設した東京 渋谷の東急百貨店本店に て、ソムリエ兼カヴィストとして勤務。大学在学中からワインに魅せられ、世界のワイン 産地を周遊。その後飲食店やワインバーでの勤務を経て現職。現在は、東急百貨店と並行 し、ワインスクール講師、レストランのワインリストの作成、従業員の教育などコンサル タント業や、ワインイベントの企画などの活動をしている。
- 藤巻 暁の粋なワイン <3>【再掲】
本コラムは、7/5日掲載予定の藤巻暁ソムリエによるスペシャルレポートと関連した内容のため、オンラインサロン版SommeTimesのアーカイヴから、特別に再掲しております。 生産者:Jean Rene Germanier / ジャン・ルネ・ジェルマニエ ワイン名:Petite Arvine / プティット・アルヴィン 葡萄品種:Petite Arvine / プティット・アルヴィン ワインタイプ:白ワイン 生産国:スイス 生産地:Valais / ヴァレー州 インポーター:やまきゅういちスイスワイン 参考小売価格:¥4,400 このコラムでは、私が粋(Iki=生=活)と感じるワインを色々と紹介させていただきたいと思っております。 スイスのワイン、好きでたまに飲むのだが、美味しいのでもっと色々と飲んでみたい。白ワインの爽やかなのが多くて、これから段々と暖かくなってくるから尚更だ。しかし日本では選択肢の幅が少なくて、どこにでも置いているってものではないところが玉に瑕。あまり馴染みがないのはそんな理由で、前々回の藤巻のコラムで紹介させていただいたカナダのワインよろしく自国消費がほとんどで、輸出は僅か2%程度 (殆ど欧米)、それで経済が廻っているスイスのワイン産業では、わざわざ船で輸出とか、面倒な手続きなどせずとも、それなりに成り立っていることを考えれば、日本のようなファーイーストにまで届けようという考えには及ばないのかもしれない。 でも我々としては、ナイスなワインを飲んでしまうと、もう一度お目にかかりたくなる。 かなりいいスイスワインってあるし、有名な銘柄がいくつもあるのに、色んな理由で日本で容易に入手できないものが多い。そもそも手に入らないものを紹介しても意味がないのだが、今回ご紹介する”ジェルマニエ”は、スイスワインを牽引するような存在のワイナリーだが、なんと偶然にも日本にインポートされてるから嬉しくてたまらないし、紹介させていただかなければならない。 スイスのワイン産地は数カ所あるけど、フランスに隣接してるヴォー州とヴァレー州が知られてて、今回ご紹介のジェルマニエはヴァレー州のワイナリー。この産地がスイス最大のワイン産地で、全体の3分の1が生産されている。ブドウ畑は、フランスに続くローヌ渓谷沿いに 100 キロ以上にわたり標高約 700m の傾斜地に広がっており、ドウの成熟を促進する暖かい風フェーンがあり、晴天が多く年間降雨量が 600mmと乾燥していてブドウ栽培に適している。また、多様性に富んだ土壌により、幅広いブドウ品種から多種多様でユニークなワインが産み出される。 ジェルマニエでも様々なブドウ品種を植えている。とりわけ、スイスワインを語る上でまず最初に出てくる品種であり、スイスで最も絶賛される品種といえば“シャスラ”だが、このジェルマニエでも当然造っている。それはそれはとても綺麗で豊かなワインなので、紹介したくてたまらないのだが、それはまた別の機会にさせていただくとして、今回是非紹介したいのは、ここが造る“プティット・アルヴィン”に尽きる。この生産者に限っては、 個人的にシャスラ以上にこのワインを推したいと思っている。 プティット・アルヴィン。シャスラほど知られてはいないが、これもまたスイスを代表するブドウ品種で、歴史を遡ると古く、しかもここヴァレー州でのみほぼ独占的に栽培され、他の国で栽培されている例が極めて少なく、わずかにイタリアやフランスの一部で少量栽培されているに過ぎないという、完全な固有のスイスのブドウ品種なのである。果皮が厚く、造り方によっては、エキスのあるたっぷりとした感じにつくることもでき、極辛口から甘口のワインまでもつくることができるブドウ品種。 ジェルマニエのこのワイン、若くして飲めば、心地よいピュアでのびやかな酸味が爽やか で、重くなくスムースで口溶けがよく、それほど癖がない。フレッシュなカリンやグレープフルーツ、白桃、メロンのような香りが複雑で、ハーブっぽさも加わって飽きないのがいい。少しだけ硬質的な風味は、ストーンフルーツを思わせるところからなのか、ワイン全体を引き締めてくれている印象のワイン。熟成させて楽しんでる人は、おそらくあまりいないと思うけど、熟成感とともにふくよかで、オリーブオイルのようなリッチさがでて、かなり興味深いものになる。 食卓のお伴に最適だといつも思う。家庭料理全般に悪くなく、軽い前菜やフレッシュ野菜のサラダに、ほどよい酸味のドレッシングでもいいし、出汁の効いた味わいの料理など幅広く合ってくれる。 試す価値ありのワイン、一度ご体験いただきたいです。 <ソムリエプロフィール> 藤巻 暁 / Akira Fujimaki 1966 年、新潟生まれ。ワインバーを併設した東京 渋谷の東急百貨店本店に て、ソムリエ兼カヴィストとして勤務。大学在学中からワインに魅せられ、世界のワイン 産地を周遊。その後飲食店やワインバーでの勤務を経て現職。現在は、東急百貨店と並行 し、ワインスクール講師、レストランのワインリストの作成、従業員の教育などコンサル タント業や、ワインイベントの企画などの活動をしている。
- 出会い <15> 常識を書き換えたワイン
Arnot-Roberts, Sauvignon Blanc “Randle Hill Vineyard” 2020. ¥5,300 圧倒的な才によって、 その産地のイメージを一変させてしまう 。 そんな造り手が、世界各地に僅かながら存在している。 その最たる例の一つは、カジュアルワインというイメージがこびりついて離れなかったフランス・ロワール渓谷の小産地プイィ・フュメを、ソーヴィニヨン・ブランの聖地へと押し上げた故ディディエ・ダグノー。 ダグノーの場合は、純粋な品質面での劇的な進化でもって世界を驚かせたのだが、少し違った角度から、イメージが一新されるパターンもある。 例えば、カリフォルニアの アルノー=ロバーツ がそうだ。 アルノ=ロバーツが登場する前は、(正確に言うと、同時多発的に同様の造り手が複数誕生したが、インパクト面ではアルノ=ロバーツがダントツ) カリフォルニアのワインは、白、赤共に樽のしっかりと効いた濃厚で重厚なワインと言う画一的なイメージに支配されていた 。そしてその味わいは、 テロワールの特徴とすら言われていた 。 そんな中、アルノー=ロバーツは、 繊細で緻密で優美なワイン を引っ提げてデビューした。
- 銘醸地のカジュアル赤ワイン、世界NO.1決定戦
日常の私は、カジュアルなワインばかりを飲んでいる。 カジュアルな価格帯で良いワインを探し出してこそプロフェッショナルだ!なんてのは建前で、仕事で散々ワインの事は考えるので、オフの時間くらいはあまり頭を使わずに済むワインを飲みたい、というのが本音だ。 マイナー産地のカジュアルワインも好きなのだが、実は銘醸地のカジュアルワインはもっと好き。さすがのテロワールの底力を感じさせられることが多いからだ。 さて、そんな銘醸地カジュアルワインに癒される日々の中、ふと思い立った。 世界各地に、カジュアルの枠を超えた素晴らしいワインがあるが、果たしてどのワインが最も優れているのか?と そういえば、このテーマに関して、冷静に客観視したことが一度も無かった。 ということで、ここに開催を宣言する。 第一回「 銘醸地のカジュアル赤ワイン、世界NO.1決定戦 」を!! 審査員は私、選考も私。 完全に独断だが、 偏見も忖度も一切無し で争って頂こうかと思う。 エントリー条件 は以下の通り。 1. その産地の顔となるワインが、世界的な銘醸ワインであること 2. 各地のワイン法にて、明確に下位のアペレーション(もしくはスタイル)が定められていること、もしくは特定の広域アペレーションが、実質的な下位として機能していること 3. 平均価格が5,000円を下回ること では、第一回の覇者を争う俊英たちを紹介して行こう。 フランス代表 1. Bourgogne (価格面が怪しいが、ぎりぎりエントリー) 2. Bordeaux 3rd Label (2ndは価格でアウトなものが多いので、3rdがエントリー) 3. C ô tes-du-Rhône (実質的に下位アペラシオンに位置付けられるので、エントリー) イタリア代表 4. Nebbiolo d’Alba (ピエモンテ代表) 5. Rosso di Montalcino (トスカーナ代表) 6. Rosso di Montepulciano (同州のライバルを超えられるか) 7. Montefalco Rosso (ダークホースとして期待) 8. Iripinia Rosso (こちらもダークホースとして期待) スペイン代表 9. Rioja Joven (スペイン代表として唯一のエントリー) 枠外エントリー 10. Napa Valley Cabernet Sauvignon (このAVAで超高級ワインも多々存在するため、あくまで枠外エントリーとして)
- 自然農法の真理 <前編>
福岡正信氏とは?と聞かれて一言で答えることができる人がどれ程いるだろうか。 自然農法の人、粘土団子の人、わら一本の革命の人。 世界のワインに通じる方なら、氏について知っているかもしれない。 海外に通じるワインプロフェッショナルなら、氏について聞かれたことがあるかもしれない。 実は、新型コロナ禍で世界の価値観に変化の兆しが見えている。 今、世界的に、東洋的思想が再評価されてきているのだ。 本特集では、福岡正信氏とは一体だれなのかを、丁寧に紐解いていく。 自然農法の本質、その実践に至った経緯、そして氏の哲学。 その思想は農業にとどまらず、人間性、神性、生き方へと繋がり、この現代社会を導く灯火ともなる。 そしてそれは、日本の農業、ブドウ栽培とも関わりがある。 福岡正信氏とは? 私はこう答える。 「キリストやガンジーのように真理を振りかざし、仏のように慈悲をもって無に還ろうと絶叫した百姓であり、哲学者であり、ある種の神性を得た存在。」 と。 本特集は、なるべく福岡正信氏自身が著書内で語っている内容をそのまま使用するよう努めているが、私の個人的な見解も多分に含ませて書いていることを、ご承知いただきたい。 人生の転機 福岡正信氏は 1913年、愛媛県伊予市の生まれ。 岐阜高等農林学校農学部(現岐阜大農学部) で植物病理学を学び(師は著名な植物病理学者の樋浦誠教授)、岡山県農事試験場を経て、 横浜税関植物検査課に勤務し、 病原性の細菌や菌類の研究を行う(この研究室での師も著名な黒沢英一氏)。 横浜植物検査課時代の25歳のとき、急性肺炎で 死に直面 したのをきっかけに懊 悩 するようになってしまう。 「死ぬのではないか… 私は反動的な恐怖と苦悩を味わわねばならなかった。」 「私は願ったもの、確認したもの、それがもろくも崩れ去るような不安に襲われた。」 「私は急にすべてのものに懐疑の目を向けるようになった。果てしない懐疑のため、私は仕事にも身が入らず、半ば茫 然 とした日々を過ごしていた。」 (すべて「無の哲学」より) 大悟(悟りの瞬間) 「五月十六日の未明であった。前夜来私の懊 悩 は極に達していた。私は一晩中、野良犬のように歩き回っていた。苦悩の限界という所まで来て、私は精魂尽き果てた思いであった。私は発狂するかも知れないと思った。 私は夜空の星を仰いで胸を冷やそうと、太い樹木の根元に横たわったまま、茫 然自失 の状態が幾刻続いたのか知らなかった。いつのまにか、夜が白々と明け始めていた。潮風が一陣さっと吹き上げ、断崖の一角が、ふっと姿を現した。その瞬間、五位鷺が鋭い声を発して飛び去った。
- 自然農法の真理 <後編>
私は、昨年の春からこの冬の間中ずっと思い悩んでいたことがあった。 「なぜ人間は、野に舞う蝶や、空飛ぶ鳥のように自由に生きることができないのか…。」 その悩みに答えを示してくれたのが、 福岡正信氏 だ。 自然農法の大家、福岡氏の遺した数々の言葉。 それらは、表面的には 非常に宗教色が強く思えるかも知れないが、その本質は大きく異なる 。 氏の鋭く、時に断定的な言葉使いを、断片として切り取ってしまうと、真意を読み誤ることもあるだろう。 よって、以降の内容を、 宗教的という目線から考えないことを、強く推奨する 。 福岡氏の言葉も、 本意としては様々な宗教を否定するものでは決してなく、氏の言葉をもとに書かれたこの記事もまた、宗教を否定する類のものでは一切ない 。 真理 福岡氏の 「無の哲学」 では、仏教における 「空」の思想 をもとにした、氏の思想が語られている。 福岡氏は著書で何度も 「真理は一つだ」(絶対的真理) と言っているのだ。 その真理とは。 「 絶対的真理 は、無力どころか、架空の概念を一時的に満足せしめるに役立つのみの科学的真理よりも、より強力に、現実の大地に立った永遠の指針となりうる真理である。 絶対的真理 は、科学的真理が、現象界内でのみ通用する真理であり、その価値は時と場合で変転してゆく、その矛盾、欺瞞を常に批判し、破砕し、永遠に訂正する必要のない不変不動の強力な灯台となっている。」 「ソクラテス、キリスト、釈迦、世界の聖者と呼ばれる人たちは、期せずして大悟(回心)、現象界の自己を否定した“自己を知る”に出発し、真実の“自己に還り”、魂のふるさと、善、慈悲、聖愛に目覚めることを人々に呼びかけている。 真理は一つである 。到達した世界の根源は洋の東西を問わず時代を超え同一であり寸分のすきもない。」 「 真理は一つ であり多くの流儀、流派、諸説があってはならない。一つの真理がわかれば、この世の一切は万華鏡で照らし出されるように一目瞭然、あらゆる疑問、矛盾、人間の苦悩が氷解するのである。」 「 真理が把握 されたときは、“人間はいかに生くべきか”が当然の帰結として明確に浮かび出るはずである。」 「人間が自然に合一するとは、人間が自然の中に流れる 真理の泉 に身を浸すことである。」 (すべて「無の哲学」より) 著書の中で、真理を把握し神性をもつに至った人としては、釈迦、達磨、道元、老子、キリスト、マホメット、ガンジー、ソクラテスなどが挙げられている。 福岡氏にとっての「真理」とは、「空」であり「無」である。 そして、「空」であり「無」であるからこそ、真理は一つしかない、というのが、氏が至った大吾の境地なのだ。 神性 「キリスト教だ、仏教だ、イスラム教だなどとみんなが勝手に名前をつけて、いろいろな恰好で拝んだり祈ったりすることがすでに根本的な間違いであって、それは神でも仏でもない。」 (「自然を生きる」より) 「キリストも釈迦も、いかなる国の宗教界、思想界を問わず、聖者と言われるような人が把握した真理はみな同じただ一つの真理であり、神の子と名づけようと、仏陀、真人、仙人と呼ばれようと、その 到達した世界は同じ世界 であった。 神は宇宙に瀰漫する。全世界の本姿が神である。人間の本姿が神である 。」 「人間が振り返って、無知の智に還れば、我が手に抱く、無心の嬰児が神であるあることを知るのである。 無心になれば、自己もまた神となる 。 人間はみな、過去において一度は神であった のである。神であった自己を忘れ、真の自己から離れて、虚像の自己を観念的に造り上げた。真人から俗人に自ら転落したのが人間である。」 「神は思考の彼方にあるのではなく、思考以前において、簡単に言えば、考えなければ神に会うことができる。手っ取り早く言えば、 無心の人間は神 であり、 思考のない嬰児は神を知る人間であり、神の一人でもあった 。」 「 神、仏は自己 であり、その内容は 真理の充満 である。」 (すべて「無の哲学」より) 福岡氏にとっての「神」とは、まさに「無の哲学」そのものである。 それは、自然であり、森羅万象、絶対界に生きるすべてのものであり、さらに、絶対な真理を悟ることができれば、人間も神になれると語っている。 「無」=「神」と氏は説いているのだ。 悟り 「無」、「真理」、「神」 そしてそこにある「悟りの世界」とは。
- 再会 <15> 最後の再会
La Ferme de la Sansonnièr, Anjou “Vignes Françaises en Foule” 2002 敬愛する造り手は誰か、と問われたら、私は真っ先に彼の名を思い浮かべる。 マルク・アンジェリ 。 フランスのロワール渓谷で、孤高のワインを生み出す 賢人 だ。 マルクは『 ラ・フェルム・ド・ラ・サンソニエール (以下、 サンソニエール )』という名の農場を経営しており、ワイン造りだけに留まらず、驚異的なジュ・ド・ポム(リンゴジュース)や、ミエル(蜂蜜)なども生産している。 農園は1990年から既に ビオディナミ で管理され、マルク自身も自然の力を最大限に引き出すために苦心しながら、様々な挑戦を続けてきた。 特定のワインに対してあまり思い入れをもたない筆者にとっても、そんなマルクのワイン(サンソニエール)は特別な存在だ。 なにせ、私とサンソニエールの間には、いくつものエピソードがある。 もう15年以上前になるだろうか。 当時は、いわゆるクラシックワインというものを集中的に学んでいた私が、徐々にナチュラル回帰の世界へと引き込まれていくきっかけとなるワインとの出会いを繰り返していたタイミングだった。 その最初期に出会い、以降の私のワインとの付き合い方を決定づけたとも言えるのが、サンソニエールだ。 サンソニエール無くして、今の私は無い 。 そう言っても、決して大袈裟では無いだろう。
- クラシックの行方
筆者にとって過去2年半は、新型コロナ禍による混乱だけではなく、別のショッキングな出来事が続いていた。 そう、それは クラシック・ワインの消失危機 だ。 なるべく話をコンパクトにするために、フランスに限った話にとどめておくが、 2018、2019 、そして 2020年 というヴィンテージがリリースされてきたこの2年半、なんとも煮え切らない思いを抱えることになった。 2018年はフランスのほぼ全土で酷暑の年となり、ワインにも異常な性質が立ち現れた。 多くのブルゴーニュ・ルージュは、まるでニューワールド・ピノのような味わいになった。 多くのブルゴーニュ・ブランから、酸が消え去った。











