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ナパ・ヴァレーの宝石、Inglenook
Inglenookの名を見た時、カリフォルニアワインファンは、随分と複雑な気持ちになるのだろうか。 かつて、ジョン・ダニエルJr.という天才の元に栄華を誇ったInglenookは、長らくの間、高品質ワインとはかけ離れた大衆ブランドへと成り下がっていたからだ。 私も一度だけ、1954年ヴィンテージのInglenook Cask Cabernet Sauvignonを口にしたことがある。 そのワインは、まるで時が止まったままかのように若々しく、優美で奥深い味わいだった。 一生の記憶に残るワイン。 そう言い換えても良いだろう。 1879年に、フィンランド人の大富豪グスタフ・ニーバムによって設立されたInglenookは、1908年にグスタフが急逝した後、禁酒法時代には一度閉鎖されたが、1933年にグスタフの未亡人となったスザンヌ・ニーバムの手によって再建され、グスタフの又甥にあたるジョン・ダニエルJr.がワイナリーを引き継いでから、ニューワールドワインの歴史に残る偉大な黄金期へと入った。

梁 世柱
2024年12月9日


「Hot&Cool」なカリフォルニアのニューウェーヴ <San Luis Obispo>
San Luis Obispoと聞いて、すぐにアメリカ・カリフォルニア州のワイン産地が思い浮かぶ人は、よほど深く彼の地のワインに触れてきた人だろう。 そもそも、カリフォルニア州は日本が丸々収まってしまうほど広大な州であり、AVAの数も現時点で152。 追いきれないのも無理はない。 日本市場においては、Napa County、Sonoma Countyを筆頭に、近年ではMendocino County、Lodi(San Joaquin County)、Santa Cruz Mountains(Santa Cruz County)、そしてSanta Barbara Countyあたりが比較的良く知られているが、San Luis Obispoが話題に上がることは、ほとんど無いのではと思う。 Napa、Sonoma、Mendocino、Lodi、Santa Cruz Mountainsはサン・フランシスコにほど近く、Santa BarbaraはLAに近いが、San Luis Obispoは両都市のほぼ中間地点に位置している。 一応、郡庁所在地としてSan

梁 世柱
2024年9月28日


再会 <45> 新時代の価値観
Lamoreaux Landing, T23 Cabernet Franc “Unoaked” 2021. ¥4800 かつてはマイナスだったものが、時代の変化によって魅力的な要素へと昇華するというのは、ワインの世界においては良くあることだ。 そのようなトレンドのサイクルは、最短だと2~3年、最長でも10年あれば回ってしまうため、つくづく、ワイン業界に身を置く人々が日常的に晒されているアップデートの重要性を痛感する。 ワイン産業全体としての情報量も昔より遥かに多いため、全世界のワイン産地を対象にして研鑽してきた私も、いよいよアップデートを行い続ける対象を取捨選択するタイミングに来ているのではと、思い悩んでもいる。 気候変動が深刻化している近年は特に、私やその上の世代のプロフェッショナルたちが、膨大な時間をかけて理解してきた、世界各地のワインとそのティピシテに関する情報が、急速に「期限切れ」となってきているため、それこそ「世界規模」の学び直しを迫られている。 なかなか厳しい状況だが、また学べるのは幸せなこと、とも言えるので、楽しみながらアップデート

梁 世柱
2023年9月10日


コンテンポラリー・アメリカ <序章:変わりゆく時代>
濃厚で力強く、樽もたっぷり効いた飲みごたえのあるワイン。アメリカのワインに対して、そのようなイメージしかもっていないなら、あなたはすでに新時代に取り残されてしまっている。そして、そのような方にこそ、本稿と真摯に向き合っていただきたいと切に願う。難しいことでも、悲しいことでも、驚くようなことでもない。アップデートを繰り返しながら成長してきたアメリカのワイン産業が、新たな大型アップデートの時を迎えただけの話だ。最新のアメリカワインは、Ver.6.0。本稿では、計4回に渡って、アメリカのワインが最初期からどのように変化して、現在の最新型に至ったのか、そして新時代のスタイルである、コンテンポラリー・アメリカとは何なのかを、深く掘り下げながら追っていく。

梁 世柱
2021年2月1日
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