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- 葡萄を知る <7> カベルネ・ソーヴィニヨン:Old World後編
Old World後編では、フランス以外のヨーロッパ伝統国における、カベルネ・ソーヴィニヨン(以下、CS)のスタイルを紹介していく。
- レストランでのペアリングの考え方
僕は現在京都の LURRA° に在籍しています。 LURRA° はシェフのジェイカブ・キアーが世界各国を渡り歩きインスピレーションを受けた世界中の料理を元に、日本の季節の食材や文化と共に表現をするレストランです。ドリンクのペアリングに関してもオーナーバーテンダーの 堺部雄介 の創り出すミクソロジーカクテルと、僕がセレクトするワインや日本酒、そしてノンアルコールを考案しています。 レストランのペアリングで何が大切か人それぞれの考え方があると思います。僕の考える大切にしている事は、レストランではやはり 料理が主役 という事。 料理を楽しめるペアリングの提供が重要 なのでは、と考えています。勿論楽しむ要素はそれだけでは無いですが、今回は僕の日々やっているペアリングの選び方を説明させて頂きます。 僕はいつもシェフに どの部分をゲストに味わって欲しいか を確認しながら、ペアリングを考えます。そしてディスカッションしながらシェフの作り出す一皿の美味しいと感じる部分をより際立たせたり、香りを立ち上げたりします。 この様な形のペアリングにするには、料理を口に入れてから咀嚼をしている間に順に来る味わいや香り、風味にピンポイントで合わせていきます。(スープなどを除いて咀嚼して味わう料理に対して、液体では香りや味を感じる時間は短いので) Photo by Mitsuyuki Nakajima 今回のメニューは、熾火の香りを付け焼き上げたアンコウとヴァンジョーヌを入れたクリームソースです。 香ばしい香りのプリッとした食感のアンコウとジュラの郷土料理を思わせるソースのカラメルの様な甘みのある風味と甘み、旨味、アフターには柔らかい酢酸も感じる酸。付け合わせには生のくるみとジェイカブシェフのお皿の中では比較的シンプルな要素のお皿です。 口に入れてから味わいの感じる順序は アンコウにした岩塩の塩味とアンコウのジューシーさにソースの酸味 → 熾火の香りを感じた後にくるみの香りと食感 → くるみの食感を感じながらソースの甘い香り → チーズを思わせる旨味と風味。 大きく分けるとこの様に感じます。 今回は、上記の中で ソースの甘い香りにピンポイントを合わせます 。 このメープルシロップの様な甘い香りの主な成分である ソトロンやフルフラール などは、ヴァンジョーヌやシェリー、熟成したワインなどにも含まれており、 フェネグリーク の香り成分の主要香の一つでもあります。クリームにも火が入ると少量の同じ香りがあります。 今回のセレクトは ジュラのサヴァニャン にしましたが、どの様なタイプのサヴァニャンが良いのか違うタイプの二種に絞って検証してみました。 まず塩気もあり酢酸がしっかり出ていて、甘い香りをしっかり感じつつ樽の香りが続く、長期熟成の美味しいとこどりのような、シェリーよりのタイプを合わせてみました。 甘い香りは伸ばすが、こちらでは酢酸が強すぎてソースのバランスを崩してしまい、樽の香りが強調されてしまい苦味が生じます。 もっとソースのバター量も多く、濃度が高く、ソースの酸度が高い方が合うかもしれません。 次に合わせたのは、ジュラのサヴァニャンでも乳酸発酵(*1)由来の酸がある若いヴィンテージのもの。 スタートの酸度は前者のものよりも強く感じますが、ソースの酸よりも多少強い酸なので、嫌味なく馴染みます。 産膜酵母(*2)の香りも微量に持っているので、ソースの中の甘い香りをブーストしてクルミのタンニンともぶつからずにスムースに持続しました。 勿論このままでも充分に相性は良いのですが、よりソースの香りや旨味を際立たせる為にLURRA°でのペアリングでは、フェネグリークを漬け込んだ糖度6%のシロップを極少量加えています。 カレーのスパイスにも使われるフェネグリークは、少量だとメープルシロップの甘く香ばしい香り(ソトロン)があるので、ソースの甘い香りがさらに香ばしさが増し、ソースの旨味も削れることなく余韻がさらに長く繋がります。 ペアリングにはルールはないと思っています。 その料理を更に美味しく、何よりゲストに楽しんで頂ける様に、今まで体験したことない組み合わせを僕たちは考えています。 生産者 :Les Dolomies (Céline et Steve Gormally) / レ ドロミー ワイン名 :Savagnin Croix Sarrant / サヴァニャン クロワ サラン 葡萄品種 :サヴァニャン ワインタイプ :白ワイン 生産国 :フランス 生産地 :ジュラ パッスナン ヴィンテージ :2018 インポーター :Racines 参考小売価 格:¥7,000 写真提供 :Racines (*1)乳酸発酵:ワインに含まれるりんご酸(シャープ)を乳酸(まろやか)へと変える発酵工程で、マロラクティック発酵、MLF、マロといった略称も頻繁に用いられる。大部分の赤ワインは乳酸発酵しているが、白ワインに関しては、産地や造り手によって、大きく異なる上に、味わいへの影響も大きい。 (*2)産膜酵母:発酵中の液体の上面に生じる酵母で、膜状に広がる性質がある。一般的な醸造学上では、発酵中の果汁が酸素にさらされ過ぎたことによって起きるエラーであるが、独特の風味をもたらすことから、積極的に用いて伝統的な手法としたワインとして、スペインのシェリーやジュラのヴァン・ジョーヌが有名。 <ソムリエプロフィール> 外山 博之 LURRA ゚ 1981年 埼玉生まれ 都内を中心にバーテンダー、サービスマンとして勤務し、その後、都内のレス トランでソムリエとしての経験を積む。 2012年Grisマネージャー就任。ナチュラルからトラディショナルまで幅広いセ レクトのワインを中心にしたペアリングとそのアルコールの構成要素を表現し たノンアルコールペアリングが好評を得る。 2018年6月よりMarutaのドリンクを監修。小規模生産のワインや発酵ドリンク のメニュー開発に携わる。 現在もMarutaでのドリンクを中心としたディレクションを行う。 2019年よりシェフのJacob kearを中心としたレストランプロジェクトの京都 LURRA°にドリンクディレクターとして加わり、2020年のミシュラン一つ星獲 得に貢献。 2021年 3月より調布のMarutaへ正式に加入予定。
- Advanced Académie <2> (ロマネ・コンティという比喩の正しい使い方)
ワイン関連の情報にふれていると、幾度となく目にすることになる表現がある。 〜のロマネ・コンティ。 というロマン溢れる表現だ。イタリアのロマネ・コンティ、スペインのロマネ・コンティ、カリフォルニアのロマネ・コンティ辺りは、なんとなく一般的な使い方にも思えるが、ボルドーのロマネ・コンティや下町のロマネ・コンティなどといった、ほとんど ジョークの様な表現 も、少なからず見かける。
- 高級シャンパーニュで真剣に遊んでみる
生産者: Louis Roederer / ルイ・ロデレール ワイン名: Louis Roederer Cristal Brut / ルイ・ロデレール クリスタル ブリュット 葡萄品種 : Pinot Noir 60% Chardonnay 40% / ピノ・ノワール 60% シャルドネ 40% ワインタイプ :シャンパーニュ 生産国 : フランス ヴィンテージ :2008 インポーター : エノテカ 参考小売価格 :\38,000 (750ml) シャンパーニュにとって、傑出したグレートヴィンテージと評される 2008年 。 もちろんこの ルイ・ロデレール クリスタル ブリュット も例外ではありません。 今回の私のコラムの性質上、 ルイ・ロデレール のその偉大な歴史や多くの説明は省きますが、その中で一つ取り上げられることは、 ルイ・ロデレール は「 完璧なブドウの持つポテンシャルを最大限活かす 」という信念によって、自社畑から採れたブドウは常に ノン・マロラクティック発酵 を実施しているということです。 マロラクティック発酵 はワイン中の 鋭角的な酸(リンゴ酸)をソフトな酸(乳酸) へ変える作用であり、そのマロラクティック発酵を行わないということは、 ブドウのフレッシュな果実味と酸を保ちながら長期間かけてゆっくりと熟成させる こととも言えます。 多くのメゾンがマロラクティック発酵を採用する中、 ルイ・ロデレール のようにあえて行わない代表的なメゾンとしては、 ランソン、クリュッグ、サロン などがあげられます。 また、 ジャック・セロス については、 マロラクティック発酵をするもしないも自然に任せる という独特なスタンスを取っています。 しかしながら、マロラクティック発酵を行わないことで、そ の酸を落ち着かせるためには長い期間瓶熟成が必要となります ので、マロラクティック発酵を行っていない リリース直後 のシャンパーニュ、あるいは2008年のように傑出したヴィンテージのシャンパーニュには、時折「 硬い 」印象を持つこともあります。 そこでですが、一度シャンパーニュを開封し外気を取り入れた後、また元通りコルクを打ち直すという「遊び」のご提案です。 ワインの芳香成分を引き出す目的で、数時間前、あるいは前日に開封する手段はスティルワインで目にすることも多い手法ですが、いかんせんスパークリングワインに関しては、例えストッパーをしていても開封後の時間経過によって、泡が抜けていくというリスクが付き纏います。 ただ、私の体感では コルクを打ち直す ことによって シャンパーニュの芳香成分を引き出しつつ長時間フレッシュな泡を保つことが可能 と考えます。既存のシャンパーニュストッパーよりも コルクの方が泡を保つことについては優れているのではないか 、とか思ったり。 ただしコルクを打ち直すことは安易ではなく、シャンパーニュの製造過程において用いられるようなコルクの打栓機など普通は所有してませんから、開栓後に傘が開いてしまったコルクをまたどうにか打ち直すことになります。結果、その過程でコルクを多少削ったりする必要も出てくることもあるでしょうが、元気なコルクであれば打ち直した後にまた広がってくるので大丈夫、だと思っています。また、ボトルの中で再度気圧が高まり、コルクが飛び出す恐れもありますので、そうならないようしっかり固定して保管する必要もあります。 ( 留め金を捨てないように! ) このようにコルクを打ち直した、一日、あるいは二日後のシャンパーニュを味わうのも楽しいものですし、面白い遊びです。 開けたてのシャンパーニュとは違う姿を発見できる喜び があります。 ただこの方法、 ジャック・セロスについてはあまりお勧めしません 。 ジャック・セロス は前述した通りマロラクティック発酵も自然に任せるという製法をとっていますし、経験上このシャンパーニュは ボトル一本一本に明確に違うキャラクターがあり、開けてみないとその状態が分からない からです。何度か早まって開けたが想像より熟成が進んでいた、なんてこともありました。 最後に改めて、シャンパーニュにとって2008年は傑出したヴィンテージと名高いですが、ルイ・ロデレール クリスタル ブリュットの現行ヴィンテージは2008年から2012年に移行し2008年は市場から消えつつあります。もし見つけたら、お買い求めいただくことをお勧めします。 そして、この素晴らしいシャンパーニュで、もし前述した遊びをお試しになる際は、寛大な気持ちでw、かつ真剣に遊んでいただきたいです。 <ソムリエプロフィール> 山本 隆裕 / Takakhiro Yamamoto 1977年静岡生まれ。名古屋と東京の様々なバー、及びレストランにてソムリエとして研鑽を積む。 2020年より株式会社SUGALABO入社、S 支配人を務める。
- コンテンポラリー・アメリカ <序章:変わりゆく時代>
濃厚で力強く、樽もたっぷり効いた飲みごたえのあるワイン 。アメリカのワインに対して、そのようなイメージしかもっていないなら、あなたはすでに 新時代に取り残されてしまっている 。そして、そのような方にこそ、本稿と真摯に向き合っていただきたいと切に願う。難しいことでも、悲しいことでも、驚くようなことでもない。アップデートを繰り返しながら成長してきたアメリカのワイン産業が、 新たな大型アップデートの時を迎えただけの話 だ。最新のアメリカワインは、 Ver.6.0 。本稿では、計4回に渡って、アメリカのワインが最初期からどのように変化して、現在の最新型に至ったのか、そして新時代のスタイルである、 コンテンポラリー・アメリカ とは何なのかを、深く掘り下げながら追っていく。
- ペアリングの実践 <2>
前回は、ペアリング理論の基礎となる、 酸味、甘味、渋味、アルコール濃度 の4要素を軸に、実際にどのようにペアリングを組み立てていくかをご紹介致しました。
- タンチュリエを飲む
タランチュラではない。 タンチュリエ である。 これは タンチュリエ系 ( teinturier )と呼ばれる、 果肉まで赤く色付いた黒ブドウ の総称である。 通常、 世の多くの黒ブドウは、果皮は黒く色付いているものの、中の果肉は白ブドウ同様に緑がかった透明で、果汁に黒い色素は含まれていない 。しかし、果肉まで赤く色付いたブドウ品種が、世界には極稀に存在する。これらのブドウは、総称して「 タンチュリエ系 」と呼ばれる。 フランス語で タンテュリエ (teinturier)、スペイン語では ティントレッラ (tintorera)と呼ばれ、「 染められた 」「 インクのような 」という意味をもつ。つまり、 タンチュリエ系 のブドウ品種は、 ワインの着色力に特徴を持つ品種 だということだ。 少量のブレンド、ないしは100%この品種で造られたワインは、 グラスのふちまで光を通さない、極めて濃い漆黒の色調 をしているばかりでなく、 グラスの内側をつたうレッグスにも着色 が見てとれる。個人的には、 墨汁 のようなアロマや 野生的 なタッチ、 総じて田舎風な印象 を感じることが多い。 私が最初に、この タンチュリエ系 品種を意識するようになったのは、7年前の アルゼンチン での出来事である。ブドウ畑を歩いていると、2列だけ、赤紫色に見事に染まったブドウの「葉」に出くわしたのである。一部分だけなら、ウイルスか何かだろうと考えたかもしれない。しかし、見事に2列だけが、しかも全ての葉がおどろおどろしい色調に染まっていたのである。これはいったい何が起きたのかと尋ねると、「それは アリカンテ・ブーシェ だよ」と教えてくれた。 タンチュリエ系 の品種は、決して数は多くないが、意外に読者の皆様も親しんでいるかもしれない。その中でも最も有名な品種が、前述の アリカンテ・ブーシェ(Alicante Bouschet) であろう。この品種はフランスで誕生した。1800年代中頃に、フランスのブドウ苗業者ルイ・ブーシュ&アンリ・ブーシュの親子が交配によって生み出した。彼らはまず、 タンチュリエ・デュ・シェールとアラモン (*1)という品種を交配して プティ・ブーシェ(Petit Bouschet) を生み出し、そしてさらに、 グルナッシュ・ノワール を交配して アリカンテ・ブーシェ が誕生した。 多収量型の品種であることから、品質の面で重要な位置づけとなることは基本的にない 。しかし、ビジネス的な側面において「量がとれ、ワインの色を濃くしてくれる」という点は優秀といえる。南仏やスペインなどでブレンドの一部に用いられたり、ロゼになったり、色を濃くするためにアルゼンチンでマルベックのワインに一部混ぜられたり、カリフォルニアでジンファンデルにブレンドされたり。 しかし、近年になって、この常識を覆すワインが イベリア半島 、とりわけ ポルトガル で誕生している。そもそも アリカンテ・ブーシェ 100%のワインということ自体が異質であるのにも関わらず、そのレッテルに挑み、世界の評価を獲得している。(今回ご紹介するワインではないですが) ちなみに、スペインでのシノニムは ガルナッチャ・ティントレッラ(Garnacha Tintorera) であることから、 ガルナッチャ・ティント(Garnacha Tinto)=グルナッシュ・ノワール とよく混同されがちであるので、ご注意頂きたい。 その他にも、 ガメイ にもタンチュリエ系の品種が存在する。 ガメイ の正式名称は、 ガメイ・ノワール ア・ジュ・ブラン(Gamay noir à jus Blanc) = 果汁が白いガメイ という直訳になる。しかし、なぜ“果汁が白い”と余計な言葉がついているのか、その意味まで考えたことがある方はいないだろう。理由は、「果汁が白くないガメイ=タンチュリエ系のガメイ」という別の品種が存在するため、区別する必要があったからだ。 ボジョレー のA.O.C.規定を見てみると、奨励品種に ガメイ・ノワール ア・ジュ・ブラン が、認可品種に ガメイ タンチュリエ(Gamay teinturier) の記載が確認できる。また、 ロワール地方のガメイ から造られた一部のワインは、ガメイとうたっているが、 ガメイ・タンチュリエ (ガメイ・ド・ブーズGamay de Bouzeとも呼ばれる)を意図的に混ぜて造られているものもある。さらに、 カリニャン(Carignan) にも カリニャン・タンチュリエ(Carignan teinturier) という別品種が存在していたり、日本に自生している「 山ブドウ 」もタンチュリエ系の性質を有する。 タンチュリエ系品種のテイスティングにおいて重要なのは、まず前提として 、タンチュリエ系品種であるということを、しっかりと念頭においてテイスティング せねばならないということである。その知識が不足していると、テイスティングにおいて、 ワインのスタイルやその評価を見誤ってしまう恐れがある 。 生産者 :Papari Valley / パパリヴァレー ワイン名 : 3Qvevri Terraces Saperavi No.16 / スリークヴェヴリ テラスズ サペラヴィ 葡萄品種 : Saperavi / サペラヴィ ワインタイプ :赤ワイン 生産国 :Georgia / ジョージア 生産地 :Kakheti / カヘティ ヴィンテージ :2017 インポーター :Mottox 参考小売価格 :¥3,300 アルコール度数 :17.84% ジョージア を代表する黒ブドウ品種 サペラヴィ(Saperavi) も、紛れもない タンチュリエ系 品種であるが、その事実は見逃されがちだ。 ジョージア というワイン情報量の多い国であるがゆえに、未だ細部まで解説がなされることは少ない。 パパリヴァレー が造るワインを一言でいうと、 クリーン&ナチュラル 。 ビオロジック で栽培され、 クヴェヴリ (*2)での発酵・醸し・熟成。 亜硫酸の添加は瓶詰前の極少量のみ 。 以下、インポーター資料を元に、特筆に値する「醸造」についてより詳細に記しておこう。 彼らの マラニ (クヴェヴリを置く施設)は、ジョージアで初めて クヴェヴリ を3段階に分け、 グラビティー・フロー (*3)を採用。醸造の各段階でポンプは使用せず、ワインへのストレスを軽減させることができ、丁寧に熟成のプロセスへと進んでいくことが可能となる。1層目と2層目のクヴェヴリは1階に設置。砂を被せて埋められるが、温度コントロールが出来るよう、クヴェヴリの周りに冷却水が流れるパイプを引く。 温度コントロールをするクヴェヴリ発酵は、ジョージアにおいて決して主流ではない 。3段階目のクヴェヴリは地下に設置、地中に埋め、温度コントロールは地下兼地中の環境に依存する。1層目のクヴェヴリにて、天然酵母を用いて15日間の発酵及び醸し。果皮を取り除いた後、2層目のクヴェヴリで2ヶ月半の熟成。澱引きをし、3層目のクヴェヴリに移しさらに8ヶ月の熟成。至ってシンプル、古典的な、最小限の介入を重視した造りであるが、2016年に完成したばかりの一際モダンなマラニで、考え抜かれた必要最小限度の介入によって、発酵を健全で清潔なものに導く。まさに、モダンとクラシックの融合。 世界中に広がったジョージアのワイン造りの伝統が、一周まわって逆輸入されたようなワイナリー だ。 ちなみに、クヴェヴリ毎にナンバーが振られており、今回ご紹介させて頂いたNo.16は現行ヴィンテージではなく、2017年のものである。当然 クヴェヴリ毎にアルコール度数やニュアンスは異なる 。テイスティングするたびに新たな気付きと、ジョージアの今を伝えてくれる、ジョージアで今最も目が離せないワイナリーの一つで間違いないだろう。 (*1)アラモン:南仏(主にラングドック=ルーション)で栽培されている葡萄品種。19世紀後半から1960年頃までは、フランスで最も多く栽培されている葡萄品種だった。高収量であっただけでなく、フィロキセラ(葡萄樹を枯死させる害虫)を含む様々な害虫や病害に強い耐性があったことから、人気が高まった。現在では、品質的に劣るとされ(例外あり)、その栽培面積は減少している。 (*2)クヴェヴリ:ジョージアの伝統派がワインの醸造、熟成に用いる大型の土器。運搬は保存用でもあったアンフォラと違い、地中に埋めることを前提としているため、下部が円錐形になっている。 (*3)グラヴィティー・フロー: 醸造プロセスの中で液体を移動させる際、酸化や負荷によるショックのリスクが伴うポンプでの汲み上げではなく、重力を利用して自然落下によって移動させる手法。ワインはより繊細なバランス保つことができ、最終的な品質に大きく関与する。 <ソムリエプロフィール> 佐々木 健太(ささき けんた) 南仏ニースにある一つ星レストラン「Keisuke Matsushima」にて研鑽を積む。 帰国後フォーシーズンズホテル丸の内東京、南青山レストラン「L’AS」のソムリエを経て独立。ワインスクールの講師としては5年目に突入。強引な暗記に頼らない理解がより深まる解説が、「資格取得後に差が出る講義」として絶大な支持を得る。現在は、2020年に新たに立ち上がった、Live配信専用ヴィノテラスワインスクール専任講師。また自身のYoutubeチャンネル「サイバーワインスクール」を運営。さらに「ワイン教育」を軸に、多数企業のコンサルティング業務に従事。ワインリストの作成からアプリケーションの開発など、幅広く活動。SommeTimesでは「SommeTimes Academie」のコンテンツを担当。資格試験の受験生や資格取得直後の方々を想定し、一歩進んだ内容で毎月執筆を続けている。
- 葡萄を知る <6> カベルネ・ソーヴィニヨン:Old World前編
本編から、 カベルネ・ソーヴィニヨン( 以下、CSと省略 )編がスタート。
- 葡萄を知る <2> シャルドネ:New World編
今回はシャルドネのニュー・ワールド編。
- 葡萄を知る <1> シャルドネ:Old World編 (無料公開)
このコーナーでは、ワインの葡萄品種をより深く(なるべく公平な視点で)理解していくために、様々な角度から検証していく。 第一回の主役はシャルドネ。今回はオールド・ワールドの産地を検証していく。 なお、「至高の一本」として挙げたワインは、一般的な評価に筆者の独断を加味して選択したものとなる。 ① 特徴 シャルドネ最大の特徴は「没個性」という点にある。つまり、シャルドネは究極のカメレオン俳優のような存在なのだ。シャルドネ「らしさ」というものは、基本的に無いに等しく、テイスティングコメントの際のその様な言葉は、常にパラドックスを抱えていると言えるだろう。その代わりにシャルドネは「テロワール」、「農業」、「醸造」、「熟成」から非常に大きな影響を受けることができる。そういった点からも、シャルドネという葡萄は、上記の4つの要素がどのように最終的な影響をワインに及ぼすかを学んでいくための、最高の研究対象とも言える葡萄品種だ。 ② 起源、歴史 確認が取れる最初のシャルドネに関する記述は、16世紀後半。当時は「ボーヌからきた」という意味をもつ Beaunois (ボーノワ)として記述されていた。しかし、ボーノワにはアリゴテも混同されていたとの見解も根強い。信頼に足る最初の記述として17世紀後半の Chardonnet という表記が挙げられる。また Chardonnet は最上の葡萄としても当時から評価されていた。 Chardonnay という現代の表記は、南ブルゴーニュ・マコネにある「シャルドネ村」が由来であるという説が有力とされている。 遺伝子的にはピノ系葡萄とグエ・ブランの自然交配と考えられているが、葡萄の遺伝子研究は頻繁に覆されるので、確定とは言い切れない。 ③ 主要な別名 Melon d’Arbois(ムロン・ダルボワ):ジュラ・フランス Morillon(モリヨン):シュタイヤーマルク・オーストリア 各国のスタイル フランス 1. ブルゴーニュ : 言わずと知れたシャルドネの聖地。痩せた果実味と強いミネラル、キリッとした酸が主体となる「 シャブリ 」、果実味、ミネラル、酸、樽の影響が調和した王道の「 コート・ド・ボーヌ 」、伝統的にやや強めの樽感とたっぷりとした果実味が親しみやすい「 マコネ 」、際立った特徴が無いが、それ故に中庸のバランス感覚とコスパに優れた「 コート・シャロネーズ 」が主要なエリアとその大まかな特徴。 シャブリ 淡麗辛口シャルドネの代名詞として、不動の人気を誇るのがシャブリ。古代の牡蠣の化石が含まれるキンメリッジ土壌と強く紐付けて語られることが多いが、キンメリッジはそこまで珍しい土壌という訳でもなく、シャブリ全土がキンメリッジ土壌ということでもない。また、「シャブリに生牡蠣」というステレオタイプなペアリングは、美食的観点から見ると、完成度は決して高くない。土壌と食材を結びつけた、ロマンス志向のペアリングと理解すべきだ。コストパフォーマンスは全体的に良好で、最下層格付けのPetit Chablisから特級畑まで、段階的に分かりやすく品質が向上していく。シャブリも近年のブルゴーニュワイン高騰の煽りを受け、価格が上昇傾向にあるが、他産地のシャルドネと比べても、 現時点では価格と品質のバランスをギリギリ保てている 。 特級畑に至っては、未だに過小評価されている と言っても過言ではない。 <至高の一本> Domaine Moreau-Naudet, Chablis Grand Cru “Valmur” コート・ド・ボーヌ モンラッシェの丘に連なる特級畑群とコルトン・シャルルマーニュ は、世界で最も高名なシャルドネとして確固たる地位を築いている。一級畑であっても、 ムルソー村のいくつかの一級畑のように特級と比べても遜色ないもの が存在している。品質面において、現在でも変わらずに 世界最高 であることは、疑いようもない。しかし、問題はその常軌を逸した高価格である。 価格と品質のバランスは、完全に崩壊 しており、凡庸な村名格のワインですら、一本1万円を超えてしまうことが多々ある。マーケティング面においても、「 比べるものが無い 」特級畑に関しては、どれだけ高騰しても苦戦知らずであるが、村名格と一級畑の多くは、厳しい価格競争に晒され、 その価値は失墜の瀬戸際にある と言える。近年は、有名生産者の価格が上がりすぎたために、旧来からの価格を維持する生産者のワインが続々と取り上げられているが、それらの生産者の中には「かつて見向きもされなかった」凡庸な生産者が少なからず含まれていることを忘れるべきではない。 優れたワインが低価格を維持できるほど、この地に働いている市場原理は甘くない 。とはいえ、St-Aubinや、Pernand-Vergelessesのように、今でもリーズナブルさをなんとか維持しているエリアも存在はしているので、コストパフォーマンスを度外視できる余程の富者でもない限り、マイナー産地から探すか、Puligny-MontrachetやMeaulsaultといった有名産地のワインを求める際には、「 ワインを飲んでいるのか、ラベルを飲んでいるのか 」という疑念を忘れずに抱くべきだ。 <至高の一本> Domaine d`Auvenay, Grand Cru “Chevalier Montrachet” マコネ かつてブルゴーニュ産ヴァリュー・ワインの宝庫として知られたマコネも、高騰化の波から完全に逃れられているとは言い難い。とはいえ、未だに 価格と品質のバランスにおいて、強い国際競争力を維持している のも事実であり、コート・ド・ボーヌ産で1万円を超えるような村名格ワインの半額程度の価格で、品質面ではそれらを大きく上回るワインも多々存在している。全体的には、ヴォリューム感とコクの豊かな果実味、しっかりと効かせた樽によって、飲み応えのある味わいとなっていることが多い。 <至高の一本> Domaine La Soufrandi è re, Pouilly-Vinzelles “Les Quarts” コート・シャロネーズ ブルゴーニュのシャルドネ産地の中でも、際立って影の薄い存在であり、その「中庸」な味わいも、特徴が掴みにくいと敬遠されてきた不遇の産地がコート・シャロネーズ。しかし、隣人達の高騰化と、優れた生産者の参入によって、近年その価値が大きく見直されている。コストパフォーマンス面においては、現在ブルゴーニュで最も優れていると言えるが、 ブルゴーニュに「らしさ」を求める顧客に対して、今後どのように応えていくのか 、試練と挑戦の時は続くだろう。 <至高の一本> Domaine Vincent Dureuil Janthial, Rully 1er Cru “Le Meix Cadot V.V.” 2. シャンパーニュ : ブレンドにおける主役級であり、単一品種として ブラン・ド・ブラン の名でも作られるシャンパーニュ地方のシャルドネ。限界生育環境で育まれた強靭な酸は、シャンパーニュに驚異的な長寿をもたらすと共に、味わいが華開くまでの忍耐も要求してくる。 ル・メニル・シュール・オジェ、アヴィーズ、クラマン、オジェ、シュイィ は、かつてのグラン・クリュ格付け(エシェル・デ・クリュと呼ばれたこの格付けは、自由競争を阻害するとして、1999年に禁止された)の中でも、特にシャルドネの品質が特筆に値するエリア。伝統的には、様々なエリアから集めた葡萄をそれぞれワインにした後、リザーヴワインとブレンド(アッサンブラージュ)して一つのシャンパーニュに仕立ててきたが、小規模生産者(レコルタン・マニピュラン)の躍進により、現在では大規模メーカーであっても、単一畑、単一品種、単一ヴィンテージで仕込むことが増えている。この流れによって、長きに渡って総体としてのテロワールしか見えてこなかったシャンパーニュ地方の、細かいテロワールの差異が感じられるようになった点は非常に興味深い。品質と価格のバランスにおいては、唯一無二の個性も相まり、高騰傾向とは言え、競争力を十全に保っている。 <至高の一本> 多エリアブレンド:Taittinger, Comtes de Champagne ル・メニル・シュール・オジェ:Salon アヴィーズ:Jacquesson, Avize Champ Cain クラマン:Jacques Selosse, Lieux Dits Cramant “Cheim de Chalons” 3. ジュラ :ジュラでは古典的な酸化的特徴(ちょっとシェリーを思わせるような)スタイルのシャルドネも、近代的なクリーンなシャルドネも両方存在している。「 Ouillé (ウイエ)」という表記がラベル上にある場合は、僅かに酸化的特徴を伴った、クラシックとモダンの中間的スタイルとなることが多い。小規模生産者が多く、人気も高いため、入手困難に陥りがち。非常に特殊なスタイルのため、他産地との比較は難しいが、総じてコスト・パフォーマンスは高い。ジュラにおいては、サヴァニャンの補助的品種としてブレンドされることも多い。 <至高の一本> Domaine Macle, Cotes du Jura “Sous Voile” 4. その他:サヴォワ では、若手を中心によりナチュラルで強めの酸を残した瑞々しいスタイルが人気。たっぷりとした完熟風味が独特の魅力を放つ 南仏 エリアのシャルドネや、近年急激に品質が上がってきた、北の アルザス 地方のシャルドネも要注目。 イタリア 1. フランチャコルタ:ロンバルディア 州で作られる シャンパーニュ方式 のスパークリングワイン。ここでもシャルドネは主役級の役割を果たしている。特にフランチャコルタ独自のカテゴリーである「 サテン 」は、ほとんどの場合が100%シャルドネから造られ(たまにピノ・ビアンコをブレンドする蔵もある)、 通常よりやや弱めのガス圧 も合わせて、独特かつ非常に高品質のものが多い。また、イタリアならではのプレゼンテーションの巧みさも秀逸であり、その「 お洒落感 」は時にシャンパーニュをも凌駕する。近年は非発泡性のワインも積極的に作られるようになり、驚異的なシャルドネも続出している。 <至高の一本> Berlucchi, Palazzo Lana Saten Brut 2. その他 : トレンティーノ=アルト・アディジェ 州、 ピエモンテ 州、 トスカーナ 州、 フリウリ 州、 シチリア 州等でシャルドネから高品質のワインが産出されている。ただし、イタリアのシャルドネの場合は、エリアによるテロワールの特性よりも、造り手の醸造面からくる特徴の方が全面的に出やすいため、造り手のスタイルに関する情報が重要となる。イタリアではシャルドネは長年に渡って栽培されているため、優れたワインは枚挙に暇がない。一部のワインを除いて、全体的にコストパフォーマンスも非常に良好。 <至高の一本> Miani, Chardonnay “Zitelle” (Friuli Colli Orientali) オーストリア 南シュタイヤーマルク が、オーストリアにおけるシャルドネの主産地となる。現地では「 モリヨン 」とも呼ばれるシャルドネは、この地方の石灰質土壌の影響を色濃く受けた、厳格で力強いミネラルが特徴。造り手のレベルも総じて高く、オールド・ワールドのシャルドネにおける隠れた銘醸地の一つとして注目が高まっているが、小規模生産者が多く、入手困難となる傾向がある。また、この地は総じて ナチュラル・ワインの品質が高く 、新たなホットゾーンの一つとしても、大きな注目を集めている。 <至高の一本> Maria & Sepp Muster, Graf Morillon ドイツ バーデン 地方を中心に、近年シャルドネの品質が急上昇している。多くのワインは、非常にブルゴーニュ的なスタイルであり、同価格帯のブルゴーニュと比較すると、品質面で圧倒することも珍しくない。 コストパフォーマンス面においては、全ヨーロッパでも随一 の存在だ。リースリングやピノ・ノワール(シュペートブルグンダー)の影に隠れているが、シャルドネの産地としても間違いなく銘醸地の一つ。 <至高の一本> Friedrich Becker, Chardonnay “Mineral” その他ヨーロッパ 1. 西ヨーロッパ : 西ヨーロッパ:スペイン、ポルトガル、ギリシャ、スイス 等でシャルドネのワインが多く見られる。一貫した特徴というよりは、補助的に使われたり、生産者のスタイルが強く出ていることが多いので、生産者やワインのブレンド情報などを知っておくと良い。 2. イギリス:イギリス南部 で、スパークリング・ワインの原料として使用される。「 ブリット・フィズ 」の愛称で近年大きく注目されているイギリスのスパークリングは、強烈な酸による 極辛口 のスタイルが特徴。通常のシャンパーニュだと甘く感じるという方には、ジャストフィットするだろう。 3. 中央、東ヨーロッパ:スロヴェニア、スロヴァキア、モルドバ、クロアチア、チェコ 等々の国で、シャルドネは多く見られる。産地としての個性が確立しているエリアは少なく、やはり生産者のスタイルに大きく左右されることが多い
- 流しソムリエの頑張りすぎない日々
私は現在複数の飲食店に対しての、ワインのアドヴァイスとサーヴィスの実務で関わらせて頂いている。様々な業態に触れる機会が他と比べて多くなる為、業務の上で上多くの種類ワインが必要になってくる。フレンチでも、 クラシックベースなのかモダン寄りなのか 、で手配するワインは変わり、 和食か洋食 (敢えて洋食と書かせて頂く)なのかでも当然変わってくる。 フリーランスとして始めた当初は、必死に各店舗にマッチしたワインを模索していた。 現場にソムリエとして入ったことのある人なら何となくわかってもらえると思うのだが、 飲食店のメニューというものは食材の入荷の関係もあり、極端に短いスパンではあまり変わらない。もちろん台風などの理由で必要な素材が手に入らずに、代替となる食材で対応することはあるのだが、元々旬に合わせてパフォーマンスの優れた食材を厳選して手配をして、其の上で調理法も取捨選択している(はず)ので、 頻繁に料理の構成を変える必要性そのものが余り無い 。 そして それに合わせるワインを変える必要も、(お客様からの要望などが無い限り)無いと言える 。勿論、ハードリピーターの多い店や、限定アイテムなどを多く取り扱う店舗では、変更が必要ということもあるが、一般的な飲食店では コスト管理や品質安定 、またはスタッフのリソース上の理由から、ある程度のボリュームのワインを一定の期間仕入れて顧客に提供していく、というのがオーソドックスな飲料部門の仕事と言える。 (色々試したいという利己的な動機で、豊富にアイテムを用意して様々なパターンで提供した結果、他のスタッフに怒られる、なんてこともあるんじゃないかなぁ・・・などと想像します) さて、フリーランスとしての仕事がある程度安定して来て、周りを見渡す余裕が出てきて、更に勉強会や試飲会などで情報交換などをするようになって改めて認識したことがある。 ① 産地や製法などの違いはあるが、 ジャンルに関わらず用いられる食材は業態に関わらず大まかなフレームで同じである 。 ② そしてその素材に対する調理法はジャンルによって大きく異なるが、素材の持ち味(私は個人的に味の芯と呼んでいる)の捉え方はどんなジャンルになっても余り変わらない。 よって 必要となるワインも実は店舗ごとには大きく変わらない 。細かい調整は温度調整やグラス選びなどで対応可能。 ③ お客様が喜ぶワインは実はジャンルや料理にはそれほど左右されず、 価格帯や利用目的によって大体決まってくる 。 ということであった。 ③ に関してはしっかり語ると話が脇道にそれてしまうので今回は割愛するが、①と② は私にとって、よく考えれば当たり前のことであるが、大きな気付きであった。 理論ばかり説明しても若干わかりづらいかと思うので、一本のワインを紹介して、そのワインを違う業態でどのように使用したのかを、ケースごとに解説していきたい。 生産者 :Bodegas Luis Perez / ボデガス・ルイ・ペレス ワイン名 : Caberrubia Saca Ⅱ / カベルビア・サカ・ドス 葡萄品種 :Palomino / パロミノ ワインタイプ :酒精強化ワイン 生産国 :スペイン 生産地 :Do Xerez / ヘレス ヴィンテージ :MV インポーター :ラヴニール 参考小売価格 :¥4,200 ©︎ラヴニール スペイン・アンダルシア地方 で、 陰干しした葡萄で醸す という 200年前の製法 を用いたワイン。伸びやかな酸味と柔らかいストラクチャー、通常の酒精強化ワインのようなアグレッシブなアロマではなく、どこか奥ゆかしいヘーゼルナッツやリンゴの蜜のニュアンスをもつ素晴らしいシェリーである。 使用例1 タラの白子の天ぷらの海苔巻き、甘塩鱈子の炭火焼き 提供方法 リースリンググラスで常温(19-20度)に戻して提供 ソムリエの悩みの種の一つ、魚卵。みんな大好きな珍味なのだがその押しの強いうま味と風味のおかげで、合わせるワインはどうしても限られてきてしまう。私は珍味系などの味わいのインパクトと情報量の多い食材には、ワインも香りやストラクチャーなどの情報量が豊富なものでバランスを取るような形でお客様に提案していく。 この料理に関しては魚卵や肝のうま味を酸化系のニュアンスでブーストして引き立て、白子と鱈子の臭みと副食材の海苔の影響力の強い香味を強めのアルコールでマスキングをして、トータルで「魚卵、肝の美味しさ」をコーディネートしていった。低温度帯だとワインが口に入ったときに魚卵からでたエキス分が冷えてしまい、やや臭みのニュアンスが引き立ってしまうため、温度は高めで提供。 使用例2 タラの白子のムニエル 春菊のクーリ 提供方法 ピノノワール用の口径の大きなグラスでセラー温度(12-13度)スタート 例1に比べて油分やエキス分が大幅に増しているこちらのケース。とは言え白子の美味しさを表現したいということは変わらない。ムニエルに用いられたバターの乳製品由来の香りと酸化系ワインは鉄板の相性。中心部の半生の癖は強めの度数のアルコールで抑え、春菊の苦みはややブーストされるが、トータルの情報量でバランスが取れているため問題はない。ここでは敢えて温度を下げて白子の魚系の香りを呼び戻して春菊の苦みを引き上げることで料理の本来のコンセプトが明確になるように提供する。 勿論アシルティコ(*1)やアルバリーニョ(*2)などでも合わせることは可能なのだが、ここでシェリーを選んだ理由は高アルコールからくる、少ない量での満足感である。このレストランでは、コースの皿数が11皿、合わせるワインは食前酒も入れて8杯ほどになる。メインの料理の時に多めに提供するので、そこに至るまでで多くの水分量を摂取させるのは良い案だとは思えなかった。そこで「飲みごたえ」のしっかりとあるワインで、量と満足感のバランスを取るチョイスを提供した。 使用例3 タラの白子のアヒージョ 提供方法 キンキンに冷やして(8-9度)小ぶりなグラスで ここでは理屈よりも熱々のアヒージョとキンキンに冷えた辛口のフィノ(*3)を味わうという体験的な楽しさを優先した。小さなグラスなら冷たいうちに、飲み切ってまた改めてキリリと冷やしたワインを楽しめるため。 ビストロでの提供だったので、温度差の美味しさとインパクトを重視するために、敢えて冷やしすぎなくらいで用意した。あくまでその時間を楽しんでもらうのがメインなので、ワインが目立ちすぎないように意識して提供。 以上3例を上げさせていただいた。 フリーランスを始めたばかりのころは、様々なワインを用意しなければ複数店舗でのサーヴィスには対応できないと考えていた。しかし上で述べたように、自分なりのロジックと提供される料理と素材に関する理解さえ的確ならば、アイテム数は実はそれほど必要ないのではないか?という考えに現在傾きつつある。 多様なワインを用意してお客様を歓待するのはソムリエとしての職務であり歓びではあるが、 自己満足にも繋がりかねない危険性に常に気を払わなければならない 。 提供される料理を正確に理解して、そのうえで必要なワインをチョイスする。そして的確にサーブ。多種多様なワインが市場にあふれている現在ではあるが、 ワインサーヴィスの基本的な根っこは昔からあまり変わらないのではないかと私は思っている 。 (*1)アシルティコ:ギリシャで最もよく知られた白葡萄。ギリシャ全土で広く栽培されているが、最上のものはサントリーニ島で造られることが多い。強いミネラル感と柑橘のニュアンスが特徴だが、サントリーニのアシルティコには、強い凝縮感が加わる。 (*2)アルバリーニョ:スペイン北西部のリアス・バイシャス地方、ポルトガル北部のヴィーニョ・ヴェルデ地方で主要品種となる白葡萄。アロマティック品種であり、その豊かな香りと端正な果実味と酸のバランスから、人気が高まっている。特に海に近いリアス・バイシャス産のワインは、海鮮と合わせる鉄板ワインとして知られている。 (*3)フィノ:パロミノ種を用いて、酵母の膜が折り重なった層であるフロールの下で3~6年ほど熟成させた酒精強化ワイン。フィノには味蕾を刺激する特性があり、理想的な食前酒として長く親しまれてきたが、食事との幅広い相性もまた魅力である。同じ製法だが、サンルーカル・デ・バラメダで熟成されたものは、マンサニージャと呼ばれる。 【プロフィール】 建部 洋平 TATEBE YOHHEI 北海道札幌市出身 1983年生まれ 調理師を志し2006年に渡仏。 ブルゴーニュで研修を始めてしまった結果 ワインの魅力の虜になり、皿洗いやブドウ摘みなどを しながら試飲を重ねワインを学ぶ。 2009年にはボーヌの醸造学校 CFPPA BP Sommelierコースに入学。 その時の研修先の紹介で巴里の二つ星(当時)でMOF 所有の 「Relais Louis 13 」に2010年入社。 同年Chef sommelier に昇格し2016年まで勤め上げる。 現在フリーのソムリエとして複数店舗に勤務する傍ら ワインコンサルティングやエージェント業務も行う。










